神撃のバハムート Virgin Soulを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
二週間…長かった…というわけで久方のVS。形の上では頭数揃ったけども、どこもかしこも不満がくすぶる。あるいは恋のため、あるいは死んでいった命のため。心を素直に解き放てない者たちがぶつかり合う、本番前の舞台裏。
ニーナとシャリオスが思いを伝え合い、ロマンティックにVirgin Soul完ッ! とはならないのがこのアニメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
童貞捨てた10代並みに浮かれポンチなニーナは、バッカス親父とリタおかんに釘刺されても馬耳東風。アザゼルさんも鬱屈を抱え込み、皇帝陛下と義烈の志士にも溝が生まれてきてる。
ロマンスだけじゃ解決できないあれこれ、恋から離れても価値のある様々な関係を照射していく今回は、疑似家族的な描写が多く、冴えてもいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
ニーナとファバロの、年の離れた兄妹みたいなじゃれ合い。父親を求めるアレクの目を、真剣に覗き込むカイザル。アザゼルの後を無言でつきまとうムガロ。
それは恋ではないのだけれども、恋と同じくらい大切で、きれいに輝いている関係だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
まっすぐ真実を伝えたり、嘘をついたり、何も言わなかったり。思いの伝わり方にも様々あるけど、それぞれのやり方に意味がある。本当の思いにたどり着くまで、それぞれに苦労もある。
ニーナとシャリオスの関係を『世界唯一の恋』と特権化しないためにも、今回血の繋がらない人々の強い思いを、色んな描き方で取り上げたのはとても良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
血を交わらせあう婚礼だけが、世界を変えうる唯一の方法ではないし、人間が前に進んでいくたったひとつの足場でもないのだ。
ゴールを描く前にスタートと途中経過をちゃんと描くのがこのアニメのいいところであり、今回もそれは揺るがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
ニーナの恋愛浮かれポンチはアザゼルさんを傷つけ、そぞろ歩きに誘い出す。無様に敗北したアザゼルさんにとって、あの時龍になれなかった悲劇はコメディではないのだ。
ニーナが背負っているロマンティック・コメディの空気を、アザゼルさんは共有できない。運命の相手ではないというのもあるし、彼が背負っている物語が『奴隷解放のためのテロリズム』、夢想的でも喜劇的でもないリアルだ、というのもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
そっちを背負うのは、優秀な喜劇役者たるファバロの仕事だ。
ニーナのコメディにすり潰される形で、二枚目半を演じざるを得なかったアザゼルさんの無念に、今回のお話はじっくり寄り添う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
追いかけるエルも含めて、感傷がたっぷり詰まった沈黙が場を支配しているのがいい。喋らないことで、二人はゆっくり『喉を焼かれたムガロと保護者アザゼル』に戻っていく。
真実の恋に気づいたからといって、世界のすべてが変わるわけじゃない。壁と路のシミになってしまった命は、シャレですまない本物の痛みだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
失ってしまった時間と命、誇りと生き方を見つめ直すアザゼルさんに、エルが声をかける。それはムガロだった時代には、獲得できなかった強みだ。
その時アザゼルさんは「お前も謝るのか」と言う。無力な道化でしかない自分を責めて欲しい。役立たずと罵り、怒りをぶつけて欲しい。そういう気持ちから出た言葉な気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
アザゼルさんは、為すべき正義を背負いきれなかったことに苦しんでいるのだろう。皇帝が背負うのと同じ重さを、悪魔も背負う
自由と言葉を奪う首輪を切り落としても、アザゼルさんは自分を自由にできなかった。変わってしまったムガロを、素直に見つめることができなかった。そのためには無言で過去と向き合い、自分を見つめる時間が必要だったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
そんな心の旅路に、エルが静かに付き従ったのは、本当に良かったと思う。
エルも過剰な正義感を背負い、元々持っていた優しさを見失っている。傷ついた人に寄り添うことで、失った自分を再獲得する歩み。アザゼルとエルの沈黙の歩みは、そういう相互照応に満ちていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
歩み寄りの象徴として、自分の帽子を渡す演出が穏やかでいい。言葉で伝わるもの、言葉が不要な瞬間。
親鳥を目で追う雛のように、アザゼルを無言で追いかけるエル。それを背中に感じつつ、己と向き合い、傷ついた己をエルに見せるアザゼル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
皇帝とニーナのデートほど派手ではないが、変わってしまった二人があるき直す機会として、とてもロマンティックで雄弁な演出だったと思う。
謝られたことを苦痛に思うアザゼルさんに対し、カイザルは自分から謝り、殴られ、誠意を通す。帽子の代わりに肩を抱きしめ、「俺達は無用ではない」という言葉を送る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
自分と騎士団をを誇りに思いたいのに、状況がそれを許してくれないアレクもまた、自分を見失った子供なのだ。そら酩酊もする。
カイザルのクソ真面目さが物事を良い方向に転がしていくのは見ていて気持ちがいいし、愛ゆえに道に迷うアレクの姿にも良い泥臭さがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
アレクは特に、『誰かに見守ってほしい』という思いが強いキャラなのだなぁ。なので漆黒兵にもすがるけども、彼らが背負う厳しさは見えない。子供だからね。
ここ最近漆黒兵隊長はぐんとキャラを立ててきているが、鎧を剥いで止んだ身体を見せることで、彼らが支払った代償、秘めた烈志がハッキリ感じられた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
ニーナが背中を向けて欲しいと思っている皇帝の過去、シャリオスの一部は、取り返しがつかない犠牲の上に成り立っている。簡単には捨てられない。
隊長が己の身体を脅迫材料に、シャリオスに『王のままいてくれ。人間になんて戻らないでくれ。俺達と同じく、命を大義に捧げる一握の薪でいてくれ』と訴えかけるのは、ニーナの能天気さとの対比で面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
恋と戦争。私情と大義。シャリオスは2つの極に縛り付けられ、引き裂かれつつある。
そんなニーナは悪魔の扮装を解かないまま、恋を覚えた気恥ずかしさから真実を伝えず、のらりくらりと脳天気であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
バッカスがちゃんと情報収集したり、釘を差したり、オヤジの仕事をやっているのが、頼もしいやら面白いやら。でもその重たさが、逆に年頃の娘の心を閉ざしちゃったりもするのよね。
なので、ニーナの浮ついた気持ちに重りを付けるのは、フラフラ能天気なファバロ兄ちゃんの仕事になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
かつて運命的な恋をして、自分の手でそれを葬った男の、『厄介な相手に惚れた』妹分への共感。ニヒルでおどけた表情から優しさと寂しさが感じられるのは、VSの表現力の真骨頂だ。
マジにならないのが味なファバロが、今回はマジな調子で過去を語る。自分をさらけ出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
俺も1クールくらいかけて無邪気で可愛い女の子に出会って、恋をして、冒険して、運命に引き裂かれちまったんだよ、と。お前も俺がしたのと同じ決断で、己の半身を引き裂くことになるよ、と。
その重たさを、GENESISを見通した僕は嫌になるほど共有できる。俺もアーミラ嬢が好きだったさ…アンタほどじゃないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
無邪気なニーナは、ファバロが晒している傷の深さはわからないが、そこに込められた熱だけは真剣に受け取る。そこを無視するほどお子様じゃないのは、恋の善き副産物か。
年長者が己の傷と過去を無防備にさらけ出し、幼きものを抱きしめる。今回は色んな形で、同じモチーフが繰り返されたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
そうやって真摯に『俺もお前と同じなんだ』とさらけ出すことでしか、真実『仲間』や『家族』としての繋がりは生まれない、ということなのかもしれない。
今後確実に激化していくだろう物語を前に、人と人のつながりが巧く行っていない状況、そこを乗り越え繋がりを作る過程を、一話かけてしっかりやったのはとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
状況が変わり、人が変わり、当然以前のままではいられない。問題なのは真実を見定め、不和を乗り越えることだ。
GENESISの主役として、自分の物語を終えたキャラクター達が新世代に自分の傷をさらけ出し、過去の物語への誇りを見せてくれたのも、非常に良かった。続編だから可能な楽しみですな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
かつて元気に活劇してた連中は、自分らしさを殺さないまま否応なく変化し、大人になった。少し寂しくて嬉しい
かくして心の路面整理を終え、新しい関係を築き上げた人々。それは見失っていた自分を、自分に似た誰かを鏡にすることで再確認する足取りでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月19日
そこで見つけたものを、運命の舞踏会でどう踊らせ、如何なる変化と不和が生まれるか。来週も楽しみである。
いやー久々だったが、VSマジおもしれぇ