キラキラ☆プリキュアアラモードを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
英雄が被る呪いの仮面は、母の愛情で笑顔色に塗り固められている。常に正しく、正しくあろうと頑張り続けた宇佐美いちかの臨界点。泣けぬことは、哭くことより悲しい。
第1話以来触られなかった主人公のオリジンに、思い切りよく飛び込んだ個別回。
最初に言っておくと、今回のお話は五兆点です。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
僕は『泣き方を忘れてしまったピエロ』と『大好きな人に不格好な愛を渡し続ける子供』と『感情を殺し続ける優等生』が創作でのクリティカルポイントであり、それを全部同時に押されてしまったので。
秘孔突かれたモヒカンより安易に爆散した。
そこら辺の個人的な好みを差し置いても、色々良い回だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
いちかが我武者羅ガンガン空気読めない系主人公…と思わせておいて、ナイーブな感性と優しい直感力を持っていることは、これまでも描かれていた。
それがどこから生まれ、そう演じ続けることで何を守ってきたかが、今回見える。
母が愛情を以て、何気なく残した『いつも笑顔』というエール。それは呪いに変わり、寂しさを覆い隠すための仮面に変わってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
ここまでプリキュアとして、笑顔の仮面は戦う力になったり、誰かを幸せにする魔法になってきたりしたわけだが、それがとても残酷な生誕を下と判るのはなかなか衝撃だ
顔の見えない百万の幼子のために、母は家を捨てた。正確には捨てていないし、いちかもまたその意味を十分理解しているが、それでも心は軋む。寂しさは募る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
そういうものは、友といても癒やしきれはしない。降り積もった黒い雪が、『いつも笑顔』の枠の中で心をグズグズに溶かしていく。
今回のお話、宇佐美家に思いっきりフォーカスして他キャラの出番非常に少ないわけだが、いちかの歪んだ仮面が超やべぇ! ということだけはキラパティの面々、気づく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
ゆかりの何かを察した反応、『良い子』で居続けようとするいちかをパーソナルな場所に送り出すあおちゃん。ありがたい人たちだ。
親子水入らずの時間の中ですら、『善』という枷に嵌められ、歪んでしまった家族はぎこちない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
ネガティブな感情をどう発露させたらいいか、いちかは忘れてしまった。それを垂れ流しにしていたら、周囲も自分も蟻地獄にハマってしまう。だから、辛い気持ちはない。あるのは幸せな笑顔だけ。
ハッピー・ハードコアな幸福の地獄は、ノワールが推し進める黒いキラキラルの天国の、綺麗なネガだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
幸福だけで人は生きていけない。雪のように、ネガティブな感情は自然と降り積もる。重要なのは、それをどう雪かきするかであって、雪など存在しないように振る舞うことではない。
泣くべき時に泣けないいちかの、あまりにも悲しい『正しさ』。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
いい子でいなきゃ、笑っていなきゃという強迫観念が、彼女を明るく楽しく元気な主人公として成立させていたのなら、それはとてもとても哀しいことだ。
英雄だって、弱くなっていい瞬間がある。お前は泣いていい、泣いていいんだ。
母不在の状況で、『親』をやり続けた父は、料理だけではなく『親』も上手くなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
限界まで追い込まれてしまった娘を前に、『親』をやっていなかった母はとっさに反応できない。立ちすくんでいけない場所で、呆然と己の業罪に睨まれ、動きが取れない。
この対比、ほんと鋭いし残酷だなと思った
父と子、夫と妻ですら、共有できず立ち入りも出来ない場所がある。プライドと柔らかな精神を守るべく、孤独と唯一無二の関係を与えてやらなければいけない瞬間がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
あらゆる場所に胴着着ていくトンチキ親父は、そういう人間が絶対間違えちゃいけないポイントは間違えない。信頼できる男だ。
仕事と自分の夢、公益への奉仕という『正しさ』に背中を押され、家庭と娘の傷に無頓着(になってしまっている)のが『お母さん』で、家庭を維持しつつ小さな仕事をこなし、娘を受け止めてやるのが『お父さんん』なのは、良い逆転だなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
そこはもう、ひっくり返しても良い固定観念だ。
母に与えられた笑顔の呪い/支えがなくても、宇佐美いちかは一人で立てるようになった。母が理想を追いかけ、自分を置き去りにしたあの瞬間の想いが、母のいない場所でプリキュアやってみて、いちかには初めて分かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
空港に見送りに行かない決断は、寂しさよりも誇らしさが勝る。
それを『強い子だね』では片付けず『強い子になったね』で受け止めるのは、かなり好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
いちかは心に降り積もる雪に耐えながら、笑顔でいることを決断し続けた。痛くてもやせ我慢し続けた。その行いが歪でも、呪いの結果でも、小さな女の子の小さな戦いは、とんでもなく立派なものだ。
お母さんはいちかが『立派で大人で強い』ことに、かなり助けられていると思う。あそこでいちかがエゴをむき出しに糾弾したら、富野アニメのこじらせた親子みたいな関係になっていても、全くおかしくはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
しかしいちかは涙で心をデトックスし、果たすべき使命、向かい合うべき正しさに帰還する。
それは『振り出しに戻る』出目だ。先週まで笑顔のヒーローしてたいちかは、戦場でも笑顔を力に変えられる、清く正しいヒーローに戻ってお話が終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
ただ、それが秘めていた歪みは暴かれ、完璧にではないにせよ出口への筋道が付いた。それでいい。黒い感情は消え去りはしないからだ。
母と娘が二人きりで向き合える場所を作ってあげた父。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
泣くことを自分に許した娘と、己がかけた呪いの重さを認識した母。
必殺技で浄化するのとはまた違う、どっしりと重たい感情の揺らぎを丁寧に切り取りつつ、一つのカタルシスに主人公をちゃんと導いたのは、とても良いと思った。
まぁツッコミどころがないわけではなく、『ひまりのキャラ付けアアなのに、今回は精神唯一主義かい!』とか、『戦闘ノルマが宇佐美家一本槍の流れに水を指して、不純物生まれちまってる!』とか、言いたいことはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
が、諸々のシガラミを飲んだ上で、これだけディープな話をやったのは良かった。
いちかと家族の距離感、心理状況が巨大な軸になる今回、演出はキレッキレだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
傾いだレイアウト、幸せなはずなのに薄暗い色彩。不穏な効果音。細やかな表情変化をしっかり切り取る、焦りのないカメラワーク。ドラマを映像がしっかり追いかけ、支える回だったと思う。
アバン、母親に抱きつかれたいちかは抱擁を返せない。『親』であり続けなかった母の不在がぽっかり開けた孔が、不在故に『娘』であり続けるしかなかったいちかの弱さが、抱きしめられれば噴き出してしまうから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
いつも笑顔でいなきゃいけないのに、子供のように抱きついたらきっと、泣いてしまうから
そういう判断をする子が、ようやく泣けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
今回はそういう話である。プリキュアを続ける中で蓄積されていく軋みを、ようやく開放するような、思い切った施術だったと思う。
圧倒的に正着で、僕が見たい話だった。宇佐美いちかは、ようやく泣くことが出来たのだ。それは哀しいことじゃない。
こういう親子関係、黒いキラキラルとの向き合い方を描いた後に、『わたしを愛しているなら、沢山人を殺してね』と提案/脅迫してくるノワール-ビブリーの関係が続くのは、空恐ろしくもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
宇佐美家のような『家』もあれば、あの灰色の空間のような『家』もある。『家』は無条件に暖かくはない。
お互い愛していても、無意識の、あるいは意識した歪みが蓄積され、悲しみを破裂させるしかなかった宇佐美家。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
愛を装い、己の我欲のままに寂しい子供たちを救い、弄び、使い捨てるノワール。明言しない分だけ、正義と悪の対比は鮮明で、恐ろしい。ノワールの生き様を否定しきれないからだ。
いちかが笑顔の仮面を被って我慢したように、子供は愛を欲し、そのために己を怪物へと変じていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
そういう悲しい自己進化を元に戻すためには、思い切った施術が必要になる。それをやったのが源一郎であり、無辜なる怪物になりかけていたのがさとみだ。そういう歪みと修復力ひっくるめて『家』である
ノワールが運営する『家』もまた、根っこの部分では宇佐美家と同じ愛情と歪みを共有している。怪物はどこにでもいるし、その背中には英雄が癒着している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
どちらの面が表に出るかは、全てそこにいる人々の決断と倫理、信念と感情にかかっている。より善いものに近づいていく重い責務が、そこにある。
キラキラルと、黒のキラキラル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
正義と悪とが同じ根っこを抱えていて、プリキュアだっていつでも人倫の奈落に落ちていける自由があることを、今回の重たく、一点に収束した物語は抉ってきた。
今後この同質性を活かして話が進むかはわからんが、そうなったらとても面白いと思う。
愛を濫用することも、心に降り積もる黒い雪に支配されることも、とても簡単だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
しかし己の意志でそれを跳ね除けるからこそ、英雄は偉大だ。決断こそがヒーローの資格なら、やっぱりプリキュアは誰だってなれる。でも、誰もなれないほどに決断と前進と変化は難しい。とても難しい。
さて、来週は新製品販促も兼ねてのビブリー回である。誰もが抱え込んだ寂しさ、救えなかった弟の代用品。黒い雪は既に、みっしりと降り積もっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
それをどう雪かきするのか。プリキュアアラモードの底力が試される会だと思う。良い話になってくれると、僕はとても嬉しい。今回そうであったように
つーかビブ公は『圧』のあるデザインと設定と立ち回りしてるんで、それを活かすような話でキッチリ盛り上げ、使い切り、新しい道を示してやって欲しいのよ。俺あの子好きなの!相当!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月10日
激しく興奮してしまいましたが、シエルのキャラ立ちにも直結するエピソードだと思いますんで、期待大ですマジ。