宝石の国を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
怪奇なる肉の種族、美麗なる骨の種族、貪狼たる魂の種族。明かされる世界の真実と、押し付けた愛情の負債。波の下の廃都へと誘う美しい女王の裏切りが、三度燐葉石を砕く。
世界設定とキャラクターの内面に、静かに淡麗に、あるいは俗気たっぷり賑やかに切り込んでいくエピソード。
今回も大変面白く、美しく、驚かされるお話であったが、先週ドロドロで喋る口がなかったフォスが、ダイアログの相手となる王を得てたくさんのことを語り、語られるエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
シンシャとの約束を内心どう思っているかとか、世界の成り立ちとか、骨肉の争いと融和とか、色んなものが見えた。
まずフォスの内面に潜ってみると、思いの外自己評価が低く追い詰められていた。『賭け』と分かっていながら王の口車に乗り、海底まで歩いていってしまうあたり、普段のおどけた馬鹿騒ぎは嘘ならずとも、彼の全てでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
身体を構成する宝石と同じように、傷つきやすい心を誤魔化し生きているのだ。
宝石人は食べず、衰えず、死なない。約束は劣化せずに、永遠に胸の中に残り続ける。その重たさはアホのフォスでもしっかり分かっていて、そんなものを飛び越えるくらいシンシャの孤独な夜は痛ましく、美しかったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
衝動赴くままに未来を願ってしまったフォスは、その重たさに追い込まれている
約束してしまった以上、シンシャに未来を作ってあげなきゃいけない。世界のどこにも有用性を見いだせないフォスにとって、金剛先生に提案をすることだって一大決心だったはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
だがフォスが見つけた世界の歪みは、世界を導くグルにも解決できない時間稼ぎ。大人に相談すれば解決する問題ではない。
学者先生として真面目に実績を積み重ね、権限と信用を手に入れてたらシンシャはどんどん苛まれる。もし王の提案が嘘で砕かれたとしても、無用な自分はそこまで価値のある存在じゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
やけっぱちとも違う、300年蓄積された焦燥感がフォスを海に連れ出す。水面に歩いて入る仕草は、入水を思わせる
キラキラお姫様の外郭にドロリとした嫉妬と羨望、無力感を詰め込んでいたダイヤと同じように、フォスもまた複雑な感情を道化の仕草に隠していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
それを話せるのが、異種族である王だというやるせなさも引っくるめて、元気な主人公の陰りがよく見え、陰影の付く対話だったと思う。フォスは可愛いなぁ
ラスト衝撃の裏切りを考えると、王はそういうフォスの柔らかい部分に漬け込んだ、とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
しかし彼女もフォスやダイヤと同じ情念を溜め込み、道化の仕草に隠す生命体。弟恋しさと、機縁で出会った奇妙な道化。愛着二つを天秤にかけて、長く温めた想いが勝ったのだと思いたい。王好きだからね。
王とフォスの凸凹道中は、弾むようなアクションと斎藤千和の好演も味方し、見ていてとても楽しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
軽妙なダイアログそのものも良いし、金剛先生のマジメ面を活かして、ワーギャー喧しい漫才を見るのも素敵だ。だが、道化芝居の合間に見える優しさと愛情が、一番心に染みる。
責任感と寄る辺なさに追い込まれるフォスに、王がかけた言葉、やったアクション全てが嘘だとは思わない(思いたくない)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
宝石の国の草が栄養にならず、死にかけていたのもある程度真実だと思う。生物の本性を剥き出しに、フォスの眼前で命を貪り食う美しい捕食。それほどに、飢えていたのだと。
もし楽しい珍道中全てが嘘だとしたら、王の優しい態度/演技がフォスの無邪気な願いを呼び覚ましたのも、嘘になってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
もともと一つの存在であったなら、争わず一つになることも出来るはずだ。悪態をつき合い、弱さを背負い合い、友愛で繋がり合う、とても人間らしい未来。子供の夢。
魂だけになった月人は、他者を押しのけて己の所有欲を満たす貪欲に支配されている。肉の育ったアドミラビリス族は、血縁の情に縛られて友情を裏切る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
滅亡し再誕したとしても、ヒトの業は払われない。月面にある蓮の国も、海底下にある滅んだ都も、地上にある宝石の学園も、情愛の鎖に囚われている。
滅んだ人類種が骨と肉と魂に別れ、地上と月面と海底を分け合い暮らしている。見事な奇想だし、三つに別れ混じり合う/拒絶し合う種族の行く末を見たくなる良い設定だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
月人の魂を砕いて取り込んだら、彼らとも対話可能になるのだろうか。そしてそれがまた、宝石の国でフォスを孤立させるのだろうか。
王と対話可能になったフォスの個性が、ノイローゼとして扱われ孤立を深める遠因になるのは、なんとも皮肉だなぁと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
待ち望んでいた個性は、巧く扱わなければ無用を通り越し、自分を傷つける。ダイヤの硬度と同じだが、彼女には愛くるしさと面倒見の良さがある。ひねくれフォスには、無理な芸当だ
でもフォス(もしくは宝石人みんな)は優しくて、裏切りを可能性としては認識しつつ、王に故郷を見せるべく海に潜る。骨と肉と魂が融和する未来を夢見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
それは無慈悲な鏃の前に叩き潰される、無意味な夢想かもしれない。でも、とても綺麗で大切なものだと思う。世界も彼も、大事にして欲しい。
主役が惑い、優しさを餌に美しい罠に飛び込む旅路の脇で、サブキャラクターや世界もよくよく描写されていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
ユークの裸身があまりに美しくて、やっぱすげぇなこのアニメと思う。彼女が口にする生物と無生物の差異が、フォスと王の旅路を照らす明かりになる構図は、なかなかクレバーだ。
虫のように危機意識を高めるでも、植物のように変化に鋭敏でもない。肉の持つ生死の宿命を、知識としては理解しつつ体感できないことが、フォスを死地に追い込んだりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
飢えの切実を実感できないフォスのアホ面と、全身で光を食べて『美味しい』と口にするユークの裸身の対照が面白い。
このアニメ引いた絵をすごく効果的に使っていて、絵画的にバチッと決まったレイアウトで締めてくる。今回で言えば窓縁のユーク、海をゆく二人、そして廊下で対話する金剛先生とフォスだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
高い天井が印象的な廊下で、フォスを導く立場にいるはずの先生は影の中に居続ける。何を隠しているのだろうか?
冒頭の瞑想/夢で月人に迫られ、救済を請われていた(ように見える)先生。王の素性も知っているようだし、宝石の国の指導者(こう言って良ければ『王』)として、無邪気な生徒とは違う知識、過去を持っているようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
となれば、興味は『何故それを隠しているか』に向く。月人との関係は?
ここら辺の疑問は今後の展開の中で拾われるだろうし、フォスが変質していく中で彼の内部に染み込んでいく問題かもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
無邪気で優しかったフォスは、また脚を砕かれ、それを補う『何か』を注入されて変質してしまうのだろうか。身体構成要素の変質による、精神の変容。サイボーグの溶ける心。
金剛先生が飾り気のない袈裟を着て、純粋なる『魂』と語られた月人が装飾多めな天部の格好をしているのは、個人的に面白い。仏は格上がるほど、服装質素になるからなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
先生がどのくらいの覚者かは分からんが、月宮殿で神を気取る月人に救済をすがられる程度の功徳はあるようだ。
先生が白い月人の衣を脱ぎ捨てて、僧衣と袈裟をまとって地上に堕ちたのはなぜか。過去月人とどういう因縁があったのか。なぜ宝石人を愛し導くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
色々気になるところだが、まずはまーたバラバラになった主人公と、裏切りの女王の今後である。ほんとスナック感覚で欠損するな、このフォス。
フォスが笑顔の奥に隠していた劣等感と責任感は、すごく胸に迫った。人間みんなそういうもんを押し隠しているもんだし、隠さなければ生きることは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
食べず、死なず、衰えず。残酷な宝石の宿命をインクルードしていても、宝石人はやっぱヒトなのだ。そう思える話をちゃんと描いてくれた。
そしてそういうフォスの柔らかさに、戯けつつ優しく付き合ってくれた王のことも、とても好きになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
既に情と情に引き裂かれての決断であるとは見せているが、今回見せた優しさが嘘ではないと、次回ハッキリ知りたいもんだ。嘘なら嘘で、人間味を感じられて良いとも思うが。
宝石、仏、肉塊。ヒトの形を捨て去ったとしても、残骸のように、あるいは奇跡のように残る人間性のかけら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月28日
むしろヒトが滅んだ世界だからこそ浮き彫りになるヒューマニティがよく見える、キャラと世界に切り込んでいくお話でした。いやー面白えポスト・ヒューマンSFだな。来週マジ楽しみだ。