宝石の国を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
魂は智慧を持たず、肉は情に引きずられ、骨は無力。三種に分かたれた人類のカルマが、火と崩壊を連れてくる。
アドミラビリス族との別れ、欠損とリハビリテーション。記憶を燃料に変える系ヒーロー・フォスフォフィライトの新たな旅立ちを、美しく妖しく描ききるエピソード。
というわけでフォスはまーた砕かれ、異質なものと混じり合い、無垢なる自分を喪失した。文法が完全”テッカマンブレード”で、シンシャの切ない純愛描写もあって、超ろくでもない未来しか見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
アナログな手段で瑞雲に引きずりあげられるフォスは、『この秋最大の水揚げ』って感じで面白かった。
足が砕け、顔面が破壊され、凄く痛ましいはずのフォスは、グロテスクで美しい。人間の形をしていながら、血も涙もない美しい存在。その断面は、破壊してみなければ楽しむことが出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
両足を欠損したフォルムを『美しい』と直感する背徳に、『ああ、自分は月人なのだな』という思いを強くする。
そんな月人は八割自滅でぶっ殺され、肉の姉弟は自由意志を取り戻した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
魂だけになったら、人間は他人を火で炙るし、約束は守らないし、愛の力を侮ってボコボコにされるし、醜い部分ばかりが目につく。
愚かしい自滅は、浄玻璃の鏡に照らされた俺達の姿か。説話的だなぁ。
存在のドス黒さと、仏教美術を荘厳に引用したスケールが噛み合ってないところは、月人の面白いところだ。拘束具すら五色幕だしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
フォスもシェル(蝦蛄)とアガート(瑪瑙)で強化されたし、本来の意味での七宝を体現する存在になっていくのかな。瑠璃と玻璃をどっから取ってくるか…味方の死体か。
肉の種族は身内への強い愛(あるいはおぞましい食欲)で拘束を解除し、敵を皆殺しにして自由を手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
アクレアツスの、芝居がかった立ち方と喋りがとても良い。姉への愛と敵への憎悪に塗り固められた、ボルツとはまた違った黒の王子。靭やかな肉食獣の強さを感じさせる。外見ゆるキャラだけど。
情と理秤にかければ、情が重いが世の情け。楽しかったドタバタ道中は遠くに去って、王は弟の手を取ってフォスのもとから去っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
動物なんてそんなもんだ、と割り切るには、あまりにも切ない畜生界の道理、修羅界の掟。
しかしフォスの優しさと許しは、けして無駄ではない。
肉親恋しの浅ましさにとらわれているだけでは、自分たちを迫害した月人と同じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
ウェントリコスがそれに気づけたのは、キモい肉相手にフォスが分け隔てなく接し、騙され砕かれてなお許す寛容を示したからだろう。
己を無用と下に見ているフォスだが、やっぱり彼はとても偉大なことをしている。
形にならないフォスの美徳、愚かである特権は、大きな共同体も動かす。というか、宝石人は根本的に美しい存在なのだ。何しろ、下らない魂がないからな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
無用の存在だろうと必死で探す宝石人達の優しさは、見ていて胸が動いた。劣等生だろうと、バカな無能だろうと、仲間は仲間なのだ。
そんな共同体ですら処理しきれないシンシャも、フォスを仲立ちに繋がったダイヤに促され、情報を手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
無用不要と切り捨てたものが、自分の胸に深く刺さっていて、なかなか抜けない。夜闇の中で逡巡する姿は、痛ましく愛おしい。マジ純愛。あとダイヤの恋愛脳ムーブが可愛いすぎる。
事前にウェントリコスがフォスを抱きしめるシーンが印象的だっただけに、想い人が流れ着いてもただ突っ立ってるだけで、抱擁すら許されないシンシャの業は見てて辛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
愛すれば砕けてしまう。愛さなければ苦しまないのに、愛さざるをえない。シンシャに出来るのは、ズルズルと愛を引きずることだけだ
毒を撒き散らして周囲を傷つけるから、宝石の国で仲間を待って事情を離せないシンシャ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
無用の存在ゆえの焦りで共同体を振り回し、たくさんの迷惑を生み出したフォス。
二人の道はシンクロしているように見えて、微細にズレていく。大切な記憶は失われ、フォスはとても早く走れる足を手に入れた。
白黒縞々の新しい足は、フォスからジェイドの記憶と学者先生の仕事を奪い、新しい可能性を与えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
過去の知識を収集し、蓄積する呑気な夢は破棄され、速度が武器となる領域…月人との戦闘という『宝石人の普通の仕事』が、フォスの得意領域になるのだろうか。夢がかなって御目出度う。少し寂しいね。
戦えば、宝石は砕かれていく。その時失われるのは記憶であり、魂であり、価値観だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
フォスは裏切りの種族が残した、情と交流最後の残滓を身体に組み込んで、新しいフォスになった。そこで失われたもの、手に入れたものは、見事な予感の演出で期待を高めつつも、実際描かれるのは来週以降だろう。
長く細く新しい足が、アン・ドゥオールの靭やかさでスッと伸びる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
何も出来ない無力を、一方的な暴力と嘘で思い知らされたフォスが手に入れた、新しい牙。無用な存在がようやく手に入れた存在意義を前に、弾む心が全身で伝わってくる、良い演出だった。
術着の丈がマジギリギリで、えっちだったなぁ
僕はここまで展開されたフォスの無邪気さ、アホさ、優しさがとても好きだ。彼が子供のように純真に、奇妙で美しい廃墟を走り回ってくれることで、この作品に入り込む入口になってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
それが、嘘と暴力で傷つけられ、記憶と両足を失い、蝦蛄と瑪瑙で補填された今回、決定的に損なわれた感じがある
子供に『子供らしくいてくれ』と願うのは、幼年期をすでに終えてしまった大人の身勝手な言い分だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
無力であること、無用であることに子供は常に傷ついているし、画面の外からオッサンが願うほど、頭も悪くない。何者かになりたいと願う思い、世界で居場所を見つけたいという望みが、いつも子供を苛む
フォスは砕かれ失うことで、念願の武器を手に入れた。居場所がないなら、実力でこじ開けるしかない。それが戦闘の危うさに身を投じる事とイコールでも、それは喜ばしいことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
フォスは傷つく自分を悲しまないかもしれない。そう思う心は、肉体に内包されるインクルージョンと一緒に消えていく。
画面外から勝手に、フォスのイノセントが蒸発することを嘆く僕の気持ちと、シンシャやフォスという劣等生も等しく愛そうとする金剛先生のスタンスは、奇妙にシンクロしているのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
愛子が望ましく育ってくれることを望みつつ、意思と尊厳を認めるからこそ、束縛はしきれない。
月人のように、己の身勝手な美意識で生きる意志を押さえつけ、捻じ曲げる方向に、金剛先生は進まない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
大地をビリビリと振動させ、憤怒相を露わに喝破し、菩薩のように優しく抱きしめる。導き、自由にさせる。綻びはあるとしても、何かを隠していても、その姿勢はとても立派だと思う。
こんな感じで色々な切なさと変化を詰め込みつつ、過剰に重たい印象を受けないのは、さすがのムード・コントロールだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
ジェイドのリアクション芸とか、軽妙なダイアログとか、細かくクスッとされて沈鬱さが抜ける。
世界と宝石人の美しさに、ハッと目を見開いて、重苦しさが飛ぶ。
そういう細やかな映像調律を忘れないことで、この難解なポスト・ヒューマンSFは『普通に面白い』アニメになっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
非常にサラリと楽しくやるので見落としてしまいがちだが、それには凄まじい技量と解析眼、『普通に面白い』ものを視聴者に届けようという志がいる。感服すべき姿勢だ。
美麗と残酷、重さと軽味。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
相反する要素を絶妙のバランスで盛り込みつつ、物語は進む。
愛するものに裏切られても、砕かれても。愛するものを抱きしめられなくても。人生は続くし、風は吹く。悲惨な状況でも楽しいことはあるし、そればっかりで乗り切れるわけでもない。
色んな事が内包(インクルージョン)された人生の妙味を、人のあり方を外れつつ、超純粋に人間的な宝石人を通して描く。奇妙で、豊かな味わいだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
冷たい宝石を描いてるはずなのに、そこには痛みと温もり、『僕らの物語』があるのだな。やっぱそこなんだと思う、形ではなくて。
文字通り、自分の足で世界を切り開いていく権利を、フォスは獲得した。彼のリハビリテーションが、宝石の国という社会、そこに住まう人々の思いやりに支えられている描写が、とても温かい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
そしてその体温の奥には、記憶の消滅と戦いの宿命が、冷たい炎を散らしている。残酷と美麗は両立するのだ。
敵と対話し、交流し、変化し忘却するフォス。夜に置き去りにされ、胸に突き刺さった約束だけを信じて待つシンシャ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月4日
二人の変化と不変が今後どう交わるのか。フォスを支える、肉の種族の忘れ形見はどのような異変をもたらすのか。
一つの季節が終わり、新しい物語が待つだろう次回、とても楽しみです