クジラの子らは砂上に歌う を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
砂の海は政治の大会。揺り籠に閉鎖されたまま自沈する道を拒絶した若人たちが、船の舵を握る。明らかになる外なる世界、不明なる航路。道未だ明らかならずとも、鯨は新たな道へと泳ぎだす。
長老会の自殺路線を明確に拒絶し、新世代が船の舵を握るまでのエピソード
色々設定が出てきて、泥クジラの体制が一新されるお話であった。実質の所、スオウを旗印にした若年層によるクーデタだが、無血革命となったのは良かったのか、悪かったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
どちらにしても、感情を抑圧し、泥の胎内で眠っていた過去とは決定的に決別する道を、生存者たちは選ぶことになった。
まず設定から整理していくと、ヌースは感情をエネルギーに船を動かす超兵器である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
ヌース・ファレナは感情以外(おそらく印持ちの生命)を啜って動くため、ハードウェアによる感情剥奪を前提とした国家ではなく、慣習や文化というソフトウェアによって感情を抑える方向を洗濯し、現在に至る。
砂の世界は何故、ここまで感情を忌避するのか。砂だらけになってしまった原点に、感情が絡んで大惨事だったのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
まだまだコア・ミステリは残るが、ファレナの異質で牧歌的な文化、かわいそうなサミが生贄の羊のように死んでいった理由には、少し納得が行った。帝国的な生き方を拒絶した結果か
目の前で流れたリコスの血一つで、長老会の自死の願いは簡単に破綻してしまう。良くも悪くも、人間的な情に溢れたファレナの社会は、鋼鉄の意思で人間を排除することが難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
『弓でヌースを撃つこと』と『自沈してみんな死ぬこと』がイコールで結ばれてない内は撃てても、繋がれば撃てない。
ハクジの爺さんのしょんぼり加減を思うに、帝国から分離された第一罪人世代は残っていなかったのかなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
伝承として、自分たちが罪人であること、いつか帝国が追いかけてくること、そのときは綺麗に死ぬことを、実感のないまま伝えられてきた。
が、目の前の命の躍動を押し切れるほど強くなかったか。
ヌース・リコスというハードウェアを離れれば、無感情なアパティアだったリコスは、赤い血を流す人間に戻ってしまう。その体温を無視できるほど、ファレナの住人(の殆ど)は残酷に鍛えられていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
チャクロが指摘した変化の可能性、スオウの理想主義に共感するのも納得である。
腐った楽園唯一の暴力装置として、片目を潰しつつクジラの反乱分子≒許されざる感情を押さえつけてきただろう、シュアン団長。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
彼はあの船で唯一、自分の選択として自沈を望んでいた気がする。リコスが置き去りにした感情剥奪のハードを、解放の一手として望み続ける存在も、クジラにはいる。
狭い壁の中に閉じこもり、『こんな世界はどうでもいい』とヤケになっていたオウニは、シュアンと殴り合う内に『死にたいのはお前だけだ。俺は活きたい』と実感するようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
それはスオウの新しい選択と同じだから、印持ち代表として支持を表明する。アウトサイダーの支持も得て、巧い所に収まった
ファレナの前の攻防で、自分の願いと未来への希望を吠えたチャクロ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
傀儡として持ち上げられつつも、自分の意志と言葉で未来を見据えたスオウ。
外界への夢が砕かれ、それでも生きたいと願う自分を社会と和解させたオウニ。
主役勢が軒並み、大きなクジラの先行きに影響を及ぼす形となった。
カビ臭い伝承でも、微睡みのようなヌルい慣習でもなく、己の中で脈打つ生存衝動に従って、戦い前に進むことを選んだクジラ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
彼らの希望は『帝国だけが世界の全てではない』という未明にあるわけだが、実際『敵の敵は味方』なのだろうか? 現状、情報の入口は一兵士たるリコスだけだ。
今回たどり着いた第三の道は、隔絶された楽園としてのクジラを、責任と実力と意志を持つ一政治主体へと変貌させる決断だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
様々なアクターが渦巻く政治の海へ、泥の母胎から決別したクジラは泳いでいくことになる。そこはリコスに/が見せた優しさや希望とは、違う魔物がいる海だろう。
長老会の根拠なき支配は脱し、権力者層は緩やかな共感で連帯している。既存秩序に反旗を翻すアウトサイダーは、カリスマのあるオウニを代表に新権力を支持した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
一見明るく見えるが、実際に新体制が世界と接触したわけではない。薄暗い海の中で、鯨はどれだけ踊れるか。楽しみであり不安でもある。
世界が砂に満ちていて、ヌースを動力とした船社会以外に生存の道がないのだとしたら、外界は軒並み感情をハードウェア的に排除している世界だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
社会を成立させている根本が共有できない相手と、どう意志を伝え強調するのか。リコスのように、個人単位で友誼を作っていくのか。
それとも、帝国だけが『感情を燃焼させ、社会を駆動させる』形態を選んでいて、別の国家ではファレナのような生き方を選んでいるのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
どちらにしても、外の世界は食うか食われるか、牧歌とは程遠いリアリズムで動いているだろう。鯨がようやく獲得した意志が衝突した時、戦争が起こる。
まずは四日後の虐殺に生き残り、『殺されてはやらない』という意志を示す必要がある。世界の謎が明らかになり、ヌースさえ潰せば戦争に勝てる道が見えているが、戦争を知らなかった優しきファレナ住人に、大将首が取れるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
未来のために現在の命が潰れる不条理に、どれだけ耐えられるか。
約束された難事にも、そこを超えた先の旅路にも、希望と暗雲が立ち込めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
しかしどちらにせよ、クジラの子どもたちは座して死ぬのではなく、暴力と交渉を両手に握りしめ、前に進んで生き残る道を選んだ。ごくごく当たり前の、国家政治の道だ。
ファレナの特異性…感情があり、血の通った相手として相手を認識できることは、今回ポジティブな方向に働いた。主役たちが自分の意志で道を定め、ヒロインが死なずにすんだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
その特質は、戦争という場、その先にある政治の場で、どういう働きをするのだろうか。個人的にはその見せ方がとても楽しみだ
スオウが疑ったように、世界はまだまだ謎を隠している。流刑罪人たちの起源、感情抑圧を前提とした砂の世界の原点。分からないことだらけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
それとは別に/関連しつつ、クジラのリアルな生活と政治がある。戦いの中で流れる血は、神の視点から謎を楽しむ僕らのものではなく、キャラクターのものだ。
そういう実感は大事だと思う。クジラの代表として、スオウが舳先にたった時の赤い腕。サミの形見である布が、泣き虫兄貴の決断を後押しする。そこには哀しさと決断があって、人間がいる。とても大事なことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
そしてそういう、小さくて大事な個人の感情を食い殺して、戦争と政治の装置が衝突するのだ
今後、クジラ内部での衝突も描写されるだろう。超意味ありげに画面に写った黒い双子、アイツラぜってぇろくでもない。(メタ読みからの偏見コンボ)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月9日
今は希望に輝く『帝国以外』も、どういう存在か分からない。そういう不安に、鯨は身を投げた。まずは戦争だ。子供らの勝利を祈りたい。