宝石の国を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
失ったものと手に入れたもの。蝦蛄と瑪瑙の縞々俊足を手に入れ、フォスは遂に夢の見張りへと赴く。何事もなく続く平穏と、予兆なき破綻。無垢と無力の果てに、何が宿るのか。
フォスのセカンドキャリア挑戦を追いつつ、宝石の国の様々な表情を切り取り直すエピソード。
というわけで、フォスは念願の戦闘(に使えるかもしれない)能力を手に入れ、宝石の国のノーマルな仕事、見張り戦闘員にジョブチェンジした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
バイト張りたての高校生みたいなプルプル加減とか、溢れるフレッシュさが周囲に知らず潤いを与えている描写とか、相変わらず感情をすくい取る筆が鋭い。
前半は職場に行く前の地ならしで、イエローダイヤモンドお兄様の憂鬱とか、金剛先生の胡散臭さとかも切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
同じスピード型のイエローお兄様の『速さ』を、3Dモデルでしかやれない黄色い残光の演出で印象づけておいて、フォスが手に入れた新しい強みにつなげる運びが見事だ。
最年長のベテランであるイエローと、ポンコツ末っ子であるフォスは『速さ』で繋がっている。その制御は出来なくても、いつか歴戦の勇士と同じ領域まで『強く』なれるかも…という期待感が、この重ね合わせで高まってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
そしてそれを計画的に蹴っ飛ばして、後半の失敗に繋げるのも巧い。
もう一つ、イエローとフォスが繋がっている部分がある。それは『金剛先生が好きだから、役に立ちたい』という心だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
イエローは長い戦い、守れなかった自分、失われた兄弟に疲れ果てて、戦う意味を見失っていた。最も新しい戦士であるフォスが、その目に見えない摩耗を拭い去る。
世には『ダイヤモンドは砕けない』と言われるものの、心ある宝石は喪失に傷つき、哀しみに曇る。だからこそ、それを晴らす交流が必要になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
武器一つ満足に持ち上げられない、相変わらずの無能っ子であるが、フォスは無意識に、いちばん大事なものを世界に放散している。そのありがたみ。
皆川純子ボイスが飄々と麗しいイエローお兄様だが、硬い表皮の奥には分厚い憂鬱と、諦めきれない慈しみを両立させている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
自分を守って砕けたジルコンを、優しく撫でる手つき。己の起源を知らず示してくれたフォスへの、驚きと感謝。
細やかな仕草、繊細な表情の芝居が、キャラクターの陰影を深く描く
イエローの豊かな描写を通して、フォスが無意識に発する光がどれだけ強く、尊いものかはよく分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
金剛先生が望むように『ただ、いるだけでいい』のだが、当の無用物たちはその現状に我慢できない。愛する人の役に立ちたいと願うからこそ、戦場に立ちたいと焦り、無用な自分に苛立つ。
そんなフォスの一人相撲は、マイペースな蒼紫のハリハラ・アメシストを鏡にしてよく見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
『伊藤かな恵は大量生産型少女をやる宿命でもあるの?』と疑いたくなるキャスティングであったが、ちょっと退廃的な透明感が素晴らしかった。システムでーす。
ここまでフォスは、宝石の国のミソッカスとして、戦場から遠い場所にいた。彼を通じて世界を見ていた僕らにとっても、見張り任務は未知の領域だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
今回のアメシストとの職場体験は、フォスの緊張と僕らの好奇心、両方をうまくシンクロさせてくれるカメラワークに満ちている。
フォスが初体験する朝礼は、他の兄弟にとっては日常のルーチーンであり、フォス(と僕ら)にとっては『世界の知らなかった真実』だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
そういう驚きが積み重なって、無用物が社会に居場所を見つける喜びも真に迫って視聴者に届く。不老の彼らに相応しい形容か判らんが、『子供が大人になる快楽』か。
しかし日常とは穏やかで退屈なもので、長閑な日差しの中で蝶が舞い、海月が座礁し、時間が過ぎていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
この緩やかさも、何者でもないことへの焦りに突き動かされてたフォスには遠いもので、つまりは僕らには未体験である。そして、とても良いものだと感じる。
虫を伴とし、ただ流れる時間の中に身を置く。楽土の倦怠にフォスが三日で飽きる頃、戦士本来の仕事が来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
二心一体のアメシスト剣術は無双だが、強悪なる月人の罠には気づけない。あっという間に空が敵で埋め尽くされ、友が砕かれ略奪される。宝石の国のもう一つの現実を前に、フォスは動けない。
フォスが呆然と体験しかけ、ボルツがすんでのところで救済した略奪は、イエローの心を砕いた過去と響き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
フォスが憧れ焦った戦功の輝きは、つねにああいう残酷さ、あっけない現実の切断面と繋がっている。その果てにいたイエローがフォスの初々しさで癒やされ、その初心がフォスの足を止める。
新兵とベテランを両極に配置し、戦闘国家としての宝石の国を描いていく今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
フォスは憧れていた職場でもやっぱり無能で、立ちすくみ何も出来ないわけだが、ボルツはそんな無能に怒る。それは『ただいるだけでいい』とフォスの未来に期待しない優しさとは、真逆の憤怒相だ。
ボルツが何も出来ないフォスに怒るのは、何か出来るようになって欲しいという期待の裏打ちなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
愛するダイヤにそうであるように、怒りという形でしか愛情を表出できない勇ましさが、彼を最優の戦士として研ぎ澄まさせている。その不器用な強靭さが、僕はとても好きだ。
何回見ても、宝石人が微塵と砕かれ、輝く切断面を晒すシーンがショッキングなのは良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
失われることの痛み、それがけして途切れない不条理への怒りが、視覚を通じて即座に燃焼する。その炎が、優しい宝石人達を戦いに導く源泉で、僕らはアメシストの残骸を見てそれを共有できる。ぜってぇ許さねぇ。
そんな宝石人の愛と犠牲を一心に浴び、愛を返す金剛先生。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
フォスが失われた記憶からサルベージした『ニンゲン』への露骨な反応で、嘘つくのマジ下手なのがバレバレであるが、そういうところも好きだよ。
宝石魔術で月人基地をふっ飛ばした時の『哀れな…』は、誰に対する哀れみなんだろうか。
強欲むき出しで穢土に介入し続ける月人か、砕かれ世界に散乱するアメシストか、無力に打ち震えるフォスか。そういう衆生一切に、完璧な解決策を用意できない自分自身か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
そこら辺は今後、ストーリーが進展する内に更に見えるだろう。フォスの変化と合わせて、気になるところだ。
イエローお兄様が三千年耐え、心をすり減らしてきた無力感。ポンコツ新兵フォスフォフィライトは、憧れていた戦場の残酷さで思い切り殴られ、呆然とする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
ショックを乗り越えた後、フォスはどうするのか。イエローのように、淀みを奥に仕舞い込んで仲間を守る、偉大な戦士になれるのだろうか。
フォスの憧れと焦りを推進剤に、戦闘国家としての宝石の国に僕らも滑り込んでいくエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
あくまで軸足はフォスにあるのだけども、ポンコツ末っ子に色々言いつつ愛おしく思う兄たちの姿も、引いたカメラで豊かに切り取っていた。こういう横幅の広さ、マジ強い。
自分の無力、仲間の痛み、戦場のリアル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月11日
初仕事に浮かれ緊張していたフォスにはキツいイニシエーションになったけども、持ち前の能天気さをいい方向に活かし、前に進んでほしいもんだ。
そして季節は冬。また様相を変える宝石の国で、どんな事件が起こるのか。非常に楽しみですね。