3月のライオンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
海底に淀む檻のように、ねっとりと渦を巻く想像力の欠如。盤上で、あるいはボールの明け渡しの中で、確実に交流する真心。静かに寄り添う零くんに吐き出された、怒りの激流。ライオンは牙を溜めて、嵐の中で撓んでいる。
ドロリと重く、時に爽やかに。現実は続く。
というわけで、いじめの渦中のリアリズムを、時にポップに、時に重たく描く振幅の激しい回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
いじめっ子女子が、別に悪鬼の如き形相とかしてなくて普通に可愛い所が、なんともキツいなぁと思う。そういうわかりやすい話なら、逃げ道も簡単に見つかったのにねぇ…。
今回も水のモチーフは健在で、様々なところで顔を出し、シーンの雰囲気を反射して様々な形に変化する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
クラス内ヒエラルキーを反映して、ずっしり重たい水底。一瞬の晴れ間を映す、雨上がりの水たまり。枯れた命を宿す花瓶の水。零くんに吐き出された、憎悪と後悔の濁流。
水は命を繋ぎもすれば、喉を押しつぶして窒息させもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
ひなちゃんが教室という牢獄の重苦しさを語る時、ゴボゴボと鳴る水音が、出口のない圧迫感を巧く強調する。生々しく、答えがない。
『あるからある』としか言いようがない、人間の愚かなる一つの本性。ああ、イヤダイヤダ…。
あの牢獄から抜け出す自室があって、零くんと将棋を打てる。高橋くんが恐れず近づいてきて、野球バカの全力でボールと気持ちをぶつけて、受け止めてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
地獄みたいな…っていうか地獄そのものながらも、人にはギリギリ恵まれている。そこがフィクションの嘘であり、救いでもあるか。
零くんは林田先生のアドバイスをしっかり刻んで、とにかく話を聞く。教室での辛さ、胸に渦を巻く憎悪を下手に捻じ曲げず、ナマのまま吐き出せたのは、ひなちゃんにとって良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
モモちゃんへの反応見ても、周囲を気遣って表に出せない子だからさ…溜め込むとちほちゃんみたくなるし…。
男たちの不器用な救助で、ひなちゃんに一瞬の息継ぎをさせつつ、そういう抜け穴がなかったちほちゃんは容赦なくぶっ壊している所が、残酷というか正直というか、嘘のないところだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
そうやって壊れちゃう子もいて、そこに痛みを覚えない加害者もいる。殴り殺しても解決しない、出口なしの迷宮。
クソバカ将棋人間とか、クソバカ野球少年とか、バカなオスガキの不格好な真心を正面から受けて、しっかり返してくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
ひなちゃんは相変わらず天使なわけだが、同時に憤怒を溜め込んだ悪鬼でもあって、その両方が同居しているのが人間なのだろう。キレイなままでいないからこそ、ひなちゃんは綺麗だ
行き場のない怒りを反芻する時、不気味な色合いに明滅し揺れる世界の演出が、とても良かった。毎回尖った演出を考え、実際に撮影して盛り込むアヴァンギャルドな挑戦は、ほんと凄いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
それがちゃんと機能して、キャラの感情とドラマを視聴者に伝える武器になっている所が、何よりすごい。
アレだけの歪みを抱えつつ、ひなちゃんは正しく、暴力が解決にならないことを知っている。ひなちゃんが欲しいのは整復であるが、殴っても自分の怒りが抜けて自分を殴り返すだけで、ちほちゃんが戻ってくるわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
そういう意味で、『忘れない』ことを選んだ高橋くんは、やっぱ強いし正しい。
心の中では、見て見ぬふりをし、『忘れた』ふりをしている同級生たちも、当然『忘れてはいない』のだろう。だが、それを表に出せるほど凡愚は正しくも、強くもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
そして高橋くんのストレートは、嫉心を煽りいじめを悪化させる。まぁ、そうなるわな、しょうがねぇ。
あそこで先生に対していじめを表面化させてでも、カッときた気持ちを消火することを選ぶ辺り、あの子ら自発的な悪というわけではないのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
自分が今後どうなるかも含めて、圧倒的に想像力が不足した愚かさ、優しくなさ。ちとアーレント的な、凡庸なる悪。ありふれた地獄の、ありふれた息苦しさ
色んな人が諦めてしまう水底の淀みを、零くんもひなちゃんも高橋くんも諦めない。水に写った青空のように眩しく、美しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
そうありたいなぁと願いつつ、僕はその眩しさを恐れて目を背け、心に淀む濁流を巧く制御できずに、想像力の欠如した凡庸な一撃を誰かに入れてしまう側なのだろうなとも思う。
そういうありふれた淀みは、天使たちにだってある。ボールは暴力的な速度で飛んできて、零くんの駒音は激しくなり、ひなちゃんは静かに叫ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
感情が揺れ動く脆い人間として、彼らは安楽に流されずに、正統を選ぶ。傷つけず、諦めず。水のように柔らかく、靭やかに。その水が、土に混ざって泥にもなる
善悪愛憎引っくるめて、色んな事がある人生と人間。その諸相を切り取りつつ、より善く正しい道を諦めず、いろんな事柄を通じて描いていくというのが、やっぱこの物語の基調なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
そのための触媒として、変容と実感を両立させた『水』は優れたメタファーなのだろうな。泥にも清水にもなる。
息苦しい水底。渦を巻く濁流。確かに存在する暗がりに囚われつつ、必死に抜け出していく足掻き。その先にある、清らかな色合い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
今回のお話が(も)捉えていたのは、まぁそういうことだと思う。何度でも語る必要があるし、語り切るには説得力が必要な題材でもあろう。
真実だからだ。
それを描くために、色んな表現手段と、ストレスをコントロールしつつも隠蔽しない真っ向勝負と、溢れ出す感情の表出を使う。答えの出ない無形を睨みつけつつも、物語として相手に届く表現を探していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
将棋、キャッチボール。ダンボールを抱えた相手にエレベーターの扉を開けてあげること。
想像力の欠如した暴力による、負の方向のコミュニケーションも含めて、様々なものがやり取りされ、複雑な色彩が『水』を染め上げていく回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年11月18日
重く苦しいけれども、そればかりではなく。疾風に折れない勁草の気高さを感じるエピソードは、まだ続きます。来週も楽しみですね。