このはな綺譚を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
秋深し、紅葉の赤と銀杏の黄色、薄の銀が入り交じる色彩の季節。当然女と女の感情も超絶爆裂じゃー!!!
というわけで、今回は皐のお話。ちっちゃくなったり姉に引っ掻き回されたり、色々揺れつつも不思議に落ち着いた回だった。秋らしい。
思い出したかのようにネトネトした激情が渦を巻き、肌色ノルマが乱舞する今回。パット見心が激しく動いているように見えるが、根本には秋らしい落ち着きというか、春に柚がやってきてからの変化が据えてあるように感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
相変わらずよく泣く感情ダダ漏れ女だが、すっかり頼もしくもなった。
『足元を見る』というのはすっかり悪い言葉であるが、相手の懐具合を察する眼の良さを意味もしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
柚は素直な心でお客を見て、山出しの自分の経験にも引き寄せつつ、ベストな供応をこなす。皐が感心するとおり、立派な仲居になったものだ。
そんな柚に体重を預ける形で、皐の硬くて脆い心も変わっている。ちっちゃくなっても旅館を回せる確かな腕前。歌舞音曲という感性の領域では戦えなくても、飲み込みの速さ・筋立ての巧みさという理性の領域では上回る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
そしてそういう成長や強みは、案外自分ではわからないものだ。
柚は今週もワサワサ泣いているが、それは強い感性の現れなのだろう。世界の誰も、自分すら気づかないような哀しみや美しさに心を動かし、それが溢れて涙を流す。平安朝のお姫様みてーなセンスしてるなホント。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
『あわれ』を知っているからこそ、世界に宿る神仏へのチャンネルもよく開けているのか。
今週の本命はやはりBパートで、姉妹の因縁をドタバタと取り回しつつ、ここまで見せてきた『皐の視界』をくるっと反転させて、『柊の視界』を見せる展開が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
だがそのためには、皐が脆い心を預けられる柚の強み、二人の距離を確認しておく必要がある。ので、ちっちゃくなって密着すると。
文字通り体重を肩に預けられる信頼感があってこそ、銀の薄野原で皐は涙を見せたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
『クールでデキる黒髪の女』という仮面は、春から秋まで一緒にいた二人の間では通用しない。強がりを外せる女を手に入れたからこそ、文句言いつつ姉と交流する気にもなったのかもしれない。
縮小の呪いを解くお姫様のキス。脈絡なくぶっ込んできたのでびっくりしたが、嘘のはずのそれは既になされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
別に唇を合わせなくても、心は触れ合う。弱い後輩と思っていた存在はいつの間にか皐の心に滑り込んでいて、魂を預ける相手になっていた。変わる山の景色に合わせて、人間模様が描かれる
柚はナチュラルに百合柔術が上手いので、下に入って皐を完全にコントロールしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
しかし同時にかなりの量心を奪われてもいて、姉に取られると勝手にナーバスになったり、惚れた女の涙に共鳴して号泣したりする。心に踏み込まれ奪われているのは、お互い様ってことだ。ええこっちゃ、仲良くな。
さて、そこに波紋をもたらす新たな女たち。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
皐がまとうコンプレックスの陰りを描く時、輪郭として使われていた柊がようやく姿を現す。
カリスマがあり、ハンサムな女。ピンクの綿菓子を掻っ攫われると警戒した棗が、毛を逆立てているのが面白い。余裕ヅラのくせに独占欲強いんだから…。
しかし描かれてみると風通しの良い陽性の女で、じっとりとしたイメージは皐の心の反映なのだ、と分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
巫女に選ばれたのも、九九がわからんくらいバカだったから。此花亭は流刑地ではなく、才を見込まれての栄達の舞台なわけだ。しかし頑なな皐は、そういう現実をありのままには見れない。
現実をありのまま見れない人は、幻想もまた同じようには見れないのだろう。ちょこちょこと描写されてきた、皐のオカルトセンスの無さは、現実が『こうだ』と確定させてしまう心の頑なさ、視野の狭さと同根だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
それは客の『足元を見る』ことが出来た柚の目線と、対比されている。
そんな視界バキバキ限界黒髪女だが、フワフワ女に心を溶かされて、だんだん変わっても来ている。不要な硬さを外し、ありのまま感情に任せて振る舞ってみれば、思いの外世界は美しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
紅葉、銀杏、薄、銀月。今週は秋の深山を背景美術が見事に切り取っていて、少し窓が空いた皐の心を移していた。
皐の頑なさは強みであり、個性であり、大事な皐月らしさだ。誰もが『感性』でフワフワ生きてれば、世の中楽しいというわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
かたっ苦しくて、でも正しいことを注意できる『理性』の人がいてこそ、世界は循環する。神宮も旅館も、両方大事な人生の檜舞台なのだ。
そういうバランスの良い悟りは、まだまだ皐には遠い。神聖な千早の打ち掛けを、乱雑に脱ぎ捨ててしまう未熟が、彼女の現状だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
でも、それでいいじゃないか。その奥にある柔らかいものは全く死んでいないし、皐自身すら素直に向き合えない鼓動を受け止め、泣いてくれる女もいる。
季節はうつろう。人は変わる。世界には思いがけぬ景色が隠れていて、今は見えなくても、時間が流れるにつれそれに気付く日が来るかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
自意識に雁字搦めの不自由さと、そこから離れうる可能性。両方を素直に受け止める、良いエピソードだったと思います。
恋の当て馬というか、物語の補助線として使われてた姫様も、主張しすぎず存在感の在るいいキャラだった。此花亭はあの世とこの世だけでなく、月と地球の境にも立っておるのだなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
月のニンフェットも誑かす柊を見てると、『皐はホントナチュラル系によえーな!』ってなる。生粋のズブズブ女だよ!!
明るく弾む昼の世界と、コンプレックスに向き合う夜の世界の対比も良かった。夜闇の黒に月薄の銀の対比は、紅葉の錦とはまた違う秋の色彩よな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
四季で最も複雑な色を見せるだろう『秋』を、こういう話で使ってくるのはいいなぁと思います。色鮮やかなれど、冬の足音あり。
柊は他の花が盛りを過ぎた霜月に、ひっそりと白い花を咲かせる。その先触れとして、同じ名前を持つ女が嵐のように訪れて、場を引っ掻き回す。湿り気の裏側にある真実と真心を、目に見える形にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月6日
季節の行き交いと女たちの変化が、上手くシンクロしたエピソードだと思いました。冬も楽しみだ。