美男高校地球防衛部LOVE!LOVE!LOVE! を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
TVシリーズ二期終了後を描いたOVAであり、防衛部を去っていく三年、宇宙生物、そしてヒロイック・ヒロインとしての不思議な日々を、笑いに隠した真摯な態度でファンに伝えようとする最終作である。
凄くこのシリーズらしいラブ・レターだなと思った。
さて、内容の方はいかにもファン向けの装いで展開する。ゆるーい会話、溢れる肌色、カップリングがわんさわんさとイチャコライチャコラである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
中盤のお歌連射パートの水増し感はマジ凄い事になってて、『あー、こういう路線かぁ…』と正直顔が強張った。
ところが、である。卒業怪人が出てきた(石田彰の怪演が相変わらずいい)辺りから、『卒業』という作中のテーマと、『制作上、一つの区切りとなる特別編』という作品自体のメタなポジションが妙なシンクロを始めて、凄く面白くなっていくのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
怪人は問う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
『なんで同じ毎日を繰り返さなきゃいけないんだ。卒業なんてしなきゃいけないんだ』と。
それは取ってつけたダイナシ系の文句であると同時に、キャラクターの物語が歩みを止めて、物語が終わることへの抗議にも聞こえる。
どうしてバカみたいな青春を永遠に繰り返してはいけないのか?と
終わらない物語として、進まない時間の中で永遠の青春を繰り返すことは、地球防衛部には可能だったはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
色んな作品がそのように時間を止めて、永遠を怠惰し続ける。繰り返される時間のなかで、どこまでも緩い快楽を提供し、変化なく進み続ける。でも、ご好評にお答えしてのOVAで『卒業』を描く。
それは自分たちが提供してきた美少年たちの絡み合い、毎度おなじみの脱力ギャグ、緩やかに積み重なっていく楽しい日常に、一つの意志があったことの現れな気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
それは節目なく繰り返されれば、いつか摩耗し腐敗してしまうものなのだ、という認識。終わるべきものとして終わればこそ、輝くもの。
少なくともこの作品において、閉鎖した環境で腐敗していくことの危うさは、二期のメインテーマでもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
ベッパーズが悪しき親・ダダチャとの共犯関係を断ち切り、新しい日々を生きるために『卒業』したことは、このOVAでもしっかり描かれる。
すっかり高松監督作品の定番演出と化した、引き絵で『何か』をやり取りしながらグダグダ話すシーン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
いつも五人でグダグダやってた防衛部は、バレーボールしながらくだらない話をする。☆を描きながらボールは加速していって、『卒業』を言葉にした瞬間ラリーが崩れる。あそこは予言だろう。
永遠に日常が繰り返せるという、特別な保証。無限のモラトリアムのカウンターウェイトとして、主人公たちは『変身ヒロイン』となる特権を持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
だがその日々も、最後の戦いを終え、悪役も味方も自分のミッションに帰還する中で終わってしまう。少年たちは、普通の学園生活に帰還する。
最後の戦いで『ヒーロー変身不能』『敵への共感』『パワーアップアイテムに頼らない勝利』という、英雄物語の基本をしっかり踏んでくる所が、このアニメらしいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
やや強引でお約束感はありつつも、防衛部は『特別なパワーを持った特別な存在』から『卒業』して、最後の戦いを終える。
元々このアニメは、『魔女っ子変身ヒロイン』と『女の子いっぱい日常モノ』を皮肉たっぷりに混ぜ合わせて、性別を撹拌することでエッジさを手に入れた、かなり捻りのあるシリーズだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
だけど同時に、ベースになったものへの批評意識は、コメディ作家の常として凄く鋭く、高い。
閉ざされた環の中で、特別な時間が永遠に続いていく日常/戦闘。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
その二重の特権から『卒業』していく時、有基は(これまでそうであったように)的確に主人公して、真っ直ぐにそれに向き合う。
『終わってほしくない、ずっと続いて欲しい』という願いは、有基のものであり、スタッフのものでもある。
そしてそれは、防衛部が好きな視聴者の気持ちでもあり、それをすくい上げてスクリーンに載せ、しっかりお別れさせてあげる製作者は、なかなか優しく誠実だな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
ここら辺の根本的な真面目さが、おバカエンタメをガハハと笑うためには、絶対に必要な信頼の足場でもあると、僕は思う。
笑いは差別によって生まれる。茶化し、バカにして、あるいは道化になることは、無意識にやってたらとんでもないことを踏みつけにしてしまう、危うい行為だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
尖ったコメディを造るということは、それに果敢に飛び込んでいく行為だ。だからこそ、自分がどこにいて何を踏んでるかは確認する必要がある。
いろんなものを笑いに変えつつ、しかしその本道にしっかり帰還して(そんな真面目な襟の整え方すら、また一つの笑いに変えて)来たこのアニメらしい、なかなか実直な終わりだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
終わりたくないという欲望、腐敗していきたいという願い。それは、たしかにそこにある。
でもそれに溺れてしまえば、永遠を願わせた輝きは必ず消えていってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
永遠を新しく生み直すためには、必ず特別な一瞬が必要なのであり、この『卒業』は作中のキャラにとっても、見ている僕らにとっても、作っている製作者にとっても、大事な節目なのだ。
そういう要素を最後に語るのは、偉い。
僕は有基のトンチキな真っ直ぐさ、子供っぽさがずっと好きなのだが、今回もぶっ飛ばされた後の唐突な卒業式で、それを感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
学校行事として慣習に押し流されるのではなく、『戦闘』という非日常のなかで、自分の考えで『いかにもな卒業式』をやらなきゃ『卒業』出来ない、湯基の心の熱量が現れてた
あれは先輩たちへの、彼らと別れたくない自分への、この戦闘を最後に『変身ヒロイン』ではなくなってしまう防衛部への送別であり、とてもこのアニメらしい遺言なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
そういうことをちゃんとやんないと、どうにも先には進めない気がする。バカなネタの奥に、古臭い仁義が木霊していると僕は見た
さんざんグダグダなお歌と肌色で押しておいて、やっぱそういうのをやっておかないと納得できない作品なのだな、と確認できて、僕はとても嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
あまりにも偉大な強羅あんちゃんとの、親離れ・子離れをやっているのも見逃せない。そこも『卒業』であろう。
オタクの産業システムが変化し、終わらない物語を延々と消費できるようにもなってきたこのご時世で、あえて『遺言』をしっかり刻んで製作者・ファン・キャラクター、作品に関わる全ての人に『卒業』を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
その意義を、わざわざドラマの中で確認する。とても生真面目なラスト・ワンだった。
それはやっぱり、とっても良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
僕は男の子キャイキャイコンテンツというより、ヒーローフィクション、あるいは『変身ヒロイン』ものの変奏としてこのアニメを見ていたから、青春の万能感に支えられたヒロイズムの終わりをちゃんとやって、ジャンルにアンサーを返してくれたのが嬉しかった
この『卒業』の先に、不思議な力も、光と闇のバトルも、永遠に繰り返す日常もない、ごくごく普通の日々が繋がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
それは、思いの外良いものなのだ、と。防衛部の特別な物語を抱えて現実に帰還する僕にそっと言ってくれるような、良いアニメでした。やっぱ良いな、防衛部。
追記 フィクショナルな動的平衡、物語が終わることの意義
防衛部追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
ここで『卒業』という空気穴を開け、キャラクターを永遠から解放したのは、作品を変化と呼吸が必要な『生き物』として見ているからこそかな、と少し思った。
永遠の停滞の中で生きられる作品は、それはもう創作物として『無生物』なのではないか。
ゾンビのごとく延命してずっと続く話もあるし、そもそも作品内部の(あるいは作品を取り巻く)世界が最初から静止し続けている作品もあるが、人の心に波風立たせるなら『生きて』なきゃ! という古臭い視線を、今回の『卒業』からは感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
有限の生と意識した終わりによって描かれる代謝を望むか、はたまた静止した永遠と快楽を求めるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月30日
そこらへんは人それぞれの好み、創作者の理想形によって色々あろう。が、あえてコンテンツ一つの終わりにちゃんと『遺言』を叩きつけたこのOVA、僕は凄い好きだし良いなあ、とも思います。