3月のライオンをみる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
新年一発目! 透明な悪意を煮込んだ霧が、出口のない教室を飲み込んでいく地獄めいたエピソードから、2クール目のライオンも開幕だッ!
シャフトのサイコホラー演出力が最大限に生きた、息苦しく世知辛いお話だった。答えのない話に、強引に答えを付けざるを得ない重たさ。
というわけで、零ちゃん出ない将棋も指さないエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
冷たいモノトーン、顔のない嘲笑で満たされた教室の寒々しさが、なかなか凄いことになっている。
先生の周囲にまとわりつく、黒い霧。それは形ととらえどころがなく、悪意の毒に満ちている。だからこそ対処の難しい、答えのない問い。
重苦しい空気は教師一人壊して開いた穴から、パワフルな学園主任が飛び込んできてなんとか抜ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
まるで漫画みたいな、タフで正しい全うな大人。そういう存在を唐突に投げ込まないと、永遠に水の底で魂が窒息し続ける重たいネタを、どうしてもやらなければいけなかった内因。
それを推測するのは無粋かつ無益であり、チカ先生には『いじめ』を『今、ここで』語らなければならない作家としての業があったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
その重たさ、出口の無さをインクに込めて描いて描いて、また描かなければいけない衝動が、当初の予定を捻じ曲げたとしても。それはやらなければならなかった。
ここで零くんの心に、ひなちゃんが強く強く食い込みすぎた結果、香子姉さんは当初のヒロインポジションから見事に滑り落ち、お話の主軸から脱落していった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
アニメで見直すと良いヒロインムーブしてて、ホント想定外だったんだろうな、と思った。あんなにエロいのになぁ…うう…。
さておき、そのように取り扱ってみた『いじめ』はシリアスに迎え合えば合うほど、簡単にも簡単じゃなくも答えが出ない業の塊で、『頼りになる大人』を横から出すことでしか落着を見いだせなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
学年主任を構成する記号が、川本家に不在の『父』なのはちと、面白い。
それは正直、物語の集合体としては弱さだと思うし、じゃあずーっと出口のない場所であの毒霧を吸い続けたかったかと言われれば、当然答えはNOだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
アニメになって先生の描写が増えた結果、追い込まれて壊れる心理も分厚く見えた。ひなちゃんが壊れなかった代わりに、黒い霧に食われた犠牲者。
先生は弱くて醜いただのオバサンで、自分の苦しさを受け止めてくれる人も不幸に(そしてよくあることに)周りにはいなくて、黒い霧に食われて壊れてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
その脆さは、英雄のようには状況を改善しない。彼女の不在を埋めた『大人の男』が、薄暗がりに光をもたらす状況を、自分の死骸を苗床に産む
世界に愛されない凡俗は、そういう風に壊れていくしかない。せめて風穴が空いたことを喜ぶべきか、壊れてしまった人を振り返らない語り口を残酷だと思うか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
愛され、満たされ、傷ついても立ち上がる力と足場がある人を主役に据えたこのアニメは、やっぱり結構難しいものだな、と思い直した。
お話である以上シテとワキの区別はあって、この話は基本、愚かさと脆さを乗り越えられる側の強さと幸運のお話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
白黒の冷たい世界で諦めてしまう側は、一瞬捕らえられて物語の車窓を流れ、破滅の果てに流されていく。戦って負けてしまう存在があることを、傍目でも捉える誠実さがあればこそ、か。
例えば、負けて酒に溺れ家族を失った安井さん。あるいは今回の先生。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
薄暗い濁流に飲まれた側は、そこに飲み込まれつつ這い上がる/這い上がれる主役たちとは、接近しつつ触れ合うことはない。
一瞬世界をかき乱して、そのシリアスさを担保し、舞台袖に去っていく。
どうしようもなく敗れていく、脆い人間。それを描けばこそ、同じ黒い霧に取り囲まれつつ立ち向かう人々の光も、また輝く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
その上で今回の話を見ていると、霧に飲まれて壊れていく側への親近感が、どうしても湧いてしまう。それはよく描けている、ってことなんだろう。
保身と疲弊にズタズタにされ、何もできなかった先生。彼女を苛んだものと同じ呪いが、ひなちゃんにも、お姉ちゃんにも襲いかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
母と交わした、母の代理を続けるという約束/呪い。それで背筋を伸ばしていても、あるいはだからこそ、お姉ちゃんは子供だ。その息苦しさは、暖かな一服で報われる。
そうやって報われる人と、モノトーンの世界に食い殺されてしまう人の間には、一体どんな差があるのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
そこが主眼ではないと知りつつも、原作でこのお話を見てから、そしてアニメで再読してから、気にかかっているポイントだ。そして多分、答えは出ない。
先生のその後は、『二度と学校に来なかった』と語られて終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
脆く崩れてしまう人々にかずらうほど、ひなちゃん達の世界に余力はない。人生の世知辛さが色んな形で押し寄せ、それが光も照らしていく。
そんな色彩に満ちた世界は、退場してしまって出番がない先生からは、ずっと遠いのだ。
そんなことを、益体もなく考えささせられる回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
お話としての道筋は、モノトーンで統一されたエピソードのラストに差し込む美しい光が『主』だろう。ようやく見えたトンネルの出口は、キャラクターにとっても視聴者にとっても物語にとってもありがたい。
吸い続けるには、黒い霧は毒過ぎる。
ただ、匿名の悪意に倒れてしまった脆い人は、一体どこに行くのだろう、と、少し気になっただけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
シャフトの演出力は不定形の心の闇を描く時、一番冴えると思っている。その筆の冴えが、画面の端に宿った答えのない暗がりに、視線を吸い寄せた。そういうことか。
どちらにしても、答えのでない問題にようやく目鼻がついて、物語は一つの方向に転がりだす。その先にも黒い霧が形を変えて存在してて、また生き残れるものと、脆く崩れ去るものが数多生まれていくのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月8日
その多層なる軋みの中で、このアニメは蠢き続ける。来週も楽しみです。