ダーリン・イン・ザ・フランキスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
かくして荒野に、赤い花が咲く。荒廃した世界で兵器失格の烙印を押された少年が、異形の少女と出会う時、物語は始まる。
導入から出会い、出撃、撃破まできっちり一話に収める見事なスタート。様式美と多重の引用に満ち溢れた檻を、どう壊していくかが見ものか
TRIGGER(というか錦織監督)の新作は、ロボアニメの王道ど真ん中を征くボーイ・ミーツ・ガールであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
世界観からキャラの内面、関係性、状況まで。必要な描写を印象的に重ねつつ、挫折から出会い、決意から撃破までキッチリ枠内に収めるまとまりの良さ、熱量の作り方は流石。
ロボアニメは何しろ先行作が多く、色んな『オヤクソク』を踏まえることを要求されるジャンルだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
TRIGGERという制作集団自体がオタク的…文脈に自己耽溺デキるだけの知識量とそうしたいという欲求に取り囲まれているだけに、よく踏まえていて、それが足かせにもなっている気がする。
トップ2っぽくてEVAっぽくてスタドラっぽくてゾイドっぽくてグレンラガンっぽくてウテナっぽくてラピュタっぽくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
この第1話から受け取る『ぽくて』は山のようにあり、しかもその既視感を外してはロボットアニメは(多分)成り立たない。
窮屈で不自由なジャンルなのかもしれない。
その檻をぶっ壊すというよりは、徹底して檻の形を精査した上でハマる形を考えたのが、このアニメのような気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
少年と少女が出会い、鋼鉄の虚神が動き出す。物語のコアな部分に必要な要素を徹底的に洗い出し、鮮明に刺さるように磨き上げ、組み合わせる。結果、特盛りなのに分かりやすい。
それは『ロボアニメ』を取り巻く文脈に、ある程度の語りをアウトソースした結果だとも言える。既視感とわかりやすさは共犯関係にあるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
とまれ、そのデジャブは作品というよりも、それを見る僕の脳みその中にある。『ぽさ』に言及する僕自身が、僕の中にある『ぽさ』の檻を壊していく必要があろう
さておき、語り口の巧さはヒロインの刺さり方が上手く証明しているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
角ありの破天荒なゼロツーの見せ方。泉で出会ったときの清廉で自由な印象と、コックピットでの荒々しい雰囲気のギャップ。可愛くて、危険で、白くて赤い。良いキャラだ。
それと同じくらい、1話で退場して主人公(と視聴者)に罪悪感をぶっ刺すだけのヒロイン、ナオミの存在感が目立った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
影が目立つ、鋭角のレイアウトの中でひっそり、約束された破滅に向かう彼女。絶対に届かない手をそれでも伸ばしたくなるような、儚い女。死んでなくて再登場してくれると良いんだが。
田中将賀の、程よく尖って適度に丸いデザインセンスが最大の仕事をしていて、キャラクターを構成する記号はパッと見ただけで何となく伝わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
その第一印象を快適に裏切るよう、モノローグやアクションが挟まり、キャラの内面を教えていく。その押し引きの心地よさが、『第1話』を入れてくる。
鮮明な『赤』の使い方も印象に残る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
冒頭、世界の成り立ちと物語の形を曖昧に予言するシーンの、鬼女の赤い肌。その残像が残っている内に、ヒロは墜落した鳥の血に引き寄せられる。それは物語のリードラインとなり、彼(と僕ら)は赤に引き寄せられて彷徨い、運命に出会う。
ゼロツーとの出会いが、純白の裸身なのは面白い。赤い角が白い肌に生えてよく見える。おっぱいやお尻は目立つ煙幕で、あそこで見せたいのは赤だろう。制服も赤い(台詞でそこをさり気なく、強調すらしている)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
赤は血の赤。虚竜が襲い掛かってきて、ゼロツーは血を流す。女の特権/楔である。
性差、性別、性交。多様な意味を含むセックスは物語の中心に据えられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
男女が交わることでストリチアは成立し、少年は不要物から主人公へ、ヘニャヘニャなペニスをいきり立たせ、鋼鉄の男根を物語世界におっ立てる存在へと変わる。
セックスを剥奪された存在としての子供。それがパイロットの資質であり、『オトナ』になったらロボットに乗れないのはナナとハチが分かりやすく示している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
パイロット部屋のハイソな雰囲気といい、ここらへんは非常にトップ2『ぽい』。
トップ2では女と女の関係性が主軸に据えられていたのに対し、この作品は世界を変革しうる特別な関係性≒ロボットとパイロットを、男と女に限定する。何しろピスティル(めしべ)とステイメン(おしべ)だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
男女和合し大道成る。あるいは、卑金属を金に変える錬金術の結婚か。
欠けたものが補完され、ロボットという巨大な力が発生する。そのベーシックなダイナミズムは、分かりやすくていい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
ただそれが『男女』に限定される意味、わざわざセックスを真ん中に持ち込んだ意義は、今後誠実に深く掘られなければいけないと思う。世間で流通する『ぽさ』に説明を任せるのではなく
無論、変則とは規則が示された後に生まれるものだ。そのうち一人でフランキスを動かせたり、同性で稼働するフランキスも現れるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
そのベースとして、恋を知ってコドモからオトナになりうる存在として、主役カップルをどう描いていくかは、非常に大事だと思う。
少年と少女は裸身で出会い、手を繋ぎそこね、血まみれの戦場でもう一度出会う。二度目はしっかり手を握って、キスをする。そこから運命が動き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
非常に分かりやすい、鉄と血のロマンス序章だ。鮮明でロマンティックなイントロを見事に奏でた後、本奏をどう見せていくか。そこがキモになる。
エロティックな誘惑を、便利に視聴者の気を引ける釣り餌以上のものとして使いこなせるか、否か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
性が孕む生の躍動を、セックスの暗喩を多重に内包したロボット、その操縦と戦争を通じてちゃんと描けるか。
そこが『ぽさ』の檻に囚われた/自分から飛び込んだこの作品のオリジナリティになると思う。
性衝動を糧に、鋼鉄の巨人で世界に飛び出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
この構図はロボットアニメ(に限らず物語)が常に背負っている。
ロボの原動力を『リビドー』にしたスタドラ、気になるあの子とのドギマギスクールライフでもあったエヴァ、あるいは鋼鉄の車に変貌し世界の果てに飛び込んでいったウテナ。
どちらにしても、性対象(それは異性に限る必要はないし、そういう自由を作品内に盛り込んでいい時代だとも思うが)に高鳴る鼓動がロボットのエンジン音となり、暴力を生み出す源泉になる構図自体は、非常にベーシックなものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
だから、この作品に満ちているエロスの暗喩は、凄く『ぽい』。
だからこそ、あえてそれを全面に押し出した演出…鮮明な赤(それは戦時負傷であり生贄の血であり経血でもあろう)を、ただ感情を波立たせる『巧い演出』の領域で留めず、より大きなテーマとメッセージを圧縮する道具として使いこなしてほしいなと、第1話を見て思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
性という基質の果てに結婚という制度があることを、肯定するにしても否定するにしても、この作品では(でも)エンゲージメントは重要な要素として描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
パートナー契約をしなければロボットは動き出さないし、結婚生活はロボット的性不能によって破綻し、赤い乙女との再契約によって再動する
ゼロツーが檻の中の自由を手に入れる時、白いコートと帽子を脱ぎ捨てるのは面白い。再び捕まった時被せられる帽子は、文字通りの『角隠し』で、彼女は欲求不満の花嫁なわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
自己そのものである赤い角を隠すようオトナ=社会に共用され、男を食い殺す毒婦。乗りこなせないじゃじゃ馬。
それを征服し自分色に染めていくファリックな物語なんぞ、古臭くて食えたものではないから、あまりマッチョではないヒロには良いパートナーシップを期待したい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
不能者として使い潰されるゼロツーの前夫が、綾波っぽい負傷してるのは面白いなぁ。
比翼の鳥をモノローグで引用しつつ、ロボットは植物の暗喩で組まれているのも気になるところだ。雌雄の別があり、和合して実をつける存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
ヒロとゼロツーの赤子たるストレリチアは『極楽鳥花』であり、花と鳥の融合存在と見れるか。
花言葉は『全てを手に入れる』『女王の輝き』『気取った恋』
海を求め、服を着ることを嫌がるゼロツーには、魚のイメージも重ねられている気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
ペンペン草も生えない荒野に欠けているものを、人と鉄に過剰に埋め込んで補填していくアンバランス。意図された不均衡がどういうエネルギーを生み出すかは、結構楽しみだ。
今回は失格者の烙印を押された少年が、赤い昌道を持て余す少女と出会い、お互い満足可能なパートナー(の可能性)を見つけるまでが過不足なく収まっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
その外側にあるキャラや世界設定は、今後手際よく語られていくだろう。他のフランキスも、全部花だなぁ。単為生殖可能な蒲公英とか出ないかな
このアニメは赤いアニメだと、僕は思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
ロマンスが生み出す生の躍動と、ロボットが作り出す死の破壊。両方が入り混じった混沌の赤が世界に満ちて、溢れかえって血を流す。
自傷/他傷行為でしかないセックスの暗喩(あるいはそのもの)として展開される、良い作画の大破壊。
それは危険な仄めかしとして操作され、視聴者を引き込んでいく。血湧き肉躍るエロスとヴァイオレンス。ただし、ドン引きされない程度の節度を添えて。巧い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
だが、だからこそ。
それを弄ぶのではなく、首までドップリ浸かって一つの答えにたどり着き、それを伝えるメディアとして使いこなして欲しい。
過去作品への目配せ、引用、あるいは諧謔…『ぽさ』の海に耽溺し溺れるのではなく、意識を持って潜り、自分なりの結論を引っ張り上げるための補助具として使いこなして欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
その可能性の片鱗を、今回の第一話は十分持っていると思った。とにかく、徹底的に手際が良い。印象の操作が旨すぎる。
ロマンティックに劇的に出会い、英雄の証明をファリックに打ち立てた主人公たち。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
そこに辿り着くための燃料、相性の悪い『出来損ない』のパートナーを、どう処理するかが、まず気になるかな。不能だからって、全人格否定されるほど無意味な存在になるわけじゃあ、当然無いのよ。
赤い赤い性のメタファー、あるいは性そのもの。それに貫かれた物語が、巨大な性≒ロボットの存在感と向かいつつ、その影からどう出るか。あるいは出ないか。男女絶対視の旧弊を抜けるか、支持するか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年1月15日
今後このアニメを見るにあたって、そこを気にかけていこうと思いました。来週もとても楽しみです。