Fate/EXTRA Last Encoreを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
シャーウッドの森を亡霊が走る。量子によって再現された、導きなき亡霊の騎行（ワイルドハント）。歪められた騎士道と、それでも誉れ高く生き死にたいという願い。死人の呻きを反射して、今、鐘の音が残照する。
第2フロアの修羅界を駆け抜ける、アンバランスなお話。
というわけで、相変わらず判りにくいアニメである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
ゲーム本編でみっしり描かれた（だろう）男と男の関係性が、いかに腐敗し、それを諦めきれないかが背骨になるので、それを摂取していないと作品を消化吸収するのが難しい。
のだが、人間関係の機微はかなりふんわり、『理解ってるよね？』で進む。
設定説明を大量に入れ込むため尺が蕩尽されて、キャラクターの関係性把握は外部メディアにかなりの部分委託される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
完全新作としてゼロベースで関係を作るのではなく、バッドエンド後の偽典として物語が進むため、事前情報の収集は必須だ。
が、原点の再話、というわけでもない。
非常にコアな展開が、情報圧縮率高く、そしてアニメーション的な消化吸収促進を助ける『わかりやすい絵』『絵をわかりやすくするセリフ』の補助無しで進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
ダンVSハクノの決着、三回くらい見直さないと何やってるか分かんないぞ。見直すとある程度判るけども。
奈須きのこ本人が脚本を担当しているところが、アニメディアの表現技法ではなく、小説の技芸で展開する…ぶっちゃけて言えばネームが多い運びに、けっこう影響している気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
原作はEXTRAではなく、奈須きのこ著『小説版LastEncore』な感じ。持ったり重くて、必要な部分が薄い。
とまぁ、この作品の不器用でアンバランスなところを並べたわけだが、自分はFateにも奈須きのこにも思い入れがあるので、頑張って気合を入れ、胃薬（コンテンツ愛と外部情報の積極的な摂取）飲んで、ガブガブ噛み砕いて美味しく頂いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
分かんねーなら分かんないなりに、分かるように見ればいい。
ダンはやはり、騎士になりたかった卑劣漢として、聖杯戦争に挑んでいた。同じく騎士になりたかった卑劣漢と、凸凹ぶつかりあいながら戦いに挑み、間違っていた自分を見つけ、若人に未来を託して死んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
しかし、狂ったセラフはその先を造る。願いの一部だけが加速した、たちの悪い悪霊が世界を律する
死人を無理くり蘇らせると、凄くろくでもないことが起こる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
奈須きのこ作品でも、世にあふれるあらゆる物語でも繰り返し語られた真理に、ダンは捕らえられた。
人間だから1000年で腐ったというか、望まぬ復活の結果亡霊になった感じか。それでも、忠義者の駒鳥頭巾は墓を守り、命に服する。
ロビンが最後向かうのが、亡霊の戦場ではなく1000年前に死んだダン・ブラックモアの墓なのが、なんとも痛ましくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
1000年側にいた悪霊ではなく、騎士道への憧れを受け止めてくれた主が『マスター』なのは当然なんだが、ほんとにこの修羅道千年紀、ロビンにとっては終わりのない地獄だったのね。
ロビンがネロの前に正々堂々顔を見せたのは、彼自身の『決闘』へのあこがれと同時に、失われてしまったダンのオーダーを守った意味合いも、大きかったのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
サーヴァントは、そういう生き方でも、それが繰り返す悪夢でも、ずっとやっていられる。亡霊は先に進まない。
そのサーヴァントを失ったラニが、意識して前に進まないのは、物悲しくも面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
森の中の沢山のお墓。死んでいった人たちの願い。せめてそれを果たすことが、永遠の終りを生きる人間に残された、最後の一擲なのだろう。長台詞、お疲れ様でした。
ハクノもまた、量子化された地獄から這い出し、憎悪を天に届けるべく蘇った亡霊だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
そんな彼が、鐘を使った跳弾狙撃でダンを殺す。憎悪と殺戮に取り憑かれた亡霊が、同じ刃で殺し合う。これもまた、非常に皮肉な『対等の決闘』であろう。
しかしハクノは、ネロの高いヒロイン力照射を受けて、憎しみ以外の感情を再獲得しつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
犠牲となって亡霊と化したハクノは、ラニを犠牲に前に進もういう叫びにNOを突きつける。
繰り返したくない、という思い。それは亡霊となったダンに決定的に欠けた『意志の質』だ。
シンジの地獄に思いを馳せ、ミルク（白い血）に動揺を映して己を鑑みるシーンは、派手ではないが良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
階層を超えて謎がわかり、ハクノの心が豊かになると、逆算で昔の話の価値が変わっていくのは、ちょっと面白い作りだ。一種の叙述トリック的な、エモーションのドラマ。
ハクノの前では甘ったるいヒロインやってるネロが、ロビン相手には凶暴な剣客を貫くのも、とても良かった。まぁケツ丸見えだけどさ！
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
最終的にはキラキラ消えるけど、血まみれゴア表現をためらわずやって、『命の取り合い』の生臭さがしっかりあるのは、このアニメの好きなところだ。
1000年前に死に、決定的に時間が止まってしまったダン＆ロビン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
1000年後に死から目覚め、白紙の憎悪に様々なものを付け加えていってるハクノとネロ。
緑色の修羅界の中で、血みどろに殺し合う残虐の中で、二組の主従の関係は妙に鮮明に、清潔に対比されていた。その甘さと苦さのバランスは好きだ。
アニメーションとしてのバランスは、正直あんま褒められない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
喋るところで喋りすぎて、動かすところで喋りが足らない。止め絵でダーッと喋り倒すシーンと、説明不足のアクションが走るシーンが、交互にラッシュする構成は、色々と疲れる。
のだがなんとか咀嚼しようという気になるのは、信者だからか
1000年後のダンを、徹底的に悪霊として描いたのは良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
電子化された憎悪に突き動かされるだけどだと、ハクノはああなる。尊い過去に縛られすぎて、一歩も前に進めないと、マスターとサーヴァントの関係はああなる。
『失敗してしまった主人公たち』として、第2階層の『敵』を使うのは面白い。
停滞した平穏のなかで争いを避け続けたシンジと、永遠に続く修羅界で勝っても勝ってもラダーが降りてこないダンの対比も良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
殺すことが前に進むための必要条件ではないし、亡霊にはヤコブの梯子は降りてこない。何故前に進むのか、進めるのか。判らないまま、亡霊と詩人は天を目指す。
次なる地獄では、どんな景色が見えるのか。楽しみでもあり、恐ろしくもある。一層一層、地獄を逆上がりするごとに、ハクノの感情は再獲得され、亡霊は人間に近づいていくのだろう。地獄を逆行してるんだから、魂が蘇生していくのは、そりゃ道理だよな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
そんな主人公死に直し旅が、決定的に間違えたまま1000年固定されてしまったダンの無念を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
それに寄り添う皇帝の愛が、騎士への矜持に縛られ続けた卑劣漢の夢を。
忘れずすくい上げて、前に行ってくれるといいな、と思えるエピソードでした。来週も楽しみ。
あ、ハクノの憎いマンフルパワーモードがかなりのインチキ戦闘力で、見てて楽しかったです。人間性削ってるとはいえ、ずりーなデッドフェイス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
マスターが後方彼氏面で戦闘見守るの、絵的にマジ面白くないので、介入の足場作ってくれるのは良いよね。
あと『1000年後』という時間設定は、覚者が勝って作った千年紀が、憎悪の化身たる修羅・ハクノの挑戦によって書き換えられるというミレニアム的発想が根っこにあるんじゃないかな、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
停滞と救済、腐敗と永遠の前千年紀から、憎悪と変化、怒りと人間の後千年紀へ。
ハクノの逆行は、彼が記憶と人間性を取り戻していくあゆみであり、セラフの失われた千年を掘り返していく謎解きであり、概念と概念がぶつかりあう神話的ハルマゲドンでもあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
ネロとのラブラブ旅行記（肌色と血糊多め）でもあるか。
そこら辺、貪欲に色々盛り込んでいるのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月24日
願わくば、もうちょっとアニメとして消化しやすい作りにして欲しいところだが…奈須きのこ×シャフトな時点で、ある程度しゃーなしかなぁ…。
表現としても、文脈としても。分かりやすいアニメたぁ口が裂けても言えないが、俺は大好き。来週も楽しみ。
