刻刻を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
怪物的デカルト主義者がタンパク質の鎧を着込み、本物の怪物へと脱皮する。実験という名の殺戮を経て、戦いの軸足が変わる。
何が人質となり、何が止まった世界を支配するのか。暴力と並走する論理の争奪戦。人間のルールが今、破綻を開始する。
スーパー佐川大暴れなエピソード。
というわけで、ヤクザ・カルト連合軍がその首魁によってぶっ潰され、物語の軸足がグッと切り替わるエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
『自意識を持ったカヌリニ』という、超絶厄介な存在になった佐川の戸愚呂弟っぷりが、なかなか凄いことになってた。怪物的な精神が、怪物的な身体を手に入れたとき、恐怖が具現する
家族への情で動き、激情でひた走る樹里に対し、佐川は常に冷静だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
自意識の在り処を探し、止界のルールを探求し、常に自分と世界、自分と他者の関係を模索している。
それが倫理的なブレーキを兼ね備えているなら聖者だが、壊れていれば怪物だ。佐川は情を持たない。
生魚を丸呑みし、酢豚を空中で拾い上げる。佐川が行う『栄養分の摂取』は人間的な食事を通り越して、すでに別の世界のロジックで動いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
しかし殺戮のための努力も努力ではあって、極悪な力を支えているのは常に、冷静な思考力と実験を分析する眼だ。
石に刻まれた『努力』の文字がおぞましい。 pic.twitter.com/Elg4AbxMRw
金や狂信、暴力への興奮という人間社会のロジックで動いていたものは、軒並み佐川に殺される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
人間を冷徹に腑分けし、世界の論理を探ろうとする佐川の冷静さ。あるいは投げたナイフが胸板を貫通してしまう圧倒的パワー。虐殺は、怪物がたどり着いた地点を巧く見せる。
潮見は佐川と同じく、怪物的な理性(あるいは理性の怪物)を発揮することで、佐川が押し付ける新しいルール…理性によって統制された実験的暴力を内面化する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
というか、もともと『そっち』側なのだ。怜悧な分析眼は怪物限定の強みではないのだ。
『こっち』側に付いた迫と間島も、冷静な分析力で状況を読み、不利な状況で手を打つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
利益を共有することで潮見を『こちら』に引き寄せようとする間島と、薄暗い超越的理性で間島を飲み込もうとする潮見。双方の綱引きが、時間が停止したスーパーの、異常で日常的な風景の中展開する。
バックヤードへ続く扉を、潮見は乗り越えない。孫氏をネタにしたホームコメディを演じる迫が足場を置く、光に満ちた側に背中を向け、『お前も怪物にならないか?』と、薄暗い洞穴へ消えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
日常的な風景が、静止することで異常性をむき出しにし、そこに囚われたものを怪物としてショーアップする pic.twitter.com/Ja91NZT9cn
怪物たちの誘いを受けた間島は、非常に危ういところにいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
家族を取り戻すべく止界を学び、そのルールを解析してきた彼女。驚異的な理性でカヌリニのパワーを取り込んだ佐河もまた、生まれつき止界に選ばれた『血』を引いてはいない。
意志と理性で、異常な世界を腑分けし、望みを果たす。
二人は非常に危うく似通っていて、ともすれば間島は佐河の岸…怪物的なエゴイズムで世界のルールを改変してしまう側に落ちることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
それは樹里やジジイ、ナチュラルに倫理意識がないクソ親父といった、佑川家の人々も同じだ。みな、静かに落下しつつある階段に足をかけている。 pic.twitter.com/S2gvslmElc
そこで踏みとどまれるか、否か。怪物になることは、とても強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
単純なパワーとしても圧倒的だし(あっという間にバトル漫画の文法にぶっ込む佐河先生は、ほんと凄い)、情を切り捨てて世界を分析し尽くす眼は、ノンキなジジイを追放可能なルールを見つける。
しかしそれは、分け入ってはいけないスーパーのバックヤードに土足で踏み込み、調理中の酢豚や魚を略奪し、他人をぶっ殺しまくる道へと、簡単に繋がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
クソみたいな理屈で自分を納得させ、余裕の窃盗をノーモーションでぶっ込むオヤジも、そこに近い。クシャクシャの五千円は、奴の倫理の値段だ。 pic.twitter.com/zWtksln7h7
佐河や潮見が簡単に乗り越え、オヤジがいつでも転落できる、倫理のない闇。樹里や間島はその誘惑に迫られつつ、それとは違う方法で世界を理解し、ルールを見つけ、怪物に勝利しなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
敵は手強い。『情』という厄介な燃料を積んでいないことが、クレバーな動きを可能にする。
殺戮の現場ですら実験主義を貫く姿勢は、『家でそう言われてきたから』という伝承に足場を置くジジイの、ツメの甘さをキッチリ射抜く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
完璧な不意打ちから血液を回収し、不要な荷物になりかねない翼兄ちゃんを足止めに使う。クレバー過ぎて気持ち悪いくらいだが、敵は強いほうが盛り上がるからなぁ…
『そういうことになってる』で思考を止めるジジイの倫理は、しかし止界(に巻き込まれた無力な他者)を濫用しない歯止めにもなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
それをオヤジに継承できなかった結果、やつは小市民的窃盗に走り、樹里に伝えられた結果、彼女は『情』を支えに、人間のまま怪物になろうとしている。
※訂正
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
人間のまま怪物になろうとしている →人間のまま怪物と戦おうとしている
意味、真逆になっちゃうよ。
『守る力』としてジジイの瞬間移動は非常に優秀で、これまでも敵を『殺す力』としては大概機能してないけども、ピンチを何度も救ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
佑川家はそこにこそ居場所を見つけるべきなわけだが、そんなジジイが追い出されそうだ。毎回そうだが、いいヒキ造るなぁ…。
物語の構造が再度変化しつつある今、ここまで主役たちを守り、導いてきたジジイを退場させるのは、上手い手筋だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
メンターを失った樹里は、自分の力と決意で状況を打破しなければいけなくなる。怪物の暴力と理性を前に、人間の存在証明を己の掌で叩きつける必要が出てくる。
それはこの奇妙に倫理的な異能バトルに、更なる盛り上がりを連れてくるだろう。まぁ退場せず乗り切れる可能性も、十分あるけどさ。俺ジジイ好きなんで、残ってくれるのも全然OK。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月26日
とまれ、ルールの変化をアクションで伝える、面白いエピソードでした。怪物と人間の境界線、どう引くか。来週も楽しみ。