ダーリン・イン・ザ・フランキスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
欺瞞としての贈与は続く。母の胎内を夢見るゾロメが、迷い込んだオレンジ色のワンダーランド。心臓の代わりにマグマの歯車を付けた大人が、墓所のごとく清潔な都市が、ようやくその内臓を晒す。
これまで子供たちが命を張る理由として扱われつつ、その輪郭しか見せず仮面を付けてばかりいた都市=大人の実相と、子供たちでもいっとう子供なゾロメが遭遇し、学習し、喪失するお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
キツかった。しかしキツさをポップな外装で鎧われるより、生で突きつけてくれたほうが嘘がなくて楽ではある
冒頭、ゾロメが見る夢が出産のモチーフ(あるいはトラウマ)であるのは、かなり明瞭だ。狭く暖かそうなオレンジのチューブをくぐって、閉鎖された都市の中に迷い込む今回、彼は胎内へと回帰する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
彼をレスキューし、個人的な部屋…子宮の中の子宮に取り込むのが、同じ目の色をした女性なのは当然だ。
『大人』にとって、生殖は『古臭く、面倒くさいもの』だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
夢は寝ながらにして脳髄を弄りながら見るもので、現実で掴むものではない。子供が大人を守り、活発さはペットの属性。
子供たちが遠ざけられていた世界は、ひどくグロテスクに転倒している。おおかた、予想通りで安心し、ゲンナリもした。
子供たちは労られることも、守られることもなく、当たり前に使い潰されて死んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
戦士にとって当然の儀礼である勲章の授与は、エイプ(新人類が『猿』を名乗り猩々面をつける皮肉は、かなり好き)が旧世代の動物を自在に操るためのエサとして、形だけ復古した儀礼だ。そこに敬意はない。
子供たちは、儀礼の奥にある『なにか』を求めている。味のある食事だとか、仮面を外しての対話だとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
『人間らしい』と言ってしまうのはあまりに残酷に、人類定義を書き換えている世界だと今回描写されたばかりだが、まぁそういうものだ。しかし『大人』は、戦士を『雑菌保持者』と呼ぶ。
誉れの礼装は、システムに踊らされる道化の衣装。そのグロテスクさを知っているゼロツーが、いつもの赤い服で通したのも当然と言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
微笑ましく温かい、大人の世界の見学。オレンジ色の平穏に満ちた風景は、子宮に回帰し自閉した、清潔極まる人類の末路の街だ。抵抗力、相当落ちとるな。
都市が子供たちに用意した形式は、薄ら寒いオレンジ色を毒々しく輝かせながら、その虚飾を気づかれないまま終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
ゼロツーは自分を食い殺そうとする歯の生えた子宮に怯え、パートナーたるヒロはそれに感染する。清潔な世界を疑うわけじゃないけど、僕の女の子はひどく怯えている。だから、問う。
ゼロツーは世界の真実を、サークルを作る子供たちには教えない。前回少し接近したように見えた距離感は、また遠くなって彼女は一人赤い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
それでも、ヒロは女の子に接近しようとする。切り離されて初めて、ミクを大事に思っている自分、お互い支え合うフランクスの意味を考えたゾロメのように。
ボーイ達がガールを大事にし始めたのは微笑ましく、切実に大事にして欲しい光だが、それとオレンジの毒は交わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
子供たちは一瞬のゲスト、都市を守るための使い捨ての閉鎖弁、成長し『大人』に変貌することはない、肉で出来た不出来な動物である。
他の子供達が去っていってしまうオレンジ色の地獄に、ゾロメは残る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
産道を遡りし、あるいは転落し、閉じた街の閉じた部屋へと上がり込む。
そこで出会った人が、仮面を外し食事を出してくれたことに、僕は凄くホッとした。衰えているとは言え、『大人』は一応、人間の御し方を知っている。
しかし『大人』用のメディカル装置はゾロメには適合できず、ペット用の設定を流用して初めて、傷の手当(これも『人間らしい』対応)だが可能になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
セックスの真似事でロボットを動かし、セックスの本当の意味を知りつつある子供が生殖しても、『大人』にはなれない。それは、もう異質な種なのだ。
子供たちのサークルに大人は存在せず、元フランクスなナナとハチが間を取り持つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
出会わないからこそ、無限に湧き出る夢。胎内に帰還し、闘争を強いられることのない時間を過ごす。子供から赤ちゃんへの逆行が、『大人』への順行でもある世界を、ゾロメは夢見、弾き出される。
『母』なるものへの憧れを示すように、今回ゾロメと母は幾度も手を伸ばし、触れ合わない。なにか通じ合うものはあるのに、世界はそれを既に切断してしまっていて、感情を交換するケーブルが繋がらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
ビルの輪郭、壁、あるいは調度。縦の線が幾重にも画面を切り裂いて、子供の夢を壊していく。
ゾロメが見ていた夢は、女性のパートナーがカプセル(充足された閉鎖空間。鉄の子宮)で報酬系を刺激され、ニヤついた笑みを浮かべる機械の妄想と、異なるものなのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
システムに与えられるものと、何も知らないまま夢見ていたもの。同じ気持ちよさでも、そこに漂う精気は真逆だ。
毒々しいオレンジと、骨に似た白。それに加えて、公なる『都市』にはなかった色彩が私なる『部屋』にはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
ソファーの真っ赤な赤。産褥の証たる出血を示すように、クッションは赤血球の形をしている。血の通った人間の付き合いをしてもなお、埋まらない距離。溢れ出す魂の赤。
そのどぎつい色彩、憧れて憧れてたどり着いた空疎の腸が、ゾロ目の夢を奪う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
満ち足りた闇、形のないオレンジの幸福から引きずり出されて、子供は無く。そうしなければ、自律呼吸が始まらないで死んでしまう。ゾロメの幼年期は、かなり手荒く終わったのだ。
子供は別に愛されていなくて、生き延びたとしても『大人』とは別種の生命で、憧れは叶わず、時間は戻らず、兵士は戦闘機械として死んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
形ばかりのプレゼントを貰って、メシも与えられず、仮面も外さず、うるさいけど側にイタイと思えるような、不思議な関係を他者と作ることもない。
それがあの世界で唯一許されている成熟であり、『かわいそうな存在』である子供たちは、そこに繋がっていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
母の子宮に帰還する特権は、心臓にネジを付けた『人間』のものであって、生まれたままの裸の猿に、与えられるはずもないのだ。
夢は、かくして破れる。
略奪された夢の代わりに、ゾロメは何かを手に入れられたのだろうか。ミクを好きな自分に近づけたこと、『大人』との切断面を認識した(させられた)のは、良かったのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
残酷な世界の真実を忘れてしまったのは、本能が取った防衛行動なのか、何らかの外圧の結果なのか。
それは今回だけ見てもわからない。子宮にもう一度潜り込むことで、もうそこには帰還できないし、到達する権利すら徹底的に奪われていることをゾロメも僕らも知った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
良かれ悪しかれ、それは流れる物語に繋がっている。何かが生まれるかもしれないし、無様に死ぬかもしれない。未来はいつでも解らない
生物と機械。無垢なる活性と清潔なる衰退。子供と『大人』は分断されつつ、ともに微睡みの中にいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
子供たちが幸福に死んでいくための、大人たちが幸福に生き延びるための。多層的に編まれ、贈与と欺瞞に満ちた揺りかご。その外側に足場を置くゼロツーに、牙が生える。
ラストカット、部屋に閉じこもり外を見るゼロツーが、今回ゾロメがたどり残酷に排出された歩みと、同じ場所にいるのは明白だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
洋梨状の窓は『逆側』から見たゾロメの夢…ゼロツーをくわえ込むヴァギナ・デンタタだ。ゾロメが微睡んでいたオレンジの夢とは別の、鮮烈な外界の光を睨む微睡み。
ゼロツーもまたその胞衣に包まれて、なにかに怯えながら声を上げれずにいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
赤ん坊が産声をあげるのは、閉鎖された充足系が出産によって破綻し、何かを吸い込み何かを吐き出す生物へのスイッチをいれるためだ。
ゼロツーはまだ、声を上げる必要がない。それで窒息しかかっても、黙り続ける。
スラットを演じて/内面化していたゼロツーも、外に尖るだけでなく、内にこもる瞬間が来た、ということかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
お調子者のゾロメが思いの外ナイーブな内面を持っていて、身内以外には礼儀正しく接する『イイコ』で、ヤワな夢を大事に抱え込んでいたことが今回解ったように。
黙って考え、内にこもること。閉鎖された内面の、更に閉鎖された内側に侵入していくことが、なにか新しいものを見せることは、今回のエピソードがうまく示した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
それが、すごい濃厚なヤダ味に満ちて、子供を残酷に切り裂くことも。キツいわ、やっぱ。
光色の欺瞞に満ちた世界を睨みつけ、薄暗い真実の子宮に閉じこもるゼロツー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
そこから引きずり出して、鬼哭の一声を轟かせる仕事が、多分ヒロに用意されている。エイプが進める『大いなる亀裂(ここでも出産と胎内回帰のモチーフである)』への旅路が、それを試すことになるだろう。
その時流れるのは、ゾロメが今回見せた透明の心の血だけではなく、真っ赤な物理の血潮にもなるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
死を遠ざけ、乱雑さを排除した脆く弱い世界。
それを守るために、子供たちは泥と血に塗れて戦う。庇護している『大人』に、『お前らはこっちには来れないよ』と、百億回言われつつ。
へその緒を通じて、母体が赤ん坊を吸い殺すような、さかしまの地獄。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
それに子供たちが気づくのか。接近してなお、ゾロメは二度目の出産性トラウマをごまかすように、忘却に己を投げた。あるいは、強制的に投げさせられた。
これが再度演じられるか。実戦を伴う『二度目』では、苛烈な切開が起こるか。
それは分からんけども、もうあんま子供らに酷いことせんで欲しいなぁ、とはつくづく思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
思うが、今回ダイレクトに『子供たちに酷いことをすることで、なんとか露命をつないでいる虚弱な世界』が舞台だと示されて、そういう感傷の逃げ場がいよいよなくなってきた。
あの世界はおぞましく残酷で、夢と理想で麻酔をかけて、何とか生き延びている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
その夢が醒めないまま、ひたひた迫る滅びに追いつかれるか、『何か、何処か』への脱出口が、バックリと開くのか。
開いてほしいもんだが、今回ゾロメに施された産婆術を見ると、まぁ厳しかろう。
それでも、ゾロメは当たり前の人間のプライドを引っ張り出して、『俺たちはかわいそうなんかじゃない』と吠えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月20日
その産声が、虚空に散り散りになるでも、便利に使い潰されるでもなく、硝子の天井を震わせてくれるといいなと、僕は思った。
なんとも残酷な、胎児の夢の終わりであったなぁ…。