アイドリッシュセブンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
嵐の海に漕ぎ出せッ! てんで、大人の事情に揉まれるTRIGGERと、事務所のバックアップを受けるアイナナが交錯するサウンドシップ攻防戦。
ラスボス・八乙女父のヤダ味と存在感を高めて、クライマックスへのレールを敷くお話。
つーわけで、ちょっと作画に息切れが見えるアイナナである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
ガッツリ油の乗った美少年作画と、緊張感のあるレイアウトが話を支えていたんだなぁと、カラータイマーがピコピコし始めて気づく。アニメが『動く絵』である以上、ドラマは作画に支えられる。
とはいえ、内圧を支えきれないほどではないか。
お話としてはサウンドシップを舞台に、TRIGGERとアイナナそれぞれの事情を確認し、ここまでの歩みがアイナナを鍛えた様子を実地で見せる作り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
ある意味第4話のアンサーと言えるエピソードであり、あの時プロの矜持を見せて話を引っ張ってきたTRIGGERが、悩める主体の位置まで降りるお話ともいえる。
冒頭、何気なく会話を積む廊下のシーンが良くて、エピソードの課題とキャラクターの状況を、スマートに示していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
一織のアタリが強すぎる言葉を翻訳して、ソフトに伝える三月の姿を見ると、『兄ちゃんはずっとこういう苦労をして、弟の才能と世間を馴染ませてきたんだろうな…』と思う。
才に劣る兄が、尖りすぎた才覚の穂先を和らげ、世間に通じる形に整えてくれるからこそ、一織は怜悧に全てを握り込める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
そんな兄の庇護を、一織はちゃんと認識しているのか。情があるのは判るが、無意識に作っている才覚の上下を判っているか。年の上下と逆転してるのが、コンプレックスを加速させる
まぁ三月のターンはまだ先だろうし、今回はアイナナが勝つターンなので、兄弟の桎梏はそこまで重要ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
むしろTRIGGERとアイナナに別れたもうひとつの兄弟、天と陸のセンター対決が、お話の中心にある。
アイドルとしての実績も、ファンへの姿勢も、兄貴の俺のほうが上。
廊下ですれ違った段階では、今までどおりそう確信していた天だが、紆余曲折を経てプライドをへし折られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
ファンの求めるTRIGGERを、しっかり届ける。演者側の事情を観客席に撒き散らさず、完成度の高いステージで夢を見せる。
それがプライドの源泉であったが、『大人の事情』で叶わなくなる。
その穴を埋め、激しい風にさらされつつも『アイドル』『センター』張り続けたのは、下に見ていたはずの弟、七瀬陸である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
キツい。
愛弟から引き離され、突っ張って自分を保ってきた一個人としても、ファンに向かい合い誠実に活動してきた『アイドル』としても、アレはキツい。
そのキツさが、頑なな鎧を剥がさせ、等身大の七瀬陸を素直に見つめ、等身大の九条天と向き合わせる足場にもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
怪我の功名…となるかは今後次第だが、『アイドル』として人間として、必死に走って追いついてきた小さな弟の姿を、あの薄暗いバックステージでようやく、天は見つめられたのではないか
そんな成長の確実な助けになっているのが、俺らの八乙女楽のアドバイスである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
『センターは胸を張って、ユニット全部を光らせろ』
キツめの注文は、自分たちのセンターが実際にやってくれていることを、期待の新人にも求めるからだ。やっぱアンタ、アイナナもTRIGGERも好きすぎない?
TRIGGER三人の絆の強さ、ニンの良さをしっかり見せて、しかしそれが事務所という巨大な装置、八乙女父のエゴイズムに踏みつけられている様子を見せるのは、彼らを保護する上で大事だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
大和の挨拶に、構えずちゃんと言葉を返す。この短いやり取り一つで、龍之介の柔らかな人格が見える。
ファンに敬愛、仲間に信頼。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
TRIGGERはアイナナに負けないくらい、あるいはそれ以上に立派な『アイドル』であるが、しかし取り巻く環境は大きく違う。
第11話で”NATSU☆しようぜ”を略奪せしめた規模の強さが、今度は鎖となってTRIGGERを縛る。強さは弱さ、弱さは強さである。
TRIGGERはステージで完結する世界を見据えて、事務所(というか八乙女父)はその外側に広がる巨大なビジネス(と、過去の取った取られた色恋沙汰を処理できない、ズブズブしたエゴイズム)を見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
お互いの世界を回すロジックが異なるので、当然対立するけども、上下の構造ははっきりしている。
事務所が上部、TRIGGERが下部。『アイドル』がいなくなってもビジネスは回るが、『大人の事情』抜きでは『アイドル』は存在できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
冷たい事実を突きつけられて、TRIGGERは身動きが取れない。事務所のバックアップを受けてこそ、ファンとの交流が可能というのも、否定し得ない事実だからだ。
『嫌なら路上で歌え』というマネジの言葉は、逆を返せばTRIGGERは路上で歌ったことがない、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
八乙女という巨大な傘(あるいは檻)に守られ、約束された成功のレールの中で必死に足掻き、レール以上の期待と愛を自力で集める。プライドをエンジンに、必死に走る。
これに対し、アイナナは『路上で歌っ』た。事務所の傘は誠実だがそんなに大きくはなく、デビューが遅れたり、曲をパクられたり、色々あった。初めてのデカい舞台にアガったり、自分優先して仕事に穴を開けたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
『プロ』らしくない部分をむき出しに、ここまで走ってきた。
その泥臭い歩みが、アウェーでも自分らしく歌い切るタフさ、それでも『ファン』を笑顔にしたいという気持ちを支えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
ネット番組や路上ライブで知名度を上げ、巨大な傘を持たないがゆえの機動戦でのし上がってきた、雑草の強さ。アイナナ二回目のステージは、そういうものに溢れている。
そんな彼らに対し、当然『ファン』は冷たい。見たいのはTRIGGERであって、アイナナではないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
しかしそれでも、アイナナは必死に歌う。奪われた自分たちの曲を『TRIGGERの曲、一緒に歌おう!』と語りかけ、舞台裏の薄汚い事情を必死に隠す。
そこには第4話でTRIGGERが見せた『プロ』の姿があり、10話かけてようやく天井に手をかけたアイナナの成長がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
それはTRIGGERにとって、自分たちの理想を他人に取られた悔しさ、果たすべき夢を果たせない辛さに満ちた、エグいステージだったと思う。
色んな事情(八乙女父と局の揉め事が可視化されず、『なんだか知らんがとにかくヤベェ』なあたり、八乙女父の機能が透けて見える)に押し流されて、『先を行くTRIGGER、後を追うアイナナ』という構図は逆転した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
しかしTRIGGER自身は、何も変わっていない。誇り高く、優しく。立派な『アイドル』だ。
となると、焦点はTRIGGERを縛り付ける檻、八乙女事務所となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
自主性と夢、意志を封じ込めることなく、アイナナを守り羽ばたかせる『小鳥遊事務所と、冷たいビジネス、振り切れない過去に支配され、子供に歪みを押し付ける八乙女事務所。
『家』の二つの顔が、クライマックス前に浮かび上がってきた
ここでTRIGGERとアイナナの差異点、飛べる側と飛べない側の違いとして、紡=プレイヤーを配置している所が、快楽充足の構図として死ぬほど巧妙だな、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
事務所を代表してアイドルに接する紡(≒私)がいるからこそ、アイナナはTRIGGERみたいにはならない。彼らを守り、飛ばせてあげられる。
『アイドル』の物語であるアイナナに置いて、ステージでの活躍、目立った勝利は全てアイドルに回される。しかしそれを保証する根本的な自由は、事務所(≒『家』)が保護すればこそ開放されるし、事務所の理解と交流がなければ、TRIGGERのような不自由に落ちてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
決定権は『家』にあるのだ。
ある種のハウスキーパーとしての『”女”』という、世間に流通する(ある種差別的な)イメージすら逆手に取って、『良き事務所』としての八乙女、それを代表する紡の唯一性を確保し、それに自己投影する(だろう)プレイヤーの快楽を保証する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
世界を壊さず気持ちよさを生み出す、見事な運びだ。
無論、紡に『私』を投影するか否かはユーザー個人の選択に委ねられていて、『アイドルを見守るカベになりたい』『紡CHANGも見守りたい』というユーザーも、多数いるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
しかしそれを踏まえた上で、『顔のない投影対象』『一人称の代理人』として、紡はゲーム(とアニメ)に組み込まれている。
『事務所』が『アイドル』を規定するのであって、『アイドル』が『事務所』を支配するわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
今回TRIGGERに押し付けられた構図は、事務所とアイドル、『家』と『子供』の上下関係を規定する。そこから離れ、『家』と『子供』の幸福な共犯を提供できる『正解』として、小鳥遊家が用意されている
そしてアイナナの少年たちにとって、シェルターであり社会への接合点でもある『家』は、最も身近にいる世界唯一の『女』、小鳥遊紡が代表している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
『アイドル』が自分らしくいられる、絶対唯一の善。その代表者のポジションを、紡は約束された。なかなか面白い唯一性の作り方だ。
無論、クソ親父の身勝手で冷たいロジックは、一分の理はありつつ否定されるべきものだ。紡が背負う『家』のあるべき姿は、それが心地よいからではなく、正しいからこそ正当性を持ち、『正解』足りうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
そういう真っ当なロジックの奥に、キッチリ気持ちよさを確保している所が、巧くてエグいなぁ。
クソ親父のクソなところは、ゼニのためビジネスのため、ガキが見えない世界の真理のためとうそぶきつつも、どーやら小鳥遊パパンと小鳥遊ママンを取り合った過去が尾を引いて、取り返しのつかない過去の復讐のためにゴチャゴチャやってるところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
顔の良い少年たちが『アイドル』を私利の入り口(大和の言い回しを借りると『復讐の道具』)として飛び込みつつ、激しい波風とアツい経験でその生っちょろさを叩き直され、『アイドル』を『アイドル』として求め、胸を張って演じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
アイナナには、そういうストーリーラインがあると思う。
アイナナが思い直した(そしてTRIGGERが最初から克服している)『アイドル』を何らかのツールとして見る視線を、八乙女父は一切克服できずにいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
彼にとって『アイドル』はビジネスの道具、過去に復讐するための武器、代返可能な心のない機械でしかない。それを思い直すこともない。
そんな歪みに巻き込まれ、ただ『アイドル』で居続けようと願い果たされないTRIGGERに、実子である楽がいる所が、『家族』を物語のコアに据えたアイナナっぽいなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
『子供は親の道具でいろ。お前の自由はクソくらえ』
そういう歪さに、多かれ少なかれこのアニメのキャラは囚われている。
そんな『親』のカルマを最前線で浴びる楽と、作中最も良好な親子関係を構築できている(ことが、事務所全体のムードを作り、アイナナに恩恵を与えてもいる)紡が、けっこう強めに交流しているのは、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
親世代の対立と子世代の融和の対比、というか。
ラストでアップになった八乙女父の血走った目は、過去だけを見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
『俺が一番銭金しかないリアリティを見据えて、お前らに仕事を与えてやってんだ』
そう言いたげな彼は、既に終わった恋に執着し、目の前でアイドルとファンが作り出すステージの熱気も感じず、一人孤独に暴れ続ける。
息子に言われてたように、今後高慢と蒙昧のツケを払うことになるんだろうが、それにTRIGGERが巻き込まれていくのはシンドい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
シンドいが、そのシンドさを『ファン』があんま理解してくれなさそうなのは、第4話で見せたTRIGGERのプライドと裏腹である。ステージ裏のことは、ファンには関係ないのだ。
第4話では非常にポジティブなものとして描かれていた、プロの矜持。それを支える破断が、実は強烈に『アイドル』を蝕みうること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
巧くテーマの裏側を掘る配置にもなっていて、なかなか面白い。『ファン』が持ってる薄暗さ、冷たさにあんま嘘をつかないのは、アイドルモノとしてのアイナナの独自性だ。
その上で、幾重にもねじれたアイナナの”NATSU☆しようぜ”は、ファンに届く。色々ありつつもそれを表に出さず、必死に純粋に『アイドル』しようとする姿勢は、冷たさを揺り動かして熱を与えるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
そういう純朴さに夢を持ち続けていることが、作品がニヒリズムに落ちない最後の砦なのだろう。
そんな感じの、荒波揺れるサウンドシップでした。窃盗に続き殺人未遂とは…重犯罪系アイドルストーリー、アイドリッシュセブンって感じだな!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
変則的な形で『TRIGGER超え』を果たすことで、アイナナが積んできたもの、TRIGGERの不自由、両方見える感じですね。
TRIGGER個人の善性が、事務所の縛りで存分に発揮できない状況はフラストレーション貯まるし、『こんなんで勝っても嬉しかねぇよ!』って感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
だが、今後色々ゴタゴタした後あるだろう正面勝負を、より気持ちよくぶっ飛ばすためのタメ…でもあるかなぁ。
とりあえずしばらくは、クソ親父のクソ暴走をしのぎつつ、道を探していく感じか。TRIGGERのジレンマにアイナナがどう手を差し伸べ、ねじれた兄弟関係がどういう出口を見つけるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月25日
見どころ満載、風雲急を告げるアイドリッシュセブン。来週も楽しみですね。