3月のライオン 第21話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
オリンピックの余波を受けて、ライオン最終話は二話連続放送ッ!
というわけで、ひなちゃんのお受験が終わる冬と春のお話。少しの波風ありつつ、色々あった一年間を締めくくるのに相応しい、ゆったりとした運びに。雪の白から桜色へ、穏やかな色彩変化が印象的。
僕は3月のライオンのアニメを見るとき、常々『水』の表現がよく刺さった。様々に形を変え、時に喉を潤し時に溺死させてくる『水』。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
人生の諸相を切り取ってくるドラマの明暗に合わせ、作中の水の表現も大きく変化する。
宗谷と歩いた仙台の清廉。悪意で濁った教室の重たさ。それらは水に仮託される。
今回のAパートでも、『水』は様々に姿を変えつつ、画面に写り続ける。チラホラと冬の気配を伝える粉雪。たゆたう大河。降り積もる白。湯船に貯まった温もり。涙。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
温度によって姿を変え、あるいは器によって形を変化させつつ、『水』は静かなドラマを清潔に伝え続ける。
人生を脅かす黒い悪意、重たい緊張感は今回のエピソードにはないから、『水』の描かれ方はとても清潔で、命を養うものになっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
うっかり地雷踏んだ零ちゃんが浸かる湯船は、自分を大事にできなかった時代の溺死桶ではなく、心と体をほぐすケア用品として描かれている。
降る雪も、ひなちゃんの体調を崩すぐらいに冷たいのに、仙台や京都で、宗谷に降り注いだ雨よりも柔らかく、暖かく見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
スノウフレークの表現がなかなか新しくて、雪の柔らかな暖かさを巧く切り取ってきた。シャフトのエッヂな表現力が、キッチリドラマと噛み合う瞬間があるのが面白いところだ。
水は流れ、形を変える。少し害されることはあっても、転びそうになっても、隣りにいる人が支えてくれるから大丈夫。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
『滑る』を過剰に気にする状況を生み出し、暖かなホームコメディを彩る小道具としても、雪≒形を変えた水は仕事をする。なかなかに面白い。
序盤の零くんは、食事にしろ病気のケアにしろ、自分も他人も大事にできない描写を背負っていた。そんな彼が看病をし、隣り合って杖となり、合格祝いにワイワイ飯を食う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
水に見守られ、急き立てられ、そういう所まで来たのだと、今回の話は静かに追いかける。
受験の当事者であるひなちゃんを追うように見えて、実は零くんを追っているカメラの屈折とか、それが捉える街の景色、家の温もりとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
今回は静かな運びの中に、一応の幕を迎えるのに相応しい情緒的準備を積み重ねていく意図がしっかり見え、タフで力強い運びだった。
ラス前ってことで気合が入ったのか、モモちゃんの幼児仕草が作画・演技両面で冴え渡っていたのは、非常に素晴らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
幼児特有の足の突っ張り方が堪能できて、ほんと良かったです。なんであんなにベビーは、ときに脆くときに力強く見えるのだろう…。(ペドポエム)
『いじめ』という、重く淀んだ水。ひなちゃんが涙を流しながら『それは間違っている』と叫んだ結果、色々あった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
それはひなちゃんの闘いであると同時に、零くんが時間を遡行して自分自身を救う結果にもなり、彼は大きく変わった。強くなり、優しくなった。
その結果としてひなちゃんの高校合格があり、義父との再開がある。物語が始まった時は駒で殴り合うしかなかった二人は、笑顔でマトモな言葉を交わす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
それがまた一つの因となり、別の果を生むのだろう。『ゆく河の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず』である。
ヤングアニマルと(当たり前に)恐れられ、あるいは『零ちゃんだから』で信頼され、あるいは侮られ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
そんな外野の視線とはまた違う感情を、零ちゃんは抱えている。中学3年生に向けるには重たすぎる崇拝だが、時間をさかのぼって救済する奇跡を起こされてんだから、しょうがないちゃしょうがない。
その感情もまた、一つの結果であり起因だ。水のように形を変える心が、運命に流されて一つの形を見せる。大河のように緩やかか、雪のように清らかか、はたまた人を死に至らしめるものか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
そのどれもを、『水』に託して描き続けるのだろう。今のところ、恋とは少し違う貴水の色が、零くんの心にはある
それをもたらしたもの、それが運んでいくもの。『家』という船に乗って流されていく人々の姿を、悲喜こもごもで描いてきたこのアニメらしい、冬と春のスケッチでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
寒さから温もりへ。複雑な温度のトーンを見事にアニメに封じ込めていて、良い空気感がありました。次回も楽しみ。