カードキャプターさくら クリアカード編を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
異界を超えて、日常は続く。光に満ちた朝を乗り越え、過去が蘇る暗室へ。幼い純情がシアタールームに閉じ込められて、背丈はそこまで伸びていないはずなのに、不思議と懐かしい。思い出はいつでも、未来の中に。
知世ちゃんホームで大暴れなエピソード
というわけで、メイリンちゃんを迎えての休日はまだまだ続く。緩やかで柔らかな交流を幾重にも折り重ねつつ、乙女の純情、小さな成長を確認しつつ、過去が形を変えて再演されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
かつて完遂できなかった演劇のリバイバル。今回シアタールームで見たものは、クリアルーム編全体を映写したか。
クリアカード編は穏やかに豊かな生活を切り取る歩みと、映像的な攻めた画作りが同居していて、なんとも不思議な歯ざわりがする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
幻想とデフォルメに彩られた不思議な取り合わせが、アクションシーンになると途端に素直な画作りでまとまる緩急含めて、実は凄く攻めたアニメだと感じている。
今回もスジだけ追うと、女の子たちが自宅でリッチに朝の時間を過ごして、その後ホテルと見紛うばかりのリッチハウス大道寺邸に集合し、小狼くんとさくらの馴れ初めを堪能しただけのように見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
完全に、披露宴用の映像だったなアレ…ダンスを繰り返す内に撃時空に飛ぶあたり、完全に少女漫画文法。
しかし画面からは奇妙な緊張感とバロックな画角が随所に見えて、緩やかな運びに緊張感を与えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
なんとも言えない怪しさと不安定感を溜め込んだ、詩乃本の朝食。瑞々しさに溢れたイングリッシュブレックファストは、毒杯のような禍々しさに満ちている。
未だ正体を見せない海渡さんの不気味を反映するように、反射と陰影、湿り気と大胆なトリミングに満ちた絵が、見た目通りではない危うさを巧く醸し出してくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
この危うい日常描写は徹底されていて、クライマックスの隠蔽に一役買ってるなぁ。
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清浄可憐なはずの食卓で、海渡さんの手にまとわりつく仕草には重たい粘性があり、なんとも怪しい雰囲気を強調している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
SDと抽象化が多用されつつ、その合間にこういうクローズアップが多用されて、見た目通りののんきな話ではないと教えてくる。クリアカード編の映像文法は、けっこう難しい。
これは舞台を変えてのさくら&メイリンの描写でも同じで、とにかく『指』が喋る。恋人への心配、親友への配慮、恥じらいと愛情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
微細な感情は細かく手と足の指に乗っかり、カメラは執拗なクローズアップでそれを切り取る。
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携帯電話を受け渡し、通話をするだけの日常的な光景。しかしそこにはお互いを思いやる気持ち、それをなかなか素直には出せない気恥ずかしさが幾重にも重なっていて、複雑な表情を持つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
フェティッシュでマニアックな絵を作ることで、日常に潜む精神性を浮き彫りにする運びは、なかなか鮮明だ。
ホームシアターに入ってからもそうだが、やっぱりメイリンの対人視力が異常に良い。初めて大道寺家に上がり込む秋穂を緊張させすぎないよう、結構ざっくばらんに振る舞うのと同じ気配りが、さくらに通話を明け渡す仕草から良く見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
その便利さにどっかで報いてほしい感じも、正直あるが。
至近距離で感情を切り取ったかと思えば、突き放した客観を画面に写しもする。三人が合流し知世ハウスに向かう道のりは、五月の風を遠景で見せる画角が連続し、ちょっと冷たい印象すら受ける。対話してるのに、顔のクローズアップはなしだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
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そういうのは暗室に入ってから、出会った日の幼い二人を客観視する映像を前に、存分に積み重ねられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
思い出の中で、心のときめきを反映して具象は解体され、世界には花が満ちていく。心理のひだが世界を覆い尽くす、微細な少女漫画的表現力。
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クリアカード編が『カードキャプターさくら』という物語を正当に引き継ぎつつ、そのあまりの巨大さをある程度客観視し、メタ的な再話を試みている様子は、幾度も描写されてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
どうあっても、既に終わってしまったオリジナルの影からは逃れられない。なら、それを踏まえた上で語りに行く。
ロマンスと日常の豊かさに溺れているように見えて、クリアカード編は非常に冷静な自己分析、それをハネイした物語構造に支えられているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
今回過去の物語を確認したのも、どうやっても『CCさくら』の巨大な神話に飲み込まれてしまう己を、客観視せざるを得ない冷静さの一環だと感じた。
知世は中断されてしまった演劇の完遂を望む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
それは愛しいさくらちゃんの晴れ姿を見たい個人的欲望の発露であり、同時にもっと大きななにか、知世をシャーマンとして作品世界に現臨せしめられる、作者という神の意志を反映もしている。
あらゆる物語がそういうものだが、ことクリアカード編は色が濃い
映像の中に封じ込められた、未達の過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
しかし現実はそこから飛び出し、身勝手に走り回って恋は成就した。あの時は不器用に王子様を演じているだけだった小狼くんは、すっかりスパダリと化して恋人を守るために、優しく強く戦い続けている。
さくらもまた、形のわからない恋に翻弄される少女ではない
自分の意志、自分の恋を強く握り込み、必要とあらば眠りの魔法で他人を黙らせることもためらわない、一人の戦士。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
『転寝』を巧妙に使うバトルシーンからは、経験を力に変え、愛を覚悟につなぎ合わせた『大人』のさくらが、良く見える。まだほえほえ言っとるが、同時に立派な魔術師でもある。
拙く美しい、恋の演劇。その雛なる姿を追い越して、中学生のさくらと小狼、クリアカード編の物語がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
たとえ同じ演目を演じ直したとしても、役者の成長を反映して物語は別の形をとる。同時に再演である以上、強く結びついたものがある。差異と合同は絡み合い、永遠と一瞬は背中合わせなのだ。
そういう不可思議で愛おしいものを、もう一度語り直すためにこそこの物語は用意されているのだと、わざわざ劇場版の過去映像と『今』を混ぜ合わせる運びが、しずかに語っているように思えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
その冷静な視座と決意は、クリアカード編が否応なく配置されている文脈に、しっかり適合しているとも。
どうあっても再話を免れないのなら、愛おしさと知恵を破裂するほど詰め込んで、過去と繋がりつつ自分だけの現在、新しい未来へ繋がるような物語を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
そういう志があればこそ、クリアカード編は懐かしくて新しい、『今』のCCさくらたり得ているのだと思う。
怪現象を追う戦いも、再演を望む知世の願いも、謎を秘めた物語も、まだまだ先に続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月22日
その歩みと道程、込められ秘めれたものを穏やかに整理し、陳列するようなエピソードだったと思います。詩情の高鳴りと冷静さが同居しているのは、結構珍しく強い制作姿勢だなぁ…。来週も楽しみです。