BEATLESSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
企業、警察、民間軍事。様々な勢力が己の思惑でパワーの渦をぶつけ合う中、台風の目のような日常が凪ぐ。平穏の中だからこそ撓む鬱屈。出口のない赤い情動。加速する世界と、置いてけぼりの敗者達。
最後の日常をそれと知らず、人々は謳歌していた。かくして、人類最後の夕日が沈む。
そんな感じの谷間回。相変わらずギャルゲしてるアラトの呑気さと、その周辺で加速しまくる状況との対比が鮮烈というか残酷というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
ひと足お先に破滅に頭から突っ込んでいく紅霞ちゃんとケンゴのどん詰まりが、アラト&レイシアのヌッるいギャルゲムーブ、リョウ&エリカの企業チェスと対比される形か
レイシアが釘を差したとおり、エリカのギャルゲムーブは悪魔の囁きであり、自分の望む未来を引き寄せるためのツールとしてアラトを使い潰す、巧妙な手筋だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
レイシアのプロモーションをファビオンが握っている時点で、知らずアラトはエリカの皿の上に乗っかってるわけだが、その束縛をさらに詰める手
公安の尾行をマリアージュ謹製の超監視技術で丸裸にし、紅霞自身すら気づいていない詰み筋を読み切るエリカ。高い地位と、それを活かし切るさしての巧さで、オーナー勢の中で一番アドバンテージを握っている状況。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
そしてそういう優位を隠し、オトモダチ気分でアラトをハックもしてくる。
エリカは紅霞を『悪いマスターに決定権を預けた、詰みに向かって突き進む人形』と評する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
一瞬写ったハゲが抗体ネットワークの上層であるなら、それは社会不満のガス抜き穴として、権力者が捏造した巨大なマッチポンプ装置だ。世界を自動化しているのは、他ならぬネオラッダイトの親玉という。
hIE絶滅という表看板ではなく、適当にガス抜きし、適当に自動化し、上がりを吸い上げ肥え太るのが目的の、中枢無きリゾーム…という体をとった、古式ゆかしい悪の秘密結社。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
そこに確固たる未来のデザインはなく、古式ゆかしい腐敗が揺蕩う。体重を預ければ、床板踏み抜いて地獄にまっしぐらだ。
弱い手札から最悪を選んだと、紅霞を罵るのであれば、エリカはマリアージュに良い未来をデザインしうる『なにか』を持っていると、自分を判断していることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
レイシア級の戦いを公然化し、世界の変化を可視化する。自動化が過致命的であるという自己のヴィジョンを、より鮮明に叩きつける。
キティさんが着込めば、ゾンビだってファンシーになる。価値を釣り上げる記号の操作は、時に内実以上に状況を操作しうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
エリカは既存の秩序や権力を保持・加速するのではなく、切り崩す変質させるためのアイコンとして、レイシア級を使い潰すヴィジョンを持っているようだ。そのためのパワーもある
暴力と強制ではなく、サービスと広告による陰湿な社会変化。レイシアを写した宣伝カーが、エリカにとっての爆弾だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
そういう強いヴィジョンを抱え込み、他のレイシア級を激しい戦場に引っ張り出すべく、豊富な財力を盤面に貼る。エリカの戦いは速く、強く、安定している。
リョウはエリカの戦いに結構近いポジションにいて、見ているヴィジョンは正反対だ。自動化されない、人間らしい速度の世界。財と自己保存と足の引っ張り合いと愚かさが、曖昧模糊な権力を維持している、ヒューマニティの王国。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
メトーデにキンタマ握られつつ、リョウはなんとかその形を維持したい
そのためのデコイとして、リョウは紅霞をPMCに差し出す。そこでメンツを立ててもらえば、他のレイシア給には踏み込まれず、ミームフレームという利益体への奉仕にもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
なんとか点数を稼ぎ、発言権を確保して、出世レースの先に出る。会社持ちのエリカと比べると、ちと後方にある決死の戦い。
それでも、賄賂のように差し出されたスペック情報で、紅霞ちゃんを追い込む輪っかは狭まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
経済や法、社会全体に接合し、そこに影響を行使しうる大きくて広い力、あるいはその媒介としてのオーナー。単一で完結した兵器、『人類との競争に勝つ道具』である紅霞ちゃんには、持ちえないパワー。
アナログハックの下手くそな紅霞ちゃんは、抗体ネットワークの欺瞞をクラックして便利に使うことも、自分を尾行する公安を操ることも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
どんどん狭くなる足場の中で、色んな連中の都合に踊らされるマリオネットとして、鉄火場に追い込まれていく。紫織と良く似た無力な人形。
それでも、だからこそ。無力な己が世界にあることを刻みつけるべく、無駄と知りつつ立ち向かう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
その矜持こそが貧者の一灯であり、その無力こそが彼らの哀しさだ。鐘も権力も、物語に選ばれる特権も持たないまま、テロルの装置になるしかなかったケンゴとも、紅霞ちゃんはよく似ている。
より巨大で、より陰湿なパワーに絡め取られながら、紅霞ちゃんは道具として、人間模倣機械として、自分の戦いに意味を求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
だからこそ抗体ネットワークやレイシアと取引をして、巧く乗りこなせずどん詰まりに追い込まれて、その果てにケンゴの魂を聞きに来る。
お前の戦いは、わたしの戦いだと言う
顔のない巨大なシステムに組み込まれ、自爆兵器として切り捨てられる二人。ケンゴは戦う力を持たず、紅霞ちゃんは戦う力しかもたない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
だから、惨めでモテない金もない、お前らのために戦ってやるよ、と紅霞ちゃんは言う。世の中、頭のいいエグゼク様だけで出来上がってんじゃねぇと吠えてやる、と。
そういう意味を他人から借りることしか、紅霞ちゃんが自分の『死』をデザインできないのは、やっぱり寂しいことだなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
スノウドロップのような大規模インフラ支配も、レイシアやメトーデのような情報戦も、マリアージュのような優秀なオーナーも持たない紅霞ちゃんにとって、それは必然だ。
可愛いキティになれない、巨大な価値観のアイコンとして自分をショーアップできない紅霞ちゃんは、最後の最後でケンゴの魂を背負おうとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
何者にもなれない、加速し変質する世界にただ置いてけぼりにされていくだけの、百億衆愚のありふれた鬱屈を、己の大義、己のデザインに引き受けつつある
それは未完成の機械が、悪手を重ねた上でのやけっぱちかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
それでも、紅霞ちゃん(とこの作品)が、アラトには背負えないし真実の意味で想像も出来ない、主役になれない圧倒的多数の薄暗さを背負って、約束された死に向かうシーンを作っているのは、僕はとても良いことだと思う。
アラトは未だ、特権的な微睡みの中にいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
ヌルい未来を一緒に夢見るレイシアすら『もうヤベーから、どうしたいか考えておけ。ギャルゲできる時間みじけーから、こっから人類改変SFアクションだから』と釘刺しているのに、夢見るのはエプロン姿のイブである。どんだけだオメー。
その夢は偶然と主人公補正と、ヌルくない現実に向き合う数多のパワーの思惑と手管の重なり合いで成立している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
針一つで弾けるような危うさを内包しつつ、アラトはチョロくいられるモラトリアムを、必死に夢見続ける。その揺り籠が、自分の居場所だ、とばかりに。
ケンゴの揺り籠はクソダサい畳敷きの部屋で、時代に適合できない定食屋で、出口を見つけられない鬱屈だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
機械少女とのロマンスなんぞなく、うっぷんバラシのはずが公安にマークされ、金も冒険も主役特権もない、未来に繋がらない悪夢。それは、紅霞ちゃんのやけっぱちバトルでも、穴が開かない。
それでも、マグカップの価値を高めるキティのように、あるいは機会のボーイミーツガールを演じるレイシアのように、紅霞が象徴となることで、ケンゴと、ケンゴのようにどこにもいけない山盛りの非主役の思いは形を与えられ、アイコンのもとに意味を獲得できるかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
そういうふうに何らか意味を与えなきゃ、ただただ本当に無意味になってしまう焦燥感を、ケンゴと紅霞、二人の負け犬は共有しているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
それは生まれついてのhIE人権論者というスティグマを刻まれた、アラトには判らない鬱屈だ。主役が背負えない大事なものを、負け役が今背負いつつある。
今回リョウとエリカが整えた、紅霞の死刑台。その上で紅霞がどう踊り、それをケンゴとアラトがどう受け止めるかは、強くて金持ちで頭がいい人が世界を動かすこの物語において、かなり大事だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
世界はそいつらだけで出来ちゃいないが、世界を動かすのはそいつらのパワーだ。その断絶、その矛盾。
戦うだけしか能がない、その戦いすらも自分のものにならない。一番最初に負けていく、将棋で言うなら歩兵、チェスで言うならポーン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
しかしそこに沸騰する感情の血潮は、クイーンやナイトと同じ熱量と価値を持ちうる。それを証明し宣言するような戦ぶりを、紅霞ちゃんは果たしうるか。
まぁアラトサイドにすり寄って、レイシアの指揮下で生存するルートもないわけじゃないが、それならケンゴじゃなくてアラトの前に行ってるよな…悲壮な死相が濃厚に漂っているが、否だからこそ、今の紅霞ちゃんはカッコいい。アイコンたりうる透明な強度が漂いつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
人間と機械の未来という盤上に、己を望むように配置できない駒達。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月28日
指し手の姿をスケッチすることで、ケンゴと紅霞に共通するどん詰まりと、そこに漂う生々しい吠え声を強調するエピソードでした。
その弱々しい声が、世界をどうアナログハックするか、あるいはし得ないか。来週は大事な回になりそうだ