メガロボクスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
蝶々(チョムチョム)が舞う。誰かを守りたいと飛びついて、炸裂した爆弾。両足をもぎ取られて、すがった過去が逃げていく。男の胸に焼き付いた蝶々が、嫉心を青く焦がす。
俺の居場所を奪った若ぇの、ぶっ壊しちまえよと呼ぶ声のままに。義足の魔犬が牙を剥く。
そんな感じの、南部のオッサン回である。超特大の感情が男と男の間を高速高密度で行き交い、なんとも汗臭く泥臭く儚い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
アラガキとジョーは鏡写しのようで、全然バラバラで、このまま勝ってもスカッとしない、痛みに満ちた運びとなった。拳はこんな出口のない感情に、答えを与えてくれるのだろうか?
第1話でアブハチのオッサンが言い、ジョーが受け取った言葉。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
『信じる自分を、信じてみたい』
どん底から人を引き上げる『あした』への希望が、アラガキに爆弾を抱かせた。兵士として、人間として、バカだと判っていても罠に飛び込んでしまったのは、守れるかもしれないと願ったからだ。
顔も見えない誰かを守る。そんな誇り高い自分を守る。爆弾がもぎ取った両足、戦場の混乱と誤解は、簡単にそんな『あした』を奪ってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
帰ってきたら、もう一度一緒に戦おう。そう言ってくれる誰かを信じて戻ってきても、孤独という爆弾が冷たく突き刺さる。すれ違う心と意志。
南部のおっちゃんも、『あした』を失い、市民IDすら奪われて世界のどん底でイカサマをやる羽目になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
それは自分の『あした』を預けていた、一人のボクサーが死んだ…と思い込んでしまったがゆえの、自暴自棄が原因なのではないか。アラガキの不在が、贋作の破滅を呼び込む爆弾だったのではないか
死亡ニュースを聞きつけたときの荒れ様は、そういう想像を加速させる。お互いがお互いの瞳の中に、『あした』を、青い蝶々を見つけていたからこそのすれ違い。つかめなかった時間が断絶となり、かつて魂を繋げた男たちを切り裂いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
まぁ、贋作がヒロインだ今回は。
そんな男たちの愛憎は、過去から伸びる感情の矢だ。しかしそれぞれ別の人間として、二人は別々の未来を見つけている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
贋作にはジョー、アラガキにはミヤギ。『一人で戦わってるわけじゃない』のは、敵も味方もおんなじだ。その連帯が見えるからこそ、繋がりきれない現状がもどかしい。
アラガキが贋作の『今の男』に嫉妬するように、ミヤギもまたアラガキの『過去の男』である贋作に、ある種の嫉妬を抱いているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
アラガキがランキング17位までのし上がったのは、ミヤギや同じ境遇の仲間と『あした』を信じて、一緒に戦ったからこそだ。しかし今、アラガキはそれを忘れている
ゴングの前、ミヤギは『この戦いは、未来のための戦いだよな?』と確認する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
裏切られたと思い込んだ心の傷を、かつての自分に似た少年を殴り倒すことで癒やすのではなく、勝って決着を付け『あした』を掴むため、拳を握るのだ、と。
アラガキはそれに頷くが、当然真実飲み込んだわけじゃない。
ジョーもまた、自分を真っ直ぐに見てくれないオヤジに苛立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
過去、どれだけ濃厚な感情で繋がっていたとしても、今一緒に戦っているのは自分。そういう自負と感謝があるからこそ、ただただ『あした』を一緒に見据えて欲しい。
だが、贋作の単眼が見据えるのは失われた過去と、自分の傷だけだ。
ともに『あした』を一緒に目指し、お互い信じあえたはずの相手が、気づけば遠い。それでも、あまりに深く刻まれた蝶々の傷が、過去に目を向けることを止めさせてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
そんな男たちの未練と嫉妬が、ジクジクと疼くエピソードである。黒い感情の泥が、すごくピュアな愛から生まれているのが理解る
判るからこそ、歪んでしまった思いが、本来収まる場所に収まってくれないもどかしさ、そうなるしかない捻れ方に、なんとも焦がれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
後悔や愛、信頼や夢に、子供のように素直に向き合えたら、どれだけ良いだろう。だが、現実の爆発に砕かれ、なんとか繋ぎ直した心は、そういう歩みを許してくれない。
殴り合い、思いの全てをカンバスに燃やし尽くすことで、過去も現在も乗り越えて、真っ直ぐ『あした』に向かえるのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
ボクシングはそういう、因縁や感情を焼き尽くす激しさと純粋さを、持っているのだろうか。
そういう作品の根っこを問う、泥濘んだ滑走路を整えるエピソードであった。
感情の泥濘の、ねっとりとした質感と熱量、愛憎の入り交じる複雑な色合い、形を見つけられないままの純情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
僕はそういうものが大好きなので、蝶々と爆弾を巡る感情の四角形は、非常に味わい深かった。
同時に、そこから綺麗な蓮が咲いて、『あした』へ向かい合えるような終わりにも、強く期待している
老いも若きも、ボクサーもセコンドも、みな『あした』を目指している。その思いは一緒のはずなのに、なぜかすれ違い、傷つけあってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
そんな不自由なステップを刻むために、アラガキはウェイトを押し上げ、ジョーは鍛錬を積んでいるわけじゃないだろう。
叩いても壊れない、鏡写しの憎いアイツ。そいつに拳を向ける内に、リングサイドで見守る仲間と、もう一度『あした』を見つめ直せるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
アラガキとの戦いは、テクニックと同時に魂を問われる一戦になりそうだ。時間を飛び越え、過去すら救い直すようなブロウを、ジョーに期待したい。来週も楽しみ。
追記 錆びた黄金は、魂を縛り付ける楔
メガロボクス追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
アラガキの嫉妬にどこか、切り捨てられない哀しさを感じるのは、彼自身が『あした』を強く求めつつ、PTSDの激しさが彼を過去に縛り付け、開放してくれない様子が描かれているからだと思う。
拳でのし上がることを決めたチーム番外地のように、アラガキも前に進みたい。
しかし戦場の記憶と南部とのすれ違いが、アラガキにあまりに強く刻まれて、彼を過去から開放しない。その萌芽は仲間との生活の中にあるのに、飛び込みきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
敵も味方も矛盾と足踏みの中にいて、飛びきれないもどかしさが、なんとも苦い話だった。みんな幸せになれればいいのになぁ…。
南部とアラガキの黄金時代があまりに鮮明だからこそ、お互い完全に忘れることも出来ない。これもまた、二人を縛る矛盾だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
様々なものが裏腹に癒着して、重たく男を縛る。ジョーの拳が、それを全部切り裂いてくれたら、なんともスカッとするだろう。次回、そういう話になると良いな。