シュタインズ・ゲート ゼロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
年は行き過ぎて、男は取り残される。誰とも共有できない過去、去っていったものの残り香。風吹けば恋を思い出し、笑い声は既に遠い。
華やかさの中にどうしようもない後悔にじむ正月を追いかけ、それでも少し前に進もうとしたところでドーーーンッ! な回。
というわけで、最後のヒキで一気に話がひっくり返る回である。何事もない日常に馴染めず、しかしそれでも皆の笑顔と好意を杖に前に進もうとした岡部くんを、丁寧に丁寧に追いかける…のを前振りに、状況は一気に地獄である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
オカリンはどんだけ曇らせても良い。
話の大きな転換点となる今回は、ここまで六話のゼロ全体をもう一度やり直すような作りだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
岡部くんの孤立と苦痛、それでもにじみ出る優しさと強さ。周囲の人々の無力と歩み寄り。死人を置き去りに進んでいく時計と、日常を侵食する不穏な目配せ。過去と未来をじっと見せる、静かな正月のスケッチ
冒頭、まゆりが自分の無力さを噛みしめるように苦笑いする描写が、なんとも痛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
ダルが昔の変態キャラを頑張って演じて、過去が戻ってくるよう頑張るシーンが辛い。
みんな明るく優しい良い奴らで、そいつらがどんだけ頑張っても戻らないものがあることを、細かく確認する話だった。
ラボメンが岡部くんのことをよーく見てて、地雷踏んだ瞬間に『あ、やべ』って表情するのも辛いし、アマデウスがラボの輪に溶け込むのを能面のような無表情で見つめてる岡部くんもしんどい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
やっぱゼロは、黄金の日々がどうしようもなく壊れてしまった事実を丁寧に積み上げてきて、心臓に良くない。
今回は岡部くんの主観が映像としてはっきり描かれて、どんだけケアしてもらっても超限界なところが鮮明になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
あらゆる場所に牧瀬紅莉栖を探してしまう、亡霊の視界。もう居ないことは痛いほど判っていても、心が失われた愛を求めてしまう。それで傷ついても、止める訳にはいかない。
あらゆるシーンで『そこにはいない紅莉栖』を幻視し、『ふれあい橋』で楽しく過ごすラボメンと全く触れ合えていない孤独を、しっかり確認する回であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
完全に山崎まさよし”one more time one more chance”の世界だったなぁ…”いつでも探しているよ どっかに君の姿を”だったなぁ…。
そんな岡部くんの孤独に、するりと滑り込む『牧瀬紅莉栖に似すぎた女』椎名かがり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
時間を飛び越え因果を超越し、まゆりがノータイムでママンしているのが、尊く痛ましい。記憶喪失のタイムトラベラーたる彼女は、岡部くんとはまた別の形でアイデンティティを喪失し、過去の共有ができないのだな。
かがりにはまゆりが寄り添うとして、『牧瀬紅莉栖の不在』を共有できる唯一の存在、真帆たんは対オカリンシフトに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
真帆のあざといヒロインムーブがあまりにも的確で、キッチリポイントを稼いでいるところが、一瞬の希望を掴む展開と巧く重なり合っていた。
オカリンが『牧瀬紅莉栖の不在』を少し受け入れて、前に進むつもりになれたのは、やっぱ真帆がそれを共有し、一緒に悲しんでくれたからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
それは双方向の癒やしで、真帆もまた、オカリンと対話することで喪失を乗り越え、前に進む力を獲得していたと思う。そういう共鳴が二人の間にはある。
真帆がキツく言いくるめないと、岡部くんはアマデウスへの依存によって『牧瀬紅莉栖の不在』を埋めて、現実との接点を失っていただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
それもまた一つの救済なのかもしれないが、現実からドロップアウトすることは、アレだけ岡部くんを大事に思っている沢山の人を置き去りにすることにも繋がる。
幻影を振り払い、紅莉栖を忘れないままに現実に適応すること。思い出と未来、両方と指切りする道へ進もうと岡部くんが決意したところで、ラウンダーさんがドーン! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
幸福の積み木は、全力で蹴り飛ばすために積む。そういう話だと判ってはいるが、いくらなんでもひどくねーか?
とはいうものの、不穏な気配はこれまでも、今回のエピソードの中にも、しっかり埋め込まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
アレだけ子煩悩なMrブラウンが、綯の晴れ姿を差し置いても優先する『野暮用』とはなにか。
レスキネン教授とレイエス教授が、意味深に見つめる先には何があるのか。
幸福な正月の風景に、罅を入れて不穏をねじ込むような描写は随所にあるし、最後にそれは炸裂もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
タイムマシーンという、人類には過ぎた力。紅莉栖の死と一緒にその制御は鳳凰院凶真の手を離れ、巨大な陰謀組織に組み込まれた。ラウンダーの襲撃は、それが動き出したサインなのだろう。
眼の前の鉄砲をどう切り抜けるか(あるいは誰か死ぬのか)は近場のドキドキであるが、牙を剥いてきた陰謀がどう結実し、誰が策謀に繋がっているかという遠いサスペンスも、本格的に起動した感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
ラボメンは日常サイド…だと思いたい。かがりと真帆も。
岡部くんが傷を受けつつ日常の意味を確認して、光の側に踏み込もうとしたところで、世界全体が巨大な非日常…約束された第三次世界大戦に地滑りしていくのは、なかなか残酷な構図だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
守りたいともう一度思えたものは、その瞬間に手のひらから滑り落ちる。それがオカリンの宿命とはいえ、ほんとキツい
穏やかな日常が銃砲で崩壊し、複雑な因果と過酷な運命に飛び込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
これは無印と似通った構造であるが、日常の崩壊はゼロのほうが遥かに早い。オカリンが挫折したことで、大きな罅が入ってしまった日常の強度は、何もなかった幸福な時代とは、比べ物にならない、ということだろうか。
そんな日常を受け止める岡部くん自身の心にもまた、バッキバキに罅は入っていて。けして癒やされないそんな傷を、優しい人達の助けもあってなんとか飲み込んだところで、強引に切開される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
物語全体を駆動させる残酷な宿命を、情け容赦なく確認させられる回でした。
電話レンジもDメールもない今のオカリンは、巨大な陰謀と戦うには武器が足らない。最愛の人も強い心もない状況で、残酷な運命相手にどう戦うかは、今後の見どころだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
けどまぁ…どう見ても負け戦じゃねぇかなぁコレ…頑張れオカリン、負けるなオカリン。負けてもいいとは思うけど。
各国・各種陰謀機関がタイムマシンを求めているなら、鈴羽・かがりのタイムトラベラー組は生きたサンプルだし、岡部くんは多元世界を唯一実感できる超越者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
そら狙うよねって話でもあるんだが、今の岡部くんに『世界と戦え』ってのも酷である。それを可能にするタフネスを、どう回復するか。
過酷さを増す状況変化と同時に、そこら辺のリハビリも見どころかな、と思います。早く岡部くんが『ッシュアっやったらー!!』ってなってくれないと、世界がヤベーんだよマジ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
ここら辺の唯一性を、リーディング・シュタイナーという設定で担保してあるのは、シュタゲのとても優れたところだ。
特別でありたいという強い願いを抱えた(から、本物の天才である紅莉栖に憧れツンツンもした)岡部くんが、リーディング・シュタイナーに覚醒してみたら、特別な能力が破滅と孤独を連れてきて、その重たさに押し潰されてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
ゼロはそういう状況から始まる。
そんな特別性の残酷に背中を向けて、自分の特別性を封じて生きようとしても、動き出した運命はどんどん最悪の方向に進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
少しでも大事なものを守りたいなら、自分を傷つけた特別性をなんとか肯定し、喪失の痛みに何らか別の意味を与えて、立ち向かうための武器に変えなきゃいけない。
ラウンダーが遂に実力を行使してきた今回は、そういう物語の道行きをひっそり見せる回でもあった気がします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
岡部くんがたどり着けた、『トラウマを見据えて、喪失と無力を必死に生きる』という凡人の決意では、世界も岡部くんも救われないのが、なんとも可哀想だ…オカリン普通に生きてもええやろ!
と叫びたくもなるが、運命石の扉に選ばれてしまった勇者には、当たり前の幸福など許されてはいないのだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月17日
一度は背中を向けた、世界の運命を背負える特別性。ボロボロの岡部くんが今後、どうやってそれを肯定するか。その決意を、世界はどう傷つけていくか。過酷さを増す物語に、期待大ですね。