Caligula -カリギュラ-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
愚かな女神が消え去って、水槽は淀み始める。現実では叶えられない望み、破綻した願い。そのざらついた表面が当たり前に皮膚を撫でる時、甘い欺瞞が崩れ去る。
悲しき非モテ戦士・イケPを主役に、ここまでの物語に補足を行う回。かゆいところに手が届き素晴らしい。
ちうわけで、楽士サイドの状況とか、μの奇跡を請い願う側の心境とかを掘り下げていくイケP回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
イケPをしっかり掘ることで、描写の弱かった峯沢くんもぐっと存在感を増し、ここまでの描写で足りない部分をしっかり補強する形となった。
こういう回があると、シリーズのコクが深まって良い。
心に闇を抱えてメビウスに来る以上、キャラクターは皆見た目通りではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
最初メンナク言語でしゃべる勘違い道化野郎でしかなかったイケPだが、μの機能停止によりメビウスの魔法が解け、惨めな現実が見え始めることで、凄く一般的で、だからこそ切実な痛みがキャラに宿っていく。
自分はこういう、『ナメてたやつに血が通っていた事実。それに感じる罪悪感』を活かしたひっくり返しがとても好きなので、今回の話しはとても面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
ぶっ倒すべき『敵』にだって、当然悩みも弱さも人間味もある。その上で何と、どう戦うかが大事な話なのだろう。
イケPは名前のとおり、イケてる自分に憧れ、それが満たされない現実の惨めさに傷ついてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
イケてる顔、スタイリッシュな活躍、カッコいい服にリムジンに群がる女。メビウスの夢は、心についた傷を全て埋めてくれる。
ってわけじゃないことに、イケP自身もちゃんと気づいている。だが、止められない
現実に帰還したところで、惨めな自分と惨めな世界が帰ってくるだけ。なら、夢を見続けてもいいだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
イケPの夢は、たしかに身勝手で稚拙だ。でも、バカにしていいほど不真面目でも、夢見ちゃいけないほど危険でもない。
少なくとも現状では、イケPは現実に帰れば『死ぬ』のだ。
どうにもならない惨めさを受け止め、醜さや弱さもひっくるめて己を肯定できるほど強くなれば、現実でも夢を見れるようになるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
しかし女神様が与えてくれた安楽な奇跡は、そういう成長を促進しない。
痛みには麻酔をかけて、軌跡で夢を現実に。シンプルな幸福論は、より堅牢な変化を遠ざけていく
甘いお菓子を食べ続けて、現実のストレスを忘れていた楽士達は、お菓子が供給されなくなって苦しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
メビウスという閉鎖環境は、μの奇跡で維持されなければ簡単に破綻する。現実を超越した都合のいいルールは、神様がいなければ当然維持されない。壊れたものは、壊れたままだ。
不足、不可逆、自己責任。楽士が逃げ出した現実のロジックが、μ無きメビウスに襲いかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
ファスナーと格闘するスイートP、カード停止に苦しむミレイ、推し変されるイケP。みな現実と向き合えない無様な道化だが、そこには切実さがある。僕らと同じような。
ゲラゲラダメ人間を笑っていたはずなのに、気づけば目の前に鏡を突き立てられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
奴らも奴らなりに必死に、稚拙な嘘をついている。そうしなきゃ自分が保てないほどに傷ついて、そこから逃げ出す弱さを嘲笑できるほど、(少なくとも僕は)立派な人間でもない。
これまで帰宅部の『敵』として描かれていた楽士、彼らが溺れるμの救済に切り込むことで、新しい視点を与える回であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
綺麗は汚い、汚いは綺麗。何事もシンプルには切り分けられない、心の迷宮。そこを女神パワーで強引にシンプルにした結果、生まれる歪みと、掛け替えのない救い。
そこには涙と叫びがちゃんとあって、帰宅部の脱出行はそれを踏みにじることにも為る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
それでも構わないと振り切れて邁進するか、『敵』にも手を差し伸べるか。複雑になった…元々複雑だった世界を前に、帰宅部はどういう道を選択するのだろうか?
そういう奥行きを出す回なので、律くんに裏切りボーイ・カギPが根本的なクエスチョンを投げるのは、シナリオの流れに沿っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
『なぜ戦う。なにを望む』
主人公にしっかり問いかけることで、物語の方向性、現状の価値観も見えてくる。良い問いかけと良い答えは、作品の視界をクリアにする。
メビウスが完璧ではないこと、永遠に夢は見れないことを今回示したので、夢から覚めようとする律と帰宅部のモチベーションにも、一定の説得力が出た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
夢であることに気づけないほど完璧な夢は、ポンコツ女神じゃ作れないのだ。破綻した夢と破綻した現実なら、可能性がある方に賭ける。
記憶≒自分がないながらも、律が見つけた一つの答え。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
無様で切実なイケPの戦いのように、帰宅部の答えもまた、人間の真実(の一端)を担っている。
否定できないホントの事だからこそ、譲れずぶつかり合う。敵さんちゃんと掘ると、主役もしっかり輝くなぁ…。
そういう意味では、イケPのライバルたる峯沢くんの表情も、今回グッと堀が深くなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
ボーッとしたイケメンだとばっか思ってたが、相当捻じくれた過去と精神をお持ちのようで…やっぱ楽士より帰宅部のほうがヤバいな! 知ってたけども!!
イケPが峯沢くんを睨むときの、『イケメンは完璧だから傷つくはずがねぇ!』という無理解は、結構一般的だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
俺が持ってない『神に愛された顔』さえあれば、無憂の世界が訪れる。そう信じてイケPはイケてる顔にしてもらったわけだけども、それは完璧な夢じゃなかった。
つまり顔はすべてを解決するわけじゃないという、ごくごく当たり前の真実にたどり着いておきながら、イケPは峯沢くんの苦痛に、『敵』も傷を受けて歪み苦しんでいるのだという事実に目が行かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
そこに気づいてしまえば、自分が崩れ落ちてしまう以上、譲るわけにもいかんのだ。
しかりバリバリ撃ち合い、コンプレックスむき出しで本音を叩きつけることで、イケPと峯沢くんはお互いを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
イケてる顔と、誰のものでもない自分。お互いないものねだりをして、似た者同士であることに気づけない二人が、ちょっと接近する流れには熱量を感じた。
一般的には、峯沢くんの傷は『治したい不幸』だろう。イケPが望んでも手に入らないツラを、わざわざ傷つける行為は、イケPには許しがたい冒涜と写ったはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
しかし人間捻じくれたもんで、望んで刻んだ『不幸』が、掛け替えのない己の存在証明であったりもする。
μはベイビーちゃんなので、そういう複雑な人間模様には一切理解を及ぼさず、顔面自動修復機能をつけてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
自傷が自損に繋がりもする、複雑怪奇な自己肯定。モノホンの屈折人間を前に、結構フツーなイケPは圧倒される。そんなオマエが好きDAZO…ッ!(唐突な告白)
同時に峯沢くんも、必死にイケ顔を求めるイケPを鏡にして、自分が傷をつけたものの意味、それを求める『フツーの人』の気持ちも、ちょっと判ったのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
そうすることで、顔を傷つけることでしか自分を保てなかった歪さを、少し自覚し肯定できるようになったのではないか。
そんな相互理解の希望が、『つくね1000g』にはあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
イケP…あんな青春ど真ん中の魂ぶつかり稽古しておいて、つくねどこに売ってるか教えてやったのか…やっぱ良いやつだなオマエ…。
そしてそれ聞くのは、峯沢くん感情表現ヘタすぎて分かりにきーが、かなりイケP好きだろ…。
ナオンにチヤホヤされても一切興味なしな峯沢くんが、イケP相手には自分の真実を晒し、イケPの個人的真実も受け取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
『敵』同士とはいえそこには魂の交流があって、お互い分かり会えるかもしれないという希望、惨めさを引き受けて現実で生きていける可能性が見えたと思った。
楽士と帰宅部が『敵』という断絶を乗り越え、魂を混ざり合わせるのは図書館以来であるが、やっぱこういう展開好きだな、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
楽士と帰宅部は露骨お互いのシャドウになるように配置されてるんで、『敵』に自分の影を見て接近していく展開には、物語の歯車がかっちりハマる快楽がある。
カギPが情報を流した結果、楽士と帰宅部が真正面からバチバチする舞台はスムーズに整った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
問題アリアリなダメ人間が、脆い幻想と痛い現実、お互いの理想でしばきあう展開はさらに加速しそうだ。
お互いの魂にヤスリを掛けあう痛いバトルの中で、少しでも自分を見つけられるなら。
そういう希望も強くなる、幻想イケメンと現実イケメンのバチバチ衝突タイムでした。イケPをてこにして、敵サイドや世界への理解も深まる良いエピソードだったなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月27日
今回掘り下げた要素が、今後激しさを増すだろう戦いの中でどう使われるか。次回も楽しみですね。