シュタインズ・ゲート ゼロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
だから今、一秒ごとに世界線を超えて。
己の預かり知らぬ運命に弄ばれ、α世界線へと押し流された岡部倫太郎。失ってしまったはずの温もりが、切開される心の痛みが、青年を縛り付ける。
それでも、まだやれることがあるから、私を忘れて。
そんな感じの渾身のキスしてグッバイ!回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
『もじゃもじゃツンデレ菩薩も、フワフワおっぱい幼馴染もなんぼのもんじゃい! シュタゲのヒロインはこのワシ、牧瀬紅莉栖じゃい!!』と言わんばかりに、助手がヒロイン力で殴りまくるエピソードであった。
いやー、強えわマジ…。
運命に翻弄される岡部くんの地獄絵図を、血の滲むような演技で届けてくれた宮野さんもスゲーし、ダルの察しの良さと優しさも映えてたし、ストリングスの分厚いBGMも最高にエモかったし、濃い闇と鮮明な光を対比する演出もグッドナイスだし、どっしり時間を使う感情の盛り上げも最高だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
力を入れるべき話数にしっかり力を入れ、お話全体を貫く残酷と情愛のダンスを鮮明に見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
オカリンが何と戦っているのかがはっきりと分かるお話を、お話のコーナーとなるタイミングでぶち込めたのは、ホント凄いと思います。出来が良すぎてハードル上る感じもあるけど、余裕で飛び越えるっしょ。
お話としてはシンプルで、α世界線に放り出されたオカリンが限界人間になり、紅莉栖とダルの献身でβ世界戦に戻る、というもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
しかしそこには痛ましい犠牲があり、息が詰まるような苦悩があり、それらを振り払う決意と愛がある。明暗の対比が強いゼロアニメでも、特に鮮明な作りであった。
ドラマ自体がシンプルだからこそ、描写をゆったり、横幅広く作る余裕もあって。そのマージンがキャラの細やかな心情をよく伝え、作品にのめり込ませる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
まゆりの墓に落ちた花弁を、紅莉栖が淋しげに、愛おしげに清めるシーンの芝居とか、凄く尊厳が宿っていて良かった。
まゆりがいない世界線を描くことで、作品全体がテーマとしている『弔意』を、別角度から照らしていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
β世界線において、紅莉栖の死を共有できるのは岡部くんとまほ先輩だけだ。それは二人きりの痛みだからこそ辛く、共有できる相手は貴重な、閉じた弔意だ。
α世界線において犠牲となったまゆりは、ラボメンにもコスプレ仲間にも愛される。哀悼はすべての人に共有され、あらゆる場所が思い出の縁となって心を苛む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
本来、人の生き死にとはそういう風に公開され、共有されることで意味を与えられ、死によってえぐられた心もゆっくりと治療される。
無論、死はあまりに重たくて不在は重たく後を引く。涙は簡単には乾いてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
でもだからこそ、心に溜め込んだ痛みと愛おしさは勝手に溢れてきて、同じ思いを共有する人との間でやり取りされる。そのための儀礼が葬式であり、墓参なのだろう。
皆でまゆりの思い出を話、涙にくれることが出来るα世界線ですら、その不在は癒えていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
翻って、全てがなかったことになり、紅莉栖の死を一人で抱え込み続けたβ世界線の岡部くんの痛みは、どれだけのものであったか。弔意を形にできないのがどれだけ辛いか
そこへ想像の及ぶ、別世界放浪であった。
今回岡部くんは、あまり自発的に行動していない。勝手に世界線が飛び、心はグシャグシャに揺さぶられ、どっちに飛んでも愛する人は死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
ゲロ吐くのも無気力になるのも、まぁ当然である。
ほんと岡部くんをいかに限界人間に追い込むかに、全精力を傾けてるアニメだな…。
なので、話を先に進め物語をあるべき場所に届ける仕事は、牧瀬紅莉栖がやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
電話レンジを再建してしまう天才っぷりも凄いが、岡部が追い込まれている状況を的確に推察し、辛さを飲み込んで背中を押してあげる勇気、彼の傷を労るべく唇を重ねる優しさと、情緒面の強さが目立った。ヒロイン力たけー。
死によって心をもぎ取られ、どこにも動けない。そんな相手に嘘をついて、前に進めるきっかけを作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
まゆりの墓前で朽ち果てようとするオカリンは、祖母が死んで動けなくなったまゆりそのものだ。
あの時『鳳凰院凶真』を捏造した岡部くんは、もう頑張れない。だから、紅莉栖が代わりに嘘をつく。
ノータイムでゲロ吐くくらい追い込まれてる岡部くんを、紅莉栖は再び戦場に送り込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
鬼の所業とも取れるが、しかしここで折れて朽ちていくことが『鳳凰院凶真』の本当の願いでないことを、その助手たる紅莉栖は知っている。
だから『ここは夢だから、現実に帰れ』という嘘をつく。
世界線で区切られていても、そこにあった思いは本物だ。痛みも愛おしさも全部そこにあって、今目の前にいる紅莉栖は岡部くんを愛し、岡部くんに愛された当人だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
でも、そこに囚われてしまっては一歩も動けなくなる。死人への弔意、砕かれた痛さだけを反復する、息をする死人になってしまう。
それは紅莉栖にとってはとても嫌なことで、だから『これは夢』だと嘘をついた。それは岡部くんへの嘘であり、自分への決意でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
まゆりを犠牲に自分を選んだエンディングより、もっとベストな終りがあるはずだから。諦めずに挑んで欲しいと願って、足を止めることを許さない。
非常にマルチエンドADV的な、決意と後押しである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
サッドエンドのその先へ、みんながまるごと幸福になれる終わりへ。
主人公(とその背後にいるプレイヤー)を後押しする決意を、凄く鮮烈に描く今回は、原作メディアの表現力を見事にアニメに落とし込んだといえよう。
Dメールが『本心を告げる』という紅莉栖の決断を破壊するのではなく、一瞬遅らせるだけなのは本当に凄いと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
岡部くんが好きだっていう紅莉栖の気持ちは、とても大事なものだから『なかったこと』にしてはいけない。でも、それを告げてしまえば岡部くんは片方を選んで諦めてしまう。
だあkら、決断がなされた後に飛び込めるよう、一瞬の躊躇を生み出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
紅莉栖は『ハイルナ』と言われても入る。それで立ち止まれるほど、自分の気持も、岡部くんが戦っている運命も軽くはない。
そしてそれを押し止めようと思った、未来の紅莉栖の思いも決意も、また軽くはないのだ。
岡部くんに選ばれた牧瀬紅莉栖。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
岡部くんに自分を選ばせまいとする牧瀬紅莉栖。
過去と未来に分かたれ、複雑に絡み合う二人の紅莉栖、両方を大事にした描写が超絶エモい”ライア”に乗っかって流れるクライマックスは、エモの爆弾かと思う破壊力であった。本気で殴ってきたな…素晴らしい。
今回はダルの書き方も非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
ダチのために本気で怒れるところ、その反応から真実を推察し牧瀬氏に伝えるところ、色恋のナイーブな部分には踏み込まない線引。
紅莉栖とはまた違った意味で、岡部くんに欠かせない親友の強さと優しさがフル回転であり、大満足の出番であった。
岡部くんのシナシナ加減というか、超絶限界点まで追い込まれちゃってる感じも最高で、宮野真守はホンマスゲーなと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
紅莉栖の実在とまゆりの不在にズタズタにされつつ、でもやっぱ触れる助手がいる事実にちょっとだけ元気になって、軽口叩けるようになるまでの運びとか、ほんとリアル。
岡部くんの辛さは、因果が自分を中心に複雑に絡み合い、それを他人と共有できない孤独にあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
なにしろ、世界線が飛べなヒロインの生き死にすら上書きされてしまうのだ。それを観測可能な特別さが、岡部くんを主役にとどめているが、同時にそれは彼を絶対的に孤立させる。
その上、ゼロ世界の岡部くんは繰り返される喪失に心が折れ、犠牲を選んでしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
特大の罪悪感に苛まれたところで、状況を動かせる世界線移動は各種陰謀組織が握り込んでいる。自分の意志で飛ぶのではなく、預かり知らぬところで勝手に飛ばされる無力感は、凄まじいものがあるだろう。
誰も判ってくれないし、誰にも預けられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
そんな岡部くんの孤独に、β世界線ではまほ先輩が、α世界線では紅莉栖が、それぞれ寄り添う。判る、大丈夫、一人ではないと、手を差し伸べてくれる。
貧乳天才リケジョを狂わせる電波でもだしてんのかって感じだが、その歩み寄りが闇の中、一筋の光だ。
薄暗い空を割って伸びるジェイコブス・ラダー。そこに手を伸ばす仕草は、かつて『鳳凰院凶真』が救ったまゆりの癖だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
高く遠い場所にある星を掴む、祈りのような仕草。岡部くんがそこにたどり着けたのも、紅莉栖が孤独の闇を埋めるよう、一歩ずつ寄り添ってくれたからだろう。
それでも、もう一度残酷な決断をする余力は岡部くんにはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
言葉と激しさだけでは伝わらないものを、唇に乗せて届けるために。
最後の送信キー(α世界戦の自分を処刑する、ギロチンの紐)を、キスに混ぜて押し込む紅莉栖の寂しさと決意を、岡部くんは共有できたのだろうか。
出来ていて欲しいなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
岡部くんは本当に無力でズタズタで限界であるし、立ち止まってしまうのも無理ないくらいにボロボロであるが、愛した女の決意を受信できないほど、心のアンテナが壊れているわけではない。
電車の中で、紅莉栖と軽口交わす余力は、まだある。
『そういう優しい感受性こそが、オマエの良いところなんだぞ!』と、紅莉栖のキスは言っていた気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
このエールを無碍にはしないだろうと、どん底の底の底からなんとか這い上がる強さが『鳳凰院凶真』にはあるだろうと、岡部倫太郎を信じたからこその、キスしてグッバイだったのかな、と思う。
そんな推察が合っているか、外れているか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
それは『現実』に戻るオカリンが、どういう行動に出るかで見える。
『夢』だと切り捨てられるなら、岡部くんはあんなに苦しんではいない。『なかったこと』にしてはいけないものを、苦痛に弱った足腰でどう背負い、立ち上がるか。まだまだ道は長い。
それでも、曇天の先には光があるのだという希望を、一話丁寧に紡いでいくエピソードでした。そういうドラマのうねりと、明暗を扱う筆の巧さがきっちり噛み合って、作品全体をドカンとぶつけてくるパワーになってた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
世界線の果てから届いたエールを受けて、物語がどこに進むか。来週も楽しみです。
追記 オマエの背中を押すのは、いつだってオマエ自身さ。
シュタゲゼロ追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
ゼロ世界のオカリンが、ベストエンドに繋がるための『未来からのメール』のオカリンに繋がるとすると、今回紅莉栖が自分にメールを送った描写は彼女単体で完結するのではなく、物語全体に伸びてる描写なんだろうな。
みな決意を込めて、自分が生きている世界、そこに込められている思いを乗り越えろと、過去の自分にメールを出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月30日
その決断の重たさ、伴う痛み、足を止めない勇気が、色んなキャラで積み重なること。それがシュタゲの醍醐味なのかもしれん。多元世界を最大限活用した、エモの作り方だよなぁ。