メガロボクスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
砕けた夢をゴミ箱に葬るために、男はリングに上がる。捨てたはずの首輪をつけて、望まれるままに踊る。バラバラになったチームが、狼の目をした強敵が、運命に導かれ一処に集まる時。
贋作は吠えた。「立て、立つんだジョー!」と。
そんなわけで、メガロマニア第1試合終了回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
タメにタメたフラストレーションが爆裂する快楽、『ぜってぇ来る』と思ってた台詞に想定以上の火力でぶん殴られる気持ちよさ、揺るがされつつ譲れないケジメ。
色んなものがみっしりと詰まったエピソードで、熱量と質量がホント凄い。
樹生戦が一番わかり易いが、ジョーの強さはチームの強さだ。贋作とサチオだけでなく、浮浪児やどん底人間の期待を集め、誰かの夢をギアの代わりに背負う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
そういう描写が色濃かっただけに、セコンドもいない試合は寂しい。ジョーの孤独と、歪んでしまった道が良く見える。
ビジュアルで状況を見せる演出は、オンボロギアをまとった姿からも見える。首輪をつけ直したジョーは、自分で選び取った名前ではなく、首輪付きの負け犬『ジャンクドッグ』に戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
ここでぶっ壊されるのは、誇り高いギアレス・ジョーじゃない。ただのジャンクドッグなんだ。
あの姿はそういう自己防衛にも見えて、非常に痛ましかった。飲み込みきれない諦めを、天に向かって吐き出して歩いてきた道。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
そこから贋作が降り、サチオが去り、それでもリングに立たなきゃいけない。体を殴られて、心をボロボロにされて、誇りを捨て去らなきゃいけない。
ジョーは昔の衣装を纏うことで、そのダメージを減らそうとしたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
冒頭、南部は車にぶら下げていた十字架を捨てる。『艱難辛苦汝を玉にす』という理想、ジョーと一緒に”あした”を掴むという信仰を捨てようとする。
イヤギアで繋がっていても二人はバラバラで、しかしやっぱり同じ場所を見ている。夢を捨てようと、捨てることで夢を守ろうとあがく中で、心の中で疼くものがある。それが、拘束具をぶっ壊していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
ギアが破損していく描写は、つまりギアレス・ジョーが帰還する歩みなわけだ。
あんま試合展開自体で盛り上がりを作んないアニメなんだが、ボクシング描写が意味を持たないわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
過去に囚われ、しがらみに縛られたジョーは”後ろ”に体重を預けすぎている。全てから開放された後の、軽やかなステップと比べるとよく判る。
ディフェンスを大事に、無茶な特攻は避ける。贋作のジョーへの支持はやけっぱちの片道切符ではなく、着実に勝ち、自分を守り、”あした”を掴むための戦術だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
そういうモノを目指して鍛錬を積んでいたはずなのに、今は負けるために戦っている。
そんなフラストレーションに、サチオの言葉がヒビを入れていく。急なラップはビックリしたが、その後に続く贋作の言葉へのいい呼び水になった気もする。下手すりゃ寒々しい、幾度もパロディされた名台詞。唐突であるがゆえの異化作用が、血の通ったものとして引用する素地を整えた、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
そんなサチオの背中を押したのが、前回仇と見るのを止めたゆき子なのは面白い。花を巧く育てられない彼女は、白都という巨大な権力を背負いつつ、コントロールしきれない状況にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
そんな彼女が、鼻に飾られた偽IDを拾ったのは、今後生きてくる描写だろう。
そしてそんなゆき子の鎖を噛みちぎり、自分の足で地上に降り、自分の目でライバルを見て、自分の言葉で『ジョー!』と呼びかけるユーリ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
絵の圧力がとんでもないことになっていて、高ぶる感情と身を焼く嫉妬を強く感じることが出来た。
ユーリは何に嫉妬したのだろう?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
支えてくれる仲間がいることか、野良犬の気軽さか、ギアを脱ぎ捨てて戦える自由か。
ユーリの体からギアを外せば、おそらく彼は死ぬ。それでも、掛け値無しで剥き出しのまま、ただただ自分のために戦えるなら。あの強い視線は、そういう意味だろうか。
ジョーの戦いは、見るものの感情を揺さぶる。これは幾度も繰り返された描写で、今回のドラマの炉心もそこにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
十字架を捨て現実を飲み込んだはずの贋作は、サチオの言葉を聞きながらガラスを触る。自分を押し止める壁、目に前に突っ立ってるものを確認して、そこが夢ではないと言い聞かせる。
サチオが白都家の壁を触って、『ジョーに会いたい』という自分の気持を確かめたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
冷たいガラスの感触が、贋作の心に渦を巻く気持ちを、彼自身に教えたのだろう。それに嘘はつけない。イカサマとハッタリで上手くいかないなら、もう剥き出しのまま吠えるしか勝ち筋はないのだ。
南部のおっちゃんが「立つんじゃねぇ!」と言い続けた時から、ぶっちゃけいつかは「立つんだジョー!」とは言うんだろうと思っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
しかしあまりに衝撃的で、だからこそアイコンとしてパロディされ続けたこのセリフを、血潮を込めて使い切れるかは疑問だった。
メガロボクスは『あしたのジョー』を強く睨みつけ、リスペクトしつつも、あくまで自分たちの物語を歩いてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
ギアという装備、近未来という時代に包まれながら、ギアレス・ジョーの苦悩はあくまで彼自身のものであり、矢吹ジョーのコピーではなかった。
贋作の「立つんだジョー!」もまた、それを口から吐き出した対価もひっくるめて、フェイクである彼にしか言えない言葉だった。血が通っていて、個性があり、痛ましかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
おっちゃんがヤクザに負けず、ボクサーとして強いのが凄く良い…強制されて目を抉るんじゃなくて、自分でケジメをつける。
アラガキ編で『医療用具としてのギア』を触っているので、おっちゃんの目もギア技術でなんとかなると良いな、と思う。無敵の白都テクノロジーでなんとかしてくださいよォーッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
しかし、治ると”一番見たいものを捨てる”という重さが消えてしまう感じもあり、非常に悩ましい。
イカサマ師・南部贋作が握っていた針は、ジョーでも権藤でもなく、自分自身を刺した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
その決意を受け止め、それ以上の追求を止めた権藤は、どこか寂しそうな苦しそうな、凄く複雑な背中をしていたように、僕には見えた。
ここら辺の心境を視聴者に考えさせるのは、メガロボクスだなぁと思う。
樹生も飲み込むのに時間がかかったけども、権藤さんの行動と心理を飲み下すのも、結構大変そうだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
権藤さんはチーム番外地に、ジョーの拳に、一体何を見ていたんだろうか。ただの金づるに向けるには、彼の言葉はエスプリに満ちすぎ、行動は苛烈で優しかった。
アクアパッツァ(意味は”狂気の水”)にされた魚の”目”を弄る演出は、グルメ権藤の真骨頂という感じだが、スマートな彼が食物を蔑ろにする描写には、一体何が含まれていたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
獲物を飲み下す蠍の性に迷っていたのは、実は権藤も同じだったのではないか?
彼が好きになってしまっている自分は、そんな風に冷たさ以上の意味を、彼の行動から読み解きたくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
一つ確かなのは、贋作が「立つんだジョー!」と吠えるしかなく、ジョーが拳を振るうしかなかったように、権藤もケジメをつけるしかなかった、ということだ。
贋作が握った蠍の毒針が、自分自身の目をえぐったように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
チーム番外地の熱い絆にほだされて、最凶のヤクザという生き方を曲げてしまうのは、権藤には選べなかったのだろう。
血まみれのおっちゃんは痛ましいが、そこは飲める。なんとかこう、縁をつないで欲しいけども、犠牲が大きいなぁやっぱ…。
ともあれ、ジョーは勝った。軛は解かれ、”ジャンクドッグ”を縛り付けていた過去の鎖はぶっ壊した。かつてイカサマを指示していたアイギアは、熱い言葉を伝えるメディアになってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
その先にあるユーリとの戦いを、しかし贋作は見れない。それでも、チームはチームだ。
そんなジョーを睨みつつ、ユーリはひとり孤独にシャドウと踊る。相変わらず、愛犬はユーリの鉄面皮の中にうねる感情を、巧く表現してくれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月17日
盲目の親犬に見守られ、鎖無き野良犬がてっぺんを目指す。その先に、機械仕掛の狼が待つ。さてはて、あしたはどっちだ。とにかく楽しみである。