BEATLESSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
抗体ネットワークとエリカ。ヒギンズとリョウ。レイシアとアラト。
人間と機械の未来を占う決戦を前に、アクター達が対峙する。愚者も賢者もない混ぜに、未来へ進む船は混沌へ漕ぎ出していく。
その舳先に見える景色とは。
最終決戦を前に、状況整理して内圧上げる回。
というわけで、通常スケジュールでは最終話となるBEATLESSである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
タメ回というか説明回というか、とにかく物語が静かな状況で長く待たされるのは、ラッキーなのか不運なのか。
なかなか難しいが、単話としてはうねりの少ない地味なエピソードである。Aパートマジおっさん祭。
抗体ネットワークの上部構造物は、蓋を開けてみれば薄汚い金持ちの集会場であり、なおかつレイシア級に金玉握られまくり祭。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
シンギュラリティ以降のネオラッダイトをコントロールする、巨大で賢い陰謀機械を想像してたら肩透かしだが、まぁこれが人間集合知の限界点である。ヒギンズ村と同じやな。
エリカがマリアージュの能力を駆使し、抗体ネットワークの手札を全部透かすのに対し、あっちさんは年齢と特殊な立場を揶揄するだけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
テーブルに付いた段階で勝負はついてるし、エリカも同卓している連中を相手にあの場にいるわけではない。狙いは最初から、裏から紐づけしているレイシアである。
hIEをぶっ壊して底辺のガス抜きコントロールを画策する機関が、その実レイシアの経済攻撃でズタズタにされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
ヒギンズをコントロールするべきミームフレーム社が、誰を殺すべきかヒギンズにお伺いを立てるのと同じ限界が、あの会議には漂っている。
アラトの夢想主義は、ああいう醜さもひっくるめて人類限界を突破しうるのか。エリカが喝破したように、いつも時代も変わりなく人は愚かなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
それを問うためにも、アラトはヒギンズのスイッチを切らなければいけない。その事実を持って、未来をアナログハックしなければいけない。
アナログハック下手くそだった紅霞ちゃんは、最後の最後で”赤い疑問符”に己を変じ、メディアアイコンとして自分を昇華した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
機械を殺す機械として、そのイメージを悪用しようとする抗体ネットワークと、仕掛けた罠で既に無効化しているレイシア。機械の陰謀の方が、高潔な行いに見えるのは皮肉だ。
ハゲが夢見る、”人間が人間らしくいられた”時代。それを取り戻すべく紅霞ちゃんのイメージを泥まみれにしようとしても、レイシアは片手間で先回りをしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
機械知性と真っ向勝負したいなら、エリカと同じように同等の機械知性を引っ張り込むしかない。そこで必要なのは、強要ではなく協調だ。
アラトは機械と仲直りできる世界を望む。機械を相手に一方的に命令を下すのではなく、衝突を前提に交流する時代。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
創造主の特権を手放し、対等以上の存在として機械知性を認めなければ破断するほど、世界のきしみは加速している。抗体ネットワークは、断固としてそれを認めない。
認めないのは良いんだが、実効としてその矜持は無化されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
レイシアが振るう、ゼニと政治の大鉈。彼らが抗体ネットワークの総体を隠し、ケンゴが代表する負け組を操ってた道具が、彼ら自身を骨抜きにしているのは、なかなか皮肉である。
紅霞の量産も、レイシアのレッドボックスがなきゃ無理だし
紅霞のコントロールをレイシアに奪われたのは、圧倒的な技術と経済アドバンテージを持つレイシアに、開発をアウトソースしたから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
軒先を貸して母屋を取られるのは、アウトソース先の機械に適切な課題を与えられなかったからだ。ここら辺、スノウドロップの暴走、三鷹事件の大惨事に通じるものがある
過去を懐かしみ、それにしがみつき、変化した世界に根本までハックされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
ハゲの無様な姿は、機械に投げかけるべき問いが、変容した世界への参加資格だと気づいていない人々の近似だ。”昔は良かった”はつくづく、呪いの言葉である。それを発さないと、なかなか生きていけないこと含めて。
去ってしまったものへのノスタルジーは、エリカも共有している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
しかし彼女は変容する世界へ目を見開き、必然的な変化に抗うのではなく、むしろ加速させる道を選んだ。サトゥルヌスをマリアージュへと名付け直し、自分の夢見る未来をデザインさせる関係を選び取った。
主人と従者。ひどく古風な関係なれど、エリカ組は人間と機械が対等に合い補い、お互いのアイデンティティを支え合う、良い距離感を維持できている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
AI時代のボーイ・ミーツ・ガールとは違う形だが、エリカとマリアージュの関係も、ポジティブな未来像を引き寄せつつある。
一方、過去と未来に引き裂かれつつ、自分の未来をデザインしなきゃならんリョウは、ヒギンズと対峙していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
迫りくる脅威を前に、責任を背負えと押し付けてくる悪魔。アラトが一足先にもみくちゃにされた、機械論的ファウストの悩みが、リョウを襲う。
三鷹の地獄でタフになった彼だが、ヒギンズという暴走する炉心を前に最初に出てきたのは、自分がバラバラに砕かれた過去への問いかけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
そこを抑えておかないと、未来も掴み取れないから。悪魔に問うてみたら、『オマエが拘ってた過去は、とうに終わってる』と言われてしまった。
ヒギンズではなく人間の査察部が、爆殺事件を処理した事実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
それは人間組織の自浄作用がまだ健在だという希望と、同じような社内政治がミームフレームの子供を食い物にし直す限界を、同時に示す。
人間も、人間が生み出す組織もそうそう変わらない。巨大企業は、子供が噛みつくにはデカすぎる獲物だ。
レイシアにアラトを取られた時。メトーデと契約しないと生き残れなかった時。妹殺害のスイッチまで自分に押し付けられた時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
子供の無力感にずっと苛まれてきたリョウは、今回もまた無力さを思い知る。ホント可哀想だな…そこで諦めず前を向き直す君が、僕は好き。
ヒギンズは胎内に取り込んだリョウに、『壺から出してください』と囁く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
アラト相手に『超高度AIを外界に解き放てば、人類社会が終わるんだ!』と警告していたリョウが、この誘惑にさらされるのもなかなかの皮肉だ。
自分か、世界か。リョウの選択は、未来のデザインに繋がっている。
一方、その選択を既に済ませたアラトさんは、最後のダメ押しアナログハックを受けてチョロチョロしてた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
最終章に向けてのヒキが、悪魔的ヒロインのシャワーシーン。このアニメらしいといえば、非常にらしい。
レイシアさんの殊勝な行動。彼女の作動原理を知ってしまった今となっては、序盤のように部邪気にときめくわけにも行かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
心を的確に揺らしてくる色仕掛け、人情芝居が、情報を解析して生まれた冷たい演技なのか。はたまた、心から生まれた温かいものなのか。
アラトさんはその判断をしない、という判断を選んだ。思考停止ではなく、形として立ち上がってくるもので判断することを選んだのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
真相や深層を解析しようとしても、不可知論の雲が覆い隠してしまうなら。シンプルな現れと、それに反応する自分の感覚を信じても良いじゃないか。
それが、チョロくてバカな主人公が選び取ったスタンスだ。シンプルで凶悪で個人的で、僕は結構好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
全てが表れでしかないレイシアと魂レベルで繋がるには、そういうスタンスになるしかなかった、とも言えるか。その選択が人類の未来を規定していくのだから、ボーイ・ミーツ・ガールは怖い。
『昔は良かった』という幻想にしがみつき、機械無き未来を求めて機械に踊らされる。真相を求めてどこにもたどり着けないハゲと、表層しか見ないことでなにか新しい場所にたどり着きそうなアラト。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
今回見せたかったのは、この対比なのかな、と思う。ふたりとも、レイシアさんの手のひらの上だし。
不適切な未来デザインを、紅霞ちゃんという不適切なツールで実行しようとして失敗し、その後もなお失敗し続ける抗体ネットワーク。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
未来がない彼らに対し、レイシア級のマスターたちの未来は不確かだ。ヒギンズ停止という鉄火場に、彼らの夢が乗る。掴むべき掛け金は、どんな表情をしているのか。
最終決戦を舞台にそれが問われる、という所で、悲しいかなタイムアップである。極めて残念であるが、まぁしょうがねぇ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月29日
制作体制の不安定さにブンブン振り回されたが、原作の先鋭性と魅力をなんとか、アニメにしようとしてくれるスタッフに感謝である。放送予定は立っているので、9月を楽しみに待つ。