イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Free! 一期感想(第1話~第4話)

・FREE!(一期第一話『再会のスターティングブロック!』)
京アニがホモアニメ! とか凄い騒がれてた水泳アニメ。
某フォロワーの方が約一名、とんでもない温度の高まり方をしていて、期待度が上がるやら恐ろしいやら、深呼吸して臆見を取り除いてから見た。
いや、その方全然悪くねーんだけどね、ほんと天井までスンゴイ一気に上がってたから……。


とりあえず輝かしき幼年期の回想っぽいところから開始。
開幕水の作画が超走ってて、♪ホモより肉より波がほしい(「ユリア……永遠に」の節で)という感じ。
デジタル処理と手書きのバランスもいい塩梅だ。
主人公は屈折しちゃったところから開始なのかしら。
OPが良い感じに中二力あって、ちょっと血沸き肉踊る。

タレ目のマコちゃんはわりかし素直に育った感じで、主人公ハルちゃんの通い妻をしている。
……開始五分で水着エプロン……だと……。(2ページぶち抜き背景真っ白キャラドアップ)
細マッチョなボディの描き方といい、そら荒ぶるわなぁ、というサービス力。
ザックリと身長をマコちゃんに抜かれてる所、ポイントですね。
そして京アニ名物、色々設定を作って有りそうな個性のあるモブも当然完備、と。


微ショタ系な後輩、渚くんも合流。
やっぱりハルちゃんはちょっと屈折した成長をしたみたいだ。
ここから水泳への思いを取り戻していくのが、話の軸になるのかな?

と思ってたら、むっちゃ燻ってるじゃーんハルちゃーん。
別れ別れになってしまった最後の一人、リンちゃんは海外に行ったらしい。
いやー、キラキラしてんなぁ。
青緑赤黄色と、目のカラーリング解りやすくてイイですね。
あとリンちゃんのギザ歯があざとい。

というわけで三人揃って、心霊スポットと化した思い出のスイミングスクールへ。
「結局リレーは出たのかなぁ。出てて欲しいなぁ」という視聴者の疑問を回想シーンでは引っ張った上で、写真を発見することで解消するのは、こっちの欲望を上手く操作した名演出。
現在と過去がマテリアルにつながってる、ということを強調する効果もあるし、巧い。
「俺は自由形しかやんない」というハルちゃんのコダワリを曲げて、みんなでリレーに出るくらいリンちゃんたちとの過去はキラキラだった、つーことですな。

そして当然、運命のようにリンちゃんと再開。
天才が屈折し犬っぽいのがデカ男に育ったように、宮野声のクールガイに成長しておりました。
出会うなりバチバチと飛び交う火花。
いいぞー、熱いぞー。
しかし彼らは、廃止されるスイミングスクールのプールに水が残ってると考える、歳相応のバカガキだった。
こういう可愛げ、あざとくてズルい。


すっかりツンツン属性がついたリンちゃんが「俺過去とかキョーミねーから! マジお前らのこと忘れたから!! マジでマジでマジ!!!」とか吠える中、女の子たちはボーイズをロックオンしていた。
佐藤聡美さん、京アニ作品出演3つ目か。
オス共だけではなく、女の子たちもきっちり可愛くデザインしてくるのは、いわば逆氷菓現象。

そして、まったお風呂場でちゃぷちゃぷしてるハルちゃん。
最初の奇行で視聴者の注意を引いておいて、「ああ水泳への情熱がくすぶってるから、お風呂場で水と戯れてんだな」と発見させる材料に使うのは、ほんといい演出。
フックの掛け方が巧いな、この作品。水着エプロンとか。

とか思ってたら、即脱衣ですよこのアニメマジ……マジお前ェ!
燻ってるというレベルじゃない……言うならば灰の中の熾火、水を得ればいつでも蘇る人魚の干物のよおな情熱が、やれやれ系主人公みてーな外見の中には眠っていたのだッ!
ええわー青い情熱の迸り、ほんま誠によろしいわー。
でも不法侵入と全裸水泳は止めろ。

深夜の誰もいないプールというムード満点のシチュで、濡れ濡れキャッキャウフフな三人組。
マコちゃんの背中がちゃんと広いの、ポイント高いですね。
そこをズバアァァアンと割って入る、バッドガイリンちゃん。
幼馴染な二人の温度が限界まで高まった所で、次回に続くっ!!!


いやー、良いアニメの良い一話だった。
主人公の屈折した情熱と、過去の思い出、そして仲間たちのいい奴ら感が凄く出ていて、甲子園期待のエースの投球練習見ただけで「こら速いで……」と思えるような、筋の良い印象を受けました。
夢が折れ曲がった主人公と、過去を引きずっているくせに引きずっていないふりをするライバルという関係性は、オーソドックスながらドラマの種がたっぷり。
気合の入ったエフェクト作画で、「水の中を遊ぶ」という行為が心地よく描写されていたので、「そこに帰りたい、自由に泳ぎたい」というハルちゃんの欲望に、視聴者が素直に同調できる。
後追いの演出を上手く使うところといい、視聴者の欲望を非常に上手くコントロールしてる、技ありの一話だったと思います。

そしてボーイズたちの可愛げ満載なところが非常に良い!
脳内の腐女子も結構活性化して「そら高ぶるわ。無理だわ抑えこむの」という感じになりましたが、青春モノに必要な「登場人物たちへの共感、こいつらが俺の友達になったらいいなと感じさせるパワー」が、細マッチョの体全体にあふれていました。
みんな好きですけど、僕はバレバレの正統派ツンデレ(デレ未遂)なリンちゃんを一推ししたいキモチ。

妹ちゃんもまだ本筋に関わってないし、何よりこの勝負の行方はどうなるのか。
そして過去の思い出を取り戻し、水泳への熾火のような情熱にどうケリをつけるのか。
今後が猛烈に気になる、素晴らしい出足を見せたと思います。いやー凄い。


Free! (一期第二話『追憶のディスタンス!』)
水を求めてナイスなガイが、熱い火花をバチバチ散らす青春絵巻の二話。
開幕前回引っ張った勝負開始であり、やっぱり凛ちゃんのギザ歯があざとい。
でも結末は見せない。この焦らしがお前……たまらんッ!!

そんな訳で時間はすっ飛ばし、何か凛ちゃんがイライラしてる展開。
「アイツには叶わない……」とか言ってるので、負けたんかな、とこの段階では素直に思う。
この「省略された勝負」の結末をコロコロ転がしつつ、視聴者に凛ちゃんとハルちゃんのライバル関係の複雑な所を理解させるのが、今回のお話の仕事であります。
勝負の結末というのはいつでも気にかかるので、視聴者の興味もググっと引っ張れる。
それをただの花火として使うのではなく、キャラを立てる材料にする巧さが、Free!の強みだと思います。
一方ハルちゃんは、露骨な暗喩でお風呂場ドルフィンに液体ブッかけてた。

自由人ハルちゃんは横に置いといて、PC3PC4ヒロインで情報交換するフェイズ。
GOちゃんはお兄ちゃんとは、あんま交流がないらしい。
まぁ妹にもツンツンしてんだろうな。……これで妹にだけダダ甘だと僕好みの調整だったな。

思いの外グイグイ系だった黄色こと渚くんが、みんなを繋ぐために水泳部設立を思い立つ。
なるほどー、自由すぎる主人公の積極性を渚が、細かいフォローを真琴がそれぞれ分担する関係なんだな。
あと、GOちゃんは筋肉マニアだった。
肘を曲げる時は二頭筋が盛り上がるのに、三頭筋に目が行く辺り本物だと思う。
女の子がいる時は水着エプロンしない、ハルちゃんの心遣い萌え。


渚くんはショタ声に似合わずサクサク事務をこなし、必要な人材を集め、部活設立まで一気に行く。
……腐った本での役割が、大体決まった瞬間である。
代永翼声の時点で、大体決まってた気もするがな!

あまちゃん先生が顧問になってくれて、プールを補修しつつその時を待つ面々。
草生え放題、コンクリ割れ放題だったプールが、ボーイズの努力でジワジワ綺麗になっていく描写は、理屈をすっ飛ばしてワクワク感が高まる。
自分こういう、手順を踏んで何かを修理し、飛躍のための準備をするシーンに非常に興奮いたします。

ペンキを塗ったピカピカのフェンスと、錆びた今までのフェンスを対比させる演出、その仕事をキッチリする背景の細かさが素晴らしい。
最初は姿がなかったさくらの花びらが、青いプールの床に散らばる姿を見せることで、時間経過を印象的に見せてますね。
ダイジェストシーンで「水があれば水槽でも入ろうとする」「絵が上手い」「とにかく早く泳ぎたいのでお昼休みも掃除する」など、ハルちゃんの細かいキャラを見せるところも好き。
あとGOちゃんが座る時、スカート直してディフェンスするところの芝居。

GOちゃんもライバル校に襲撃を掛け、筋肉にときめく。
社長声の先輩が、何度見ても綺麗な鬼センパイ(Fromテニプリ)にしか見えなくて、いつハムスターを飼ってるとかあざとい要素が明らかになるか心配。
兄貴は水泳部に入っていないっぽいよ!!
深夜の街を徘徊し、思い出に瞳を揺らす凛ちゃんのあざとさに失神寸前。


まったりと交流が深まる中、ハルちゃんの過去がマコちゃんから語られる。
なんか、水泳やめようとしたらしい。
そして、真夜中バトルの結末も。
凛ちゃんが勝つには勝ったけど、あんまハルちゃん本気じゃなくて凛ちゃんぷんぷん丸。
上から目線にイラッときて、思わず引き寄せるシーンのあざとさに失神寸前。(二度目)

ここで一回、視聴者の持ってる答え(「深夜バトルは凛ちゃんが負けた」)をひっくり返す。
GOちゃんに視聴者の代弁をさせてる所が、巧い演出ですね。
勝負に勝っているはずの凛ちゃんが負けたとは、どういうことか。
勝てる流れの勝負で負け、それに拘る様子を見せないハルちゃんの心境とは。
一つの疑問を解消させて、二つの疑問を生むつー引きのテクニック。

意味深なお墓的なものが移りつつ、マコちゃんハウスの日常描写。
そっかー、マコちゃんお兄か。
肩幅の広さはパパ譲りかな。


そしてスイミングクラブ取り壊しの現場で、つるの剛士似の元コーチと再開。
あれか、「ウォターボーイズ」の竹中直人ポジションか。
元コーチの口から、ザラザラと語られるハル凛の過去。

水泳をやめようとしたのは、凛ちゃんに勝ってしまったから。
凛ちゃんがハルちゃんとの勝負に拘るのは、この敗北があるから。
生まれた二つの疑問が気持ちよく解消して、二人の深い部分が見えた。
自分のしでかした結果に戸惑いつつも、駆け寄ろうとする中1ハルちゃんの健気さに失神寸前(三度目)
二人のすれ違いは、この瞬間からはじまってたんだなー。

楽しみたい奴と、勝ちたい奴。
この対比はスポーツにかぎらず、勝負モノの物語では大概出てくる手堅い題材で、かつ上手く料理するととんでもない爆発を産む強力なネタだと思います。
こういう鉄板を外さない辺り、やっぱりスポ根モノとしてのFree! は強い

そしてメラメラと燃え上がる、凛ちゃんの反骨精神。
和気あいあいとプール開きしている水泳部と、孤独に魂を炊きつける凛ちゃんとの対比がいい。
そして、来週は愉快な水泳部にメガネクイッ系眼鏡が追加だッ!!


いやー、今週も面白かったなぁ。
事前予想だともうちょっと萌えに頼るというか、勝負モノとしての踏み込みはあんま深くないんじゃないかなとか思ってたんですが、京アニ舐めてた。
ギラギラするボーイズたちの思いが、そして優しさが、丁寧に描かれた素晴らしい回でした。

ハルちゃんはあずまんがで言うと榊さんなので、うまく好感度上がるポイントを挟まないと「何考えてんのかワッカンね」と言われちゃいがち。
細かく可愛いエピソードを混ぜたり、マコちゃんに心情の代弁をさせたり、ダイレクトに不器用な優しさを感じられるシーンを入れたり、クール系主人公を上手く扱ってる感じもしましたね。
いまいち影の薄かった渚くんを有能にしたり、凛ちゃん一級の男ツンデレ描写だったり、そこら辺の取り扱いはとにかく上手だ。
キャラが動く舞台は今回うまくセットできたと思うので、水槽の中でどう泳いでくれるかがとても楽しみ。
とりあえず来週は、ウルトラセブン眼鏡野郎だな、うむうむ。


・ Free! (一期第三話『理論のドルフィンキック!』)
一応部活が立ち上がった青春の鳥取ド田舎水泳アニメ、新入部員加入編。
開幕からマコちゃんがお嫁さんチカラを見せつけており、マジ死にそう。
ノーモーションであざといシーンねじ込んでくる、萌えのパワー勝負……。
俺そういうの、あんま嫌いじゃないぜ……。

マコちゃんは、凛が水泳を再開してくれて嬉しい。
ハルちゃんは、凛と闘うことになるかもしれないから嬉しくない。
ボーイズの心は、まっこと繊細ですなぁ。まじ可愛い。

そしてソッコー渚にロックオンされる竜ヶ崎クン。
メガネクイッって感じでクールに断ってるけど、そいつ、可愛い顔して根回しと実務の鬼だよ……。
しかし、平川さんのクールな声はええなぁ……。
ブラコンと同じく、こっちでもクール眼鏡かぁ……耳福耳福。


(おくないぷーるでおよげる……)とお目目キラキラなハルちゃんの内心を、一発で悟るマコちゃんのお嫁さんアピールがあざとい。
が、設立したての弱小水泳部に、ジムに通う費用が出るはずもなかった。
実績残せば金ば出る! という非常に分り易いモティベーションが発生。
ココら辺、スポーツものの運び方として、お手本にしたいほどスムーズ。

四人目を狙う理由を強化しつつ、竜ヶ崎クンをしつこく追いかける渚。
……おいなんだ、その消臭剤は。
こいつ……クール眼鏡気取りのポンコツという、神をも殺せる属性持ちか……。
眼鏡クイクイ言わせながら、計算棒高跳びしているのもフェイクかオイ。

竜ヶ崎クンへの期待が色んな意味で深まる中、渚は待ちぶせしてた。
だから、そいつしつこいって言ったじゃん!!
執拗な渚のアプローチを、必死にブロックする竜ヶ崎クン。
……あ、コイツカナヅチだ!!
水泳アニメでカナヅチ、あざとっ!!

渚に詰め寄られ、言うに事欠いて「いやだ」とか言っちゃうおハルもあざといな。
……つまりこのアニメ、みんなあざといってことか。
……素晴らしいじゃない!!(満面の笑み、お目目グルグル)


細かくおハルの心のケアをしてくれる、マコちゃんのいいやつメーターが振り切れつつ。
あんましゃべんない主人公の内面を、ちゃんと表に出すシーンをやる辺りソツがない。
ずーっと可愛くて水だーい好きな小動物でもいいがね、マコちゃん。
「テーマに対し、しっかりとした何らかの態度がある」というのは、共感を得る上でとても大事ですな。

水のみならず、風もきっちり描く京アニの作画力が、棒高跳びのシーンで見え隠れ。
頭でっかちな部分をコーチに指摘され、ちょっとヘコむ竜ヶ崎クン。
ふふふ、お水の中は気持ちいいわヨ(水へと誘う謎のオカマ人魚爆誕

合同練習にお冠な凛ちゃんですが、なんか後輩っぽいオカッパと一緒に画面に映る。
……ずっと憧れていた先輩の背中を、しっかり守る健気系だと……。
神殺しの属性持ちが、一話で二名新登場って……これ許容量超えてませんかね。

のどかな田園風景をバックに、楽しいランニングしつつ渚が龍ヶ崎くんを指で絡めて目で落としにかかる。
一回軽い反発を与えてから、相手の心に一番滑りこむ言葉を目を見ながらねじ込む。
生粋のネゴシエーターですわ、渚は。
超ちょろいオーラを出してる所とか、ハルちゃんさんとか、竜ヶ崎クンまじ……まじよー。


綺麗な鬼先輩が良い人だったので、結構スムーズに合同練習開始。
別にとか言いつつ、ハルちゃんのことが気になって気になって座ってられない凛ちゃんマジ……マジお前よー……。
ほうほう竜ヶ崎クンはブーメランですか、そうですかほうほう……。
飛び込みの時、肩甲骨がグンッって上がる描写、凄くいいですな。
鬼先輩はプールの外では気さくで、練習始まるとキビキビ指示するのが強豪校の部長っぽくて素敵。

そしてなるほど、計算だけで競技をしてきた男が、計算ではねじ伏せられない苦手分野に飛び込む、というドラマなんだな、竜ヶ崎クンのお話は。
これは結構アツい。
人間コンピューターがむき出しになる過程は無条件に面白いし、逆に理論派な所が勝負どころで生きてくる見せ方も出来る。
ハルちゃんとクール属性がかぶっている所を、見せる場所と見せ方を変えてきたのは、なかなかグッドでナイスだ。

カナヅチをカムアウトできなくて恥ずかしがる姿、素晴らしいネ。
そしてハルちゃんのフォームに「う、美しい……ハッ!!」ってなるの、定番だけど超スンバラシイね。
こういう「水泳への態度の違い」がキャラごとにあるというのは、眼の色や声優以上のキャラ差として話の中で活きてくる要素であり、お話が面白くなる上でとても大事なのでしょう。
しかしハルのストロークはえぇなぁ。才能あるんだァ。

そして、自由な意志を手に入れた竜ヶ崎クン、水の世界へと飛び込む……ッ!!
ブツブツ計算を印象づけておいて、吹っ切ったあとのフリーすぎるジャンプを印象づける演出は、二話でも見せた「一つの要素を二度使う」Free!得意の手法ですな。
「先輩みたいになりたいです……」とか「責任……取ってよね」とか、竜ヶ崎クンのあざとさが極限に達してるけど、それはそれだ。
まぁキャラにあざとさ付けるプロがやってんだから、あざといのも演出と言えるし、クールでロジカルな演出の根源は、感性と欲望だとも思う。
欲望に火をつける演出と、怜悧に効果を出すための計算は両立する、という話ですな。
いやあざとさ担当のスタッフと、ロジック担当のスタッフが別々なのかも知んねぇけどさ。


竜ヶ崎クンにフォーカスを当てつつ、主人公の卓越性を同時に出してくる、欲張りな話でした。
ズブの素人の成長物語という一番美味しい要素を、スポコンで拾わない話はないわけで、そこを竜ヶ崎クンが担当する、ということなのでしょう。
竜ヶ崎クンがハルちゃんをキラキラアイで見つめることで、「ああ、ハルちゃんはスペシャルなんだな」ということが視聴者にも強調される、いいポジショニング。
オマケに絆の深さも確約されて、二兎どころか三兎四兎と狙い撃ちする、巧妙なエピソードだったと思います。

Free! はいつもそうなのですが、話のメインにならないキャラの取り上げ方がうまい。
今回で言えば合同練習をウザがりつつも、即座に確認に来る凛ちゃんとか、出番少ないのにキャラが見える出番をしっかり確保している。
こういう所がしっかりしているので、今期Free! ダントツと断言できるわけです、ハイ。


・ Free! (一期第四話『囚われのバタフライ!』)
バカ理論バカ眼鏡が大暴れするギャグ回。
「キャラ紹介もだいたい終わったし、コメディで回すか!!」と、京アニ=サンが脇をカポンカポンするのが、目に見えるような気合の入れようだった。
競泳という太い軸があるせいか、笑いを取るのに必要なギャップが活きていて、京アニコメディ史上最もキレていたんじゃなかろうか。


開幕猫から開始。
京アニはこういう「動物観察してスケッチ起こせよ」みたいなシーンを、良く本放送に挟むなぁ。
……映画けいおん!の赤ちゃんみたく、作監堀口の趣味かもしれんが。

凛ちゃんメニューは見える所で
アップ  500m
ビート板 10×50m(500m)
プル   10×50m(500m) 前半25を全力の30%くらい、後半25を全力の90%くらいで
本番   12×100(1200m)、背泳3、平泳ぎ3、(おそらく)バタフライ3、自由形3で12本
というもの。

アップ500でもう吐きそう。
他の文字列が見え隠れするので、これはあくまでジャブ程度で、毎日毎日もっと泳いでんだな。
しかも、昔のメニューだからなぁ。
トップクラスを目指してるから当然とも言えるけど、やっぱ凛ちゃんやる気勢だわ。

それを裏付けるように、一生練習してる描写が入る。
合同練習の時は「知らねーし、カンケーネーし!」とか言ってたくせに、肉の付き方が解るくらいガッツリ見てる凛ちゃん。
「身体を見れば解る、全く出来てねぇ」の時の、言葉とは裏腹な寂しそうな表情、とてもいい演技。
自分自身がハルの才能に追いつくべく努力を重ねたから、にとりの発言にイラッっと来るんだね。
真面目な子だよー、本当に。

「ハルたちとは仕上げた身体で戦いたい」というのは、オリンピックを目指すほど、競泳の競技性に魂を揺すられてる自分と、同じ目線同じ価値観で泳いでほしい、という気持ちもあるのかな。
ココら辺、既に「楽しむこと」と「勝つこと」を止揚するネタを撒いていて、よく練られた構成だと思います。
次は「凛は楽しんでいるのか」というネタが飛ぶターンかな?


「りろんはしってる」が全然浮かない竜ヶ崎クン、まずはダルマ浮きから。
手足延ばすと沈むのはなんだろうな、筋量多すぎんのかな。
「素人いじりは知らん、勝手にやれ」とばかりのハルに、江ちゃんがグイグイいく。
今回の話は眼鏡のマジメバカ芸を煙幕に、ハルが世界に目を開いていく話なので、このツンケンしてるおハルは大事だ。
変わる前が見えないと、変わった後のことは目立たないからな。

江ちゃんがマネジの仕事をして、新メニューを開発。
我関せずの天才と、基本そいつしか見ないオカンという二年だけでは話がまわらんので、渚と江ちゃんの一年コンビが、シナリオを回すエンジンだなFree! は。
竜ヶ崎クン、泳げるようになるまでのデッドラインは一週間だ。
「理論的に無理ですよ~」のシーンは、プリンセスチュチュの猫先生っぽい芝居と、現状の竜ヶ崎クンの問題点が見えてくる良いシーン。
理屈だけじゃ自由には成れないのだよ、竜ヶ崎クン!!

なお、江ちゃんの新メニューは
アップ 200m 任意
    4×50(200m) 個人メドレー、前半30%後半90%
2×200 普通に泳ぐ 二分から二分十秒
2×200 自由形   四分から四分二十秒
という感じ(見えるところだけ)
凜メニューより少し少なく、時間指定があるね。


平泳ぎでヴィヴィッドアングル(男)を披露したりしつつ、順当に沈みまくる竜ヶ崎クン。
沈む前にいちいちドヤ顔するのが、面白くてしょうがない。
ホントこいつ、あざといポンコツ眼鏡だな。
このタイミングでも相変わらず、おハルは自分だけ視点。
江ちゃんがずーっとジャージなのは、「女の肌描いたら死にます」というスタッフの意地なのか、いつか爆発するときのために飢餓感を煽っているのか。


練習シーンだけだと空気が重くなるからか、水着でショッピン! シーンを合間合間に入れて、ギャグな空気を盛り込んでいくスタイル。
いや、練習中も大笑いだけどね今回。
ひっそりと夏服になってるけど、ネクタイのセンスの悪さはあれか、海部首相リスペクトか。

そして、雨が降ったら即竜ヶ崎クンいじめ。
あいつらなりに考えてやってるのは解るが、どう見ても吊るし上げ……なんだが、笑いが強くてあんま重くない。
「鯖好きなのか!」とか、どんどんとっ散らかっていく話題が、非常に面白い。
ピザ屋の臨時コーチフラグが着々と積み重なる中、渚のピザ三個食いがあざといにゃあ。

男のケツがアップになるシーン多すぎんよー、とか文句をいう内に、水着を買い換える流れに。
雄が「おっぱいおっぱい!!」→「おっぱい見飽きたー!!」ってなるように、筋肉強者たる江ちゃんですらウンザリするほど、男の水着が手を変え品を変えオラオラオラオラ。
竜ヶ崎クンが虹色水着を着た時、「マジやめとけ。色々勘違いっていうか、意図しないサインを出しちゃってるからやめとけって!!」って言いたくなった。


そうこうしている間に、ハル凛がエンカウント。
「悪いけど凛と真面目なシーンやるから、他の面子は登場不可な」と言われて、素直に出てこない水泳部メンバー。
「身体の距離は心の距離」と言わんばかりに、むっちゃ離れた位置で会話開始。
でも会話の内容は、むっちゃ直球でバチバチしてる。

男の子同士はこう、剥き出しでバチバチするのが好まれて、女の子同士はあんまバチバチしないまったりが好まれる傾向を自分は感じるけど、なんでやろね。
男の子へ投げかけられるファンタジーと、女の子に投げかけられるファンタジーの差異なのかしらん。
いや女の子同士でもバチバチする時ゃするけどさ、羣青とか。


このフェンス際のシーンは、凄く解りやすく凛とハルが水泳に求めるものの違いを出すシーンなんだと思う。
凛は「勝ちたい、競いたい、傷つけられたい」で、ハルは「泳ぎたい、楽しみたい、傷つけたくない」
そのズレというのは、中学の時の勝敗という形で二人にとっての傷になってる。
だから、ハルは「めんどくせー」と言いながら視線を逃して、距離も離す。
ここら辺は勝ってる側の特権。負けてる側が追いかけるしかない。

だけど、時間が過ぎて状況も変わって、傷を乗り越える気力みたいのも凛に湧いてきて。
痛みよりも「前に進まなきゃいけない」って思いのほうが強くなったからこそ、「でなきゃ、前に進めない」なんだろうなぁ。
グワーッと追いついて、強引に掴んで、自分の方を向かせるのは、凛にとっても辛いはず。
また負けるかもしれないし、本気になってくれないかもだし、負けてる自分を思い出すし。
それでも目が見える距離、心が通じる間合いに強引に入っていった凛の強さが、僕はすごい好きです。

そして、目を見て「俺に負けても水泳を辞めると言うな。醜態を晒すな。泣くな」と言えるハルの優しさも。
この台詞が出るのはつまり、竜ヶ崎クンにとってハルがそうであるように、ハルにとって凛は「憧れ」だってことですよ。
メドレーで初めて見たことのない景色、不自由だからこそ見えてくる場所を見せてくれた凛を、やっぱりハルはキラキラした存在として捉えている。
そういう存在に勝っちゃった「哀しみ」みたいのを、ここで捨てよう、と決意したんだろうなぁ。
ここのシーン、ハルの手の芝居がハルの決意をうまく表現してて凄くいい。
「俺とお前の違いを見せてやる」と言いながらも、泣きそうな表情の凛がなぁ、愛おしい。

これで、Free! には「県大会で凛とハルが勝負する」という収束点ができたわけです。
今後の展開は、この点に向かって伸ばせばいい。
練習したり、壁にぶち当たったりしながら、このポイントにむけて展開していけば、お話は盛り上がる。
勝負だけを軸にするなら、鮫塚にもっと選手を増やして、例えばマコのライバルになる背泳選手だとか出さないといけないんですが、この話の軸はあくまでハル凛二人のライバル関係。
なので、今まで見せてきた二人の関係を延長して、「この瞬間が終わったらお話も終わりだよ」というポイントとして、県大会での勝負を明示したシーンだと言えます。


無論それだけでは話が単純になり過ぎるので、もうひとつの軸である「初心者竜ヶ崎の成長物語」は、ギャグ色に染めながら並走する。
とりあえず武装を固めたらオッケー! という浅はかさが、馬鹿キャラとしての完成度を高めておりあざとい。
ここでハルが指導にいくのは、さっきのシーンで外に目を向ける必要をハルが知った(凛が目覚めさせた)こと、さっきのシーンがハルにとって重要だったことを、視聴者に見せている。
同時に、ハルにとって竜ヶ崎クンが「仲間」だという空気が出てきて、オイラは非常にホッコリした。
「俺はFreeしか泳がない」だけ言うマンのまま心開かなかったら、まったくもって面白く無いからな!!
そういう意味でも、凛の勇気に意味があって、オラァ嬉しい。


それでも沈む辺りに、竜ヶ崎クンのネタキャラとしての完成度の高さを見る。
ふつー、あの流れは泳げる流れだ、今まで起きなかったことが起きたんだから。
それを逆手に取ってのレイプ目リアクション、切れ味ありました。

その上でおハルとの禅問答で、理屈マシーン竜ヶ崎が理屈をふっ飛ばして泳げるようになる辺り、巧い構成だ。
「マコはじっと見守る」という立場の再確認を、ちゃんと入れてる辺りもひっくるめて。
けいおん映画でも氷菓でもありましたが、横顔が運命を見つける時、京アニ作画は眼球を球体として描くやね。

竜ヶ崎クンがバッタ担当なのは、まぁメドレーでそこが開いてるというクラス配分は横に置くとして、沈む原因の筋量を生かして強引に身体をあげられるからかなぁ。
一番難しいとされるバタフライ(=不自由)なら泳げる(=自由)という結果を生む。
なら、凛という不自由が、ハルの求めるさらなる自由を生むんでないのか、という暗喩とも取れるな今回。
ともあれ、ドシロート竜ヶ崎怜、最初のひと泳ぎを刻む、と。


相変わらず良く出来たアニメで、非常に満足しました。
キャラクターが自分の仕事をした上で、「此処でオレが出るのが一番いいかな」というタイミングで、自分のキャラに似合わないことをしてくることが、とても気持ちいい。
今回で言えば、ハルが指導に来るシーン。
これは今回走ってた二本の軸が、一本にまとまるシーンでもあるので、なおさら気持ち良かったですね。
こういうお話としてのベーシックな盛り上がりで、視聴者の快楽を刺激する技術が、Free! はほんとうに高い。

今回お話としての本命は、凛がハルに気持ちを伝えたこと、それにハルが答えたこと、結果として県大会というピリオドが見えたことだと思います。
が、側道に埋もれかねない竜ヶ崎クンの成長物語を、切れ味の良いギャグと交えつつ、真っ直ぐにやり切る辺り、贅沢な話だと思います。

ってオメー、来週休みかよ!!
この盛り上がってる流れで水断ちってお前、殺す気か!!
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