・ FREE! (一期第九話『迷いのルーズンアップ!』)
開幕、おハルが全開で泳ぎまくっております。
仲間のために迷いなく抜いて抜いて抜きまくるおハルと、それを孤独に見つめるしかない凛ちゃんの対比が残酷。
勝った奴が寂しくて、負けた奴が楽しい構図。
凛ちゃんの背中に漂う、「俺……昔あそこにいたのにな……」感がマジ凶器であり、俺の心がヤバい。
何も、こんなに切れ味鋭く演出しなくたって……。
メドレーで実績が出て、地方大会まで行けることに。
「個人で負け、仲間と勝つ」という流れはマジ美しい。
勝ったはずなのに孤独感でズタボロになった凛ちゃんが、どう動いてくるのやら……。
メドレーを回想しながらボーッとしとるおハルは、この時「自由」なのかな、ということを少し考えさせる演出。
おハルが望んでいる「自由」とはおハル的には一人であれば実現できる、仲間なんぞいらないはずだったものだが、メドレーアンカーを任され無心で勝ち取った勝利は、それとは違う実感を与えているようだ。
ホントお前、お目目キラキラプルプル系男子だな。
一方、チーム一年はキャッフフしすぎだった。
男女の垣根も越えて、怜ちゃんもすっかり打ち解けて、すげーいい空気だなぁアイツラ。
江ちゃんはメニューは作るし、事務処理は手早いし、気は効くし、ホンマようでけたマネジやな。
「わかんなくなったからおよいだ」とか天才言語で喋り出したハルに、江ちゃんが当然深く聞き出そうとした所を、マコがプロテクトする一連の流れが完成されすぎてて吹く。
マコはハルのイノセンスな部分が、なるたけ壊れないように立ちまわる技術に長け過ぎ。
だからグラヴィティホモとか言われんだよ……。
そして凛ちゃんは、抜け殻のように練習に明け暮れていた。
なんとか元気を出してもらおうと、余計なことして地雷踏みに行くにとりが哀れ過ぎる……。
勝っても負けても人生がわからなくなってしまうのだから、親友と勝負なんぞするもんじゃないなぁ。
「めんどくさい……」みたいな顔してたハルも、いい加減丸くなったので社交に付き合う。
勝って少し余裕が出たのか、仲間の行動がいい影響を生んでいるのか。
岩鳶駅前のビミョーな田舎感が、京アニの空気制作能力全開っぽくてスゴくいい。
見るもの見るものハルとの関係に結びつける、乙女メンタルな凛ちゃんが面白すぎる。
一方、お祭り来てるのに見るものはハルという”緑色の目の怪物”マコト・タチバナ。
お前どんだけだよ……と何度目かの感想を抱く。
ほんと、マコトの「俺の世界はハルを軸に回ってる」感はぶれねー。重てー。
そのくせ、初対面の女の子が浴衣キメてきたら、「可愛いね」とさらっと言えるあたりマジこいつよ~。
ほいでもって、面倒くさい人を見つけて面倒くさいことになりそうだなと危惧してたら、衝突回避のための努力でよけい面倒くさくなった。
一年チームの小慣れない動きが、どうにもいじましくて好き。
怜ちゃんは持ち前のバカの天才を、此処に来て開花させたまである。
何だあのセクシーポーズとキラキラは。
そしてマコ、お前まさか「衝突させてからリカバーさせたほうが、傷の治りは早いかも」とか考えて一人にしたんじゃなかろうな……。
子供に上げるヨーヨーが「4つ」な辺り、いやらしくもうまい演出が続くなぁ今回。
あ、マコはズーッっとハルんこと見てます。嫁っす嫁。
凛ちゃんとにとりの距離感が中々絶妙で、見捨てられないけど踏み込めもしないにとりの面倒くささと、頼れないけど離れて欲しくもない凛ちゃんの面倒くささが衝突する間合いそのままだった。
凛ちゃんまじ面倒くせぇ……。
そしてにとり全然報われねぇ……。
思わず心の旅路をたどって、何も失っていなかった時代の象徴たる小学校まで帰ってきちゃいますよ。
フェンスを握る指の動き、心の傷を抱きしめる左手、全てが乙女オーラ全開で大好きよ君。
その後のコネクトダッシュも含めて、ほんとこの子ヒロイン気質やな……。
色々小細工してたのハルにバレたけど、水泳部の活動とメドレーの勝利で成長したハルは、そんなに動揺せず。
そのことを確認した渚の表情作画が、彼の心情を写しまくっててグッドナイス。
前回水泳アクションにパワーが回っていましたが、今回は抜き回と見せかけて情動回やな。
待って待って待ちに待って、遂にやって来た旦那とのツーショットタイム。
此処ぞとばかりに胸の中に溢れる思いを、しかし静かに告白するマコが美徳でもあり恐くもあり。
やっぱアレやね、LOVEは要所要所で口にせんと、関係が深まらんやね。
そういうタイミングを絶対に逃さず待てるマコは、マジ深海の化物。
お嫁さんの告白が呼び水になって、自身の悩みを告白するハル。
やっぱマコトの対面じゃないと、心の柔らかい場所を言葉に出来ない子なんやね。可愛いね。
でも言ってる内容の半分は、凛ちゃんへの重たい心なあたり彼らの関係マジ業が深い。
ふーむ、「勝つ」ことと「楽しむ」ことをつなぐのは「仲間」って結論なのかなぁ……いい落とし所だ。
ハルが何かを「嬉しい」と言ったのは、これが初かな?
一年ズも合流して岩鳶水泳部の結束再確認! 希望の未来へレディー・ゴー!! ってなるけど、そこに凛ちゃんはいない。
お嫁さんに思い出の金魚をプレゼントして、「は~終わった終わった、いいデートだった」とばかりに帰る四人の前に翌日立ちふさがったのは……無論凛ちゃん!!
「オメーとは泳がねぇ」「俺の勝ち逃げだあばよ」とか先週言ってたわけですが、迷いに迷った末メドレー参加で再戦チャンスでございます。
凛ちゃんまじ面倒くせぇ……今回これ何回言ったんだ……。
地方大会メドレー参加が確定し、ハルの悩みを整地する回でした。
勝っても悩む凛ちゃんの気持ちは、仲間の支えなしで孤独に解消しなきゃいけない辺り、あの子は寂しい立場やね。
オリンピックを目指す立場故に、そういうことにも慣れなきゃいけないってことかもしれんが、マコを筆頭に支える人の多いハルと比べるとキツそうだ。
マコの方は、「ただ泳げばいい」「俺はFreeしか泳がない」という初期の立場を、凛ちゃんへの敗北とメドレーでの勝利を経験して完全にひっくり返しました。
出発点からイベントを経て変化した内容の表明まで、登場人物の価値観変化が非常にクリアに見える展開で、Free!の手堅さを再確認させてもらいました。
ほんとに綺麗に、よく出来てるアニメでありまして、かつ作中人物を活かそう、いい人生を送らせてやろう! という愛情、気概もバリバリ感じられる。
情熱と沈着さが同居する、素晴らしい回だったと思います。
・ FREE! (一期第十話『苛立ちのハートレイト! 』)
開幕ショタをパナされ、受け身に困る俺。
凛ちゃんのゴールデン・デイズ、取り返せるものなら取り返したい日々。
つーかお前、この年から粘着ストーカー気質か……。
泳ぎ方の激しさがちゃんと「小学生の」「アップ」になってる辺り、Free!の競技描写はちゃんとしておるね。
メドレーに勧誘するも、フリーしか泳がない病に罹患してるハルこれを拒否。
面倒くささと頑固さも、この頃から変わんねーのな。
小5と小6の微妙な力関係が垣間見えて、渚との掛け合いがオモロイな。
後この頃苗字にさん付けなのな、渚は。
この時代から、人間関係を真っ先に平にしていくのはマコなんだね。
ほんでもってオーストラリア留学を告白して、例の「見たことのない景色、見せてやるよ」に繋がると。
大体5分、転校生を受け入れていく空気をまったり描きつつ、四人のオリジンが見えてくるいいシーンでした。
一方現在、笹部のオッサン待望のコーチ就任であり、俺歓喜。
モーション撮影用のカメラまで持ち込んで、ホンマ面倒見のいいコーチや。
でも怜ちゃん的にはしっくり来てない様子。
あれか、嫉妬か。
回想シーンは、過去を共有してない怜ちゃんの孤立を深める意味もあるんだな。
鍋を突きつつ、笹部コーチのオリジンなどもらさらっと流す。
笹部鍋がリアルに美味そうなのもあって、尺を取らずにコーチのモチベがするっと入ってくる、いい演出。
ついでにあまちゃん先生の、グラドルな過去も判明。
あー……これは乗馬マシーンとかバランスボールとか乗ってますわ(偏見)。
男性スタッフの「女の肌色描かないと死ぬ。つーか殺す」というリビドーを感じ取れる、いい横乳でした。
江ちゃんがアルバムを発見し、凛ちゃんが孤立感をまたもや深める。
今回畳み掛けるなーマジ。
「原作と大きく設定を変え、キャラも増やしたアニメ版」つー立場が、劇作に活きてきてるのは面白いやね。
そして夜道にて、遂に怜ちゃん爆発。
積んだ友情パワーがあるので、しっかり受け止める体制ができてる岩鳶水泳部。
此処でこじれないのは、視聴者的には有難いのう。
凛ちゃんがメドレーに拘るのは、やっぱり親父さんが関係していた。
凛ちゃんは徹底的に、泳ぐことで失われた父親さんを取り戻そうとしているんだな。
だから妥協も出来ないし、自分のためだけに泳ぐことも、仲間のために泳ぐことも出来ずに苦しいのか。
江ちゃん、ちょっとお兄ちゃん慰めてやってッマジッ!!
ハルが凛をボコって気まずくなっちゃったところまで、一気に説明。
オーストラリアで辛いことでもあったのか、中坊時代の凛ちゃんは荒んでおるのう……。
「もう水泳やめゆ!!!!」とか言ってたのね。
無口系なハルが全部説明するのは、構成の都合か今までの経験で成長したと見るか。
「いつまでお客さん気分で水泳すりゃーいいんだよ!」つー怜ちゃんの気持ちも、よく判るのう。
色々ぐちゃぐちゃしてしまった状況と気持ちをぶち撒けるべく、怜ちゃん鮫柄に殴りこみ。
普段物分かりがいい子が爆発すると、なかなか凄いことするのう。
「ピンポン」のアクマみたいな状況になりつつ、来週に続く!!
原作の時間軸から置いてけぼりな、怜ちゃんの状況を整理していく話でした。
正直、此処には触らないでまとめると思っていたので、なかなか意外な展開。
しかし展開されてみると納得の問題点で、此処を平らにしておかないと、気持よく地区大会には出れないな、という問題でもある。
怜ちゃんの問題点であると同時に、視聴者にとってもブラックボックスだった「黄金の小6時代」をしっかり尺取ってやったのも、状況整理回として優れた動きでした。
試合をしたり熱い激突があったりという派手な回以外も、丁寧に状況を整理している所にFree!の強さがあると思います。
こうやって整頓した状況を、凛ちゃん×怜ちゃんで、そしてクライマックスである地区大会メドレーでどう爆発させるのか。
非常に楽しみデスね。
・ FREE! (一期第十一話『激情のオールアウト!』)
アホメガネ、暁の襲撃というところで引いた前回。
なるほどなー、蚊帳の外の怜が凛ちゃんに突っ込んで本心を喋らせるという構図なのか。
むっちゃグイグイ行ってるけど、あの子ああ見えて繊細すぎるくらい繊細なので、手加減してあげて……。
チョロチョロと本心ダダ漏れ垂れ流しな凛ちゃんに、ザクザクと質問の刃を刺しまくる怜ちゃん。
お前その質問でとんでも無い地雷出てきたらどうすんだよ……オーストラリアでホモレイプされたとかさ……。
自衛行動としての逆切れにも怯むこと無く、冷静に本心をさらけ出して追い込んでいくメガネ。
やっぱりチョウチョは、怜ちゃん的に重要なメタファーなんやね。
「俺は持ってるし、お前も持ってたはずなのになんで無くしちゃったの?」っていう問いかけが、残酷すぎて死にそう。
無くなっちゃったんだからしょうがねーだろ!!
「取り戻そうと思ってもなんか人生めんどくさくなってるし、いまさら友達ヅラなんて出来ないし……」とも言えず、突っ張り続けるも防御姿勢が維持できなくなって、「遥先輩はあんたが傷つけたんだ!」という致命打を入れられ一生ガードするしか無い凛ちゃん。
苛立ちと劇場を徹底的に正しく叩きつけて、「こいつが悪い!」という自分でも信じていない結論にしがみつきながらぶつかって来る怜ちゃん。
この二人の関係性……Free! マジ百合。
鳥取真剣水泳部の熱い語りは続き、遂に話は確信へ。
お互い何をどうしたいのかという疑問をぶつけあい、答えが出ない凛ちゃんと既に答えが出てる怜ちゃん。
ここら辺は獲得シーン数の違いが、如実に出てるわね。
迷いのない奴は強いので、真剣十代しゃべり場は怜ちゃんの勝ち。
非常にエモいシーンですが、同時に、「凛ちゃんは何をどうすれば満足なのか」という物語を終わらせるために重要な疑問を、それを一番強く感じている怜ちゃんに言わせるテクニカルなシーンでもあります。
凛ちゃんに唯一苛立ってる、共通点のない怜ちゃんだから出来るシーンだよなぁ。
他のメンツはなまじっか情があるから踏み込めないポイントが同時に、新参者の苛立ちポイントでもあるという。
ハルの話はリレー泳いだ時点で、かなり解消気味だからなぁ。
足場をもう一人の主人公であり、立場が違うので描写も薄い凛ちゃんに寄せるのは良い展開だ。
笹部コーチが大人の余裕で1000円出して、怜ちゃんお宅訪問の状況が整う。
渚先生は場の空気も読めるし優しい子なんだが、ハル凛の問題はいい加減爆発させなきゃいけない時期に来てるようだ。
ハルも十分頑丈になったし、別に壊れたりはしねーからやっちゃえよー。(無責任な煽り)
プロテクトのぎこちなさが、マコの超自然な見守り姿勢とのイイ対比になってんなー。
怜ハウスでのんびりイチャイチャしつつも、ハルから凛ちゃんとのイザコザを聞きに行く。
あの水とFreeにしか興味のなかった子が、大きくなって……ウウッ!(オカン爆誕)
色んなモノを抱え込まず、素直に言える岩鳶スタイルは問題が大きくなる前に解決してマジつえーな。
無論凛ちゃんのことは気にしてるんだが、競技は競技だし、ハルの「今はこの四人でチームだ!」はとてつもなく正しい。
その正しさからこぼれちゃうところに、凛ちゃんの気持ちがあるのが面倒くせぇところよ。
んでそのめんどくさい人は、たった一人で延々泳いでた。
とは言うものの、部長もにとりもよーく見てくれてんだけどな……。
何しろ親父さんの死を既に担いじゃっているので、中学で負けた時点で他人に荷物を預けれない子になっちゃってんのかな。
オーストラリアであった色々で、それが強化されたのかな?
んで、山陰地方大会でござる。
一生キャフフし続けるチーム岩鳶は、高台登って会場確認してモチベを高めるいい状態。
やっぱり早めに本音を吐露しあって、絆が太くなったのは強みだよなぁ。
あ、なんかハルがマコに告白っつーか「結婚十年目、一日に三回しか喋んないお父さんからのアリガトウ」みたいな発言した。
これは危険ですわ……マコハル大勝利っすわ……。
さすがにおとーさんも真顔の告白は恥ずかしかったのか、走ってくるとか言い出した。
え、オマエ渚にもデレんの……どんだけだよ……良いと思うので、ガンガンやんなよ!!
流石パーソナルクエストを、一足早く達成した人は違いますなぁ。
ハグも無論余裕ですよハッハッハ。
んでめんどくさい人サイドですけども、凛ちゃんもケジメを付けに来ました。
凛ちゃん豹変の真相は、オーストラリアで結果が出ない理由を「リレーで慣れ合ったから」と心理防衛したから。
背負い込んで追い込むことで強くなる人もいますが、凛ちゃん寂しん坊だからそういうのはあってないと思うけどなぁ……。
全ては、運命の転がり方の問題か。
こういう心の柔らかい場所を言えるのも、怜ちゃんが当事者ではないからこそ。
そういう意味で、怜ちゃんの「小学生時代(≒原作)の部外者」という立場は、アニメとしてのFree! を回転させるエンジンとして強く機能してんだな。
前回までハルの天才力&孤独感を燃料に回ってた話がガス欠になりそうなタイミングで、この二人をつないで軸にするのはほんとうに巧いなぁ。
あ、凛ちゃんがハル好き好き人間で、「ハルと泳げたからまた水泳やろうと思えました!」つーのは存分に知ってたのでイイです。
嘘です。
ちゃんと口に出して心を整理するのは大事だし、怜ちゃんにケジメつけたの偉いよ、凛ちゃん。
「凛ちゃんさん」から「凛さん」に呼び名が変わりつつ、ネジ曲がった関係もちょっと素直になってさーリレーだリレー!
とか言ってたらCパートで「凛ちゃん、リレー外される」という、とんでも無い核爆弾が落ちてきた。
部長はホント、強豪校の部長らしく選手の顔色良く見てるなぁ。
凛ちゃんこのまま参加させたら、絶対良くない結果が出ると判断しての外しか。
結果第一主義だけど、後輩の心情とかメンタルとか十分配慮して行動するデキる男よ御子柴。
「うちの部活じゃなくて、別のオスのケツ追っかけてんなら殺す」と宣言された凛ちゃん。
なんか決着の場っぽいを略奪された岩鳶水泳部(まぁこいつら的には、今のチーム優先だからそんなに動揺しないだろうけど)
嵐の予感をはらみつつ、遂に地区大会の幕があがるッ……!!
前回でストーリーエンジンとしての体力を失ったハルに変わり、凛ちゃんに怜ちゃんという燃料を継ぎ足して加速していく展開でした。
「だいたい終わっちゃったけど何すんのかなぁ」と思ってたら、「そういえば触ってなかった。此処を見落としてたら致命傷だった」つーポイントを、真ん中に据えて来ましたね。
これで凛ちゃんはただのライバルではなく、自分の背負っているものや過去への思い出を消化してお話を終わることができるし、怜ちゃんも蚊帳の外感にモヤモヤすることなく「仲間」として「楽しんで」「勝つ」ことが出来る。
ふーむ、つくづく凄いなぁFree! は。
県大会を早めに描写したのも、ハルの物語を前倒しで解決することで、凛ちゃんの物語を展開させる隙間を作るためでありまして。
思い返してみれば、丁寧に丁寧に笑顔を曇らせてきた手間を見れば、スタッフが凛たん大好きなのは明々白々です。
ただの「ちょっとめんどくさいライバルキャラ」程度で、京アニ凛ちゃん曇らせ隊が満足するわけもなかったのだグフフ。
怜ちゃんは今回自分の気持を吐露したこと、それが仲間にも凛ちゃんにも受け入れられたことで物語を昇華させました。
親父さんの死や、いつの間にかすれ違ってしまった過去、素直になれない自分、そして勝つ水泳と、背負に背負っている凛ちゃんが残りの話数でどれだけ爆発させるのか。
そして岩鳶イズムの集大成としての、地区大会メドレーリレーがどれだけ俺の熱血を沸騰させるのか。
いやー、楽しみだわー。
・ FREE! (一期第十二話『遙かなるフリー!』)
えー、自分的に結構衝撃の最終回であり、いつものように全褒めの方向ではなく、結構文句も言っております。
でもまぁ、素直な気分を書いておくのも大事だと思い、だらだら言っております。
読む時は、そこンとこヨロシクであります。
さて、前回部長が部長として冷静かつ的確な対応を見せたところで引いたFree。
鳥取のクソ田舎から京都に出てきた山出し集団が興奮する中、凛ちゃんは大荒れ。
自由形の泳ぎもズタズタで、話にならないレベル。
このパフォーマンスなら、そらー部長もリレーメンバーから外すわ。
フォローに来てくれたにとりは突き放すわ、水泳やめゆ言い出すわ、台風の如き大暴れですね。
自棄のやんぱちとはこの事だ。
誰かが声を田中秀幸にして、「お前は根性なしだ……お前はただの根性なしじゃねーか、なにが親父さんのために泳ぐだ。何がオリンピック選手だ!」って言ってやんないといけないレベル。
マジレスすると、部長が「お前らの過去のために、俺たち水泳やってるわけじゃねぇ。俺達の今のために、俺達は今泳いでんだよ」というのは至極健全で、水泳という競技に挑む者たちを束ねる立場として、すごく頼もしい意見だと思う。
「俺がお前の過去ではなく、鮫柄水泳部が今のために泳ぐ集団である以上、俺は俺達をお前の過去にしてやるわけに行かない」というドライさは、部長という立場としても、競技者としての個人でも、高校生三年という年齢の人付き合いとしても、なんら非難されるべきではない。
凛ちゃんが個人的なメンタルを処理できないで結果を出せないのであれば、それは筋断裂やスタミナ不足と同じ「競技に使う部位が脆い」という欠陥でしかない(少なくとも、競技に真っ向に立ち向かう存在としては)。
そこをフォローアップする優しさも欲しいちゃあ欲しいが、同時にそういう場所にはいられなかったのも凛ちゃん自身で、その矛盾で潰れるのであれば、潰れるまま水泳をやめてしまうのもひとつの手段だとは思う。
水泳の代わりになるものを凛ちゃんが見つけられるかどうかは話が別だし、例えば競技の外側で楽しむというやり方(これなら凛ちゃんが見てる過去≒岩鳶水泳部-怜とも共存できる)で満足できるかどうかは……結局オーストラリアに行ったんだから、無理かなぁ。
競技として水泳をやり、そこで勝ちという結果を手に入れてお父さんを取り戻したいなら、ここは孤独に踏ん張るべきで、そのことはけして恥ずかしいことでも優しさのないことでも、意味のないことでもないと思うのだが……。
結局凛を見捨てられない、その思い出を捨てられない遥は凹みに凹む。
お前さぁー、「今はこのチームが、俺のチームだ」って言ってたじゃん。
気持ちが揺れるのもよくわかるし、君等の過去の絆はとても大事なものだと思うけど、なんで全部うっちゃるような行動に出るかなぁ……。
まぁ心ってのはままならねぇモンか……。
怜ちゃんの聞き分けの良い察し方、むっちゃ中野を思い出すんで止めてください。
後輩が先輩の完成した世界のために一歩引いて、自分は泣くこともなく寂しく笑っている展開は、2時間半をまるまる詫び状に費やさないといけなくなるんだぞ。
むっちゃ被害担当艦じゃねーか……。
なまじっか前回、答えが見えたっぽい動きだった分、この展開は正直辛いぞ……。
Free! を正統派スポ根に分類して、勝負論への一種の答えを求めていたのはコバヤシ個人の勝手な思い込みなので、裏切られたという言い方は身勝手に過ぎるから使わんです。
結果として、「勝つ」ことと「楽しむ」ことは昇華されず、「楽しむ」ことがFree! に於いては是であった。
ただ、ひっくり返すのであれば最後の最後、尺と余裕のないタイミングでやられると、心の準備ができてないのでいてぇ。
……あれだな、好みの展開にならないから文句言ってるだけだな、今の自分……。
話の展開のために一番仕事をしていたのは、渚ではなく怜ちゃんだったという事実が明らかになりつつ、岩鳶のリレーに鮫柄の凛を入れる形で昔を取り戻していく四人。
でも、そこに怜はいねぇ。
……あーダメだ、けいおん二期20話で周りが泣きじゃくる中まとめ役に回った中野を思い出して、正直見てられん。
四人が「お前邪魔だからでてけよ」といったわけでもなく、自発的に空気読んで勝手に身を引いて一番都合のいい位置を作ってくれたわけだから、渡りに船だな。
ここらへんも中野と同じ構図だけど、なまじっかFree! は部活という形でいろんな人を巻き込んでいるから、俺のダメージがデカい。
ここで怜が聞き分け悪くなって、話が一切まとまらず終わっても困るけど。
怜のアシストを受けて、ようやく遥と凛が向かい合う。
この二人のぶつかり合いは危険度が高いので、真も徹底的にプロテクトしてきた。
でも結局この二人から始まった話なのだから、この二人で終わらせないといけない。
「笑えよ、ベジータ」みたいなこと言ってますが、笑われたら即自殺なんでしょ凛ちゃん?
まー、俺この面倒くさい繊細な傷つきやすさ、嫌いじゃないっていうか好きだけどね。
こういうメンタルの子が、よりにもよって世界レベルで勝ち負けを競わなきゃいけない状況に自分を追い込んで、周りのサポートも切り捨てちゃったのがこの状況の根本か。
そして、その「周りのサポート」を取り返すために、遥が目の前に立っている、と。
「凛ちゃんは結局、怜じゃ満足できなくて、遥に『オメェ何がしてぇんだよ』って言って欲しかったんだなぁ」などと思いつつ、青春の擦過傷を見守る。
片思いは辛いやな、怜。
しかも両方にだもんな。
ホントよー。
遥と凛に関しては、ここで本心が出せる(引き出せる)のであれば、まぁ何とかなんだろ。
個人的にはここで答えが出たことに知足して、棄権して来年泳げばいいんじゃね? と思わないでもないが、物語的に盛り上がりは必要だ。
今すぐ、此処で過去を取り戻すべく、メドレーに凛を入れる。怜は抜く。
こと此処に及んで、道化を積極的に演じてくれる怜の健気さが俺は好きで、痛ましいとも思う。
凛ちゃんのクソ面倒くさいメンタルを鑑みると、鉄を熱いうちに打っておくのは大事か。
人間一人の魂を救うことを考えれば、競技違反も、部活の顧問を引き受けてくれたあまちゃんや笹部コーチへの不義理も、鳥取大会で共に泳いだ選手たちに水ぶっかけるのも、全部しょうがない、と判断したわけだよね。
してるわけなくて、これを考えなしにする(出来る)から彼らは10代なわけだ。
おそらく彼らの行動を大人たちは是認してくれるし、競技者の代表たる部長も厳しい目線を向けつつも凛や岩鳶を自身の人生から切り捨てるほど厳しくないだろう。
そういう意味で、やはりFree! も京アニ的にやさしい世界だ。
彼らの行動を是認できるかどうかは結局、「俺には凛じゃないと」「俺には遥じゃないと」という恋慕の情に、どれだけシンクロできるかにかかっていると思う。
全てを振り捨ててもあの人でなければならない、という盲目的な唯一性が恋の特徴であるなら、彼らの行動は正しく恋なんだと思う。
俺はそこにはシンクロする。キュンキュンもする。
でも同時に、その外側にいる存在、笹部コーチや鳥取大会で隣のレーンで泳いでいた連中、水泳という競技それ自体、それに怜にも共感している。
共感出来るだけの描写の細やかさ、話の展開の確かさがFree! にはあったからだ。
俺が見落としていたとしたら、それは多分、スタッフがこのアニメを濃厚な感情の物語として終わらせようというという意欲の量なんだと思う。
そして、それを見落とさせたのは、自分の中の「お話をロジカル(だと俺が思う)な形で終わらせて欲しい」という欲求なんだろう。
欲心自興。つくづく修行が足らん。
天才である遥が見てた風景を、ようやく凡人三人組も見れるようになったのは良い描写。
逆に言えば、これを独力で見れない凛には才能がないってことなのかもしれない。
ともあれ、水泳と心象風景をシンクロさせてきたFree! 的演出方針の集大成だ。
一位は取ったし、凛ちゃんの七面倒くさいメンタルも少しは塩梅が良くなった。
怜のあの横顔見てると、オールオッケーとはとても言えんがな!
これで遥と凛のお話は、あるべき所に収まった……のかなぁ。
んで、鮫柄の方のお話。
ちょっと謝られただけで赤面するにとりが、DV夫から離れられないオンナみたいで怖い。
そして身内において管理する気まんまんな部長が、男前すぎて死にそう。
「昔の男への未練は晴らしただろうし、このまま離したらまた事故るだろうし、ちょっと面倒見るか」という感じなのだろうか。
おそらく尻の座りはオーストラリア時代クラスに悪いと思うが、それくらいは我慢しろ。
合同練習がはじまったのは、里心を適当に満足させつつ自校で泳がせるための部長の策、とか言ったら買いすぎだよね。
ともかく、誰も水泳を捨てることもなく、Free! 一期完結。
「そんなに自分たちだけで泳ぎたいなら、部活である必要も競技である必要もねぇだろ。勝つ喜びは、負けるかもしれない人が隣で泳ぐから生まれてんのに、それを踏みにじるような行動を結果として起こすのであれば、一生温水プールで泳いでろよ」と思わなくもない。
けど、俺は作中の人物ではないし、作中のルールを規定できる制作サイドの人間でもないわけで、Free! 世界の強さがあの行動を傷として残さず、優しさがそれを受け入れてくれるのであれば、それはそれでいいのかもなぁ、位の感想です。
Free! という作品がこんな長文描かせてくれるほどの熱量があるのは事実だし、そうであれば、作中人物の行動は敬意を持って尊重したい。
今になって思うのは、Free!で「勝つ」ということはどう云う扱いをされていたのか、ということです。
自分的には「勝つ」ということ、「負けさせる」ということそれ自体が重要な要素として描かれていたと誤読していたんですが、重要なのは「負けさせた結果として凛が傷つく」ということで、つまりFree!の力点は勝負ではなく感情に置かれていた。
そこを補填するための、横紙破りの凛三番手だったんでしょう。
その感情が過去と「あの時の四人」に閉じすぎていないかと思わなくもないですが、結果として凛ちゃんは前向きに泳ぐことが出来るようになり、遥も己の天才のみを足場に泳ぐのをやめているわけで、それを導いたあの行動は良かった、んだと思います。
聞き分けよく岩鳶の四人で泳いで、その泳ぎを見るだけで人生がネジ曲がってまっすぐになるほど、凛ちゃんの面倒くさいメンタルは軽くないってことなのかもしれません。
その重さがあるからこそ、感情を力点に話を回転できる、って部分もあるでしょう。
それを実現させるために都合のいい存在への道をひた走った怜への感想は、けいおん二期(と映画)において中野梓に抱いた感情と多分同じなので、あんま書きません。
いや、すげーたくさん書いたけどさ。
原作付きのけいおん! と、原作あれども改変権を京アニが握りこんでいるFree! とは、色々と歳もあると思いますがネ。
最後の写真で怜だけジャージを着ている無様さとか、あえて世界の都合として無視出来る要素を描いてしまう京アニのマゾヒズムを、奇妙で愛しく思っています。
それがどこから来るのかは、作り手ならぬ僕にはわかりません。
都合のいい理屈で全てを塗りつぶすより、リアリティが要求する自然を出した上で引っ込めさせることを是としてるってことなのかなぁ。
多分自分がいちばん引っかかってるのは、「今の岩鳶が俺のチームだ」という自分の言葉を、結果として裏切った遥と、それを怜に言わせやらせ気付かせた不公平感なんだと思います。
それはしてほしくなかったし、するのであれば遥自身のエゴだけでぶち壊しにして欲しかった。
凛への誠実さを貫くために、いろんな人に不義理をする結果を、主人公がしっかり引き受けて欲しかった。
それは、青春の迸りとして圧倒的に身勝手で、だからこそ潰れかけた人間を引っ張り上げる力のある行動のはずだから。
そこで、怜の都合の良さ、優しさにより掛かるのは、ちょっとズルすぎるだろうと。
多分しばらくしたら、僕はこのアニメのことをとても好きだったなぁ、と思い返すんだと思います。
今見終わって感じたざわざわした感覚も忘却されて、作りの巧みさ、作画の魅力を活かした演出、細やかな感情表現など、「出来の良さ」だけを覚えているんでしょう。
それはそれで一つの評価なのですが、同時にこのモヤッとした『裏切られた』という感覚、自分がドヤ顔で予測していた場所とは違う所に落ち着いた気恥ずかしさと若干の悔しさも、記述しておこうと思います。
最後にネガい事もたくさん書いたけど、俺このアニメ、すごく好きなんだ。
良いアニメだったと思います。
お疲れ様でした。