シュタインズ・ゲート ゼロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
季節は雪から雨へと移り変わり、止まっていた時が再び動き出す。
鈴羽の執念、ダルの決意、真帆の後悔、消えたかがり。様々な想いが、物語を再加速させる。
主役をあえて留め置いて、岡部くんを取り巻く人々の肖像を描く新章開幕。
というわけで、衝撃のヒキから二週間、待ちに待ったシュタゲゼロである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
作中でも時間が過ぎて、季節は梅雨。タイムマシン開発、あるいはかがりの救済。目的にたどり着けないまま、無為な時間が過ぎていく。
今回のお話は、そんな止まった時間が一つ一つ動き始める様子を追う。
基点はいくつかあるのだが、話の真ん中にいる岡部くんは今回、あまり目立たない。彼の物語が発火してしまうと、状況が一気に転がっていくわけで、まずはその周辺からジワジワ、ということなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
サブキャラクター含めて魅力的なのがシュタゲの良いところなので、脇を彫り込んでくれるのは嬉しい
今回のお話は主に3つの軸で動いている。鈴羽、かがり、真帆である。それらは連動しつつ個別に動いて、同じ場所、同じ人物…ラボの主たる鳳凰院凶真に集約するようになっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
ダルが『いつか…』と夢見る、愛すべき中二病患者の復活。そこへの道のりは、複雑で遠い。
なので、それぞれの葛藤とか、乗り越えるべき厄介事とかを整理していくのが、今回のお話となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
鈴羽は相変わらずの戦士(ウィリアー)っぷりだったが、ダルがいい具合に外付け良心装置として機能し、過剰に厳しい当たりにはなっていなかった。戦士の顔と娘の顔、両方あって鈴羽である。
思い出したように変態ムーブしておるが、ダルは親父としても科学者としても非常に頼もしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
時空のねじれに捉えられた愛娘との、奇妙な関係。それをほっぽり出さず自分の事として受け止め、責任を果たしより良い未来を目指す。そのことが、親友を復活させる道にも通じている。
ダルはクソオタクに見えて人間関係の間合いに気を使う人で、真帆にも岡部くんにも踏み込みすぎない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
しかしその優しさが問題解決の邪魔になると認識したら、あえて踏み込んでいく。自分も他人も傷つくかも知れないけど、勇気を持って飛び込んでいく。後ろを見がちなラボメンでは、稀有な気質だ。
まぁみんながウダウダやりすぎてると、話が進まないわけで。感情的・技術的な牽引役をダルに任せることで、サスペンスとスムーズな進行が同居している感じはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
クソオタクなキャラ付けも、そこら辺の横車を押す潤滑油というか。少々無茶しても、オタクだししょうがねぇかな、みたいな。
鈴羽は親父とは逆に、使命に必死過ぎて過剰に踏み込んでくる。見切りも早い。『オカリンおじさんはもうダメだ』はねーだろ、鈴羽さん…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
それは滅びの未来で、戦士として鍛え上げられた結果であり、洗脳かがりの襲撃を跳ね返せたのは、鈴羽の苛烈さあってのことだ。
キャラクターの個性は早々簡単には変わらない。特徴は長所にも欠陥にもなりうる。大事なのは、それぞれの良さを適切に発揮できる状況、マイナスを補い合える関係を作ることだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
橋田親子はそこら辺、凄く良いパートナーシップが作れていると思う。それを見せるための、多めの出番か。
鈴羽の実行力が前に出過ぎないよう、ダルが補う。ダルの実行力のなさを、鈴羽の暴力が埋める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
結果の出るイベントだけでなく、何気ない会話でもダルが鈴羽の行き過ぎを諌め、尖った刃を丸くしている。奇妙な関係ながら、親父の背中を見せようと張り切り、娘を導いている。
鈴羽とダルにある相補関係が、岡部くんにはない。重たすぎる宿命を誰に預け、助けてもらえばいいか判らないことが、岡部くんが十全に機能するチャンスを奪っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
逆にいえば、橋田親子のようなパートナーシップを獲得できれば、岡部くんの人格も、どん詰まりの状況も上手く行く…かもしれない。
人間の感情が結びつく。それはとても繊細な積み重ねで生まれる、一種の奇跡だ。痛みや戸惑い、苦しみをしっかり描かないと、決定的な感情と関係の変化には嘘が生まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
ゼロはそこら辺の積み重ね。光と闇の交錯をすごく丁寧にやっている。誰かが、誰かの特別になるまでの歩みを、焦らず積んでいく。
今回道の途中にいるのは真帆である。あざとい小動物ムーブで萌え萌え力を高めつつ、心に食い込んだ岡部くんと紅莉栖を、幾度も思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
ほんっと”もの思えば岡部”状態で、ヒロイン力高い。そうなるだけのインパクトが過去エピにあるから、投げ込まれた感情爆弾がじわじわ育つ様子にも納得がいく。
真帆の中のサリエリコンプレックス。紅莉栖の天才を愛しつつ、疎外と嫉妬を隠せないモヤモヤは、紅莉栖が死んでしまったことで行き場を見失った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
アマデウスはあくまで電子的なコピーであり、お互いの言葉をぶつけ合い、動的に変化していく対象たり得ない。亡霊に言葉をぶつけるのは、虚しいものだ。
それでも真帆は、死んでしまった紅莉栖の面影を追いつつ、自分の気持を整理していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
岡部くんにぶっ刺された『死人の墓暴きはやめろ!』という言葉をリフレインさせながら、それ以外の方法を探る。過去のデータを読み返し、天才を超えるべく歩み直す。
真帆は自分自身を、自分の中の紅莉栖といっしょにどうにか前に進めたい。そうしなければ、紅莉栖は死んだままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
天才との距離感を再構築し、紅莉栖の死によって瓦解した自我を再構築することを、真帆は望んでいる。自分が生者の時間を生きることが、紅莉栖をより良く埋葬することにも繋がると。
アタマではそういう”正解”を理解していても、事実と感情はそれを飲み込んでくれない。紅莉栖は生々しく死んでいるし、自分の気持はどうにもならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
それでも、真帆は日本に帰還する。天才の遺産、タイムマシーンと向き合い、自分の中の紅莉栖、紅莉栖の中の自分を甦らせるために。
ダルのポジティブな決意が真帆に感染し、状況が前向きに転がっていく様子が面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
しかしその結論にすぐさま飛びつかず、真帆の複雑な感情、前に進みたいけど進めないジレンマを追ったのは、彼女の表情が良く見える描写だった。
みんな必死に悩んでいる。それでも、先に進むのだ。
死人との関係をどうにかしたいのは、岡部くんも同じである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
共通の悩み、共通の倫理を抱えた仲間が先に行き、手を引くことで変化が生まれる。
岡部くん自身が真帆相手に、そういう善行を成し遂げている事実は、真帆の回想が岡部くんまみれであることからも見て取れる。
メンタルクリニックのどん詰まりから、岡部くんは必死に身動ぎし、自分の立場を真摯に伝える所まで来た。ラボメンの支えで、真帆に届く言葉を投げかけれる場所まで歩けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
その言葉が真帆を先に進め、多分岡部くんを引っ張ることにもなる。どん底から一歩ずつ、みんなで進む様子を、ゼロは大事に描く
サリエリとアマデウスの複雑な関係を、真帆がどうにか整理できた時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
多分タイムマシーンは完成に大きく近づくし、岡部くんも前向きになれるだろう。
混濁した感情が道を見つけると、どん詰まりに見えた状況に光が生まれる。シュタゲはそういう、感情と現実のシンクロの作り方が巧いし、強いと思う。
個人の発見や救済が仲間に伝播し、より良い変化(の切っ掛け)を生み出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
”ラボ”という印象的なサークルを物語の真ん中に据えたことで、ポジティブな関係変化に納得できるのは、面白いところだ。その中心にいた鳳凰院凶真が蘇らなくても、その思いを継いだダルやまゆりが”ラボ”を駆動させている。
形骸とはいえ”ラボ”が残ったことで、みんなが集まる場所が維持され、そこで感情や関係が交換されている。真帆もまた、飛行機に乗って”ラボ”に帰ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
かつて岡部くんが生み出した”ラボ”が、岡部くんの仲間を繋ぎ、再生させ、そのことがまた岡部くんを癒やしていく。過去は傷つくが、無駄ではない
ダルから鈴羽へ、あるいは真帆へ。”ラボ”を中心点に繋がっていく優しさの先に、多分岡部くんがいる。みんながジワジワ感情を整理し、手を取り合うその先に、鳳凰院凶真の復活がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
それは他ならぬ、ラボの主たる岡部くんが用意していた再生だ。岡部くんを甦らせるのは、他ならぬ岡部くんなのだ。
過去(あるいはねじれた時系列の先にある未来)の自分自信が、傷ついた己を救う。暗闇に道を指し示す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
ここら辺の構図は『鳳凰院凶真にメールを送る岡部倫太郎』にも通じていて、なかなか面白い。そこに至れなかったからゼロがあり、そこに至るためにゼロは紡がれている。
過去の自分、あるいはもう一人の自分。真帆の岡部くんへの共感は、”牧瀬紅莉栖の死”を世界で唯一共有できる存在に向けられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
そんな鏡合わせの二人が再開することで、物語はどう転がっていくか。なかなか楽しみである。真帆たんヒロイン力マジたけーからな…甘ッいラブコメ期待。
一方、鈴羽の鏡と言えるかがりは洗脳されてメレーファイティングである。真帆-岡部の関係が感情を主体としているのに対し、鈴羽-かがりは現実的な陰謀と因果が、その軸にある気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
洗脳はいつから行われていたのか。誰が悪意の中心にあるのか。かがりを追うと、物語の大きな枠が見えてくる。
まぁおそらく『なんもかんもレスキネン教授が悪い!』となるんだろうけど。(偏見)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
鈴羽が意味深に差し出した”教授”が誰かってのは、今後しばらく物語を牽引する謎だろう。タイムマシンで因果が前後するのが、状況飲むのに結構厄介だな…細かく整理しないとイカンな。
鈴羽とかがりを分断した、タイムマシーン前の衝突。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
これも”教授”が仕込んだ洗脳の結果だとすると、かがりはずーっと便利な傀儡として使われてきたことになる。
悲惨だ…これ見せられて『フーン』てならんように、まゆりママとのキャイキャイ見せたとすると、スタッフ悪魔だな。
まゆりとの平和な日々を象徴するうーぱさんを見て、かがりは止まった。完全な悪意の人形ではなく、人間らしい気持ちがまだ残っている、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
入り組んだ謎を解くことは、かがりから操り糸を外し、素の彼女…体だけデカい子供に戻すことでもある。はよう開放してやってくれ!
同時にかがりを追うことは、タイムマシーンを巡る陰謀、複雑な因果に分け入っていくことでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
入り組んだ謎が生む闇を解体し、真実の光を見つける。ミステリの原初的な快楽も、シュタゲの醍醐味である。かがりは情動を伴ってそこに切り込むための、足場になるキャラなんだな。
鈴羽、真帆、かがり。少女三人の心と状況は、三者三様の複雑さだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
決意を込めて光に進むもの、決意だけではどうにもならない現実に阻まれるもの、決意自体を許されていないもの。
それぞれ立場は違うが、縁と思いで繋がってはいる。言葉は届くし、変化は生まれる。しかしそれは、まだ決定的ではない。
そういう現状と、『繋がった思いこそが、未来を切り開いていく』という作品のルールを確認するエピソードだったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
これから加速していく物語を前に、丁寧に前提条件を確認する。係るキャラクターの感情のうねりを、ないがしろにせず描く。それが繋がっていく様子を見逃さない。
ゼロアニメが何を大事に、何に目を効かせて作っっているのか。作品としての強みがどこにあるのか。静かに差し出されるような、とても優れたお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月18日
女の子たちを丁寧に描いた後は、やっぱ岡部くんにカメラが戻るかな。少し明るさを取り戻した岡部くんが、変転する状況をどう泳ぐか。楽しみです。