シュタインズゲート・ゼロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
救済の旅を繰り返していたはずの岡部倫太郎は、第三次世界大戦によって荒廃した秋葉原へとリープする。
年輪の刻まれた表情、死に慣れきった人格。再開を喜ぶ暇もなく、奪われる命。ためらいがたどり着くこの世の果てで、岡部倫太郎は何を思う。
そんな感じの、お久しぶりなシュタゲゼロである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
急展開と言えば急展開、必然と言えば必然。岡部くんがモタモタしてるとマジやべーってのは、鈴羽が何度も警告していたところだが、次元的トリックで一気にそこまで話を運ぶ展開である。
荒廃したアキバの、ザラついた美術が良かった。
とにかく宮野真守が圧巻の演技で、『10数年意識がなく、声帯が完全に錆びついている中年男性』の苦しそうな演技を、きっちり届けてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
あのかすれた声の説得力があればこそ、ルカ子の血を潤滑油にして魂に火が灯り、荒廃の未来に順応する覚悟が宿ったラストの宣言が、よく刺さるのである。
結構視聴者置いてけぼりというか、オカリンも物理的に時の流れにおいていかれているわけだが、これは狙った演出だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
紅莉栖が死んでもまだ平穏な、アキバのヌルい雰囲気。人間の優しさにまだ居場所があって、傷ついた岡部くんを静かに包んでくれる心地よさ。
ゼロは岡部くんの限界メンタルバトルと同時に、それを見守ってくれる暖かな雰囲気が基調にあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
そういうモノに包まれてしまっていると、鈴羽がどれだけ切羽詰まって絶望の未来を語っても、何処か他人事な雰囲気が漂う。
まだ、世界は大丈夫。その思いは岡部くんと僕ら視聴者が共有するものだ。
しかし事実、ゼロの選択の果てには今回のような世界が待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
そこに時間的断絶を超えて、岡部くんを打ち込むことで、その当惑と痛み、決意にシンクロできるようになる。
そういう心理的操作を仕込むべく、急に世紀末世界にタイムリープすることになったのかな、と思った。良い仕掛けだと思う。
岡部くんは時の異邦人として、死が当たり前になった第三次大戦後のアキバに馴染めない。鉄砲の扱いはおろか、錆びついた自分の体も自在には扱えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
そういう当惑と、それでもキツい状況を自分ごととして受け止め、自分にできる"何か"を探そうとするオカリンらしさが、哀しく同居している。
体の方は11年間、心の方は25年間停滞してた岡部くんが、生き死にの鉄火場でなにか出来るわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
それでも後ろに下がらず、前に出て"何か"しようとする(度、宮野の喉がヒューヒュー軋む)ところが、痛ましくも誠実で、岡部くんらしかった。キミは本当に…。
そんなオカリンに、ダルは言葉でもって状況を説明し、魔剣豪と化したルカ子・ザ・イケメンは死を以って理解を運ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
女子メンツの老けなさもやべーが、ネタで言ってた特訓愚直に続けた結果、斬鉄の境地に達してるルカ子がマジやべー。すっげぇかっけぇ。
"狂気のマッドサイエンティスト"をネタで演じてたら、パラノイアな世界の真実に飲み込まれ洒落でなくなっちゃった岡部くん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
そんなオカリンと中二病ネタでキャッキャしてたら、日常が蒸発して黒い人斬りになっちゃったルカ子。
ネタがネタですむ気楽な時代は、遠い昔である。
そんな断絶に切り刻まれつつ、何処かに共通する部分もあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
狂ってしまった世界で、少しでも人間らしく在り続けるためにレジスタンスを組織した岡部くん。それを信じて戦い続けたルカ子。
11年(あるいは25年)の断絶を繋げていたのは、やっぱり平和なラボのくだらない日常、その思い出であろう。
アホバカ男の娘ネタでキャッキャ出来た、黄金の日日。崩壊したアキバでは絶対に手に入らない過去を胸に抱いて、必死に戦ってきたルカ子は、オカリンとマトモに言葉も交わさないまま死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
その残酷さが、オカリンにこの時代の痛ましい実感を、真実届ける。ハードな展開だな…。
紅莉栖にしてもまゆりにしても、死体が届かないと真実実感できない宿命みたいのが、岡部くんには押し付けられているのかもしれない。それが重たい荷物だからこそ、なんとか回避する道を探す。自分にできる"何か"を探す。そんな足掻きの記録。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
それにしたって世界さん、オカリンにキツくねマジ?
人死に本気で嘆き、弔うことすら贅沢ごとになってしまった未来。風景だけでなく倫理も感情も荒廃した時代をどうにかするべく、岡部倫太郎は覚悟を決める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
軋んでいた喉は力強く動き、ある意味あの世界の厳しさを自分のものとして飲み込んでいく。さよなら、楽しかったラボの日々。
失敗してしまった無数の未来。バッドエンドの数々が積み重なって、ようやくトゥルーエンドにたどり着けるAVGの構造が、岡部くんの物語には強く突き刺さっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
選択の果てに後悔があるからこそ、複雑なフラグのクソゲーを乗り越え、ベストエンドにたどり着く。それが、ゼロの範疇を超えても。
『世界を騙す』というキータームも見えてきて、かつて見たシュタインズ・ゲートへの道筋が、おぼろげながら見えてくる回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
未来から執念で、決定的な一言を届ける岡部倫太郎が生まれるためには、あのかすれた喉笛と、ルカ子の死と、そこから生まれる覚悟が必要なのだろう。
見た目も老け、死に順応してしまった岡部くんは、無印でベストエンドにたどり着いた若々しいオカリンとは、別の人かもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
しかしそんな二人がどうにか繋がるからこそ、無印24話のベストエンドがあるわけで。ゼロはあの終わりに向かい、何を犠牲にどうたどり着くかという物語なのだろう。
哀しい覚悟を決めてしまった、40代の岡部倫太郎。ダルからもクソナードの気配は消え、平和な時代は夢と終わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月7日
でもかつての科学少年たちが荒野を走るのは、あの時の夢を掴むため。負け犬達のルネッサンスが、ここからはじまるのだ。悲しみの中一筋の希望が、いい具合に光る話でした。来週も楽しみ