HUGっとプリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
花の盛りは短くて、寂しだけが孤独する。
ゲイ、ストレート、悩める天才、努力の人、あるいは性別を超越した天使。
才能故に人をひきつけ、様々なカテゴリーを押し付けられるアンリの繊細な悩みを軸に、少年少女のアイデンティティが渦を巻く。重量級の青春エピソード。
というわけで、孤独を誇り高く抱きしめるためには人はいかに愛するべきなのかを問う、ディープでヘヴィなお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
とにかく自分らしくありたいが、”自分らしさ”がどのような環境と条件で成立するのか掴みかねているアンリが中心となり、様々な人の想いが絡み合うお話となった。面白い。
アンリは様々なものの中間点にいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
男と女、子供と大人、天才と凡人、不遜と自尊。
その不安定な立ち位置は、固定したカテゴリーが先行するのではなく、柔らかで曖昧なアンリそれ自体がまずあって、結果として社会一般に流通する規範の境界に立っている状態だ。
期待の新星として様々な人を魅了し、商業スポーツでもあるフィギュアの舞台に立ち続ける以上、ほとんどの人がアンリを型にはめ、理解しようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
しかしアンリは生来、そういうカテゴリーにうまく自分をハメれない人間であり、そこが彼の魅力でもある。
無理やり檻に閉じ込めれば死んでしまう、野生の誇り高い鳥のように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
アンリは常に高く飛びたいの願うが、様々な重力が彼から自由を奪う。
私生活にまで踏み込んでくるマスコミ、そうさせるファンの欲望、そして自分自身の身体。時の流れの中で喉仏が出るのを、隠すためのタートルネック。
アンリは自己愛が強く、それもまたナルシシズムと自己尊厳の境界線にある。男と女の中間点、危うい思春期の一瞬でしか成立しない己の”美”を、アンリはとても大事に愛している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
そしてそれは、アスリートとして酷使される中で壊れかけ、万人平等な時の流れの中で変質していく。
そういうアンリが、一瞬を永遠にしたいというクライアス社に勧誘されるのは、自然な流れと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
えみるとの宵闇の語り合いがなかったら、アンリはリストルの誘惑を跳ね除けられたのだろうか?
自分とは違う、でもどこかが似ている女の子と向き合わないで、永遠を拒絶できたのだろうか?
アンバランスな境界線はアンリの内部だけで終わらず、様々に拡大する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
正人との友情とも性的関係とも取れる、複雑な描写。
形は違えど”美”の才覚を共有する、えみるとの交流。
あるいはそういう才覚のないルールーの、孤独と寂しさ。
そして、己の思いをひた隠しに”悪”であり続けるリストル。
アンリがアンバランスに足場を置く、様々な境界線。そのあやふやで危うく、美しい輪郭を丁寧に追いかけたことで、アンリ以外の人々もまた、ナイーブに悩み、勇気と愛で踏み出し、バラバラでありながら誰かと繋がれる奇跡を抱えていることが、鮮明に見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
プリキュアは子供番組なので、アンリがゲイなのか否かは明言されない。彼が求める『誰もが自由でいられる世界』が、どのようなアイデンティティの自由を求めてのことなのかは、視聴者の受け止め方に委ねられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
”秘密のヒーロー”であるプリキュアが、正体を隠さなくても良い世界、とも取れるか。
もしかすると、アンリ自身己の性カテゴリを決定できず、それをなにかに当てはめようとする有形・無形の圧力に苦しんでいるのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
声変わりの季節に理不尽に踏み込もうとする、青春の身体と合わせて考えると、そこまで無理のない推察かもしれない。
性自認は性他認でもあって、”自分がどう見られるか”と”自分がどうあるか”は、社会的生物である人間からは切り離し難い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
自分が見ている自分こそが、唯一本物の自分だと思いたいが、それを押し通すだけの力は誰にもない。そういうジレンマも、今回アンリが身を置くアンバランスなのかもしれない。
アンリが正人に性愛を抱いているのか、はたまた”純粋な友情”というやつなのかもまた、明言はできない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
どっちがキレイでどっちがキタナイって話じゃないんだから、どっちでもいいと思う。重要なのは、正人がアンリの飛翔に星を見たように、アンリも正人と繋いだ手を、己のアンカーにしていることだ。
今回アンリは、誰もが羨むスターでありながら、地面に足をついて星を見上げるシーンが多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
なりたい自分、なんにでもなれた幼い時代。眩しく瞳を焼く星の輝きは、他人が思うほど自由でもない。天才アイドルだって、当然血の通った人間で、笑えないときだってある。
そういうナイーブな陰影に切り込んだ時、冒頭えみるに投げかけられていたギャグ調の批評、それで笑えなくなったえみるの強張りが効いてくるのは、良い運びだと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
えみるはえみるなりに、あの一撃がシリアスに痛くて、だからなんとか笑おうとした。そんなえみるにはなは『笑わなくていい』と言う
後ろに下がる強さ。誰かを護る優しさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
えみるが才覚で前に出るオフェンシブなヒーローであるのに対し、はなは時に下がるディフェンシブなヒーローであるといえる。
それは多分、第31話で顕になった辛い過去と、そこからなんとか片足引きずって歩き直した経験が元になったスタイルだ。
えみるは結局、強がって笑うことを選ぶ。道化を演じられるくらい強くなって、前に前に情熱の赴くまま前のめりに進み続ける。その血だるまの歩みが、誰かと自分にエールになると信じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
ちっぽけな体でそういうふうに進んでいくえみるが、僕はとても勇ましく、格好良く見える。
アンリは『そんな風にはなれない』と言い切る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
真実自分らしい自分を見つけたいから苦しみ、飛ぶ。エゴイズムとナルシシズムを捨てて、いい子になんてなれない、と。
誰かが求める、都合のいい嘘を”自分らしさ”だなんて、誤魔化せないと。
真っ直ぐで繊細で、傷だらけの生き方である。
それでも、えみるが真っ直ぐにぶつけてくれた気持ちを、アンリは忘れない。身勝手な自分の飛翔が正人の目を開き、支えたいと祈り、手を繋いでくれている事実も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
バラバラだけど、繋がっている。人間の寂しさと喜びを込めた矛盾の合間で、アンリはプリキュアにエールを贈った。大声で。
それはプリキュアを応援してしまうような、ひねくれてない真っ直ぐな自分を肯定できた、ということでもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
ただ自分のため。そう思い込んでいたアンリのエゴイズムは、実は利他の優しさにアンテナを伸ばしていて、叫び声を隠していた。
今回はその境界線を、アンリが飛び越えるまでの話である
そうさせたのは誰か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
音楽が消えた世界で、ただ自分の鼓動だけを信じてロックンロールしたえみるか。
彼女との距離に思い悩み、それでも抱きしめ愛を伝えたルールーか。
世界で唯一人、何にもカテゴライズされない”若宮アンリ”をまっすぐ見据えてくれた正人か。
自分が大好きで、だからこそ己に悩み続けているアンリ自身も含めて、”みんな”がアンリを飛ばせた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
よくある綺麗事の結論だが、これ以外ない答えをどっしり胸に豪速球、ぶっ刺してくるエピソードだった。
色んな人がそれぞれの形で悩み、離れ、それでも繋がっている。寂しさの中の希望が、星めいて輝く
水平方向の線を活用し、客席を一種の固定舞台として使いこなす演出の切れ味。繊細に震えるアンリの瞳を、アップで捉える作画力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
横幅広く、奥行き深く展開するストーリーを、映像の力がしっかり支えるエピソードだったと思います。
鎌谷さんコンテ演出初登板だけど、超バリバリだった。ええわ凄い。
シャーシが強いお話にいろいろ過積載してくるのがHUGっと流だが、今回”悪”を担当したリストルさんの存在感も、一気に増してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
前回の大敗北を受け荒れまくるビシンくん(かわいい)を、慈しみの目で見つつ距離感が掴めない感じ。はちきれそうな思いをスーツに覆って、”仕事”に赴くシルエット。
あくまで上司のせい、”誰か”のせいといい続けるディレクターを『一番キライなタイプ』と吐き捨てるリストルさんは、んじゃあどんな男が好きなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
誰のせいにもせず、誰かのために前に出る、ハリハムの彼なんじゃないか。
今回見せた存在感からは、そういう推測も自然出てきてしまう。
知られれば嫉まれ、傷つけられる。子供が知らなくていい世界の残忍さを、ちょっと離れたところから教えてくれるパップル社長の優しさとかも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
思春期ど真ん中特有の悩みに苦しむアンリたちと、大人になってもそこから自由ではない人達を合わせて描くことで、立体感が出ていたと思う。
そしてこのお話は、今回では終わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
華奢なボディで激しいジャンプを続けてきた軋みは、アンリの肉体と夢を破壊しかけている。自由でい続けるための代償は、時に重たく残忍だ。
その宿命から、時間を止めることで逃げられるなら。クライアス社の誘惑は、エゴイズムではなく利他からも出ている。
規範に閉じ込められることを嫌いつつ、曖昧な自分をはっきり捉えたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
矛盾する願いに苛まれつつ、否応なく”大人”に、”男”になってしまう身体の生臭さも巧く使って、アンリの複雑なアンバランスを丁寧に追うエピソードでした。
その印影が愛崎家とそのロボ嫁も照らして、グッと彫りの深い描写になった
”家”という檻に閉じ込められ、ロックに生きられなかった愛崎兄妹を解き放ったアンリが、それとは別の檻に悩んでいる時、兄妹それぞれのアプローチで道を見せるのが、ほんと良いんすよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
一人で飛べる強さを持ちつつ、でもそれ以上に自由に高く飛ぶには、誰かの手を取ったほうがいい。
才覚ゆえの孤独、それに悩まされ飛び越える愛の強さもたっぷり描かれ、感情を強く揺さぶってくるエピソードでした。サブが太いと、プリキュアだけでは書けないところ掘れてええな!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
来週はプリキュアバレネタを拾ってのことりちゃん回。正直蚊帳の外な彼女をメインに、どう話が転がるか。楽しみです。
あ、ディレクターがシャレにならないやらかしぶっこんでくる所は、プリリズの遺伝子を強く感じました。今回脚本、坪田さんだしなあ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
『しなきゃ』の圧力に苦しんでるのはえみるとアンリも同じなんだけども、大人だからこそディレクターはそこから抜け出せられない。誤った道を選んでしまう。
そういう情けない凡人、助けてくれる仲間がいない孤独な人間の姿もヒッソリ切り取ってくるところが、隙ないなぁ、と思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月23日
実際大惨事なんで、なんらか制裁受けろとは思うが。あそこでギター一本勝負に出るのは”えみる”なんだよなぁヤッパ…ロックンローラーだぜ、やっぱり。