風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
青竹荘十人の背中を、風が強く押し始めた。
ハイジの悪魔的手腕に騙され、脅され、煽てられ。走り始めた男たちのフォームは、素人むき出しのドタバタ調子。
それに苛立つもの、顎出してあえぐもの。
バラバラなまま、それでも走る男たちの前に、可憐なる花一輪。
そんな感じの第三話である。キーアニメーター・高橋英樹一人原画が唸りを上げ、風を感じる走りの作画、匂いの宿る生活作画、とっても良い感じであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
繰り返され積み重なる朝の描写がテンポを産んで、男たちの小さな変化、ヘトヘト加減がよく伝わるエピソードとなった。
と、その前に。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
第1話、第2話が面白かったんで原作読んじゃいました。今後はネタを知ってる感想になるので、コレまでとは見所違う感じになりますね。
小説版を読んでみると、相当色々変えて再構築して、その上でコアをがっしり掴んでアニメにしているのが分かりました。おもしれーなこのアニメ。
さて今回は、転がりだした状況を描写する穏やかなエピソード。グダグダ文句言いつつ、男たちは取り敢えず走ることにしたのだ、という回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
背筋がビッと伸びたハイジ、それなりに資質がある組、まーったくダメダメ組、王子と、走りがちゃんと書き分けられているのは作画力の有効活用
ハイジが言う通り、駅伝は10人で走る競技。抜群無益、大衆一如の心持ちで走りきらなきゃいけないわけだけども、現状実力も気持ちもバラバラ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
そこをまとめる一つの力点が、可愛い可愛い花の女子高生、八百勝の葉菜子ちゃんである。ほんと可愛い。
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マドンナ初登場でまず”走らせる”ところが、駅伝のアニメだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
葉菜ちゃんはあくまでサポーター、双子の言葉を借りれば『走るの俺ら』じゃないわけだけど、男たちを釣り上げ、隣り合い、エールを送る大事な仲間。
”走る”アニメである以上、彼女もまた走って舞台に上がってくるわけだ。
ナオン一つでのぼせ上がり、妙なハッスルを見せるバカ軍団。もともとお人好し集団であるけども、葉菜ちゃんの登場で奴らの素朴さ、アホさ、素直さが浮き彫りになった感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
ホントに嫌ならやめてるわけで、なんだかんだ良い奴ら、なのだ。ユキ含めて。
しかしだからといって、素直に一つにはなれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
『ド素人集めて箱根? 無理無理』という視聴者のツッコミも背負いつつ、カケルは一人、青竹のサークルから遠い場所にいる。こういう心理距離をフィジカルに、さり気なく見せてくる演出が好き。
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カケルは大真面目に陸上をやっていた分、箱根の重さを知っている。
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走ることで喪ったもの、無邪気なだけでは駆け抜けられないものが、彼の足を縛っている。
だからな~んも知らないクソ素人共に苛立つし、輪の中にも入っていかない。秘密と頑なさで心を守って、ツンツンボーイのままである。
葉菜ちゃんが間に入って、一回はサークルに近づいてくる(その表現として”一緒に走ってタイムを取る”ことになる)わけだけど、ズレを確認してまた距離を開けてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
葉菜ちゃんはアホバカな双子やキングだけでなく、むっつりストイックなカケルも引き寄せる”花”なわけだ。
サークルに接近した時、カケルの隣にニコチャンがいるのは面白い。年齢=人生経験の差が結構大事にされるアニメなので、器量があるニコチャンがツンツンボーイを受けた…というだけではなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
ニコチャンは、走る辛さを知ってる側だからだ。
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カケルの挫折は今後明らかになっていくわけだけども、それはデカいガタイが陸上を続けることを許してくれなかったニコチャンの痛みと、どこか通じるものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
走りたいけど、もう走れない。その辛さはカケルとニコチャン、それぞれ別個のものでありつつ、通じ合うものがある。
それが二人の間合いにも反映されているわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
近づいたり、離れたり。青竹サークルとカケルの距離は、孤独な集団競技である駅伝との間合い、一度は諦めた”走り”との関係性でもある。
いつかカケルが頑なさを捨て、過去のしがらみ、現在の思い、未来への夢を顕に出来たら。
その距離はぐっと縮まり、歯車が噛み合いチームが動き出すだろう。しかし今は、ぎこちない距離感でついたり離れたり、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
双子がのんきに、カケル(つまり世間)の『無理だ!』を跳ね返すシーンが、しなやかさに満ちていてよかった。走るのは俺ら、心配してくれてありがとう。
双子はバカだけど、ハイジの夢に付き合う自主性、カケルがどっかに持っている優しさをちゃんと見据えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
箱根の重たさ、競技の厳しさは全然わからない。でも、走るのはなんか楽しいし、ハイジも嬉しそうだし、葉菜ちゃんは可愛いし。
そこから始めてもいいじゃないか。
そういう気楽さから、カケルは距離をとってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
青竹サークルや葉菜ちゃんと良い感じに走れた時は晴れてた空も、一人になったらドン曇り。おまけに額に”イヤなやつです!”と太書きされた、タレ目のライバルもご登場だ。
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走り終えたカケルがオールバックになってるのが、彼が孤独に走る速度、その真摯さを感じさせて好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
髪が裏返るほどの真剣さで、なりふり構わず”走り”に向き合う。荒れてはいても、カケルは競技に誠実だ。それが彼を捉え、苦しめてもいる。なかなか悩ましい。
そんな彼の頑なさを、青竹荘ののんきな共同生活が、駅伝チームとしての繋がりが、陸上選手としての進歩が、果たして切り崩せるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
今後物語が踏み込んでいく場所を、日常の中静かに、いきいきと描くエピソードだった。細かい仕草の中に、群像の個性がしっかり見えてとても良い。
そんなボンクラ共を率いて、箱根まで舵を取る立場のハイジ。最後尾にキッチリついて、死にそうになってる王子のケアしている所は流石である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
一人先頭を切って孤独に走るカケルと、集団で走ることの意味を大事に、最後を守るハイジとの対比。競技性と共同性の対比、と言ってもいいだろう。
そんなハイジは、青竹きっての切れ者、ユキにも迫る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
酒と女と音楽、走る以上に楽しいことを知って、葉菜ちゃんにも釣られないユキだが、ハイジの人間力にはちと身の丈が足りない。坂の斜面を利用し、心の背比べを見せてくるレイアウトが絶妙である。
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古臭いポスターに書かれた『勝手すぎる奴』はまさにハイジそのものであるが、彼は優しい暴君でもあって、巻き込んだ連中全員の顔を見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
その包括力に、大学四年を『自分へのご褒美』に使おうとするユキの身勝手は、スルスルと飲み込まれる。
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なかなか無残な構図であるけども、願わくばユキも意に反して走る中で『走るの俺らだし』という思いにたどり着いてほしいもんである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
そう考えると、自分で自分のケツを拭ける(けども、結構人格に幅がある)”大学生”という年齢設定は、ドラマと噛み合ってるんだろうな。
汗臭い男の園に、咲いた可憐な花一輪。頑なに自分を守る男の、過去を知る青年。青竹サークルの外側から敵や味方が湧き出してきて、作品世界が広がるお話でもありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月16日
見え隠れするカケルの過去は、一体どんな色合いか。青竹の仲間は、その陰りを払えるのか。来週も楽しみですね。