SSSS.GRIDMAN 第1話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
目覚めたら、僕はヒーローだった。
全ての記憶を失い、ハリボテの街を彷徨う少年、響裕太。どこか遠い場所で回転する当たり前の日常は、唐突な怪獣の出現で破壊される。
目覚めろと呼ぶ声に身を任せ、スーパーヒーロー・グリッドマンに変身だ!
そんな感じの、非常に抑圧の効いたTRIGGER謹製スーパーヒーローリヴァイバル、その第一話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
自分は原作も特撮も素養がなく、見るのに二の足を踏んでいたが、見てみるととても面白かった。しかも、あまり想定していなかった角度から面白かった。
この第一話、Aパートが非常に長い。手元のデータで14:40秒、BGMを極端に押さえ込み、どこかくぐもった環境音だけで、いわゆる”日常”がつづいていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
しかしそれは突き放したアングルで捉えられた、尻の座りの悪い”日常”である。ヒーローが守るべき温もり、戦う理由となる体温が排除されている。
解像度が非常に高く、ノイズやゴミにまみれている(何しろ、ヒーローのホームとなるのは”ジャンク屋”)のに、生活感がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
綻びや傷まで含めて、丁寧に計算したセットのような印象を、ジリジリとこの第一話は積み重ねていく。その息苦しさが、一体何を描きたいのか。
そこに惹かれた。
ヒロイックに根性ドカーン友情ドバーンでブチ上げたいなら、フツーに”日常”を描けばいい。主人公が全てのアイデンティティを喪失し、なんとなく”日常”に飲み込まれるように一時的代用品でごまかしていく不穏さなんぞ、不要なはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
だがこのアニメの出だし、そういうモノしか存在していない。
凝った音響で遠ざけられる、他人の人生の会話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
聞こえているけど関われない、関わる必要がない、ありきたりなクラスメイトとの断絶(と接合)。
記憶喪失だと言ってもマジになってくれず、自分の都合ばっか気にするヒロイン。壊れたスピーカーのように、おんなじことしか言わないヒーロー。
ギラついたモノの描写、サブリミナル的にカットインしてくる”立入禁止”のフェティシズムと合わせて、裕太が包囲された日常には出口がなく、息苦しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
これに反比例するように、怪獣の大破壊とヒーローの活躍はカメラがスムーズに繋がり、アガるBGMが血液を沸騰させてくる。
クライムサスペンスのような”日常”描写と、特撮的スケール感を見事にアニメに落とし込んだアクションシーンの、狙いすました差異。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
それをわざわざ生み出しているのは、一体何故か。この疑問は、裕太が置かれた白紙の状況に、色々書き込まれくる中で見えてくるのかもしれない。
凄まじいカロリーで製造される”フツーの学校生活”で、裕太のアイデンティティは否応なく埋め尽くされていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
当たり前に学校があって、当たり前に友達がいて、すぐさま熱血することもなく、ダルくダルく、当たり前の日々が隙間を埋め尽くしていく。その退屈は、裕太の意思に関係なく全てを染める。
裕太が、彼の認識が形作る作品世界が本来どういうモノなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
そういうシリアスな問いを無言で窒息させるように、日常はジリジリと進み、怪獣は唐突に現れ、裕太は戦えてしまう。少女はオペレーター、メガネ男子は切れ者の司令になって、スーパーヒーロー物語が開始してしまう。
そのどこにも、裕太の自発性はない。その源泉たる記憶は真っ白なまま、ヒロイズムにしても日常主義にしても、凄い圧力で状況は進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
そんなオートマティックな息苦しさの中で、アクションシーンの盛り上がりだけが実感として立ち上がってくる。そこになんか、エグい計算も感じる。
マンションの窓に車がぶっ刺さる惨事。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
火の玉で”日常”を生きていた少女(バレーボールでスペシャルサンドを壊した少女が犠牲者になるのは、面白い重ね合わせだ)がぶっ殺される悲劇も、なんかどっか遠い。
書き割りの街で、ジャンクのモニター越しに死人が沢山積まれていく。
水を張った洗面器に、延々顔を付けているような”日常”の離人感とはまた違った、殺戮ショーの興奮と冷静。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
それをすくい上げるように、破壊されたはずの学校は傷一つなく蘇って、次回に続いた。
さて、どういうことか。さっぱり分からないが、気持ち悪くてとっても良い。
20年前以上の原作をリバイバルする上で、白紙の記憶、遠い認識、仮想と現実(あるいは虚偽と真実)を真ん中に据えてきたのは、何のためか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
それは物語を追いかけていく中で見えてくるもので、今判るものではなかろう。なので、この気持ちの悪い酩酊感は、とても貴重で大事なものだと思う。
日常に(あるいは怪獣とヒーローのいる非日常)に流されるだけの三人組が、今後この気持ち悪さに向かい合うのか、はたまた放課後ヒーロー家業に首ったけになるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
裕太の記憶、グリッドマンと怪獣の真実が戦いの中で暴かれるうちに、色々見えてくるだろう。
その起点となる白紙の世界の気持ち悪さ、満を持して用意された”アガる戦闘”のザリっとした違和感を、ちゃんと覚えておこうと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
ただのファッションで、なんか良い感じだからやってみた。そういうオチになるかもだが、この気持ち悪さを彫り込むと、なかなか面白いものが見れそうだと思ったのだ。
とにかく再編集された”日常”のザリっとした感じが好きで、夏の話、青春の話としていいな、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
当たり前に世界を埋め尽くしているのに、そこに溺れきれない。自分が世界に在るのだという実感が、どこか遠い。それは裕太の秘められた実感なのか、僕の身勝手な投影なのか。
話が進む中で、その実相も見えてくる。鋭い筆で、ちゃんと彫り込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
そういう期待感を、丁寧に丁寧に、気持ち悪ーく積んでくれる第一話だった。
人死が出てる(ように認識できる)一点で、ストレスの脱出口になるヒーローアクションにも、足場を置ききれない意地の悪さが素晴らしい。
少なくとも第一話を見た限り、このお話はヒロイズムも日常もを完全肯定しているとは思えなかった。ザリザリした違和感をたっぷり残して描かれた、離人の街。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
そこを駆けていく少年少女たちが、どんな青春を歩くのか。キャラの突き放したクールな感触も、とても良かったな。
今後巨大スケールで話が転がるにしても、Aパートにみっしり詰め込まれたザラつき、ギラつく陰影の生物感を維持してほしいな、と思った。あれは、とても面白い。(劇エヴァ冒頭を思い出す、と書くと、立派な老害だなぁ…。)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
前作見てない、特撮の素養がないで気後れしていたけども、フタを開けると肌に合う部分がちゃんとあって、とても面白かった。屈折系血みどろ青春絵巻として噛み砕き、消化分解していく所存である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
ワシも君と同じで、さっぱり白紙だ裕太くん。仲良くしようや。(馴れ馴れしい二次元への挨拶)
世界の謎、主人公のアイデンティティ、怪獣の社会的影響。色々デカい話が転がる準備もしっかり整い、青春を共にする仲間も出来た。真っ直ぐ話が進みそうで、ひどく歪んだカメラの意地悪さも、とっても元気だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月18日
この莫大な白紙を、どんな物語とノイズで埋め尽くしていくか。次回も楽しみですね。