やがて君になる：第5話『選択問題／続・選択問題』感想ツイートまとめ

やがて君になる　を見る。
青春の二つの極が、鈍い光を放つ。
興奮と恐怖、孤立と融和、観客席と生の舞台。
花咲くことがなければ、醜く腐れはてることもない。
生きることの美麗とグロテスクの狭間で、少女たちは選択を続け、越境を重ねる。
次第に、次第に、君の方へと。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

そんな感じの中間点、やが君第五話である。中間テストを前に、大きなイベントもなく物語は凪ぎ、二人の感情、物語世界の様相はより際立ってくる。
ここまで盛り上げてきた感情やドラマ、象徴のラッシュを一旦落ち着けて、静かに観察し飲み込ませるようなエピソードだ。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

もともと"越境"はこのアニメにおいて（青春において、物語において？）非常に重要なモチーフで、侑は第1話から緑のアーチをくぐって教室から生徒会室へ、淡い色彩の離人から濃厚な体験へと、一線を越えている。
そこで燈子と出会い、歪な自分を見てもらうことから物語は始まっている。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

第2話で決定的に飛び越えてしまった境界線が、今回も顔を出す。危険と安全の境界を行ったり来たりする踏切は、やっぱりあまりに重たすぎる色合いの空を背負う。
その凶暴な色合いが、"百合"には不釣り合いにあまりにむき出しで、とても好きだ。https://t.co/MHfVm67e9V

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

境目を乗り越えること。安全圏に引きこもることを止めて、感情と体験の実相を確認していくこと。痛みと危険を前に、踏み切ること。
今回の穏やかなお話も、今後展開する物語も、やはりそこに接続し続ける。なので、今回も踏切が顔を出す。
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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

電車のように巨大で早く、重たい存在感。侑はそれを己の属性ではないと冷たく見放しつつも、言葉にならない実感を抱えて、燈子から離れられずにいる。
一緒に勉強しようと引き寄せ、放っておけないと目を向け続ける。その引力は既に恋だと、槇くんに指摘されてもうなずけない。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

槇くんはこれまでと同じように好青年で通しているが、その行いは僕らにはもはやグロテスクに映る。他人の恋を、安全圏から消費する怪物だ、と。
知ってしまう、ということはそういうもので、侑もまたそんなむき出しの感覚を恐れて、境目の前で立ちすくむのかもしれない。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

しかし時間は進み、恋は侵食する。それは抑えることが出来ない摂理だ。
OPで描かれる美しい生花と、萎れ腐りかけた花の姿。時を止めようと、一つの岸に留まろうとしても押し流されていく、時間の残酷さ。生の無軌道さ。
"完璧"に留まろうとする燈子もまた、既にきしみを溢れさせている。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

死者の完璧さと、生者の脆さ。否定しようがない真実を受け止めてもらえるから、侑は燈子にとって特別である。
バフチンの定義によれば『グロテスクは、形象の中で生成の二つの極（去り行くものと新しきもの、生と死など）を同時に呈示するもの』である。恋はグロテスク・リアルなのだ。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

やはり槇くんは非常に大事な指標で、観客席にとどまる彼のおぞましさこそが、人を押し流していく恋と変化の波の強さ、それに洗われ見える星の光を強く教えてくれる。
前に進む/今にとどまるという二極の間で、己を静止させる不自然。侑はそれが己だと自認するが、際は簡単に超えられる。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

試験勉強を誰とするか。槇くんが物分り良く席を譲る"特別"も、明瞭に越境の先にある。曖昧な窓ガラスに反射した自我を、まるごと引き受けるように。侑は燈子の側へと引き寄せられていく。
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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

公/私の境界線を超え、"侑の家"に越境した燈子は、私室をじっくりと観察/視姦する。胸いっぱいに香気を吸い込み、その実感を愉しむ。
そこはつまり、星のない侑の心そのものだ。清潔で、可愛らしく、少し味気なくて冷たい。
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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

恋を閉じ込めた物語、可愛らしい凶暴さを宿すぬいぐるみ、少女を磨き上げるクリーム、そして偽物の星。
燈子が預けた恋の象徴は大事に大事に扱われ、姉とその恋人が二人の関係を言い当てるヒントにもなる。薄笑いの指摘が、真実を突き刺していることをヘテロな二人は、まだ知らない。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

侑の私室は、物語が始まったときからそこまで様相を変えたわけではない。少女漫画的な恋への憧れ、そこに届かない冷たさは未だ胸の中で渦を巻く。
脈拍を上げる特権、そこで燃え上がる体温は、侑からは遠い。燈子のおっぱいという境界線は、慎ましやかに保持されていく。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

ここで手首を探って"脈アリ"と確認するクールさがなんともこのお話らしく、とても好きである。
しかし同時に侑は猫のように、無防備に線をまたぎ、燈子の発情に接近していく。それは図書館で行われた燈子の越境より、大胆でエロティックだ
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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

二人しかいない私室と、人の目がある図書室。艶の乗った夕方の色彩と、白けた真昼の表情。
二人が身を寄せ際をお互い乗り越えていくる情景は、明瞭に対比され、同時に対等でもある。お互い、特別さを舳先に立てて、相手の間合いへと滑り込んでいくのだ。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

この時、燈子が周囲を気にかけ目配りしているのが、彼女らしい芝居だ。
"完璧"であることで世界に位置を獲得している燈子にとって、見られる自分、それと繋がった他者との関係性を繕うことは、もはやもう一つの本能になってしまっている。優等生の仮面は、もはや肌そのものなのだ。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

それをメリメリと引き剥がし、魂を呼吸させてくれるから。
燈子にとって侑は特別であり、恋の大賞ともなる。体温は胸からせり上がって頬に上がり、赤く赤く世界を染める。
可愛らしいそのサインを目にした瞬間、侑の表情は陰る。
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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

『普通、そうは繋がないだろう』という不協和音で、二人の感情は衝突する。燈子の情熱と侑の冷静の間には確かな境界線が引かれていて、そこを乗り越えることは出来ない。
その対比が異物感となり、生々しいものを覗き込んだグロテスクなショックが、スッと胸を刺してくる。極めて痛快である。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

侑の陰りは、自分をおいて特別を手に入れ、その恍惚に思う存分浸る（そのために自分を"使って"いる）燈子にだけ、投射されるわけではない。
冷静に分析し、侵入する特質を持った侑の分析眼は、当然自分のも向く。暗闇の中冷たく、星を求めて満たされない女の子に。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

どれだけ愛おしく抱きしめても、偽物の星は冷たい。
自分を特別だと求めてくれる燈子は、侑が特別な思いを投げかけた瞬間、スッと離れていくだろう。投げかけるべき特別さも、燈子ほどの切実さを宿さないまま、少女漫画の中の恋とはまた別種の冷たさで、目覚める時を待っている。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

燈子から投げかけられた好意を、ギュッと凝集したプラネタリウム。
それを愛おしく抱きしめ、偽物の星に夢を託す。その切実な越境（のマネごと）でキレイに終わらせるのではなく、嘘のスイッチを切って、冷たい無明に身を置く。
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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

星空の欺瞞性を強調するように、部屋の明かりが写り込んでしまっている構図も、慰みの光を消さざるを得ない侑の賢さも、このエンドカットに全て詰まっている。
少女たちの現状、グロテスクの在り処を明瞭に示して、このとまり木のようなエピソードは終わる。普通ではなくて、非常にこのアニメらしい。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

中間テストを終えて、二人の想いがどうなっていくのか。二極に隔たれた境界線を何度乗り越え、どんな切実さに出会っていくのか。
傷つき、傷つけ、むき出しになって嘘で覆い、恋に出会っていくのか。
そんな物語を駆動させるためにも、この状況整理は大事だったと思う。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

再びバフチンを引けば、グロテスクは常にカーニヴァルを伴う。
『笑いの原理に基いた民衆の第二の生活（祝祭生活）』という定義が、後に待つ文化祭とそこでの演劇に奇妙に符合しているのは個人的に面白いが、仮想の物語は燈子と侑の真実を、現実よりも鋭く切開するのか。越境させるのか。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

バフチンが肯定的に分析する、ルネッサンス期の文学。"新生"を意味するその眼差しは、侑の凍りついた実感を、燈子の仮面を引き剥がし、痛みと熱量に満ちた真実を顕にしていくのか。そしてそのことが、恋をどう照らし、そのグロテスクを真実描いてくるのか。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

『双身一体性、生／死の同居というアンヴィバレント』を重視した視座は、燈子が顕にしていない秘密（これが差異を生み、優位を産んでいるわけだが。玉座から女王が転がり落ちるのも、カーニヴァルの典型である）にも深く食い込む。
そこら辺の暴露をどうやるかも、とても楽しみだ。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

（硬い話になったので、一応元ネタ開陳。
"フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化" 　ミハイル・バフチン、せりか書房　https://t.co/btFMNfa8tm

"新しい文学のために"　大江健三郎、岩波書店）https://t.co/rt8G3Alf43

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

追記　手術台の上にこうもり傘とミシンを並べるような、無理筋の併記。しかしそれが、いびつで独特な正当性を獲得してしまう瞬間というのは確かにあって、そういうモノを残しておくために、僕はブログを続けているのかもしれない。

追記というか余談。
曖昧な現実と鮮明なフィクション。自己像と客観の間の書き分け。境界線の越境。暴露と隠蔽。グロテスクのショック。
今回の感想を書きながら、"やがて君になる""ゾンビランドサガ""SSSS.GRIDMAN"を同じ視座、道具立てで見ていることに気づいた。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

それは観察対象が共有しているモティーフというわけではなく、それを切り裂いて何かを見つけたがっている僕自身の偏向なわけだが。
とにもかくにも、僕は同時に放送されているこれらのアニメに同じものを見つけ、同じ感じで見ている。そしてその現れ、デザイン、暗喩とレイアウトは当然異なっている。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

特撮のアニメリブート。オリジナルのゾンビアイドルスポ根。原作付きの百合ジュブナイル。
ジャンルに規定された、またその定形表現をバキバキにぶっ壊してくる、百万の表現。その差異にこそ面白さがあるし、あまりにバラバラなモノに共通の何かを見つけてしまう強引さを、無理筋だとも思う。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

人間はバラバラの点を想像で結んで、星座に変えてしまう動物だ。強引過ぎる読みしか世界には存在しないし、だからこそ妥当性は追うべきだ。他人に見せるならなおさら。
今回自分の中にあるレンズの歪み、それが幻像する蜃気楼のような共通点に気づけたのは、良いことだったと思う。

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日

自覚してなきゃ歪みは避けれないし、読者の裁量を踏み越えて"見たい物語"を引き寄せすぎる無様も晒す。そして巧く使えば、歪んだ共通認識はなんらか意味あるものを見つけられもするだろう。もしかしたら、それは共有すらされるかもしれない。
願わくば、妄想をうまく使いたい。それしか僕にはないから

— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日