色づく世界の明日から を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
触れ合い、すれ違い、勘違い。
心に魔法をかけて、世界に色を取り戻して。雨の長崎を、青春が踊る。静かに描画される微細な呼吸、湿り気の中で息づく体温と重力。
静かに、静かに、水の底の魚のように。重たくうねるキャラクターの質量を、モニタに焼き付けるお話。
というわけで、まーったく話は先に進まない第六話である。第体1クールのアニメだと停滞感というか、まったり慣れてきた塩梅が漂う頃合いなわけだが、このアニメも当然そこにハマる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
のだが、その牛歩が心地よく、また作品が描くべきものにもビッシリハマっていた。
お話として描かれているモノは極端に少ない。暗示が上手いアニメなので、急に飛び出してくるものが少ないのもあって、なにか新しい風が吹いた感覚はほぼ無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
唯翔くんから矢印伸びてる先輩が、顔見せたくらいか…彼女も後々膨らませるというより、一瞬の展開のための起爆剤だしなぁ。
しかしそのどっしりした運びが、逆に数少ない”動き”を強く描いてきて、非常に独特の筆致となっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
筋立てを追うのに汲々とせず、自分が選び取った題材を満足行くまで塗り重ねる。その贅沢な筆運びが、とてもこのアニメらしいし、見ていて心地よい。
事件としては
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
1 将くんが瞳美ちゃんとあさぎちゃんの間をフラフラする
2 瞳美ちゃんが絵の中に迷い込む
3 世界が色づいたことを瞳美、琥珀、唯翔が認識する
の3つが起きるエピソードだ。少ない上に、すでに起きていることの繰り返しでもある。停滞感が凄いが、展開を落ち着けるアンカーにもなる。
しっとりと落ち着いた描画、ため息の丸みを感じられるような色気が独特な回でもあって、そういう絵の匂いが、エピソードのテンポと空気にしっかり噛み合っていたとも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
おそらく狙ったスタッフワークではないんだが、こういう偶然が作品に魔法をかけるから、マスなアニメは面白い。
将くんの恋心はイマイチ不鮮明で、彼が優しいやつなのかぼんやりしているのかは、ここまでの描写では見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
瞳美を送り、返す刀であさぎちゃんを送っていく今回の序盤は、そういう彼の彫りを深くしていくエピソードだ。
間違いなく好青年。だからこそ残酷。そういう顔がよく判る。
静かに跳ねるように、感情の機微を切り取るカメラワーク。足と指先、細やかな目線と美しい背景を飛び回りつつ、将くんの心がどこを飛び回っているのか、彼の優しさと恋がどこにあるかが、すっと迫ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
それはフラフラとちょうちょのように、行き先を定めないまま踊る。
瞳美ちゃんにアプローチしておいて、あさぎちゃんも見捨てられない半端さが、将くんの現状だ。それを視聴者に見せるべく、前半のシーケンスは存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
瞳美ちゃんと接近する時の、重たく凝った情欲。あさぎちゃんを相手にする時の、爽やかな妹扱い。将くんの感情は非常に微細に、表現に乗る。
その淫靡で繊細な表現力はとてもこのアニメらしいし、このあと掘り進む主題への補助線ともなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
繊細に掘り進み、描く。それは唯翔くんが思い悩み、瞳美ちゃんが迷い込んでしまう”美術”の迷宮、それ自体でもあるわけだ。
現実と表現、二つのフィールドに同じものが描かれている。
金色の魚を追いかけ、絵の中に迷い込むシーンはほんとこのアニメの真骨頂であり、このアニメにしか描けないスペクタクルだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
非常に幻想的な光景が広がるのに、『凄いことが起こりますよ!』みたいな予兆、タメが一切なくすっと入るのが、凄く良い。
構えず、あくまでナチュラルに超常へ翔ぶ。
魔法が日常の中にありふれている作品世界と、唯翔くんが秘めている幻想へのアプローチが完全にシンクロしているのが、最高に気持ちよかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
作品を表現するために選び取られた演出方針と、作品世界の支配律、そしてキャラクターの抱える物語。全てがシンクロし、あまりに美しい世界へ入り込む。
作品を際立たせる意図だけでなく、それ単品として絵の中の世界が美麗なのが、何より良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
人を動かす”美”というのはそういうふうに、独立した圧力を持っているはずだし、持っているべきだ。そういう必然を作品がすくい取れているのは、やっぱり最高にいい。
これまで長崎の現実的美麗を切り取ってきた筆は、(当然そっち方面でも今回元気なんだが)絵画という異界に迷い込んでしまった違和感、それを塗りつぶす美しさを、凄まじい説得力で切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
ほんっと、このアニメでしか見れない絵が多くてありがたい。
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油絵のタッチを幻想に載せた壺中天と、幻想と見紛うばかりに美しい現実。それを同じアニメで描ける豊かさ、落差をたっぷり味わえるのが、贅沢極まりないな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
やっぱ魔法を台座にに選ぶ以上、このくらい現実を振り回して欲しいし、美しいものをたくさん見たいと思う。
そしてこの酩酊は、実は新しいものではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
絵画が現実に溢れ出す体験自体は、瞳美が唯翔の絵と出会った第1話から描かれ、繰り返されてきたモチーフだ。
絵画→現実から現実→絵画へと、アプローチの順逆が入れ替わることは決定的な差異ではある。受け取る側から、踏み込む側への変化。
それは瞳美が自分の傷から、男の心へと関心を移しつつある証明なのだろう。恋の予感はより深化し、深く深く心の中へ、作品の内側へと踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
”眺める”段階から”読む”段階へ、瞳美の鑑賞深度は変化している。表面には描かれていない闇、色が生まれる源泉を、読み解いて踏み込んでいく。
それは唯翔の心に踏み込む旅路であり、同時に瞳美自身を見つめる読解でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
現実と幻想、絵画と魔法、あなたとわたし。境界線はあやふやに揺らぎ、相互に侵犯していく。スラッとした描写は、そのあやふやさを強調もする。
隔たっているはずのものが、気づけば混ざり合い、別の顔を見せる。運命によって出会い、恋によって混ざり合う、バラバラの心。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
その不可思議と美しさ。
唐突に始まった空想の世界は、作品が最も大事にするコアをするりと、視聴者の心に滑り込ませていく。
それがとんでもないことだったのだ、と後出しで気づくのが、幻想が終わり、少女と少年がそれぞれ自分の世界を少し歩いたあとの、再接触のシーンだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
油絵の具の色彩は剥ぎ取られ、現実を切り取るツルッとした冷たさが、また戻ってきている。ここは当然ながら、夢ではない。
瞳美は唯翔が”別の女”と出会い、親しげに話しているのを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
踵を返し、雨の中に駆け出す。なぜ走るのか、その理由を置き去りにするほどの速度。
風が吹き、傘が跳ね飛ばされる。瞳美は足を止めず、ただただ駆け抜けていく。その残滓を唯翔は拾う。追う。
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この一連のシーケンスが、悪魔のように良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
モッタリと重たく進行してきたこれまでの物語が、全てこの瞬間を際だたせるための前奏だったかのように、このシーンは一切が止まらない。
心を説明するセリフもなく、動きを止める停滞もない。亜音速で見て、翻って、走って、追う。全てが早い。
それは心を、動き出してしまった恋の速度だ。モタモタと溜め込んだ感情を起爆剤に、重たさを速さに変えて、圧倒的に物語を駆動させる特別な疾走。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
これを書くためにこの作品があったのだし、この決定的な瞬間を分水嶺に、物語は異質なものへと変化していく。
そういう決定的な化学変化を、いつもどおりの停滞の中に埋め込む。全てが変質してしまうような炸裂を、『ああ、いつものようにダルいなぁ…』と視聴者を油断させるエピソードの中にねじ込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
こういう計画的犯行に出会うために、物語を食べている感じすらある。非常に面白い。
唯翔くんは駆け出した瞳美を追いかけ、傘を差し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
色を奪い、自分を阻害する世界。そこから身を守ってくれる、優しいシェルターを取り戻してくれる。
差し出された恋を受け取った瞬間、瞳美の世界に色が戻っていく。自分を取り戻していく。
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客観で進行するロマンスと、瞳美の内面に色が戻るファンタジーが、一切の隔たりも説明もなく共存していることには注目したい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
それは油絵の世界へと瞳美を導き、この混乱を指導した魔法と同じさりげなさで、幻想と現実の境界を破っていく。
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色を求めて無明の暗闇に堕ちた沼は、実はあらゆる色、あらゆる喜びを生み出す源泉でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
残酷さと喜びは同じ場所にあって、それを繋ぐ黄金の魚には、”唯翔”と署名がしてある。恋の匂いがする。
そういう決定的な真実に、瞳美は出会う。出会ってしまう。
自分が取り戻すべき色が、唯翔の中にあること。決定的な答えに出会うことで、瞳美は唯翔と離れた客観的な現実でも、色を取り戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
それは油絵のファンタジーではなく、あくまで冷たい雨の降る現実だ。だが、そこには色がある。
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この、電車が一歩進むたびに灰色の長崎が色づいていくシーンの美しさは、本当にとんでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
ただ色合いが良い、美しいというだけではない、その中心にいる少女の心、出会ってしまった恋の脈動が画面に焼き付いて、それで美しくなっているということが、最高にいい。
ここまでの静かな物語は、ここに至るためにあったし、今回物語をはこんだ沈黙の歩みも、この瞬間を際だたせるためにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
重苦しい停滞の中、一瞬鮮やかにフォルテが聞こえるような物語の筆致が、凄まじく的確に自分が奏でるべき色を見据えていることを、無言で証明した瞬間だった。
こうして取り戻した色は、一瞬の幻だ。あせていく色彩を追いかけて、逃げていく恋を探して、今後瞳美と物語は走ることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
それは流されるまま未来に漂流し、主体性なく恋に落ち、色のない世界を彷徨っていたこれまでの物語とは、決定的に変質しているだろう。
そして同時に、これまで使ってきた筆とテンポを改めることなく、美しい背景、微細な心理描写、心温まる関係性、魔法に満ちた美しい世界…このアニメが抱えるたくさんの武器は、一切衰えることなく維持されるとも、同じく確信できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
このアニメが真実すごいものであることを、つくづく叩きつけられるエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
こんだけ凄いものを叩きつけられると、脳の中でイマージュが膨れ上がり、いろんな予想と妄想が爆裂する。このアニメがどうなっていくのか、色々考えが浮かぶ。
そのすべてが間違っているのだろうし、同時に叶えられるだろう。そういう混沌とした可能性を、それを引き受ける資質を、””色づく世界の明日から”はこのエピソードで証明したのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
大げさな上に支離滅裂な感想となったが、心底そう思う。はっきり言ってナメてたが、凄いアニメだ。
この感情の爆裂が、作品に対する妥当な評価なのか、個人的なレセプターが誤作動しただけの妄想なのか、全く区別はつかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月9日
自分が感じた律動を微塵でも言葉に出来たか、一切自身はないけども、とにかく凄いエピソードであり、凄いアニメである。来週が楽しみだ。