からくりサーカスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
加藤鳴海が失ったもの。
記憶。ゾナハ病。日本との地縁。笑う子供と泣く女。
加藤鳴海が手に入れたもの。
人形の義手。血の流れない体。子供たちとの思い出。ギィとルシール。人形への憎悪。
加藤鳴海が、未だ守っているもの。
形意拳。子供が好きだという感情。魂と血潮。
そんな感じの、からくり編始動な第6話である。爆発と一緒に、ババァと鳴海とナルシストの世界旅行も吹っ飛んだが、コアの部分はしっかり守り、大胆な再構築が施されていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
正直『これはこれで』という感じ。枝葉刈り込まないと、到底終わらないのは知ってたことだしね。
さて、しろがねと勝が"手に入れる"物語を背負うのに対し、鳴海は"奪われる"物語を走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
いきなり記憶と片手がぶっ飛び、今までの日常から切り離されたアメリカ。隣にはババァとナルシスト。日本に取り残され、それでも日常を生きる二人とは、根本から切り離されている。
病院での地獄としろがねとの接触が同時に進行することになったので、鳴海が失ったもの、背負わされたものはより鮮明になった気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
序章で勝の魂に火を付け、しろがねに憧れという呪いをかけた、鳴海の生き様。それは損なわれてはいても、まだ失われてはいない。
人間だからこそ、人を笑わせることが出来る。人を守ることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
白紙の記憶から漏れてくる自分らしさが、鳴海を突き動かす。子供と遊ぶときは心から笑い、この世の地獄を見たときは吠え叫ぶ。
"血も涙もない"人形とは違う、血の迷った人間の証明。
© 藤田和日郎・小学館 / ツインエンジン pic.twitter.com/Odv84RTpGy
子供を容赦なく尋問するギィを殴りつけた時、鳴海の拳は今までのように、自分の血にまみれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
それは溢れ出す彼の心、他人の痛みに黙ってられない仁徳が、赤く存在を吠えているからだ。しかしその傷は、新しく埋め込まれた"生命の水(アクア・ウィタエ)"により修復されてしまう。
一度壊れたら、取り返しがつかない人間の心身。人間だからこそ壊れていく、子供たちの体と医師たちの心。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
そういうモノを修復できる体に、鳴海はなってしまった。あの屋敷での損傷を癒やすためには、人形の腕を埋め込み、人形になるしかなかった。そしてその手で、人形を殺す。
しろがねが鳴海と出会ったことで、奇妙な衣装を脱ぎ捨てて"人間"への一歩を踏み出したのとは正反対に、鳴海はしろがねと別れることで、人間らしい当たり前の衣装を脱ぎ捨てて、血も涙もない世界へと踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
未だ心は柔らかさを保っても、戦いの中では邪魔だから。凍らせて、血を止める。
かつてしろがねがそうなるしかなかった、人形狩りの人形。惚れ込んだ女と切り離され、背中合わせの運命に飛び込む鳴海の道は、しかし女の過去によく似ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
ここら辺の照応関係が、展開を圧縮したことで分かりやすくなってきた気もする。再構築面白いな…イッキ見独特の喜びというか。
人間だからこそ、血も涙もあるからこそ心を凍らせ、人形にならなければ耐えられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
厳しすぎる世界の真実に放り込まれ、どんどん失っていく鳴海の心境を、小山力也がさすがの熱演であった。モノローグ、ほぼ切嗣だったな…18の声じゃないが、それがいい。
子供と遊んでるシーンは記憶を失う前の鳴海で、バカで気のいいアンちゃんなんだけども、新しく背負わされた超常と向かい合う時に、悲痛で乾いた声質に変わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
それは鳴海の魂の変化、喪失されていくものを何よりも雄弁に語る。血の代わりに流れていくのは、魂と人間性なわけだ。
人間であり続けるという、最も厳しい戦い。勝が先週イジメに挑み、しろがねがサーカスの喜びと向き合ったのと同種の戦いが、鳴海に、しろがねたちに、医療従事者、子供たちにに襲いかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
病院のシーンはとにかく悲痛で、『ゾナハ病とクソ人形マジ許さねぇからな!』という気持ちに、ちゃんとなった
その衝動はあの病院にいる人すべて同じで、しかし対応は異なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
心の赴くままに熱く吠える男。心が揺れ動くからこそ壊れていく女。心を凍らせ、ただ目的を果たそうとする人形。
ゾナハ病、それを蔓延させるオートマータ相手に、様々な形の戦いがある。
人形の因子を埋め込まれた鳴海は、怒りを背負い、拳で戦うことを己に任じる。炸裂形意拳の作画が異常に良くて、タメたカタルシスを最大限に発揮してくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
それは人間らしい感情に満ちた行動だが、戦いは容赦なく、彼から人間性を奪っていくことになる。血を流させ、枯れさせる。
文字通り"人の生き血を啜る"オートマタ相手に、血を凍らせなければ戦えない事実。人間性を破壊する怪物と同じにならなければ、怪物と戦えない矛盾。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
鳴海がその身に刻んだパラドックスは、今後物語が激化する中で、より強く掘り下げられることになる。そこら辺の予感が、よく出た回だった。
人形になったことで、鳴海からゾナハ病が奪われてしまったのは、なかなか皮肉だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
ゼヒュゼヒュ言ってたんじゃまともに戦えないのは、序章で証明済み。弱点と一緒に、子供たちの同類、踏みにじられる弱者として人形に立ち向かう特権も、鳴海からはなくなってしまった。
今後鳴海はとにかく、"強いもの"であることを強いられる。傷を受けても泣かず、立ち止まりもせず、機械のように戦う存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
当たり前に傷ついて、立ち止まって、だからこそ立ち上がる人間の尊さを、人形の冷たさで塗りつぶすしかない存在になってしまう。
そして沢山のものが失われてもなお、鳴海には赤い血が流れ続け、優しさと強さを兼ね備えた好漢であり続けることが、悲壮を際立てもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
白紙の子供である勝が、日常の中でいろんなものに出会うように。
人形でしかなかったしろがねが、鳴海の思い出を抱いたまま人間になっていくように。
人間が人間として生きられる当たり前の喜び、獲得の光は、鳴海から遠くなっていく。子供たちと新しい思い出を作っても、それはすぐに奪われてしまうのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
光に満ちた"サーカス"が向き合えない、もう一つの人生の陰り。さよならだけが満ちた悲しい"からくり"に、鳴海は巻き込まれてしまった。
そこら辺の悲哀が、よく見えるエピソードだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
そんなやるせなさを既に飲み込み、目的のためならば瀕死のガキを激詰めもするクソ野郎も、バリバリ目立ってたけど。
エピソード中唯一のギャグシーンを、人間の血が通ってないギィが担当するのは、なかなか皮肉だなぁ…。
無論彼らにも、人形との一線はある。人の笑顔を守り、弱者のために戦う理由はある。再構築によってこの段階では見えなくなったが、だからこそどうしろがねの赤い血を見せてくるかは、非常に楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
マジでただのクソ野郎と胡散臭いババアじゃないんだって! 楽しみにしててちょ!!
一方、完全に血を投げ捨てた怪物たちも、本格的にお目見えした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
オートマータ。
序章では影も形もなかった唐突な敵だが、ゾナハ病のエグイ描写、奇っ怪なデザインがうまく生きて、こっちのヘイトは限界値である。ぜってぇ許さねぇからな…。
アプチャーさんを次元の彼方に蹴っ飛ばし、代わりとばかりにパウルマン先生が登場。荒野をスーツ姿の軍団がのっしのっし歩く姿は異様で、『あ、超ろくでもない…』と理解らせるのに十分であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
才賀の人形に比べ、オートマータは拳法特攻が乗るので、鳴海の当事者性がアガるね、やっぱ。
人形の腕を手に入れ、拳法を身に着けた鳴海は、戦う特別性を持っている。子供たちを餌食にしようとする悪鬼を止める資格は、しかし同時に人間性を剥奪される悲惨も意味する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
自分が戦うしかなく、それは望むところなのだけども、そうすると最も大事なものも喪われていってしまう。
勝やしろがねが身を置く"サーカス"の戦い、手に入れ増やしていくための戦いとはまた別の、"からくり"の戦い…奪われ失っていく戦いが、悲しく幕を上げるエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
子供たちの涙を背負い、鳴海は人形の腕で、人形と対峙する。その先に何が待つか。来週も楽しみですね。
しかしアレだな、物語が本格的にうねって超アツいシーンなんだけども、すごい勢いで白井サモエド先生の同人誌が脳内で再生され、素直に泣いたり笑ったり怒ったり出来ないのは困ったもんだ。(白井先生は悪くないです)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
みくにゃんでぬくにゃん。
追記 ほんと、あの病院にいる大人は全員聖人だと思う。涙をながすことを許されないピエロは、白衣を着ているものなのだ。
からくり追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
いろんな剥奪が描かれるエピソードなんだが、ゾナハ病治療という大義のためには笑うしか許されず、怒ったり泣いたりという人間として当たり前の感情を表すチャンスが奪われるのも、その一環なのだろう。
喜怒哀楽の内、一つの感情しか許されないから、ここは地獄なのさ。
鳴海はそういう状況で、"怒"そのものになっていってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月15日
しろがねが感情をどんどん獲得する動き、その起因が鳴海との運命の出会いであることを考えると、物語のテーマ、それを体現するキャラクターのドラマ、それが対比される構造の作り方・使い方がつくづく巧すぎるな、やっぱ。