BANANA FISHを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
王を取り戻すべく、赤と青のチェッカーボードの上を殺意が走る。銃を手にアッシュを取り戻した英二だが、ブランカの嗅覚が知略を読み抜き、お互い王手詰めの形へ。
妄執に燃える月龍は指し手を誤り、満を持して魔王が盤上に上がる。対決は遂に、最終局面へ。
そんな感じのNY決戦開始、BANANA FISH第20話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
今まで頑なに銃から遠ざけられていた英二が、自発的に銃を握り、撃つ。ショーターに手を握られ殺した時とも、命を奪えないと投げ捨てた時とも違う、決意の銃弾。
結局それはゴルツィネの命を取らないが、アッシュを取り戻す決定打になる。
アッシュが魅入られ、求め続けた青い空。”平和な異国”からやってきた少年は遂に”アメリカ”の象徴たる銃を取り、自分の権利を取り戻すことにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
英二は遂に、真実アメリカ的な少年となったのだ。その通過儀礼を祝福すべきか、嘆くべきか、状況はまだ転がり続けている。
青い倉庫でブランカに破れ、囚われの獣となったアッシュ。彼が開放されるパーティー会場は、血の色を宿して赤い。その鮮明な対比が、長く後を引いた和音を解決するかのようで、個人的にとても楽しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
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過去にこういう事を考えていたので、状況が決着しまた回転していく舞台が”赤い”のは、非常にしっくり来る。
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個人的な眼目が保証され、俺のアニメ審美眼が節穴ではない、と作品に言ってもらえた感覚…身勝手な納得があって、今回の話しはホッとした。https://t.co/lSAOm3jsch
とは言っても、今回の戦いは血みどろに生臭く、ホッと息をつくどころではない。一瞬の安らぎを得た獣は、飢えた腹を抱えたまま王の威厳を取り戻し、銃弾に才覚を載せて窮地を突破していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
とにかくアッシュの殺しの才能が全力全開で、薄暗いカタルシスがあった。スムーズにスマートに殺しすぎだ。
銃を手にアッシュを取り戻したのが英二なら、飢えたアッシュに温かい食事を与えるのも、彼の自由を与えるため身を投げるのも、また英二である。
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ただ平和の象徴、無力なヒロインとして守られていたときよりも、力強い魅力が今の英二には宿っていて、しかし自分らしさも失っていない。良いぞえーちゃん
悪漢に囚われていた時、アッシュは食事を取らない。これは今回の捕獲だけの話でなく、過去に幾度も重なった描写である。
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山猫の嗅覚は、毒の混じった食事を拒む。野獣でいることで、アッシュは危険から逃れることが出来る。https://t.co/Yl2L0Fu4Fz
だとしたら逆説的に、アッシュが手ずから温かい食事を受け取り、冷たい青の中の赤、人のぬくもりに身を寄せる人は、正しく人間である、ということだ。
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アッシュから獣性を剥ぎ取り、人に戻してあげる力。それが英二の特別性であり、月龍にはない力だ。
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今回月龍はアッシュを求め、英二を求め、ブランカを求める。誰にも愛されなかった過去を埋め合わせるように、誰かを求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
その気持は、性虐待と暴力でずたずたにされたアッシュと同じだが、彼には英二がいて、月龍には誰もいない。
その理由がどこにあるのか。天賦の才のなさか、見ている景色か。
月龍は否定しようのない血の宿命を憎みつつ、それを同じ血の色…暴力で解決するしか無い存在だ。
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アッシュも銃を取り、人を殺す。赤い野獣としての存在感は、今回特に鋭い。ナイフだって人間らしく手ではなく、獣のように牙で握るのだ。
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しかしアッシュは人を率い、命を守るために行動させる。青い夢を本気で信じて、人が人として生きられる希望を諦めない。そのために戦い、そのために傷ついていく。
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大義を自分に引き寄せ、倫理を己のものとする魂の強さ。それに英二は惹かれ、英二が背負う無辜なる善が、アッシュを引き寄せた。
そういう相似形の引力が、月龍にはない。
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ブランカを繋ぎ止めるものも契約しかなく、ゴルツィネとの同盟も裏切り前提の利害関係でしかない。
そういう空疎さが愚かでもあり哀しくもあり、今回の月龍はとても人間的だ。弱いし。
己に無いものに苛立ち、それを求めるのはシンも同じだ。敵の策略を読む目、人を率いる才覚。
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シンは鏡に写った自分の空虚さを真摯に受け止め、それでも平和を望む。それを成し遂げうるのはアッシュだけだと見込んで、玉座を譲る。
その謙虚さこそが、シンの美徳なのだろう。月龍にはないもの、そんなものを抱えていては、虐待の地獄では生き延びられなかったもの。
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しかし、アッシュはそういう柔らかさを、どれだけ苛まれても捨てなかった。それが彼の強さであり、特別さなのか。善良であることすら、選ばれた特質なのか。
この問への答えは、物語が最後まで行き着かなければ見えないだろう。終わってすら、問い続けるべき謎ですらある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
むしろそういう、善を行う資質を問うことこそが、この物語の眼目なのかもしれない。様々な力と無力、善と悪が入り交じるチェス盤。終わらない思索のゲーム。
シンだって人間で、当然プライドはある。
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『アッシュだけが王になれる、俺にはその資格がない』と吠える時、彼の自意識を反射する鏡はひび割れている。
それでも、シンはその歪みすら飲み込んで、同胞のため、肌の色の違う仲間のために戦い続ける。
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王を知るのは王だけ、という感じで、チェス盤にはブランカが座る。相手の手筋を読み、油断なく実力を探る。誘い、躱し、突き砕く妙手の打ち合いは、命がかかっている地獄なのに、奇妙に美しい。
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強キャラを正しく、強キャラとして使ってるなぁ、という印象。見てて楽しいね。
ブランカという”父”から学んだ技術で、アッシュは殺戮のゲームを乗りこなし、状況を作っていく。二人の仕草はどこか似ていて、
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月龍を抑えるときも、ふたりとも”長い髪の毛”を引っ張る。背負わされた女の装いが、月龍の自由を縛る。
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お互い引き取ったコマをエスコートするときも、肩を抱いてどこかセクシーに。どれだけ憎んでも、否定しても、血に刻まれた”父”の影響は否定できない。
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それは指し手を月龍と交代したゴルツィネにも、言えることか。
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決戦の舞台で差し色に選ぶところを見ると、やっぱゴルツィネのテーマカラーは”緑”なんだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
嫉妬の怪物の眼の色、悪魔的に萌え出る生命力の色。アッシュを作り出し、破壊し、求めて傷つけてきた男と、アッシュはどんなダンスを踊るのか。なかなか楽しみだ。
ブランカはダンスパートナーが悪くて、アッシュとの指し合いに負けた。月龍が”バカ様”じゃなかったら…人の形をした野獣のような才覚に満ちていたなら、勝負はどうなっていただろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
ブランカの銃弾はアッシュを貫かず、アッシュのナイフは腕を傷つけた。互角の千日手で、永遠に遊んでいたか。
しかし人が獣ではなく、人と交わることでしか生きられない以上、人生のチェス盤では、コマは勝手に動く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
信頼できる相手を揃えられたアッシュと、ハバナに引っ込んで縁を切り、あまえんボーイしか手駒がなかったブランカ。今回の決着は、絆の差が生み出したのかもしれない。
アッシュは今回、野獣のように独走し、沢山殺す。しかしその周辺には人が集まり、アッシュを人にしてくれる。
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ひどく血生臭くて、これを人間の証明だなんて思いたくないけども、そういう瞬間ですら、ヒューマニティの輝きは何処かに宿る。このアニメが、ずっと追いかけているものだ。
そしてそんな輝きを、欲望と暴力がすりつぶしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
制御された暴力を取らなければ、望みは守れない。そんな”アメリカ”のルールを受け入れたからこそ、英二は今回、銃を取ったのだ。その変質は少しの悲しさと、沢山の力強さ…野獣のようなたくましさを秘めている。
アッシュは自分らしい暴力を否定されて、囚われ、縛られ、麻薬に犯されてヒロインやった。英二的な要素を自分のものとした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
それを助けるために英二は銃を取り、頭と体を使って走り回る。アッシュ的な要素を自分のものとする。
そうやって人は、愛する相手の”らしさ”を自分に取り入れていける。
そんな喜ばしい変化が、血みどろのチェスゲームの中で見えてくるエピソードでした。マフィアとの全面戦争、喜ばしい場面ではないのに心は躍り、何処かに喜びがある。皮肉なもんだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月24日
屈服を拒むものの戦いは、まだまだ続く。指し手は持たざる龍から、緑の魔王へと交代する。来週も楽しみですね。