HUGっとプリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
別れ。それは運命。プリキュアの使命を果たし、本来あるべき未来を取り戻した時、はぐたんは、ハリーは、ルールーとは離れ離れになる。
必然の離別を前に、少女の心が軋む。重たい感情が蓋となり、言葉が閉じ込められる。
そして、ギュイーンとソウルがシャウトするのです!
そんな感じの、えみるラストエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
前回掘り下げたルールーとの関係を引き継いで、やがて来るお別れ、ツインラブの歌の意味、愛崎家の重圧と変化、ビシンくんの激重感情と、相変わらずてんこ盛りなHUGっと終盤である。
今回も過積載気味だが、キーワードの強さを活かし、良い速度で走れていた。
愛崎えみるはHUGっとの中で最もヒーローらしいキャラである。小さい体を前に出して、常に正しいことを正しく吠えてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
だからこそ、『ヒーローなら、こうでなければいけない』という義務意識も強い。これが巨大な家、頑なな祖父からの押し付けと結びついた時、愛は呪いに変わる。
正人を縛り付けていた『かくあるべし』という呪いは、祖父から生じていた。その根源が表に出てきて、愛崎家の歪みに踏み込んだ構成となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
正直裏設定で押し通すと思っていたが、えみるとお嫁さんの関係を彫り込むためには、”家”の深奥に踏み込まないと始まらない。こういう思い切りの良さがHUGっと
超絶ロックに生きているように見えて、えみるが周囲を見すぎるほど見ている子なのは、これまでも描写されてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
そんな眼の良さと自分の感情が衝突したとき。あるべきヒーローのイメージと、やりたい気持ちがぶつかった時。猫顔のトンチキ少女にぶっ壊れちゃうのが、HUGっとだなぁと思う。
トンチキ棒読みギャグから激重感情、ハードコアなシリアス家庭事情とアイドル活動と、振り幅の大きい回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
愛崎えみるというキャラクター自体が、道化と英雄の間を行ったり来たりするからこそ面白いキャラなので、これでいいと思う。落差を活かし、的確に感情ぶっ込めてもいたし。
えみるの『かくあるべし』という規範意識は、他のキャラクターが二の足を踏む恐怖を前に、彼女を前に進ませる仕事をしてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
ヒーローがどうあるべきなのか、ロックに生きるとはどういうことなのか。真面目に見据えてきたチーム一番の年下は、冷静な批評眼故にHUGっとの切り込み隊長たり得てきた。
そんな長所が誤作動してしまう今回は、強みはいつでも弱みに繋がり、それを是正して『らしさ』を取り戻させてあげることこそ、他者の仕事なのだ、というメッセージを込めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
情けは人の為ならず。自分らしく吠え続けた結果、正人は生き方を変え、妹に自由を与える。
『ギュイーンとソウルがシャウトするのです』も『人の心を縛るな』も、正人が一人で考えたものではない。誰かが心の赴くままに、ただただ吠えた勝手な言葉だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
だが人はそれを受け取って、己の心に刻むことができる。そうして、生き方を変えることが出来る。
祖父の過剰な規範意識、”家”という呪い(それがえみるを永遠の子供に閉じ込めてしまう描写が、クライアス社の求める永遠と生々しく共鳴してもいて、上手いところだ。”悪の秘密結社”という絵空事は、とてもシリアスでリアルな”家”の事情、親なる怪物の愛という呪いと、同じものを見据えているのだ)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
それを自分のものと受け取っていた正人は、別の言葉を聞き、己を改めた。その言葉を与えてくれた妹が、彼女らしさ…大声で吠えるロックな喉をなくした時、代わりに言葉を届ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
それは正人の言葉であり、えみるがかつて教えてくれた歌なのだ。
形のない歌は魂に刻まれ、遠くへ運ぶことが出来る。このモチーフは正人という”家”の同居人だけでなく、血の繋がりを持ちえない鋼の親友にも、しっかり引き継がれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
灰色の未来には歌がない。そこに歌を持ち帰れるのは、アナタと出会えたから。だから、出会ったことを呪いだと思わないで。
正直『そんなにつれーなら、お別れしなくてもいいじゃん…』と思ってしまうシチュエーションに、クリティカルな一発を返してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
未来から来た田村ゆかり型のロボットと、魂を響かせた後お別れする。実質”ドラえもん”最終回前夜って感じである。前回のアトムといい、ロボアニメ古典ネタ多いな…。
それでも、辛いものは辛い。どんだけ綺麗で正しいお別れでも、涙は溢れてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
それでいいんだと、HUGっとは肯定する。美しい今を永遠にしたいという願いは、人として当然のもの。それは主役も”敵”も、両方感じるのだ。
そして同じように、当然時間は流れる。花が散るように、別れはやってくる。
その時世界の有り様を歪め、可能性を押し殺し、他人から奪うことで永遠を手に入れるのは、当然ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
たち現れ消えていく運命を前に、諦めではなく希望を込めてそれを受け入れ、より実りのある未来を、どう引き寄せていくか。変化と歌を連続させて、生を輝かせるか。
それをHUGっとはずっと追いかけてきたし、今回の話しもそういう話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
えみるの歌に込められたエールは、ルールーの機械の心に届き、正人の檻を壊した。そんな人々の優しさによって、えみるは自分らしさ、本来のヒロイズムを再獲得し、永遠を望む気持ち、未来を祈る思いに答えを出す。
あるいはそういう形でしか、エールが持つある種の暴力性、希望を受け継ぐ行為の危うさは制御できないのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
誰かに届くこと、それが何かを変えることを期待して、少女たちは歌うのではない。ソウルがギュイーンと勝手になるから、シャウトは生まれるのだ。そして、その歌は勝手に届く。
正人が”家”の代表として、かつて自分を支配した祖父(の実像であり、幻影でもあるもの)と向き合ったのは、彼自身の戦いだ。それを戦うための言葉が、えみるなりはななりから受け取ったものだとしても、そこには彼個人の辛さと尊厳があり、しかし孤独ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
彼の歌もまた、えみるに届く。
そんな歌のリレーションが今回のエピソードでは力強く響いていて、長い物語特有の強さだな、と感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
今まで最も優等生な”ヒーロー”を、作品の都合よくやってくれてたえみるだからこそ、最後にヒーローっぽくない弱みを見せる。それを、えみるに救われるヒロインだった正人が受け止め、戦う。
物語が要求する役割を強烈に印象づけておいて、それをひっくり返す。裏から彫り込むことで、キャラクターがより鮮明になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
そういうオフビートに話数を使える、計画的に話数を積めるのは、一年モノの醍醐味であろう。えみるは今回泣いて、ヘンテコになったことで、ようやく完成したのだ。
ロックンロールでトンチキなことすること含めて、ヒロイズムと自由の物語であるプリキュアに必要な立ち回りを、愛崎えみるは果たしてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
機械の女と種族も時も超えた感情を育み、別れを前提とした関係を作ってきた。それを最終的に乗り越え、肯定する路線もまた、ヒーロー物語規定のものだ。
静止した永遠を肯定するわけにはいかないからこそ、クライアス社は”敵”なのであり、しかしその感情がとてもありふれていて、人間の真実であるからこそ、彼らは大きな地位を占める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
だから、えみるとルールーが笑ってお別れ出来るようになるのは、既に決まった結末だ。
だがだからといって、それがお仕着せの嘘っぱちだ、ということにはならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
ならないように、ちゃんとキャラクターを悩ませ、相反する感情でもみくちゃにし、時に間違えさせる。彼女自身が積み上げてきた歌が、彼女以外の誰かの力になり、彼女の道を切り開いていく。
そういう凄くスタンダードな物語の起伏を、ちゃんと付けること。必要なだけ悩ませ、キャラクターの魂が選ぶ決断を肉付けしてあげること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
物語を世に生み出す時、キャラクターの人生を仮想する時、必ずやってほしいことを、HUGっとは愛崎えみるにし果たしてくれた。彼女が好きなファンとして、有難い。
えみるを元気づけようと空回りする連中のトンチキ漫才とか、ビシンくんの激重ヤンデレ劇場とか、枝葉の部分もとても面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
まさか初登場エピのかっぱネタを拾い直すとはな…さすがシリーズ構成脚本回。アツアツおでん二人羽織でスベるさぁやちゃんが、真面目トンチキで非常に良かったです。
ビシンくんがリストルINチューブの前で感情吐き出すシーンは、地獄の未来小動物感情四角形が大暴れしており、相変わらず朝にお出しする濃度ではなかった。ジョージは相変わらず、画面に出るだけでエロくなるな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
絵面的には小動物がコポコポ言ってて可愛んだけども、感情は特濃豚骨味である。美味い
前回親子関係を解消し余裕が出来たルールーが、良いヒロイン力を発揮してえみるを受け止めていたのも、とても良かった。やっぱえみルーだよねー!(先週見せた”はなルー”への情熱を、一瞬で裏切りボーイ)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
ロボットの悲しさ、未来人の悲哀を、最大限活かしているのがルールーの強いところ。
ここでキッチリお別れの話をやったことで、将来絶対必要になる物語を先取りし、終わりに向けて道路整理がちゃんとできた感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
こういう物語的必然を一身に受けて、献身的にお話を支えてくれるところが、えみるの好きなところ(の一つ)だ。『ストーリー進行を助けた』にチェックお願いします。
もう年末、HUGっとに残された話数も少ない。今回えみるがルールーに抱いた感情は、ほまれがハリーを思う気持ちに繋がっている。ここで熱く嘘なく描いたものは、別のキャラの物語で生きてきて、適切に描写をショートカットしてくれるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
こういう眼の良さあればこそ、過積載もギリギリ運転出来る。
そういうHUGっとの強さを感じることも出来た、愛崎えみるのスワンソングでした。最後にアイドル活動やって、”歌”の力を確認する形で終わるのが好き。パップルさんの人間力も好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
そして正人の活躍を引き継ぐ形で、次回はアンリくんのお話。ほまれが活躍しそうで、とても楽しみですね。
しかし親父のトンチキオペラとか、えみるのねこぢる顔とか、最大限ギャグのアブソーバーきかせてんのに爺の放つ生臭いオーラは圧倒的で、サトジュンアニメだなぁ、と感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
”家”という規範が持つ、愛ゆえの邪悪さと強制力。正しさを疑わない、疑えば”家”が壊れてしまう切実な凶暴さ。
愛崎爆発(スゲー名前だなマジ)が振り回す”愛”の凶暴さは、真芯で捉えると作品が壊れるほど強い。ここまで登場を抑え、ギャグで中和した判断は正しいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日
いや、あの妄執も善意も愛も呪いも、まったくもってよくあることでさ…だから良いんだけども。巧く描いたなぁホント。
あと静止した永遠へのあこがれをえみるに叫ばせたことで、乗り越えるべき敵と味方の共通点が顕になって、だからこそその祈りを呪いに変えない大事さ、ヒーローがヴィランにならない理由が明瞭になったのも、クライマックスに向けての正着だったんじゃなかろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月26日