風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
凪が、風を連れてくる。
ハイジが倒れ、マトモなメシのありがたさを思いするアオタケボーイズ。コーチの代わりに王子の隣に立ち、背中を追う者の走りをようやく知ることになったカケル。
歩くような速さで隣り合って、初めて見えるものがある。
そんな感じの王子VSカケル決着編、感動のフィナーレである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
重たい空気を満載のギャグで抜きつつも、アスリートとオタクがお互いの領域に譲り合い、お互いを知っていく過程、チームがチームになっていく過程を、馥郁と力強く描くエピソードとなった。
バランス感覚、背筋の強さ。このアニメらしい。
ハイジがいうとおり、今回は”怪我の功名”な回である。全てを調整し牽引していた男がぶっ倒れ、その代理を誰かがやらなきゃいけなくなったからこそ、カケルと王子は接近していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
バラエティ豊かなデス料理という対価はあったが、それは足を止めなきゃ感じられない風だった。
もともとメシの描写が強いアニメなんだけども、今回はいかにも”アニメ”な紫メシを出すことで、ハイジのありがたみを強調してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
マージで人間の食べるもんじゃない。双子のお茶漬けも、マヨネーズが意味不明すぎてヤバい。…吸うの?
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前3つの地獄メシに対し、ハイジ飯の美味そうなこと。フツーであること、マトモであることはすごく大変なコストを払って、頑張って維持するものなのだということが”絵”でわかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
しかしそれは、失われるまでは実感できないものなのだ。ただの過労でよかったね!!
(今画像並べてわかったけども、双子は強烈なマヨラーなので、とりあえずパスタにもぶっかける。お茶漬けにもかける。だからハイジさんにもマヨあったほうが良いだろう、という配慮なんだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
周囲が見えていないのは、カケルや王子だけじゃねーなコレ)
メシは笑いのネタ以外にも巧く使われていて、火であぶられて焦げてしまったコメ、台無しになった料理を三人で片付ける様子、既に始まっている歩み寄りが、キッチンを舞台に丁寧に描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
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ニコチャンとーちゃんを間に挟んで、ギスギスとぶつかりあうシーンのカメラの受け渡しは、緊張感とテンポがあって、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
とーちゃんがデカイ体で間に立つだけじゃ、オタクとアスリートはやっぱり分かりあえない。それで飲み込める言葉なら、最初から吐き出してはいないのだ。
それでもやっぱり、ここでニコチャン先輩が間を取り持ち、ハイジの遺灰をみんなで集める儀式を取り仕切ったことが、後の和解に繋がっている。死んでないけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
凸凹だけど同じ飯を悔い、同じ相手を思う仲間。そのつながりが在れば、まぁなんとかなるだろう。
ハイジかーちゃんの代理をするように、カケルは否応なくペースを落とす。相手の速度で一緒に歩いて、同じ目線で歩き始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
それは高校時代、速度故に孤独になっていた過去とは正反対の歩みだ。記録は出ないけども、もっと大事なものと出会える歩き方。
王子の歩みを見はじめた様子を、ドッタンバッタン大騒ぎなルームランナーに『それじゃダメだ』と苦言するシーンで見せるのは、なかなかクレバーだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
カケルはそれが、隣人の部屋に運び込まれたことも気にしていなかった。『一人だけ早くてもしょうがない!』と叫びつつ、仲間と歩みを合わせなかった。
そういう時間は、もう終わる。ハイジがじっくり育んだ種が、ハイジの不在によって芽吹く不思議が、なかなか豊かで好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
計算高い勝手なやつにも、読みきれないものがある。思わぬ不調、意図しないファンブル。同じように、何かを生み出すクリティカルな変化。
二人の凸凹ウォーキングが、朝焼けとともに始まるのが凄く好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
青とピンクの交わった綺麗な色合い、何かが始まる確かな予感の中で、オタクとアスリートは交流を始める。お互いの顔を見る。
それは既に始まっていて、今動き出す物語の予兆。
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尊敬するハイジの代わりに、尊敬する人ほど上手くいかないけど、末っ子たちはギクシャク仲良くなっていく。その一歩ずつが、涙がでるほど愛おしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
簡単には譲れない濃い口の個性を、強い意志を、ちゃんと描いてきたからこその譲り合いの感慨だなぁ、と思う。
それでもやっぱり上手くいかない時は、巧く取り回せる先達の意見を聞くもので。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
復活なったハイジは、王子をカケルに任せる。良い変化、涼しい風が吹いているチャンスを、手を出して潰したくないのだろう。
ぶっ倒れたことで力みが抜けて、”任せる”コーチングが更に冴えてきたか。
先頭に立つのは、孤独なものだ。追いかけるべき背中はなく、自分を追う人たちは見えない。でもそれは、追う仲間の信頼、それを生み出す走りの美しさがあるから、初めて可能なんだ。お前はそういうモノを、もう持っているんだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
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ハイジの言葉が風となって、カケルの前髪を揺らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
展開的にも中盤のつなぎ、目立った圧力のない静かなシーンだけども、凄くスマートにタイトルを回収し、このアニメが一体何を描いているのかを見せる。
すごく好きなシーンだ。こういう力みのない上手さが、全体的な強さを支えていると思う。
ハイジの言葉は状況の見取り図を手渡すだけでなく、カケルにプライドを、自己肯定感に満ちたセルフイメージを与えたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
お前は早い。その早さは記録を出すだけじゃなく、人に見られること、感動を与えることだって出来る。ただ数字を出すだけのマシーンとして、お前は存在してるわけじゃない。
高校時代に刻み込まれた呪いの刻印を、その優しさで引き剥がせたからこそ、カケルはアレだけこだわっていた”勝負”であえて足を緩め、仲間の走りに寄り添った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
それをさせたハイジは、やっぱ年間最優秀カーチャン賞だと思う。愛だけが、それを的確に言葉にすることが、人の背骨を支えるのだ。
言葉は何も、口から出る音だけではない。ただ走ることが、何よりも雄弁なメッセージになることもある。そういう特権性を、カケルは既に有している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
それでも、その天才に甘えず、凡人の領域に歩くような速度で踏み入っていくことは、けして無駄じゃない。
ハイジのアドバイスを受けて、敬意と自信を獲得した(あるいは自分がすでに持っていたものを再発見した)カケルは、王子の私室に踏み込む。漫画を借りる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
それはつまり、アスリートがオタクを理解ろうと、自分を捨てて歩み寄った、ということだ。
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同じように、オタクも長い髪を上げて、アスリートの真似事をする。お互いの個性を拒絶するのではなく、自分が受け入れられるところを明け渡し、接近し感染していく。仲間になっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
これをビジュアルで見せる説得力の強さ、筆のクレバーさがマジで尋常じゃない。
私室が私心であることは、過去の描写、フィクションの常道からも明らかだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
漫画とルームランナー、オタクと陸上が共存する王子の部屋に踏み込むことで、カケルは王子を理解していく。自分と正反対と思っていた青年が、存外自分に似ていることを知る。https://t.co/hkDSya4whH
あるいはオールバックは、”本気”になったアスリートの記号だ。本気すぎて周囲が見えなくなるほど走り込む時、カケルの髪の毛は野獣のように逆だってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
その荒々しい危害を、ナヨナヨボーイも受け止め、自分のものにしていく。https://t.co/oNbyr054gv
そうしてすれ違いながら分かり合っていく二人を、トーチャンとカーチャンが見守る。積み上げたメシの演出、隈の演出が、状況が突破された開放感とともに最大限活用されるのが、最高に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
ガキ達ほど派手じゃないけど、最年長二人もすれ違っていた。
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重たい好意を、”走り”に対する本気を受け止めきれず、あるいは巧く制御できず、お互い体をいじめてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
そういう時間が爽やかに終わり、全てが良い方向に転がり始めたのだという確信が、二人を静かに結び合わせる。https://t.co/kPfGO862J4
笑いと青春を混ぜ合わせたニトロで、思いっきり感動をぶっ放す主役たちとは、少し違う位置に年長者はいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
目立たなくても、静かでも。その衝突と和解は本当のことで、これがあればこそ、若い世代の熱い変化も生まれてくる。そういうのを静かに大事にしてくれて、最高のシーンだった。
漫画と走りを融合させて、王子の記録をあげようと必死になる様を追うことで、陸上アニメとしての細かい説得力を積んでいたのも、非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
走りはフォームから生まれる。それを正したら、ヘロヘロクソオタクもアスリートになれる。競技の細かいロジックを、笑いでくるんで飲ませる手腕。
こういう装いを怠けないからこそ、『ド素人からの箱根』という大嘘が、なんとか飲み込める形にもなるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
ロジックだけでシリアスに走る話じゃないけども、実際の競技、そこで問われる細かいテクニックを蔑ろにしたら、全てが崩れてしまう。だから、あくまで笑顔で楽しく、テクニックを教える。
かくして迎えた記録回、王子はカケルの背中を見て、カケルは王子に並び立つ。あれだけ固執していた記録を捨て、あれだけ嫌悪していたスポーツバカが与えてくれる、走ることでしか伝わらない感動を受け止めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
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自分が惚れ込んだ”走り”を、過去の傷に囚われ蔑ろにしていたカケル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
記録だけが価値だと思いこんで、自分も他人も傷つけていたカケル。
それが記録よりも仲間を、速さよりも強さを選んだ瞬間で、ストップウォッチ握るカーチャンの手もブルブル震える
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俺も完ッ全に同じ感覚で、歩みを止めたカケルみとったからな…ハイジの想いがようやく実って、とても良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
当のカケルがハイジや仲間を意識して行動したというより、筋肉が立ち止まらせた感じだったのも、凄く良かった。”走る”という本能を抑え込むほど、”愛する”気持ちが強いのだ。
視野の狭いツッコミ疾走だからこそ、カケルの走りは速く美しい、てのもあるだろうし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
ハイジの広い視野、強い意志、込められた優しさを無意識のまま受け取り、拒絶し、あるいは想像を遥かに超えて実らせる。そういう天然の、あるいは天才のあり方が、よく出たシーンだと思う。
かくしてたどり着いた、29:26。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
世間的には評価に値しない、ノロノロ歩きのダメダメ走り。でも、アオタケのみんなは、それを見守った僕らは、それが胴上げに値するほど立派なタイムだと、ちゃんと識っている。
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それは何よりも強く速い、僕らのペース。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
みんなそれぞれ本気で、”なぁなぁでやってる”やつなんか一人もいないけど、でも自分なりの歩みを大事に、時に自分に取り入れながら、みんなで走る。タスキを繋ぎながら、チームになってチームで走る。
その一つの答えが、しっかりと描かれた名エピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
切れ味の良いギャグで重たい空気を抜いて、しかし真剣さは失わず。ラストの上げ方も見事でしたが、序盤中盤のペース構成がホント凄まじかったです。
アニメ巧すぎるわーこの人ら!!!!
『もう最終回でいい…』という充実感でしたが、冷静になってみるとドンケツが少しペースを早めただけ、コミュ障限界人間がようやくマトモになってきただけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
奥様聞きました? このアニメ、2クールなんですって!(唐突なオタク界隈団地妻ムーブ)
24話というデカイキャンバスを最大限に活かし、原作のコアを大胆に噛み砕いて、自分たちの絵を書く。その確かさ、強さは、ここまで見てきた僕らには明白だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
たどり着いた一つのピークから、さらなる高みへと。箱根へと続く道は、一体どこまで加速するか。来週も楽しみです。面白いッ!!
追記 『上手さと強さの両立』という意味では、IGは一番すごいアニメ制作集団かもしれない。上手さに取ら割れて上滑りすることも、強さが腕不足になることもない。偶然ホームランを出すのではなく、安定して点取続けてるのが凄い。
風追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
最後に『そんなに大したもんなの?』という一般の視点を入れるのが巧くて、あれがあることでもうアオタケ側の視聴者にフッド感が出てくる。
29分で『オメー見て分かんねぇのかよ、歴史の教科書に載るくらい立派だよ!』と言えるのは、身びいき、推しの贔屓目、あばたもえくぼだ。
そういう前のめりの共感を生み出すよう、彼らが好きになって応援したくなるよう話と描写は積まれているし、自分もすっかり感染済みである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
僕らは冷静に外からアオタケの記録を見る側ではなく、内側で一喜一憂する側に取り込まれてしまっているのだ。だから、あのラストが成立する。
それを身内の共犯感覚だけで押し流すのではなく、あくまで冷静な外部の視座で冷やしつつも、だからこその熱量を対比で強調してくるのが、ゾッとするほど上手い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月4日
こういう細かい上手さの蓄積で、脳髄直撃の萌え萌えエモーションが成立しているのだ。巧くて強い、いいアニメだ。