風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
雨が重たく降っている。停滞の雨、涙の雨。泥に塗れつつ栄光を目指し、速さと強さに背中を押されながら、アオタケの6月が過ぎていく。
強く、優しく、粘り強く。いつでも百点優等生、目立たぬ神童にスポットライトを当てることで、様々な人の表情が見える回。
というわけで梅雨回である。雨で濡れちゃうからな~肌色満載でもしかたがねぇな~という回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
カケルと王子のバチバチを乗り越え、少しスローダウンなエピソード。それだけに横幅広く、色んなモノを切り取れる回だ。
肌色とか。マージ多かったな今回。あとニラCHANGね。犬かわいい。
そういうエピソードを漫然と進めないのがこのアニメで、重たい空の6月から、闇を抜けて光に進む7月へと、確かに未来を見据えながらしっかり歩く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
一歩進んだ縁を確認した後に、朝顔を写して季節感を出すのが上手い。花言葉は”固い絆”、”はかない恋”
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そう、恋ははかなく散った。雄臭いアオタケの中で唯一、まっとうに恋愛してたはずの神童くんは、エア彼女の実在を確かめた直後にフラれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
こんな優良物件を値上がり前に手放すとは、元彼女も相場観がねぇな! って感じであるが、大丈夫、ユキちゃん先輩いるからね。
神童は非常に便利なキャラで、その底抜けの明るさは強引に物語を引っ張り上げ、ポジティブな結末へ連れて行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
これが一番生きたのが、キングを凡俗の縁から引っ張り上げた第六話である。あん時腐ってた裸の王様も、今じゃ仲間の走りに大はしゃぎだ
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傘がお猪口になるくらいの熱狂一つで、キングがどれだけ”陸上”に、ともにタスキを繋ぐ仲間に前のめりかはしっかり分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
あの時は高い場所から仲間を引っ張った神童が、雨の湿度に引っ張られ、ちょっと沈むのが今回のお話である。そういう話は、とても大事だと思う。
どれだけお話に都合のいい人格者でも、無敵のスーパーダーリンに見えても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
キャラクターは脆い心と揺れる感情を抱えた人間であり、弱点がある。そういう脆さがあればこそ、それを乗り越える瞬間の熱量、変化の喜びもある。
人形が人形のまま、神様が神様のままじゃ、お話は面白くないのだ。
完璧に見えた人が見せた傷、それを補う手助け。そういうものが幾重にも積み重なり、頂を目指す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
スポーツ群像劇であるこのお話では、特に一人ひとりの人格描写が大事になる。それぞれ凸凹の10人が、それでも一つの場所を目指すからこそ、難しいことにあえて挑むからこそ、お話は強く速くなる。
完璧なおかーさんに見えたハイジをぶっ倒すことで、カケルと王子の関係が劇的に前進したように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
完璧な優等生に見える神童の傷を掘り下げることで、物語は陰影をぐっと深める。キャラの人間味よりお話の都合を優先する余裕の無さも、しっかり否定できる。
俺らは、一人ひとりの顔見てるから、と。
口だけで題目語るのではなく、実際のエピソード運びで教えてくるアニメは、やはり信頼できる。神童のとにかく諦めず、一歩ずつ実績を積むスタイルと、少し似ているか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
とまれ、優等生にも当然訪れる人間的な波風と、それでも走りたいという熱意は丁寧に、丁寧に積まれていく。
雨中の練習、文句言いつつ止めるやつはいない。年内最後の放送(一ヶ月は長いだろ日テレさんよ~)にふさわしく、アオタケがどこまで来たのかをしっかり見せる、泥だらけの靴。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
それぞれ個性はバラバラだけど、同じ辛さを、同じ思いを靴に込める一団。
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そこから、彼女に振られてバランスを崩した神童は少し孤立する。カケルのトラウマと孤立を描いていたのと共通する、サークルから飛び出した一人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
しかし、その背中を押す熱量は俺も同じだと、一人、また一人神童に接近し、サークルが再び形成される。
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もう陸上に賭けるしかない神童の哀しさが、彼を突出させるけども、それは孤立ではなく先導であり、その強い思いはあっという間に共有され、仲間を導いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
そういう関係性の揺籃が、アオタケの三ヶ月にはあった。凸凹ギクシャクぶつかりあう彼らが何を生み出しつつあるかを、僕らは見守ってきた。
そういう変化は必ずしも、結果には結び付けない。停滞の苦しさは、うざったい梅雨の中で、いい具合に皮膚に迫ってくる。口で説明されなくても、何となく分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
同時に細かい情報量で補足も忘れないのが、目端である。学部、かなりバラバラだな…
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思いを一つに雨を走り抜け、神童の資質が公開される。ふるさとの景色、スッキリと片付いた清潔感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
非常に彼”らしい部屋の中には、ユキちゃんとカケルがいる。ツンツンしてた時代から、周囲を見てはいたカケルの眼の良さ描写が良い。
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雨の中では下を向いてこらえていた涙が、今度は上を向くことで止まる。優等生のプライド、脆さを人前で出さない強さをしっかり守りつつ、非常にエモーショナルな一枚だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
暴走マシーンだった頃からは想像もつかない、カケルの柔らかな笑顔もいい。
今回のお話はカケルがもともと持っていて、しかし使い方が分からなかった眼の良さがだんだん形を手に入れてきた様子を、丁寧に切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
差し出されるお茶、ハイジと一緒の料理、トレーナーとしての対応。自分ひとりが独走するのではなく、仲間に手を貸し貸されながら、より強くなっていく歩み。
この眼の良さは司法試験一発合格、ハイジ相手にも弁が立つユキチャンにも共通している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
優等生の重心のブレを後ろから見守り(この視座は、前回王子を見つめたカケルと共通している)、その人格を見つめる視線。『ようやく、社会性が身についてきたかな』という言葉が優しい。
メインで走るキャラを太く描くことで、その背中から何かを学ぶ人、それが可能なサークルの強さを色濃くしていくのは、このアニメの優れた描写だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
人数を捌く上でも、脇役の存在感が充実し、じっくりと『このキャラ、このアニメ良いなぁ…』と思えるのは大事だ。空気キャラいない、ってことだからね。
無論、人数を多く乗っけるためには主柱の太さが大事だ。このアニメにおいては、物語を開始させたハイジと彼が惚れ込んだカケルが、メインシャフトとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
『強さと速さ』について、自分に言い聞かせるように呟くハイジ。
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冒頭から重苦しい感じで進むエピソードなんだけども『強い、だ』と断言した直後にドアから漏れる光が入ってきて、その価値観がハイジにとって、このアニメにとってどんだけ大事かが、暗に示される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
それはつまり、速さだけを求める無明の闇、カケルが身を置いていた場所に、ハイジもいたということだ
それが彼の膝を食い破り、同じ傷を仲間に押し付けないために、『速さよりも強さ』な指導をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
それはまだ暗喩の段階であり、ひっそりと存在を示されつつも表にはならない伏せ札だ。しかし、優等生にも傷がある。それが顕になった時の熱量は、今回の振動を見れば分かるとおりだ。
ハイジと神童、アオタケを引っ張るツインエンジンがどういう傷を抱え、そこに誰が寄り添っているか描くことで、作品の彫りを深くし期待を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
重い6月の空にふさわしく、目立った前進はないけども。こういうエピソードを丁寧に作ることが、作品の最終到達点を上げると思っている。
『カーチャン料理頑張りすぎてぶっ倒れたから、俺も手伝うよ!』とばかりに、キッチンに並び立つカケル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
その手際は危なっかしく、人参もバラバラだけども、その心遣い、縮まった距離感、一方が教え与えるだけのアンバランスな関係性の変化が嬉しい。
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一枚目、流し台を後ろから切るアングルは同ポジで多用され、人間関係を定点観測する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
あの時は一人で作ってた、あの時はそばにより添えなかった。そういう距離感が縮まり、隠していた弱さ、抱え込む荷物が、至近距離から見えるようになる。
そういう変化を具象するのに、キッチンは便利だ。
カケルは”料理”というハイジの領分に踏み込むことで、彼の焦り、人間的な脆さを見るようになる。そこにそれがあると分かれば、手を差し伸べ荷物を持つまでゃ後半歩だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
というか、『見てます、知ってます、解ってます』と言葉に出す時点で、ハイジの重荷を半分、カケルが背負ってやっているのだ。
あの反抗期ベイビーがここまで…と目頭が熱くなってくるけども、いかには維持が優秀とは言え、ソロで駅伝は走れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
弱さを預け、自分をさらけ出す足場が整ってきたと見せることで、超優等生の抱えた脆さが爆裂する瞬間への期待も、しっかり高まる。神童が今回見せた変化より、より熱く強いものを。
そういう未来の大きな伏せ札への繋ぎとしても、非常に丁寧かつ巧妙なエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
尺を無駄に使わず、伏線埋めの作業をキャラ描写に絡め、貪欲に分厚く物語を織っていく。このアニメらしいエピソードだなぁ、と思った。
社会手段としてのアオタケが、承認と経済を手に入れていく描写とかね。
地味にムサの私室も公開されてたけど、トライバルな仮面が”母国”を強調する、品のいい部屋だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
あれは一度文明化された後に獲得され直した、ナショナル・アイデンティティの象徴なんだろうな。金持ってそうだもんなぁムサの実家…。
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異国にあればこそ、西洋経済のど真ん中に同化されつつあればこそ、自分の国、血、起源を確認する道具を置く。集団であることは、一色に塗られることとイコールではないわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
そういう凸凹を維持したまま、アオタケはどう走っていくのか。その答えとヒントが、しっかり示されるエピソードでした。
ギョロ目のオッサンを突然ぶっ込んで、次回に謎を残す。週間アニメとして大事な引きの強さも、このアニメの強みである…んだが、一ヶ月は長い! マジで長い! リアル箱根終わっちゃってんじゃんマジ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月11日
停滞の中でも、気持ちを切らないのが大事。今回描かれたものを胸に刻んで、次回を待ちます。