やがて君になる を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
我々は、深海の生き物のように恋をする。水の重さに耐えかねて、好きという言葉は泡と消えて、それでも震えながら近寄り、手を伸ばす。
全ては微睡みから瞳を開けて、ただ己として産声をあげるまでの夢。それでも、確かにそこにたどり着いたのなら。
というわけで最終回である。お話として収まりが悪く思われようが、途中でぶつ切りと受け止められようが、原作が内包している震え全てを受け止め、切りとる覚悟に準じる、極めて中途半端な最終回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
同時に侑がどこにたどり着いたか、その歩みが燈子をどこに連れて行くかを見せるピリオドでもある
第1話以来、加藤監督がコンテ・演出に回った今回は、作品で印象的だった表現技法が幾重にも折り重なる。非常にアニメ”やがて君になる”らしいエピソードだと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
手と瞳(見せないこと含む)の表現力。反射とゆらぎ。切断面と分離不安。浮遊する幼さ。侵食する死。
”お盆”という季節を背景に、濃厚な”死”が切り取られるアバン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
墓地を流れる水はそのまま死の河であり、飛翔を許されない虫の翼は番となって、そこを流れ落ちていく。
それが姉の死に囚われ、自分の翼を折る燈子自体であるのは明白だ。
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まるで内乱の予兆のように湧き上がる入道雲と、墓石のコントラスト。そのモノクロームの間に挟まる弔花は、いつか必ず萎れ、死んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
名OP”君にふれて”を省略し挿入された色彩は、我々が見ていた花が死に囚われ、衰弱していくものだということを強く思い出させる。
Aパートは喫茶店を定点として昼→夕方→夜と時間を流し、三組のカップルを描写してその有り様をスケッチする構成だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
夕刻(これまでも非常に不穏で、感情がきしむと定義されていた時間)で、燈子はアバンの不穏さを引き継ぎ、死を漂わせる
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爆心地のように赤い雲を背景に、世界のどん詰まりに追い込まれていく燈子。一人世界を歩く彼女が追い込まれたのは”終点”であり、姉を演じきったその先にはなにもない(と、燈子は自分を追い込んでいく)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
揺れる一人称の視界で捉えた線路は、フラフラと危うく傾いで誘う。汝供犠の如く、身を投げよ、と
今までも非常に危うい場所、感情と感情がふれあい、すれ違い、深い傷や断絶が顕になる時間と設定されてきた夕闇の中で、ゴトゴトと電車は迫りきて、燈子を食らう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
当然燈子は生き残るわけだが、そこには濃厚に自死のイメージが漂う。
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第6話でショッキングに顕にされたように、彼女は常にその岸に立っている。姉を演じきれない自分に飽きはてれば、いつでも手を振りほどいて市に飛び込んでしまう危うさを、第6話で侑は叩きつけられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
あの時も、世界は錆びついたオレンジの時間帯であった。https://t.co/B7stmZKGRb
濃いという遠い星を求め、それが自分のものだと感じないからこそ手に入れた、燈子の甘えと愛情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
それに引き寄せられ、生々しく脈を打つ自分の心臓を、それを通じて見つけた燈子の光を『好き』と言いかけて、拒絶されるまでの六話。
それと同じ時間が折り重なって、果たして二人はどうなったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
少なくとも、夕刻の時間を共有した佐伯沙弥香には、燈子を死の岸から翻身させる力はない。添えた手は常に、川を流れるオフィリアを肯定する形で添えられる。
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震えながら手を伸ばす佐伯先輩の優しさは、燈子の幼さを散々に暴れ回らせ、彼女が目を閉じた時だけ手を伸ばす侑の振る舞いとは、大きく違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
佐伯先輩はおそらく、第6話の段階で侑が知っていた燈子の真実…『好きが嫌い』を知らないのだ
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少女たちはともに夕刻の光の中、おずおずと手を伸ばしかけて引っ込め、また伸ばす。それは、燈子が好きだからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
しかし佐伯先輩のとき燈子の目は空いて、侑相手のときは閉じる。”姉”を演じて背筋を伸ばすか、”妹”のまま体重を預けるか。それぞれの瞳に投射する、イメージの差異。
佐伯先輩は完璧の共犯者として、生徒会長の女房役として、燈子が与えたいパブリック・イメージを補強する形で、自分の立ち位置を獲得している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
後輩である侑はそこから踏み込んで、もっとプライベートで脆く、危うく残酷なものを、直接叩きつけられている(あるいは、信頼して預けられている)。
そういう、見ているものの差…見せられて(魅せられている)いるものの差異が、ともに燈子に惹かれた少女がどのタイミングで手を伸ばすかを分ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
好きを顕にしても破綻しない関係と、露わにしたら壊れてしまう間柄。侑は燈子の目に触れない形でしか、手を差し伸べられない。
水族館デートの冒頭、二人の手は近いが接触しない。幼さを装い、燈子を”妹(≒『君』)”へと戻そうとする侑は元気に子供っぽく、アミューズメント・パークへと腕を振って前進していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
常に、先んじて前に進むのは侑だ。
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先に行ってしまう年下の姉(その視線の先に、自分をおいて黄泉に下った”姉”を見ているのは明白だ)を恋しがって、燈子は幼子のように手を伸ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
その視界にあるのは、かつて侑が見ていた離人の水…星が遠い水底の世界だ。https://t.co/entLbA2MlF
侑は水のトンネルを潜り抜けて、『びしょ濡れになる』ことも厭わず水の中に入っていく。その時、物語開始時に彼女を支配していた遠さは、もはやない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
星はまだ掴むことを許してはくれないけど、確かにそこにある。そこへと近づいていく翼も、今必死に推敲している最中だ。
(イルカショーという幼い出し物と、『びしょ濡れになる』という響きのエロティックな想像力の同居は、性欲を肯定的に、また悪魔的に描いてきたこのアニメらしい配置だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
唇、産道、あるいは心。柔らかく、そして湿っている場所へ侑は既に足を進め、それを追って燈子も『やがて君になる』のだろう)
喫茶店で、あるいは水族館で。女と女のつがいの距離感を見せるように、様々なペアが姿を現す(アバンで水を流れていく翼が”2つ”あったことを思い出そう)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
同じエビドリア、アイスティーとアイスコーヒー、コーヒーとタバコ
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全くズレなく重なるもの(だからこそ、動かざる死者とその供犠を再生しうるもの)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
似通っていてすれ違うもの。異質だからこそ隣り合うもの。
様々なペアは水の中の魚、デート中の飲み物、ペンダントとぬいぐるみと、場所を変え顔を見せる
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お互いを反射しながら、その異質性を確認する鏡像。違うと認めればこそ、そこから歩み寄れる相対関係。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
それが複雑にダンスを踊った藻の語りが幕を向かえる時、世界はペアリングで満ちていく。それは完全に同じではなく、しかし隣り合う。
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それは常に曖昧で、不確かさと不安定さに満ち、全てを預けるには頼りない。不用意に踏み込めば拒絶と傷を生み、身勝手にお互いを傷つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
”星”は憧れていたほど暖かくはなく、火傷するほどに冷たくて、あるいは凍えるほどに燃え盛る。
それを侑が知るまでの物語がこのアニメであろう。
侑はその曖昧な鏡像関係の先に、燈子を連れて行こうとする。思い悩んでもメッセージを出し、デートにこぎつけ、”乗り換え”の先へと連れて行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
佐伯先輩は、どうやってもそこにたどり着けない。瞳の中に愛する少女の背中を反射させつつも、伸ばした手を届かせられない。
侑が背負う”生”への歩み、燈子が姉の、死人の真似事をやめて『君になる』歩みを手引きする特別さを、Bパートは色濃く描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
それと同じ夕刻に、絶対にそこへはたどり着けない佐伯先輩の不格好をAパートに配置しておく周到さが、的確すぎて残酷だ。エグるねぇ…。
こよみという共犯者(リアルを反映し動かすフィクション、唯一の”作者”)を手に入れた侑は、爽やかな昼の光に身を置き、扉を開ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
佐伯先輩と燈子は優しい現状肯定と死の岸への停滞を確かめるべく、夕闇の褥に身を投げる。
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お互いの自己像を反射して揺れる水鏡のように、表面張力ギリギリで震えつつも溢れることはない、燈子と佐伯先輩の想い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
可能なら佐伯先輩も、燈子を”君”にしたい。死に囚われた完璧の演技から取り出して、生へと、矛盾した自分らしさへと解き放ちたい。
しかしそれを掴む特権は、痛みと蛮勇を必要とする。Aセクシャルめいた冷感さから物語を始めた侑は、入学式で一目惚れした佐伯先輩とは全く違う出会い方を果たし、それ故燈子の震える瞳を受け止め、心に踏み込む”特別”を確保する。https://t.co/SI7wwnL9O8
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
コレまでも、そして今回も幾度も確認されたように、瞳のクローズアップは細やかに震え、思いの先を宿す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
沙弥香が燈子だけを相手にふるふると心を揺らすように、燈子は侑を前にしたときだけ、自分らしく幼さをむき出しにして、瞳をふるり、と揺らす。その非対称の恋は、グロテスクに残酷だ。
それでも燈子に優しくしてあげたかった沙弥香の想いを背中で無視して、燈子はがらんどうのホームで死に接近する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
特別なメッセージを出したい相手、思いを思わず溢れさせる相手は、やっぱり侑なのだ。ひどいよ…佐伯沙弥香が何したの…
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自分を抑えていられないほどに、溢れる思い。それが仮面を壊し、死の引力から”星”をすくい上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
そんな青春の引力圏を抜けた先に、タバコと仕事がある社会人の関係…百合すごろくの”あがり”がある。夜は大人の時間、少女には少し遠い。
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性傾向は複雑なスペクトラムの中にあって、様々に色彩を変える。Aパートで喫茶店を捉えたカメラが、様々な時間の様々な光を見つめたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
『女を好きなわけじゃないけど、あなたが好き』という先生の恋も、『女の子しか好きになれないんだ』という佐伯沙弥香の実感も、どれも嘘は一切ない。
様々な色彩の想いが、それぞれ祝福を得て世界に肯定されると良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
俺は本当にね、佐伯沙弥香って人がなんらか、自分の知性や献身や優しさが意味あるものだと思える、その反射板になってくれるような誠実な恋に恵まれることを、心から願っているんですよ。
その相手が悲しいことに燈子ではなく、溢れるものを共有するのが侑だってのは、Bパートでイヤってほど積み重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
矛盾と恋、閉じ込められ溢れる『好き』について語る時、エロティックに唇を濡らすジュースの色合い。それは沙弥香にはない
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あるいは非常に繊細に踊る手指の表情。あるいは何処にも行けない(だからこそ何処かに行きたい)燈子の思いを溢れさせる、一瞬のエチュード。その瞬間抜け目なく切り取られる『鎖で縛り付けられたもの』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
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そういうモノを背負えるのは、”星”を探して燈子に出会い、その冷たさ故に燈子の”特別”となって、その特権に甘えずなんとか体温を宿すよう先に進んだ侑だけなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
死の匂い漂う夕刻のオレンジに、今の燈子の”完璧”を肯定してしまった沙弥香には不可能なのだ。
深く傷つき、振り回され良いように使われて、しかし自分が見つけたものを諦めずに進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
このアニメが非常に繊細に切り取ってきた侑の歩み(が導く燈子の”これから”)を寿ぎつつも、沙弥香の停滞(と、彼女が背負う燈子の”これまで”)が秘めた優しさと震えを、けして見落とさないこと。
それを主人公の”成長”と一緒にちゃんと(その無様さや不可能も込で)入れ込んできたのは、作品世界を生きるキャラクターの尊厳と恋に報いる描写で、とても好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
そういう視線が『主役になれなかった少女』に向けられているから、僕はこの作品が好きなのだ。
台本のないエチュード。これまでのロールが通用しない即興劇は、二人きりの世界にすっぱり乱入されて、一時停止でプールされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
手を伸ばし、拒絶されて傷つく成熟は、いつも侑のものであり、燈子は彼女の前でだけ”姉”の喪服を脱ぐ。
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己を演じる”劇”の虚偽性に阻まれ、二人の瞳は見えない。お互い欠落と嘘を隠していると、鮮明に見せるクローズアップの距離感。そこを埋めて”君になる”クライマックスは、今回描かれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
しかしその閉鎖性が、モブの遠慮のない闖入で破綻するのが、僕はとても好きだ。
少女二人は、そういう開かれた場所で生きている。百合百合オーラ垂れ流しで自分の世界に没入しようとしても、勝手に好きになって勝手に生き続ける他人は、それを許してくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
それと同じ身勝手さで、侑は”星”を遠い物語ではなく己の実感として掴むし、”劇”は学園祭の舞台で”みんな”に公開される
それは描かれざる”先”の話だが、侑がこよみを動かして描きなおした虚構が燈子(そして彼女を取り囲み愛する家族、友人、学友、縁もゆかりもない他者)にとって善いものである予兆は、今回しっかりと描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
それを引き寄せるだけの引力を、小糸侑が手に入れるまでの物語。
死から生へ、停滞から前進へ、燈子が見ている”君”から侑が見ている”君”へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
さまざまな”乗り換え”が眼前に迫るところで、この物語は終わる。そして”乗り換え”が果たされた後だって、物語は続いていく。夕刻が終わり大人の時間になっても、恋は少しの不安に震えつつ、喫茶店で幸福に踊るのだ。
Aパートでは夢の終わりだったホームは、光を抜けて生まれ直す場所としてBパートラストで描き直される。あるいは、水の中の光として。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
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それは姉の死以来成長を止め(あるいは非常にいびつな形で己を”完璧”に成長し)てきた燈子が、素裸の自分へと生まれ直す予兆だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
産道を抜け、長い長い坂道を上りきって、光の中に漕ぎ出していく未来は、夢幻ではない。
そうして手を引いてくれる”生きた姉”が、恋に恋する幼さを脱皮し、痛みを込めて己を前に進めれるようになったのは、他でもなく燈子がいたからだ。出会い、傷つけあったからだ。その痛みを受け入れられるほどに、恋をしたからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
その一点においてだけでも、燈子は他でもない自分を誇っていい。
暗闇で手を引く侑の手は、死と生の間で揺れながら光を選ぼうとしつつある燈子自身の手であり、妹の幸福を望む”死せる姉”の手でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
それといつか和解し、前に進んでいける。燈子を”乗り換え”まで導いた侑のように、侑の手を取って。
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そうやって手を引いてもらうのは子供の特権で、物語開始時に大人びて見えた少女は、ただの身勝手なガキだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
その逆転が見えるまでの13話だった、ともいえるか。好きを言葉にできる側と、飲み込む側の表情の差異
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『なーんで侑がこんな表情しなきゃなねぇんだよ!』って感じだけども、燈子ちゃんは顔と声がいいだけの身勝手ベイビーだから、お姉ちゃんが我慢しないとダメだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
ほんっと燈子は最悪中の最悪で、ずーっと最高だった。オメー最終回でもコレか…。
というわけで、アニメ”やがて君になる”はひとまずの幕である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
とてもいいアニメであり、アニメ化だった。作品のエッセンスを丁寧に抽出し、それをどう映像表現に乗っけていくかを考え抜いた作品だと思う。
結果”途中”で物語は終わるわけだが、しかし過程こそが結果でもある様な表現力がそれを肯定する
”星”を探す途中、『やがて君になる』途中。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
劇的ピーク、クライマックス、あるいはカタルシスに思える劇の公演もまた一つの途中経過(であり確かに意味ある結末)だというのは、原作を見れば判る。
全ては歩みの途中であり、明白な価値のある一歩一歩でもあるのなら
結末へと進んでいく歩みの中で表された震えの一つ、呼吸の一欠片すら映像に盛り込み、徹底して微細に描こううとした結果の”途中”は、非常に価値のあるものだったと、僕は断言できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
劇的なるものの先に、成就した恋の果にだって、物語はいつでもある。微細に震え続きを待っている。
そのことを、青春の季節を終えてなお恋の真っ只中である社会人カップルの挿入は雄弁に語ったように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
終わりは常に新しい始まりに接合され、不協和音の解決は新しいノイズの起点だ。その終わりのない織物こそが恋であり、青春であり、終わることのない自己との対話なのだろう。
様々な形と答えがありうる物語構成のなかで、選び取った少女と青春、美麗なるグロテスク。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
それに一切嘘がないよう、作り込まれたダイアログ、象徴、レイアウト、色彩。ドラマとキャラクター、それらがぶつかり合って生まれる火花。
物語を構成する要素全てが、的確で美しかった。
燈子は”君”へとたどり着かないまま、侑は”星”を抱きしめられないまま、この物語は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
でもそこがとても遠く冷たい場所だとはこのアニメ、一度も描かなったし、長く険しくヤバい道のりを積み重ねて、しっかり二人は” そこ”にたどり着けるのだという希望と祝福を込めて、物語は終わった。
人の心はあまりに複雑で、思いは時に道を間違え、嘘は幾重にも積み重なっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
しかしその愚かしい歩みの中に込められた生々しい痛み、愛おしき眼差しの一つ一つには、しっかり意味がある。だから、それを切り取り積み重ね、群像のタピストリを織り上げていく。
その細やかな織りには、確かにこのお話にしか描けない”絵”が刻まれていたのだと、すべてを見終わった今確かに言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月2日
素晴らしいアニメだった。とても楽しかったし、心を揺さぶられた。原作を新たな角度から見返すことで、手に入るものがたくさんあった。
ありがとう、とても面白かったです。