風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
拳が痛む。心が痛む。己のエゴを子供に押し付けるだけの”指導者”、傷つき壊れていくものに手を差し伸べない”仲間”、ただ拳を叩きつけることしか出来ない自分。
殴りつけた過去が痛む。風はまだ、心に吹き付けない。まだ、本気になれない。
そんな男の過去と現在が、白樺湖の美しさの中で交錯する第13話。今週も良い最終回だった…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
カケルを縛り付けていたものをノイズまみれの過去で描き、そこから既に開放されているのに瞳を開けないカケルの苦しさを輝く青春で挟み込み、挑戦的なのにドンピシャな、本当に良いエピソードでした。
これまでもチラチラ見せられていたカケルの過去、本性(の一面)が、視聴者と仲間に公開される今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
過去パートは音と画面にだんだんノイズを増やしていって、ナイーブな高校生に降り積もっていく苛立ちを色濃く刻んできた。
そのザラつきが、輝く現在と上手く対比をなして鮮明である。
冒頭、全てが決着する超暴力のシーンから入っていくわけだが、一度殴りつけた拳はすりむけ、赤くなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
暴力でしか自分を表現できないカケルは、後輩にもいい言葉をかけられない。他人に優しくする方法がわからない。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/B2izpBUE5s
『殴りつけている側だって、拳は痛い』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
まさに体罰を正当化する時に使われるボキャブラリーが、ことカケルに関してだけは本当になる。赤くすりむけた拳は、自分への、仲間への、大人への失望を強く映して、凄まじく痛む。
なぜあの眼を、真っ直ぐ受け止められなかったのか。
カケルは『暴力はエゴの発露で、自分が気持ちよくなりたかっただけだ』と分析している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
だが、本当にそうなのか。
名前のない青年の膝を包むテーピング(現代のハイジとの重なり合い)。増えていく傷。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/pNIgiTG36l
そこに唯一目を向けて、でもどう手を、言葉を差し伸べて良いのか分からなくて、人間の尊厳が泥まみれに捨てられるところまで何も出来なかった辛さは、彼が優しいからこそ生まれてくるのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
そんなに、自分を責めなくてもいい。
そう思わされるよう、これまでのエピソードは組まれている。
ブラック部活でのパワー・ハラスメント描写は、非常に生々しく重たい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
子供に『怪我してごめんなさい』なんて、やっぱり言わせちゃいけないよなぁホント…。
ちょっとサル顔の一年生くんは、凄く存在感のあるモブとして、いい演技をしていた。『お前、陸上やめろ』は誰かを止めるにはキツすぎる…
監督という絶対権力者が、実際に傷つき走るものから功績を奪う不公平。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
あたかも教育者でございという顔で、マトモな指導もしない怠慢。
そのくせ精神論と歪んだ理想は強要し、傷つき壊れたものは使い捨て。
そんな現状に苛立ちつつ、流される自分が一番嫌い。カケルの高校生活は、ノイズに満ちていく
榊は巨大感情を思い切り突き刺し、『なんで俺とじゃダメだったんだよ!』と吠えるけども、今回描かれた過去の重たさ、現在の輝きを見ると、それには答えが出る。出てしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
自分だけ見てたのは、他ならぬ榊も同じだからだ。才能あるカケルだけでなく、ともに走る一年生にも、目を向けなかったからだ
カケルも(知っての通り)不器用な男で、榊に『一緒に戦ってくれ』とは、けして言えなかっただろう。そも、監督の専横が戦って然るべきものだということも、教えられなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
それでも、ノイズが貯まる。そういうもんだ、黙ってのみ込めと押し付けられても、耐えられはしない。
そういうナイーブな感性を、強さを支える優しさを持っていなかった(あるいは、結果を出すほど十分には発露できなかった)からこそ、榊はハイジにはなれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
逆に言えば、そこからカケルを引っ張り出す人徳があればこそ、ハイジはカケルの特別になれた。
それは冒頭、過去炸裂した監督への暴力と同じ勢いで唸る拳を、現在の仲間たちはしっかり止めてくれることからも判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
がっしり受け止める上級生組と、震えながらしがみつく神童の対比が、個性があっていい。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/BitxBUQMbO
ここでハイジは黒目が強く、意思を感じる視線をグッとカケルに投げかけている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
カケルの”走り”がある種の言葉となって、仲間たちを引っ張り上げたように。口ではなく瞳から飛び出すメッセージが、瞳を曇らせた男に思いを届ける。
怒りと苛立ちで真っ黒になった世界が、一つの答えを見つける。モノトーンからカラフルに移り変わるシーンの暴力性は鮮明だったが、このときのカケルの”眼”がいい。光が一切ない、盲目に似た激情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/MCijfvUtOu
それは同じように怒りに流され、榊(が背負う過去、無力感)を殴りつけようとした時とは、少し違う瞳だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
誤った色彩の獲得方法、自分も傷つけるような強さの発露を、誰かが見守り止めてくれる。そういう状況に身を置くからこその、少しだけの光が瞳に宿っている。
皆が行く方向(練習、大人に指示された生き方、当たり前の悪徳)に背中を向け、暴力で全てをぶっ壊す直前のカケルを、榊が見ている描写がエグい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
彼は見ていて、何も出来なかった(しなかった)。
アオタケの面々は体を張って、カケルを止めた。
高校生と大学生、年齢の違いもあろう。
しかし過去に縫い留められて、挑発と恨み言ばかり垂れ流しにしている榊は、ノイズまみれの過去から一歩も出てはいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
なぜ、カケルは拳を振り下ろしたのか。どんな言葉を本当は言いたかったのか。
そこまで踏み込むことが出来ず、監督の専横を縮小再生産するように、悪い大人モドキになっていく。
そんな場所からカケルは既に出かかっていて、あの時とは指導者も仲間もぜんぜん違う。飯は上手いし、走りは楽しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
しかしそんな現状に、カケルは積極的に目を伏せ、心を閉ざしてしまっている。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/J2x2c1XR33
背中を向ける。目を伏せる。身体的な仕草は常に、心を反映する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
ハイジも痛む膝、悔やむ過去を抱えて、それでも星を見上げようとする。なんかウジウジ悩んでいる後輩に、ホットミルクと助言を差し出していく。その先には、煌く星。
先週に引き続き、美しい美術が最大限に生かされている感じだ。
ここでカケルを気にする特権を、ハイジ一人に限定しないところが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
ユキが『女の子がお風呂はいんだからよ~、オス汁掃除して新しくしておけよ!』と、都会派のスタイリッシュな気遣いを教えてくれる。ハナちゃんだって、光を背負って顔を出す。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/sWDz19E4Ok
扉が開き、暗い闇に光が差し込む。自分がなれなかった『後輩に気さくに接し、適切なアドバイスをする先輩』の助けを受け取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
それは走るもの、発展途上の子供だけの特権ではなく、様々な立場の様々な人達に開かれ、共有され、支えられているのだ。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/Cwa9AHpdLn
カケルの過去という、物語的にも人間的にもクリティカルに重たい話題を受け取るサークル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
それが閉ざされた場所ではなく、美しい(少女漫画的なほどに美しすぎる)森の中、『走らない人』に見守られて進むところが、僕はとても好きである。
これがクローズドな場所の閉じたサークルだったら、そこで共有されるものは普遍性を獲得できない気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
年も性別も、走る走らないも関係なく、人が人であり続けるための足場。それを至近距離で背負うのは、タスキを繋ぐ10人の特権かもしれない。その感情の濃さが、このアニメの強みでもあろう。
その強い絆と同時に、野菜屋の親父がメシを作ってくれて、ガキどもが青臭く思い悩む姿を微笑んで見守ってくれる姿を切り取るところ、狭く細い場所だけでなく広く太い場所にもあのサークルが繋がっているのが、僕は凄く良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
それはいつか走らなくなったあとも意味を持つもので、カケルを縛り付ける監督の実用主義をぶっ壊す、最大の武器だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
そういうものに目を向ければこそ、男たちの走りは走者以外の心も打つ。だからこそ、八百屋の親父もアオタケを支援したくなったのだろう。
そういう風がカケルから、アオタケから強く吹き付けて、どうしようもなくへばりつく”現実”の重たさを吹き飛ばしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
それは確かに、天才であるカケルから吹いている。でもその事実を、カケルは知らなかった。自分の走りが人を強くして、傷に耐える元気を湧き上がらせる事実に。
だからこそ、カケルは灰色の過去をずっと背負ってきた。自分は何も出来なかった。走れない弱い存在、一緒に走るべき仲間を一切見ず全部ぶち壊しにしたと、己を責め続けてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
でも、風は吹く。強く吹く。仲間を舞い上がらせ、”箱根完走”という妄想に夢を乗せるほどに。
男たちは車座になり、カケルと同じ目線に身を置く。それは過去を共有する儀式であり、しかしそこで立ち止まりはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
すっくと背を伸ばし、カケルだけの走りではもう無くなった”部活”を、誇らしく背負う。その決意を、真っ直ぐに見せる。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/cOclrk3ZzL
光は急に強くなったわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
いつだってそこにあったものを、適切な距離で、必要な強さで言葉に出来たからこそ、自分から、仲間から、運命から吹き付ける風の強さを今、知ることが出来る。重たい過去から立ち上がることが出来る。
ホント”強い”シーンを”強い”演出でブン回してくるぜ…。
過去を語る時に、殴りつけてしまった拳の痛みに耐えるように、今度は暴力という不適切な”言葉”を使わないように、カケルが拳を抑えているのが痛ましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
優しくなりたいけど、優しくなり方が分からない。お前はほんとバカだよ…LOVEよ…。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/QUz3xTwUwp
男たちの奮起を後方保護者顔で見守る野菜屋の親父&ハナちゃんも最高だし、過去を吹き飛ばしてくれた仲間とハイジに、あれだけ探していた”正しい言葉”をカケルが使えるのも最高なんスよ…ようやく、不器用で優しい少年が自分の優しさの使い方を見つけたんスよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
仲間たちが軽やかに河を飛び越え、未来に進んでいく中、特別な出会いで物語を駆動させた男二人は、岸に残る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
『この10人で、箱根を目指します!』
かつて自分だけが背負った、確かな決意。それが、思わず夢を再起動させた天才から飛び出してくる。
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会 pic.twitter.com/MNjcNy6TOQ
ここのハイジの”眼”が素晴らしく良くて、ハイジもまた、己の背負った夢に本当に仲間が、全てを賭けていいと惚れ込んだ天才がついてきてくれているか、不安だったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
完璧な仮面をかぶって先頭を走り、仲間を引っ張る無敵のおかーさん。その内面が”眼”から透ける。
あの真夜中二人が出会ったのは、背負いきれない過去に押し潰されそうになっていたカケルにとって、まさに運命だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
ハイジが『走るの好きか?』と問うてくれたから、真っ直ぐな瞳を向けて優しくしてくれたから、カケルは二度、道を間違えずにすんだ。自分の天才を泥に塗れさせずにすんだ。
それと同じくらい、ハイジにとってもカケルとの出会い、走ることを純粋に刻み込んだ天才との邂逅は、運命であり救いだったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
だから、”箱根”を目指した。ド素人を強引に巻き込んで、たどり着きたい場所があった。可能なら一緒に行きたかったけども、でも何より、自分がもう一度、走りたかった
そんな身勝手から出たものが、カケルの心にしっかり届いていて、風として吹き付けてくる。どうしようもなく高まった感情が一人で終わるわけではなく、誰かを動かす力になりうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
カケルが仲間に暴力を否定され、暴力を振るうしかなかった心を肯定されたように、ハイジも過去を肯定される。
その瞬間の濃厚な思いが、”眼”に色濃く詰まっていて、凄く良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
ハイジはスペックが高いので便利に使えてしまうキャラだけども、当然一個人としての痛みも弱さもあって、それをひた隠しにすることで”箱根”へのエンジンたり得ている。それは、便利だからと見落として良いもんじゃない。
監督のクソ以下の実用主義を、今のハイジの描き方、それが生み出したものとこれからあるきだすものを描くことで、思いっきり殴る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
誰かを使い捨ての部品、便利な道具と扱う生き方に、拳以外でNOを突き刺す。お題目ではなく、生き生きした物語で答えを出す。
そういうことが、一見関連していないように見えて深いところで繋がっているキャラの描写にしっかり刻まれている所は、このアニメのとても強い部分だと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
作中で主張している価値観が、ドラマと描写両方に支えられ、また実証されている感じ。言ってる事とやってる事が、ロス無く噛み合ってる。
アオタケのエースたるカケルを縛り付けていた、過去の重責。それは公開され、共有され、乗り越えられた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
男たちは立ち上がり、河を超え、新しい場所へと走り出す。光の側で待つ仲間に導かれて、一人で、そしてみんなで、風の吹く方へ。
このエモさを背中に受ければ、確かに”箱根”に届く。
ストーリーの説得力という意味でも、非常に大事で力強い特訓回だったと思います。こういうジャンクションを鮮明に、深く刺さるようにブン回せる眼の良さ、背筋の強さ…やっぱつえーなこのアニメ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月15日
一つの峠をまた超えて、次は王子の覚醒回。予言しとくがゼッテー泣く。来週も楽しみ。