どろろ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
灰色の記憶に、鮮明なる赤。流した血、救った命。天秤に乗るものじゃあない。失われたものを繋ぎ、苛まれ切り捨てられるものへ慈悲を。刃の記憶を次代に繋ぎ、苛烈なる運命反逆を。
寿海。修羅界のサイバネ医師は果たして、何を為し得たのか。
というわけで三話で過去回! モノクロームは演出であり、モニタのバグではありません!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
そんな感じの寿海エピである。拭えぬ過去、積み重なる苦悩と善行、乱世の宿命は振り払って振り払っても男の背中を掴み、殺すも活かすもどちらも苦界。そんな感じの、苦い苦いお話である。吉村さん手加減ッ!
寿海の重たい過去を通じて、百鬼丸やどろろが身を置く世界の無情を見る今回。色のある現在と地続きながら、既に過ぎ去った過去をモノトーンで描く演出が冴えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
そこに宿る色は赤。血の色、戦火の色である。色のある大過去も、やはり赤い。
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耳削ぎ、指切り。反逆への見せしめとして殺される人々は、身体と同時にその尊厳も切り捨て、地面に投げ捨てられる。百鬼丸が奪われた(そして再獲得していく)モノの意味を、別角度から照らす描写だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
それを奪ってきた寿海も目を覆い、こんな地獄を見るなら盲てしまいたいと、強く嘆く。
武士→戦国サイバネ医師→百鬼丸の義父と流れてきて、現在の寿海はエンバーマーである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
命を奪った償いは、別の命をつなぐことは出来ない。弟子に去られ、息子に殺戮技芸しか伝えられなかった時点で、寿海は己の業の強さに押しつぶされたのかもしれない。
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海に身を投げ(後に川辺で邂逅する、水流れの蛭児たる百鬼丸との重ね合い)、武士としての命を立つことで、外つ国の技術を学んで生き直せると思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
しかし他ならぬ愛弟子が、そんなことは不可能だと告げる。どこまで行ってもお前はお前、生者を切り刻んで見せしめにした過去は消えない、と。
その呪縛から逃れるように、百鬼丸の生きる意志を受け止め、傀儡の手足を作った。だが鬼神に魅入られた宿命は、争いを連れてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
武士として刻んだ技術をすべて伝え、百鬼に負けないお守りとして刃を埋め込む。結局、奪う技しか自分にはない。死んでも生きても、何も変わらない。どこにもいけない。
寿海の絶望は深い。せめて虐げられ蔑された死体の尊厳を取り戻す形で、己の生き様を刻んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
それぐらいしか、決定的に間違えた自分には許されていない。子供を正しく育てる。命の尊さを抱きしめる。そういうことは許されていないと、己を地獄に追い込んでいる。
そんな男の重苦しい過去を、白黒で刻んでいくのが今回のエピソードである。赤い夕日の残照が、鮮血となってモノクロを染める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
それを止めるのはとても立派なことで、失ったものは取り戻せている。そういう外野の声は、寿海の苦しみを癒やさない。
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否。弟子を息子と思い込み、赤ひげまがいの診療をしていた時代は、そこに救いを見出していたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
流されて学んだ技術は天命、仏が『今度は生かせ』と教えてくれたと。
しかし怪異な宿命は寿海を捉え、逃げ出した過去が追いついて離れない。
自分自身も寿海の義肢で満たされたはずの弟子は、他ならぬ患者の家族に伝えられた過去に焼かれ、義肢の設計図を足蹴にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
治療を施し子供(過去の弟子、寿海との幸福な日々)に感謝されて、さて修羅場。仇敵の施しなど受けぬと、弟子は片足に戻る。
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それは寿海がどうにか取り戻したかった尊厳、他人に無償で施すことで癒やされたかった傷が、やはり補償出来なかったという事実を突きつけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
非常に厳しい。どれだけ悔いても、どれだけ立派なことをしても、身体と霊魂を軽んじた所業は必ず応報する、重たい世界(あるいは世間)なのだ。
一度は掴んだはずの往生の道を見失い、寿海は滑り落ちる。ここで一瞬、野ざらしの地蔵が映るのが凄く好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
六道の苦しむ衆生を見守り、救われぬものにこそ慈悲の施餓鬼を施す菩薩。それは、寿海も百鬼丸も見落としてはいない。
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かくして寿海は二人目の義理の息子を引き受け、再び手足を作る。それは去っていった男の代償なのか。取り返しのつかない過去への慰めなのか。
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悩みつつ、しかし百鬼丸に名を与え、体を与え、道を示していく。それは百鬼丸が必死で乳を吸ったように、命がどれだけ否定されても生きようとする足掻きだ。
百鬼丸が鬼神の贄ではなく、闘争の宿命を生まれたときから刻まれていなければ、寿海も穏やかに暮らせたかもしれない。カニと戯れる朗らかなシーンが、延々と続いたかもしれない。
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しかしそうはならない。真っ赤な血、鮮烈なる命はモノクロの世界にジワリ、染みる
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戦わなければ生き残れない状況を前にして、寿海は捨てたはずの武家の技を百鬼丸に伝える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
血を分けた兄弟でありながら、満たされたものと奪われたものに別れる宿業が、二本の木刀を鏡に鮮烈に描かれる。
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多宝丸は名前の通り沢山のものを与えられ、生来打ち倒す側として君臨している。しかし母の思いは奪われた初子にある(と思いつめ)、消えない過去に目を配る。
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対して百鬼丸は、虚飾のない厳しい指導に打倒され、無痛の中で殺しの技芸を磨いていく。
言葉も瞬きもない、異形の交流。それは世間から見れば欠落と不幸、不自然に満ちていたかもしれない。しかし、そこには確かに、命の取り合い以上のものがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
寿海が祈りを込めて繋いだ偽物の腕、瞬きせぬ仮面が、人が生きるべき在り方を確かに教えていた。
僕はやっぱりそう思いたくなるし、百鬼丸の特別な瞳はそういうモノの意味を、ちゃんと識別できるようになったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
『本当の親』から手渡されたお守りは、緑色の無生物。百鬼丸の手足と同じ色合いをしている。
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しかしその先にいる『偽物の親』『偽物の善人』であるはずの寿海は、真白な命の色、人間の色をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
その識別を教えたのは、贖罪か慰みか、ともかく生きようと必死に乳を吸った百鬼丸を見捨てられなかった寿海、その人であろう。
怪物の命すら憐れみ、墓を作っていた男であろう。
百鬼丸が運命に飲み込まれず、命として生き続けられるのも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
奪われた身体を取り戻し、人が打ち立てるべき尊厳に一歩ずつ近づいていけるのも。
やはり寿海という業の深い男が、それでも諦めず生きて、人を切るのではなく繋ぐことを生業と選び取ったことが、決定的に響いている。響いてくる。
そういう気持ちにさせられるエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
百鬼丸の傀儡の腕は、寿海の体温を伝えなかっただろう。しかしその不器用なメッセージ、感謝の念は通じたと思う。
去っていった弟子が置き去りにした足…寿海の真心と後悔の、代わりにはならないとしてもだ。
時間が現在に戻り、やはり赤…火がまず見えてくる。それは全てを焼き尽くす業火とも、はぐれものが片寄せあって暖を取る灯火にもなりうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
痛覚を取り戻した百鬼丸には、炎の感触すら目新しい。そうやって、百鬼丸はひとつずつ、新しいものを学ぶ。
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新たに百鬼丸の人生の道連れとなった琵琶丸が、その感覚に理解を示し微笑む所がいい。それぞれ背負う業、拭えぬ罪、抗えない運命の色合いは違うだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
だが、どこかで触れ合える。何かが変わり、新しくなる。そういうかすかな灯火を、けして忘れないアニメなのだ。
咲く命、散る命の赤だけでなく、季節の移り変わりにも色を宿していたのは、優しい演出だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
積み重なる時間(と寿海の医術)は、むき出しの百鬼丸を少年に、青年に育て上げる。過去は拭えないとしても、なにかが変わる。
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それは死に、殺す人の宿命以外のものがこの修羅界にありうるかも知れないという、幽な希望を静かに描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
果たして己の肉体を取り戻し、運命に挑む百鬼丸の道中は、流れ行く時間は赤い因業を乗り越えうるか。どこにも行けぬと己を定めた寿海は、何処かに救いを見出しうるか。
来週も楽しみですね。