風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
去らば、白樺湖。去らば、暑い夏。
エースの暗い過去を共有し、一つの際を超えた仲間たち。走り、走り、走り倒して鍛え上げた体が、確かな結果を出していく。
その実感から、青白い肌で一人取り残される、まつげの長い青年がいた。名を柏崎茜、我らが王子である。
そんな感じのワンクッション、合宿の終わりと王子の奮戦を一話にまとめたエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
年またぎの第11話もそうだけども、大きい山を超えたあとにちょっと静かなクールダウン(感情を揺さぶられないとは言っていない)を入れるのが、このアニメのスタイルかねぇ。
先週カケルの過去という大きな伏せ札がオープンになったんで、物語的ブースターは十分。ぐっと話が先に進み、箱根が夢物語から現実的な”目標”に変わるための、ジャンクションみたいな話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
話しの質がぐっと変化するわけで、そこに一話かけてなじませる、納得させるのは正しい運びか。
先週みんなに話を聞いてもらい、情報とモチベーションを共有して同じ場所に踏み出した歩みが、今週も元気に唸る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
というか、それを実際の身体やフォームに焼き付けて”箱根”のリアリズムを背負うために白樺湖合宿がある、とも言える。https://t.co/VRY012fDgk
冒頭、闇の中箱根のドキュメンタリーをみんなで見つめ、頂への思いを共有する儀式。(これは膝カックンなギャグで頓挫)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
走り走り走りまくって、その中の輝く青春、花火大会。あるいは最後に見た美麗な世界。
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今回は『みんなで一箇所を見つめる』モチーフが多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
これはハイジコーチが意図的に仕組んでいるチームマネジメントでもあって、暗闇の中みんなで同じ光を見ると、なんとな~く結束が強まったような感じになってくるものだ。
同じ目標、同じ目線。それを実感するためのトレーニング。
爽やかな青春の風景から実利の”おつり”を回収する所が、ハイジの抜け目ないところであり、頼もしいところでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
今後厳しさを増すトレーニングに負けず、モチベーション高く箱根まで走り切るためには、仲間意識と共通の目標が大事。
深夜のTV作戦は失敗したが、しっかり狙いは果たされる。
双子は『トレーニングが楽しくなってきた』と呟き、ユキは地頭の良さを最大限活用して、ハイジと同等のIQランナーとして意見をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
ハイジの意識の高さ、モチベの強さが空回りしてた感じもあった過去とは雲泥の違いだ。走ることは気づけば、誰かに押し付けられたものではなく、自分のものになった。
その強烈な接着剤になったのがカケルの過去告白であり、そこまで導いたハイジの粘り腰と熱血は尊敬に値する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
カケルが心を開きチームの一員になったと実感することで、共に走る中で人を感動させる才気が、自分を支えてくれているような気持ちにもなれるのだろう。
最高に美しい夏の白樺湖を見つめながら、カケルは『みんなで見ているから、綺麗に見える』と”正解”を言葉にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
キングが抜け目なく混ぜっ返して視聴者に思い出させたように、カケルのクエストは爆発する劇場の制御、言語による気持ちの共有だ。それが果たされつつある。
色んな歯車が噛み合って、アオタケはチームとして、個人として強くなる。白樺湖から帰還したあとも続く鍛錬を、ザッピング気味に挟む演出がいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
それは夏の特別な夢ではなく、地面に足のついた目標。一歩ずつ商店街を走り抜け、自分の手の届くところまで近づけるものだ。
お風呂シーンや半裸ランニングなど、肌色サービスが強めの回でもあるのだが、それは俺らをキャーキャー言わせて失神させるためだけにあるわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
ランナーとして仕上がってきた身体と精神を、覆いなく見せて説得力に変えるために、彼らはフィジカルを見せる。
フォームが全体的に整ってきて、無駄と力みが減ってきている描写がいい。背筋を伸ばし、肺を開けて、腕を強めに降る。陸上競技者の体に、元ド素人達はしっかり変貌しつつある…王子以外。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
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この王子の、腕が下がり切ったダルンダルンのフォームが、Bパートラストでの演出にしっかり繋がってる所含めて、白樺湖合宿後半の圧力はいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
ぐんぐんキャラを押し上げて、『箱根にまで届くかも! つーか届け!』という期待感を視聴者に与えてくれる。
その奮闘が八百屋親子とか、キモい人形の買い手とか、後援会入会者とか、外側に繋がっているところもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
彼らの走りは(カケルの天才が自覚なく、彼の走りをそういう次元まで押上ているように)社会的な活動、言葉のない詩になって、人を動かす力を宿してきた。
先週に引き続き、花菜ちゃんと親父さんが『走る人』の外側からその光に当てられ、感動と距離感をしっかり見せるのもグッドだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
そういう人がいて、『走る人』がいる。それはバラバラなんだけども、水ぶっかけとか花火とかメシとか応援とか、色んな手段で繋がることが出来る断絶だ。
親父さんが眼の前のガキどもだけじゃなくて、世界に百億いる努力するランナー全てに想像の翼を伸ばして、その苦労に思いを馳せる所が最高に”デカ”くていい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
娘さんが元気な良い子に育つのも納得な、感受性の強いオッサンである。
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舞い散る花火を、みんなで一緒に見つめるランナー達。その背中を、少し離れた場所で見守る支援者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
憧れをどこか遠くに見据えつつ、肩を並べ、支え合いながら走る。
それは多分、意味のある夢だ。たとえそれが、長距離走者の孤独に満ちていても。
”みんな”でいることの意味、それぞれ同じものを見据えている視界をアオタケ内部、その周辺でしっかり確認したAパートから、焦点は王子一人に絞られていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
一人だけ標準記録を突破できない青年は、第10話で掴んだ”僕たちの速度”を必死に守りつつ、だんだん陸上選手になってきている。
王子のもどかしさを抱きしめ『次だ次!』と発破かけるユキの姿に、クールガイが熱血を隠さなくなった変化を見る。あと、王子マージまつげ長ぇな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
どんなに苦しくても、仲間でも、走ることは一人きりのミッションだ。代わりはいない。
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第8話からのギスギスを思えば、カケルが王子のナイトランに隣合おうと歩み寄り、それをストイックに拒絶する王子の姿には、心を動かされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
王子は孤独でいることの意味を、漫画に囲まれていた時とはまた別の形で受け止めつつある。”みんな”を知ればこそ、自分でいることの形が変わっていく。
それは月のように孤独な道行きで、でも寂しくはない。ムサとカケルの仲良しお風呂を、月が優しく見守る。光を陰らせていた叢雲は払われ、自体がうまく転がっていく予感を作り上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
ここら辺のベタ足のポエトリーは大好きである。
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ムサも優等生な顔だけでなく、持ち前の天然風味の味わいを叩きつけてきて、『こいつ…可愛いかよ…』って感じだった。カケルが他人と、サシで風呂に入るとはなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
男の子たちがチャーミングなのはやっぱ良いなぁ…時々乙女になるね君らッ!
暗闇の中一人きり、自分を見つめる。それはみんなで同じ場所、同じ光を見つめるのと同じくらい大事。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月22日
今回のお話はA/B分断されているように見えて、集団の中の個人、個人の中の集団を柔らかく語り切る、結構大事なエピソードだとも思う。ムサとカケルの風呂瞑想は、その中間地点にあるわけだ。
運命の最終記録回、王子以外のメンバーは私服を着込み、トラックの外側から見守る選択をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
結局、一人で走る。その究極に王子を追い込みつつも、彼は孤独ではけしてない。同時に、決定的に孤独でもある。
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既に資格を手に入れたものと、これから手に入れるもの。その間には、花火を見つめるランナーと応援する人たちに似た断絶が、たしかに横たわっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
だがそれは、自分だけのペースで確かに詰める事ができる…はずだ。そんな奇跡を起こすために、王子は言葉を求める。俺の腕に刻んでくれ、と。
『漫画みたいに燃えるシチュエーション』に憧れ続けた青年は、ついに漫画としか言いようがねぇ激エモ爆弾を己の腕に刻む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
白樺湖では下がりきっていた腕が、特訓を経てしっかり上がる。そこに刻み込まれた想いが、王子の瞳に刺さる。
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ここの”眼”の強さは非常にこのアニメらしいと思うが、『前に!!』というシンプルで強いメッセージは、彼のフォームが陸上選手らしくなった結果、見えるようになったものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
昔の自分が悪いわけじゃない。それぞれ抱えている荷物、走るペース、得意な区間は違う。
それでも、同じ光を見据えているから走れる。タスキを繋いで、けして超えられないと思っていた壁を乗り越えて、新しい喜びに出会うことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
そのことを、王子は身をもって証明した。先週の予言、キッチリ当たっちまったナ…。https://t.co/g8mYOP8cKd
先週は”覚醒”といったけども、王子は凄く地道なトレーニングと意識変化を積み重ねて、ようやくリミットを超えた感じだった。なにか都合のいい爆発が起こって、一気に突破した感じではなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
その『漫画っぽくなさ』が、僕は凄い良いな、と思った。一人の青年が殻を破るのに必要な、重さがあった。
その姿に皆を引っ張ってきたハイジが光を見るのも、本当にヤバい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
彼自身も過去に傷つけられ、みんなに支えられ走る中で、力を取り戻してきた。そのことは、スルッと挿入されたリハビリシーンからも判る。
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ズタズタに傷ついたからこそ、それを取り戻したかった。強引に夢を形にするために、無理もしたし詐術も使った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
そんなハイジの痛みと輝きは、もう彼一人のものじゃない。その走りから言葉から溢れ出して、色んな人を動かした。輝く場所まで押し上げた。
その実感が胸を打ったからこそ、少し遠い場所からプレッシャーを与えぬよう、優しく見つめるハイジの視界は潤む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
そのとなりで、自分がそんな景色を見せられなかった少しの寂しさと、戦友の復活を喜ぶ気持ちをないまぜに抱え込んでいる藤岡の巨大感情がヤバのヤバヤバである。
王子の山、ムサの平地。各々の得意をさり気なく描写して”区間”という新しい要素を意識させる筆。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
それとおんなじように、ツダケン声のメディアが今後巻き起こしそうな騒動も、藤岡を鏡にしっかり予兆されてたりする。
過去をまとめるだけでなく、未来への種をまくのも忘れない。巧いなぁほんと…。
※訂正
✗王子の山→ ◯神童の山
かくして男たちは皆資格をもぎ取り、予選へと挑む。一つにつながった心だけじゃ、夢は掴み取れない。その思いを形に、強さを速さに変えることの意味を、雨中の予選会は問うてくるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年1月23日
頑張れ。心の底からそう思えるテンションに、きっちりお仕上げてくれました。ほんま面白い。来週も楽しみ。