約束のネバーランドを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
ダブルクロスをあぶり出した後も、脱出に続く道は険しく重い。レイが切り捨てろと迫る重荷を抱え、子供たちは新天地にたどり着けるのか。
頭脳と才気が背負いきれる重さは、一体どの程度なのか。二人、三人、五人に沢山。リミットはどの程度?
そんな感じの、超会話劇な10月30日。Aパートはほぼノーマンとレイの会話で進み、その後も三人に増え五人に増え、情報交換と隠蔽、心理戦の駆け引きがミチミチと画面を埋める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
動きはないが、表情と身体的ポジションの変化に緊張感があり、BGMも良い仕事をしていた。
レイとノーマンの対話はまず、ベッドサイドを境界線にした縦の配置で始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
人間(自分含む)を道具と切り捨てる冷静な現実主義を露悪的に叩きつけ、ノーマンの真意を探るレイとの間には、深い溝がある。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/BHTDgW3Ziw
鋭い推察を交えつつ、ノーマンはエマから預かった理想主義…『みんなで脱出する』という夢を、自分のものとして背負う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
『みんな』にはレイも含まれているので、ノーマンはベッドサイドを回り込んで対立ではなく融和のポジションを取る。縦から横へのスタンスの変化。
物理的ポジションが変化することで、社会的、対人的関係も変化する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
なぜ兄弟を売り、ママの犬に成り下がったのか。そこにある人間的な…あまりに人間的な理由を、ノーマンは知ろうとする。
そんなやり方は非効率的で、レイの言うとおり理に適っていない。ノーマンも自分らしくないと苦笑するだろう。
それでもノーマンは、恋した女の子の理想主義を背負って、脱出の先にある風景を探す。ただ生き延びるのではなく、よりよく生きる道を食人の地獄の中で探すことにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
それはレイが背負う偽悪的現実主義より、荷物が多くて困難な道だ。
その甘っちょろさを薄暗い顔で睨みつけつつ、レイは情報と感情を共有させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
自分だって、命を守りたい。しかし現実はあまりに重たく厳しく、夢を切り捨てなきゃ生き延びれない。なら、命と理想にだって冷たい優先順位を付ける必要がある。
そして、俺はそうした、と告白してくる。
エマの理想主義と、レイの現実主義。その中間にいるノーマン。三人の力学は複雑に踊り、様々な嘘が増えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
エマの夢もレイの偽悪も、両方理解できてしまうノーマンの方に、様々なものがのしかかっていく。
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横にポジションを変えた時、ノーマンが光源に近い位置を取るのはまぁ、そんな関係性を象徴した動きなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
夢を現実にするべく、トリプルクロスとして薄暗い道を進むレイは、暗い陰りをノーマンに突きつける。
『俺を直視しないと、誰も生き残れないぜ?』と挑発してくる。
その現実をノーマンがちゃんと把握していることは、赤い花が咲く悪夢を見れば判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
どちらかと言えば、レイの背負う現実主義に近い自分。それをよく知ればこそ、ノーマンはエマの輝きに見せられ、それを支えにしようと願った。自分にないものだからこそ、引き寄せられた。
レイの引きつった表情、濃い陰りと偽悪的な態度は、反対側からノーマンを引っ張る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
『お前も、この脱出行も、そんなもんじゃない。気づいているだろ?』とばかりに、スルリと肩口から滑り込んでくるレイ。その蛇のような仕草には、怜悧な真実味がある。
一周ごとにサスペンスとしての焦点が変化していくのが、このアニメの緊張感を保つポイントだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
先週は内通者、今回は脱出人数。足手まといを切り捨て最小限で生き延びるか、危険を承知で重荷を背負うか。理想か現実か。罪悪を背負う生存か、夢と一緒の心中か。
計画段階の現在は、まだエマの理想主義が強い。状況は転がらず、楽観的な予測が希望の色に現実を塗る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
そういう未来予想がなければ、そもそも希望への脱出、人間らしい生存なぞ望みもしない。だがそのうわっついた夢は、いつでもショッキングに殴りつけられる類の希望だ。
面白いのは、エマの理想主義もまた狂気の一種だと、冷徹に画面に刻み込んでくるところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
命の選別を果たすレイの傲慢を、エマは真ん中に座った瞳、軋む握手で糾弾してくる。それはレイの露悪とどこか似通った、狂気めいた偽善の軋み
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三人は共犯者として、森の薄暗がりを共有する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
Aパートでは血の色の密室で現実を話し合っていた二人が、エマを加えると風通しの良いオープンエアで会話するのが面白い。
明るい日差し、誰も見捨てない爽やかさ。しかしそれは、薄暗い狂気の側で、妥協のない力強さを宿している。
計画が進み状況が変化する中で、レイの現実主義、エマの理想主義、ノーマンの折衷主義…三人の主役が背負う倫理と認識は試されていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
かけがえないものを失い、シビアでろくでもない現実が挑戦してくるだろう。その時、少年少女はどういう決断を強いられるのか。そのバランスが楽しみだ。
それが形になるのは、そう遠くない未来かもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
『最初の三人』の中ですら、小さからぬ嘘と隠蔽で形を留める脱出計画。途中から巻き込んだドンとギルダ相手には、さらなる嘘で塗り固めてある。底から生まれるほころび、先を見ない激情の危うさ。
隠し部屋の開示と突入の静止は、少なくともレイは狙ってやった感じはする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
まだコニーが生きていると信じるドンには、希望ゆえの焦りがある。食人の事実を知ってる三人は、コニーの死とより深い絶望を知っている。そのギャップは、どっかで埋めなきゃならない。
『制御』という言葉が今回幾度も顔を出すが、意図しない場所でドンが暴発するより、制御可能な状況で制御可能な激発を狙って、感情を外部からコントロールしたようにみえた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
つーかこれが事故だと、脱出前にドンとギルダ死んでジ・エンドだからな…上手いヒキだ。
足手まといは見捨てる。感情を制御できない過剰な理想はいらない。冷たい現実を受け止めきれない弱さもいらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
レイの挑発を追いかけるように、ドンは感情に任せた暴走を果たす。焦りすぎて、隠し部屋のギミックを発見できず、ギルダが見つけるのは面白い演出だった。
熱い感情と冷たい理性を同居させて、相手の立場で考え、自分の武器を使いこなす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
ノーマンがレイ(の背後にいるママ、鬼の社会)を相手にこなしているような生き方を、ドンは出来ない。少なくとも今は。
その事実が露わになった時、エマの理想はどう崩れていくのか。どう残るのか。
なかなか気になるヒキだ。この激発がレイの仕込みだとすると、エマは確かに足手まといがいる現実を認めざるを得ない。命の選別が必要な事実に向き合う必要が出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
ノーマンがエマから希望を手に入れたように、エマもレイから何かを受け取る形になるのかな? もしくはノーマンから?
レイがどれくらいの赤心で情報を開示したかも読み切れないし、ドンとギルダの資質がどの程度かもまだ謎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
そういう伏せ札を一枚一枚露わにするのに、ヘヴィな試練と厳しい現実は良い試金石になる。その途中で心や体や理想が削れていくのも、必要経費と切り捨て…んのかな?
脱出計画というマテリアルな問題と同時に、如何に生き何を守るべきかという形而上学的な疑問も、どんどん進行していく。手近なドキドキとディープな疑問が良い距離感で同居していて、非常に面白い仕上がりです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月11日
様々な爆弾を孕みつつ、進む未来へのエグゾダス。夢の流れ着く果ては。
来週も楽しみ。