どろろ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
彼岸の花は、血の色をしている。
熱病にうなされたどろろが見る過去は、因業のグリザイユ。
既存秩序に叛逆し、己の在り方を吠える獅子王も、奸智に長けた鼬に足元を救われた。己の糧と誇りを乳飲み子に与え続けた母は、乾ききって死んだ。
その思い出の果て、今まだ息をしてる。
そんな感じのどろろchang回想編、墨絵に燦然と輝く赤は、第3話で見せた回想のルールそのままである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
火と血が鮮明に、あの時代を生きるすべての人の思い出に焼き付いている。誰かの喉笛を噛みちぎり、血を啜らなければ生き残ることを許してくれない時代の共通記憶。https://t.co/wHtPn6yvaH
どろろの記憶の中でも、やはり血は赤く、火も朱い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
もう一つ加えるとしたら、食わねば生きて行けぬ宿命を娘のために受け止めた母の、朱い赤い手のひら。親が子を思う情愛すらも、血が滲んで赤い世界に、どろろと百鬼丸は生きている。
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今回熱に浮かされながら、父母を思い出すどろろは、冒頭二つ揃った野辺の墓に寄り添う。そこに父母の遺骸は当然無いが、意味合いとしては冥界が彼女に近づき、引き寄せている描写であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
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過去、あるいは死地。灰色の世界からどろろを引っ剥がし、ケアする仕事は百鬼丸が背負う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
見ず知らずに他人に語りかけ、少女を背負い不自由を代行する。これまでどろろが担当してくれた”優しさ”の仕事を、百鬼丸もどろろから学び取り、布施する立場になってきている。
そんな二人の未来と過去を、彼岸花が見守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
アルカロイド毒を含む球根は有毒だが、水に晒すことで毒抜きをし、デンプンとして属することが出来る。そのためムラの境(畦、墓地。アウトサイダーが身を置く辺境)に植えられ、最後の予備とされた赤い花。
これを食べ尽くせば、あとは人の肉。飢餓の地獄に踏み込むしかないからこそ、彼岸の花と呼ばれる色彩の中で、母は散る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
それはかつて、身を売って生計を立てる一線を許さなかった在り方と通じるのかもしれない。
誇り高き雌狼として、植えて死ぬか。奪い返すために、涙の代わりに歌を呟くか。
既にどろろは、彼岸花を食らってでも弟妹を生かしていたみおの生き様を、母と同様肯定している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
身を包む衣は落ちぶれても、最後の誇りだけは捨てない。侍が収奪者と同義語な乱世で、最も誇り高い女。
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物語開始時、お百夜はしっかりとした衣装をまとい、既存秩序に反逆する”悪党”の妻として、もう一つの戦闘階層としての武装を整えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
そんな頭領を売り払い、頭を使って成り上がったイタチは、武家の装束に身を包み、布施に勤しむ。
その裏に集兵の意図があっても、飯は飯、善行は善行だ。
クレバーで凶暴で、冷静に優しいイタチのキャラクターは、非常に立体感があり面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
足を射抜かれ、悪党としての牙を失ってなお、長巻の刃を捨てられなかった火袋の生き様。それは、いつか配下を炎の中に投げ込み、皆殺しにしてしまったかもしれない。
そこを超えて尚、”みんな”で生きようとするのならば、頭領の首を引っさげて、支配し奪う側に立つしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
赤にまみれた世界の、シビアな処世術。イタチの所業は全肯定できるものでも、全否定できるものでもない。そのあやふやさこそが、人の業か。
どろろは父を失い、母と彷徨いながら”死”を見る。呑気に『悪党をぶっ倒す!』と石を投げていた時代には、見えなかった現実の諸相。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
それは己の未来の幻視であり、身近に感じられればこそおぞましいと、どろろは母にしがみつく。
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乱世の中で、隠蔽の奥にある性と死は、情け容赦なくどろろに突きつけられていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
守られるべき子供だから、何も知らない無垢なものだから。御簾の奥に守られる”当たり前”を、この世界は許してくれない。エグいが、だからこそ作品世界のルールが良く見える。https://t.co/JxQxXuZmkn
頭を売り飛ばして武士になっても、戦で手柄を立てなければ口に糊も出来ない。それはかつての自分たちを燃やし、ただ生き残る動物として情を捨て生き続けることだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
地獄のみならず、修羅も餓鬼も畜生も、当然この世にある。イタチはそんな世界に夢を見ない。見ないことで、最後の一線を守る。
その現実的な処世と、どろろが手放せない父母の思い出は、どこか似通っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
人が人として生きることを許されない世界の中で、それでも人であるための足場。それを矜持、あるいは思い出というのであれば、百鬼丸の足場はどこにあるのか。
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百鬼丸は尼(母の代理人)とどろろが身を置く領域に、どうしても踏み込めない。優しさを手桶に汲んで、どろろの熱を冷ましてやろうと情を見せても、尼が祈りを捧げる人の領域は、忘却の彼方にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
生まれた瞬間から生贄と定められ、奪われ、捧げられた孤児。
そんな彼にも寿海との思い出があり、季節は赤以外の色彩を宿す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
流れるときだけが人と世界の傷を癒やすとするならば、その一瞬一瞬に苦しみ、喜ぶ人の感情は、生きる証は一体何なのか。
それを吠えることも、無条件の正義ではない。火袋の末路はそう教えている
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長巻(疑似武家としてのアイデンティティ)を杖(欠落者としてのアイデンティティ)に作り変えられなかった火袋は、かつての因果に囚われて死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
鬼畜と切り捨てたものにも同胞への思いがあり、それとは関係なくあっさり死ぬ。殺すものも殺され、奪うものも奪われる。
その在り方はどろろの過去であると同時に、義肢に刃を仕込む百鬼丸の未来でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
足を奪われた父を見ていたからこそ、どろろは百鬼丸に優しく出来たのか。父と同じ修羅の末路から、どろろは百鬼丸をどう救うのか。
思い出と夢は複雑に混じり、奇怪なプリズムを為す。
炎と血に塗れつつ、父母の思い出を抱え続けるからこそ、どろろは生きられる。思い出のない百鬼丸は、その人間的体温に接近できないまま、それでも人を夢見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
どろろが止めた殺戮の生存者が、父たる醍醐に百鬼丸の生存を知らせた。https://t.co/7s7dZmbXvM
今回回想されたモノトーンの夢は、形を変えて百鬼丸に忍び寄る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
思い出の中、躯と成り果てた父母が幸せなのか。生き残り、国家安堵のために再び贄を探す父兄の生存は、幸福への第一歩か。
明瞭な答えはどこにもない。閻魔が記さずとも、この世は灰色の無惨帳。愛だけが血を繋ぐわけではない。
どろろが今回置き去りにし小さな手で掴み取ったモノを、百鬼丸は思い出し立ち向かわなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
もう他人の声を聞かず、存在の匂いを嗅がずにすむ人形ではない。誰かを活かすために誰かを殺す不条理も、生きるものが吠える声、立てる匂いも、百鬼丸は無視できない。
人になることで、百鬼丸の幸福と苦悩は深まる…と、単純には言えないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
ヒトとは別の世界を知覚し、別のルールで生きていた百鬼丸にも、別の幸福は当然あったわけだが、それはどろろと出会い、鬼神を殺し、器官を取り戻す中で変化してしまった。
それが押し止められない宿命ならば、泳ぎ切るしかない。その先に、血縁が鎖となり愛情が刃となる、修羅の巷が待つとしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
その先に光があるか、暗雲が立ち込めるか。判然としないまま歩みを進める二人を、彼岸花だけが見守っている。
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どろろのオリジンを開陳しつつ、親子の情愛、血みどろの善悪を複雑に描くいいエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
火袋を裏切り殺したイタチに複雑な表情を宿すことで、善悪判然ならぬ乱世の業、奪わねば死ぬだけの世界の厳しさ、それに摩耗しきらないどろろの無垢が、丁寧に折り重なっていった。
ひっそり背中の地図ネタが蹴っ飛ばされたり、赤面キュートな女の子っぷりが強調されたり、現在のどろろの立ち位置も鮮明になるエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
んっん~、兄貴LOVEなどろろchangは本当に可愛いねぇ~~。
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この萌え萌え(死語通り越してゾンビ語)などろろちゃんの後に、百鬼丸を取り巻く親兄弟の修羅を見せて次回に引く所が、ホント悪魔だなと思います。上手いな~。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月4日
百鬼と多宝。愛された子供と愛されぬ子供の宿命は、いかな辻で交わるのか。来週も楽しみです。