風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
箱根駅伝往路、五区。
天下の険、標高差864メートルを駆け上がる過酷な最終区。恋に浮かれる力走も一瞬で醒める高熱を背負って、神童が走る。
ふらつき、立ち止まり、世界は歪に歪んでも。肩からぶら下げた襷の重さが、胸を焼く得体の知れない熱量が、男を前へ突き動かす
そんな感じの往路終了、神童の激走が胸を打つエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
強いヒキだけを考えるなら、神童がゴールしたところで引いても良いわけだが、しっかり立ち上がり、明日に向けてチームが再起するところまで見せるのは、視聴者が見たいものをしっかり把握してくれている感じがする。
確かに神童の”強い”走りは胸を打つ。順位は確かに最下位まで落ちた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
監督のいう通り、厳しい走りが復路に待ち受ける。それでも、記録に反映されない”強さ”は僕らの胸を打ち、手に汗を握らせる。
今回の振動の走りこそが、ハイジが信じ、タケルがたどり着きたいと願った”強さ”の、一つの証明ではないか
そう思わせる描き方になったのは、やはり競技の外側、まだ続いていく道にちゃんとフォーカスを合わせ、クールダウンと安心を描いて次回に引いた構成の妙味だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
まぁ尺の都合とかも当然あるんだろうけども、辛いばっかりじゃなく終わってくれたのは凄くありがたい。
今回は箱根の山のように凹型の構成で、葉菜ちゃん恋模様を明るく楽しく走った四区から、ぐっと暗さを増す五区、そこを抜けて不屈の決意を見せる復路前夜と、テンションが上がり下がりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
これに合わせて、画面の明暗も巧妙に調整されていく。ライティングと心理のシンクロは演出の基本だが、力強い
双子の恋模様はまだまだ先のある道のりであり、答えもなかなか出ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
ジョージの可愛いモヤモヤが、彼が追いかけ続けてきたカケルの一言で吹き飛ばされるのは、なかなか面白い。
『言葉をうまく使えるようになりたい』
そう願っていたカケルは、この土壇場で言葉の良い使い方を見せる。
それがジョージの胸に届いたのは、アオタケの仲間に出会って以降…言葉の代わりに拳を握って、高校の監督を殴り飛ばしてしまって以降、カケルが言葉と向き合ってきたからだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
同時に、健全なライバル意識が、ジョージとの間に強く結ばれているからでもある。
甘酸っぱい恋を交えつつ、明るい調子で進む四区。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
しかし運命の五区を前に、様々なものが陰っていく。
決断を神童に託した時の、ハイジの表情。ユキと神童が、準備を整えるテントの中。
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それはジョージがタスキを繋げ主役を神童に託した時に決定的になり、浮かれた調子は吹き飛ぶ。流れる熱い涙。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
走る者だけに許された激情の聖域に、葉菜ちゃんは踏み込めない。ジョージの感情を静かに受け止めるユキが、非常に良い。
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今回あからさまに主役は神童なのだが、次回タスキを受け取り山を下るユキも、非常に丁寧な描写が積み重なった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
伸ばした手を振りほどかれ、高熱を抱えて死闘に挑む同士に、何も言えなくて握りしめた手。クールガイの血液は、友情と不甲斐なさで沸騰している。拳の硬さでそれが判る。
神童が自分を守るコートを脱ぎ、ランナーとして走ることを決めた時、ユキはそれを丁寧に、敬意を持って受け取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
その繊細な指先の描写が、彼がどんな気持ちで六区を走るのか、どんな男なのかを、何より雄弁に語っていた。
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同士達が身を置く陰りは、神童が20.8キロ身を浸す地獄でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
熱に浮かされ歪む視界、輪郭を留めない不安定な描線。晴天のはずの箱根路は、神童の荒い荒い吐息を背負って暗い。
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ここら辺のぐにゃ~っと歪み、周辺からジワジワと暗くなっていく描画は、第13話で描かれたカケルの過去にも通じるものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
あの時は無惨な世界と、無力な自分への怒りが世界を暗くした。しかし今は、重い体と厳しい使命が、神童の世界を暗く塗っていく。https://t.co/Nhx7pst4q0
神童の力走を、チームメイトだけでなく遠方の家族、商店街の後援者、TV越しに見守る名も知らぬ視聴者が見守っているのが、僕は好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
そこでチームと同じくらい重たく、それ以外を見据える視線は、このアニメをずっと貫いてきた。
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こういう描写を、過去を引き受けると同時に未来に繋げるのがこのアニメのうまいところで、電車の中でカケルが言った『色んな人みんなでチームです』という言葉だとか、ハイジとユキの家族問題だとかは、号泣する妹ちゃんと祈るかーちゃんの姿あってこそ説得力がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
今回はそういうリフレインが巧い
往路を勝利で飾った房総大の二年生は、神童が身を置く闇を知らない。晴れやかな表情で、小さくガッツポーズしながら、区間賞の栄光と共にゴールテープを切る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
それは彼の物語であり、そこにあって然るべきものだ。
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それと併存して、あるいは勝利の栄光があればこそ、闇の中の力走も確かに、そこにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
今まで正直存在感薄かった監督が、ここ一本でキャラを立ててきた棄権の呼びかけ。ユキにそうしたように、神童は手を振り払い、前に進む。
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流れ落ちるものが汗なのか涙なのか、鮮明には描かないカメラが神童のプライドを守っていて、とても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
薄暗い世界から顔を上げ、光の方を見る。苦しくて、苦しくて、それでも繋いだものが熱く疼くから、足を前に。輝く方向へと。https://t.co/UP88jvYl3V
第14話で王子を走らせたのと同じものが、神童を立ち上がらせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
アオタケの襷を繋ぎ、苦痛の中先を目指す”強い”走りを支える。
それは神童一人のもので(だからこそ尊厳がある)、同時にチームのものだ(そこに優しさがある)。
みな、そんな”強さ”を目指しながらここまで走り、これからも走る。
ふらつきながら、神童は顔を上げる。その赤らんだ顔を、虚ろながら猛禽のような眼を、誰も笑わない。笑わせはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
4月には傷ついた獣のように、他者を拒んでいた少年が、仲間の力走に目をそらさず、涙ぐむ。
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ここで震えるハイジの背中を描き、涙を直接描かない筆は、神童のプライドを守る今回のカメラ、王子の力走を藤岡さんと見守った時の潤んだ視界と、やはり通じるものがあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
ハイジはまだ、感情をぶちまける表情を直接描かれない。https://t.co/hPRJTtaoFp
皆を強引に引っ張ってきた物語のエンジンが、弱く脆い人間であるという事実。それを描いてしまえば、物語は静止してしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
だからハイジは、無謬の駅伝マシーンであり、全知の母親にして父親であり続けるしかなった。しかし同時に、その傷と涙を、屈折したアングルからこのアニメは捕まえてきた。
サブタイトルである『壊れても』は、神童の力走と同時に、ハイジの過去、そして未来に繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
家族とのギクシャクした距離感の中壊れても、明日タスキを背負って”箱根”を走る。たとえ傷だらけの膝が壊れても、走り切る。
今回は振動のエピソードであると同時に、ハイジの話でもある。
同時にチーム全員の話でもあって、激走を終えて一度暗転した視界は、まばゆい光に包まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
トンネルを抜け、新しい景色へ。あるいは産道を抜け、新たに生まれ直す。そういうモチーフを思わせる光の中最初に映るのは、繋いだタスキを背負うユキだ
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離れていても繋がってる仲間を、3つの携帯電話で見せる演出もいいし、リーダーの言葉で泣きじゃくっていた表情が戦士のそれに引き締まるのも、最高に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
ただそんなリーダーの表情は、まだトンネルを抜けきらずに暗い。
帰り道、鏡にあやふやな自分を反射させながら、ハイジは過去を語る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
親子の相克(杉山家の暖かさが、良い対比になってる所が巧い)、長い暗闇。出会った光。
無敵の牽引車に見えた男も、カケルと同じ陰りを背負ってきた。
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ハイジはカケルと出会わなくても、アオタケの仲間に希望を見出した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
結果だけに汲々とし人間を壊す”早い”走りではなく、人が人として走り続けられる”強い”走りをもう一度探すことを、竹青荘の窓に見出した。
でも”箱根”には、10人じゃなきゃ出られない。その最後の輝きに、あの闇世の中出会ったから。
薄暗い高校時代に、見上げた空。そこは漆黒の闇に見えて、光があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
自分の強引な夢が、神童を追い込んでしまったのではないかという陰りを、カケルの”言葉”が力強く吹き飛ばした時。
現実のハイジもまた、星を見る。
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ハイジの過去告白と心境吐露が、薄暗い森を抜けながら闇の中で行われて、カケルがその重たさを引き受け跳ね返した瞬間、森が途切れて星が見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
派手さはないが、非常に的確な演出だと思う。
ハイジが最後に見つけた運命は、彼の最後の後悔をも引き裂くように、力強く走り抜けていく。
その力走は、六区の下り、七区八区を抜け、”裏の二区”から最終区への激走とリレーで、しっかり繋がれるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
王子の疲労困憊が、ムサの誠実が、ジョージの明朗とジョータの快活が。
繋いだタスキは、神童がしっかり届け、明日、ユキが走り抜ける。
杉山家の地獄絵図、ハイジの過去と”家族”を描いたことが、ユキの背負う複雑な家庭事情を静かに照射し、彼もまたトンネルにいることを強調してくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
未だ、闇の中。しかし静かに熱く、男は決意の表情を強くする。
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神童の熱量を前にした反応が丁寧に積み重なった結果、『やってくれ…やってやれユキ!』という視聴者の気持ちは、最強に強まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
それを派手に叫ぶのではなく、しかし確かな描写で次回につなぐ所が、非常にユキっぽくて良いなぁ、と思う。
クールで賢く、静かに熱い。はー、イイ男やわぁ…。
不穏なサブタイトルがまーたいいヒキになっていて、本当にサービス精神旺盛なアニメだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
ユキ推しクラスタはもう一週間寝られないでしょ、あのサブタイ。いや俺も寝れねぇけどさ。原作読んでるのにね。
やっぱアニメの再構築と再演出、最高に”ズバピタ”なんだよなぁ…幸福なアニメ化だよ…。
数字は嘘をつかない。寛政大、現在最下位。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
その結果を導いた神童の走りは、しかし仲間と見知らぬ視聴者の魂に、確かに火をつけた。文句なく”強い”走りであった。
それを受けるのは、チーム一冷静な自称・エゴイスト。
ユキの六区が始まる。アオタケの往路が走り出す。来週、楽しみすぎる。
俺はサンドの飯よりクールガイがしたり顔の仮面を引っ剥がし、誰よりもホットな魂をむき出しにする瞬間が大好きなので、来週は約束された神エピなんだよなぁ…そっからガタイと取っ組み合ってきたニコちゃんへのリレーでしょ?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月7日
控えめに言って”死”でしょ。遺書書いとこ(死にません。極力)