約束のネバーランド 第8話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
供犠の子羊よ、先を行く褐色の山羊を見よ。そは汝が姉、犠牲の先触れ。
シスター・クローネを包む檻が、残酷に牙を閉じる。世界の果てを前に膝を折り、前進を諦めたかつての少女が、赤く咲く。
その終焉を以て、”母”が牙を剥く。小鳥の翼を折るように、愛児を死地へ
そんな感じのシスター退場&ママ本格参戦エピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
隙もあれば愛嬌もある”中ボス”として、重苦しくなりがちな話を適度にかき回し、子供たちの優秀さを印象づけてくれたシスター・クローネ。
彼女が何故、終わりに至ってしまったかを丁寧に追うAパートが、良い手向けの花だった。
シスターがいなかったらこの話、ちょっと重たくなりすぎていたと思う。”大人”を智慧でやり込めるスカっと感も薄くなってたし、アクティブな道化芝居で愉しませるテンポの付け方もなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
空気抜きと、立ち向かう世界の残酷さを身をもって教える大事な仕事。それを完璧に果たしたシスターに報いる。
長尺のAパートは、そういう仕事をしっかり果たしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
無論、子供たちと同じように叛逆を試み、システムに飼い慣らされ食い殺されたシスターは、子供たちの歪な可能性、ありえる未来をも示す。
シスターの過去を描写することは、子供たちの未来を見せることにも繋がるのだ。こういう両面取りが巧い
シスターは二重のシステム(”母”と”祖母”による擬似家族的抑圧、その外側にある”鬼”の絶対権力)を乗りこなし、野望を叶えようとして失敗する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
ママを失脚させるべく接触したグランマは、シスターを生贄に最上級の牧場を維持し、自分の立場を守る。
シスターは何も知らないがゆえに信じ、裏切られる。
それはママ-食用児の関係の裏焼きであり、『子供が食べる』幸福な食事と、『子供を食べる』残酷な食事は、明暗を切り分けつつ重ねて演出される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
シスターの死が決定的になった瞬間、響き渡る『いただきます』
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このアニメ最大の武器である『洗練された悪趣味』が、良い切れ味で唸る演出と言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
ここから画面は長い無言に入り、シスターの過去が回想される。
現在において食用児でしかないように、過去においてもまた、クローネは(も、また)食われる側だった。
かつて彼女の狂気を顕すために引き裂かれた赤ん坊人形は、幼年期には希望の象徴だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
瞳を輝かせ小さな”妹”を抱きしめるクローネは、コニーの死に憤るエマに少し似ている。哀しいまでに人間である。
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しかし(主役の子供たちと同じように)世界の残酷な真実を知り、大きく子供っぽかった眼は細められる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
薄暗い真実の中で、それでも未来を探して脱出しようと、クローネは願った。それも”祖母”の大きな掌中でしかなかったと思い知らされた結果、彼女は擦り切れていく。
ただ今を生き延びる。そのためには兄弟も食い殺し、自分の理想も焼き尽くす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
エマの綺麗すぎる理想主義を諦め、現実に適応した一つの極点が…間違えきってしまった”姉”の末路が、今回のクローネなのだろう。
皆人らしく生きたいと願い、それを果たせない。この世は残酷な檻。光は見えるだけで届かない
シスターが握ったペーパーナイフは、陰謀の種火にも、身を護る武器にも、智慧への鍵にもならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
背中に壁を背負ったどん詰まりで、蟷螂の斧を振り回すシスターは愚かで、だから哀しい。その無力さ、無様さは、今まさに戦う子供たちと全く同じだからだ。
奮闘虚しく食い殺される(”鬼”のぬらついた舌が、victimたる”女”を刺し貫くファロスの暗喩であるのは、おそらく間違いない)シスターに重なるように、無邪気にかじられるソーセージ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
臓物と肉の合わせもの。食用児の似姿。
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過去と現在、無垢と残酷を重ねるこのアニメの演出技法が、最大限生きたシーンだと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
薄暗がりの中で進行する惨劇を、子供たちは知りえない。しかしそれは”大人”の遠い世界ではなく、自分たちの成れの果て、間違いきった未来の鏡像なのだ。
だからこそ、それは子供たちに見えない。
クローネが見せた彫りの深い横顔が、僕にはとても印象的だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
道化芝居には孤独な世界で自分を鼓舞し、いつか夢見た善なる幻想を振り払う意味合いが、強くあったのだと思う。
追い込まれ、クローネはその仮面を剥がす。
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そこに色濃くにじむ憂鬱と諦めに、子供たちも過酷な世界で飲み込まえれていくのか。”少年ジャンプ的”な不屈と活力を振り捨てた結果、クローネは”そこ”にたどり着いてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
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微かに滲む青い自由は、あまりに重たい檻に覆い隠され、ただ夢見ることしか許されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
幸福な麻酔に微睡み、愚鈍な獣として死ぬか。自由を求めて過ち、冷たい床の上に這いつくばるか。
鉄格子は冷たく死者の上に伸び、赤い花が残酷に勝ち誇る。死と現実の勝利である。
間違えきった終局に、”姉”は弟妹に泥まみれの希望を残す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
このクソみたいな世界をぶっ壊して、あの檻の向こうの空へ。
それは呪詛であり祝福でもある。仲間もなく、そう生きるしかなかった敗北者は、残酷な人食いだ。
その事実が揺らがないように、彼女が地獄で夢を観た過去も消えない。
冷たい利害で繋がるしかなかった子供たちは、シスターの死を知りえない。その過去に秘めた思いも、冷たい床に徒花と散っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
それを憶えていられるのは、無力な視聴者たる僕だけなのだ。神の視座だけが、同時進行する残酷と無垢を両方、認識できる。
そういう特権的な冷たさを叩きつけられたようで、なんだか不思議で、ちょっと痛いAパートだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
それが強く刺さるのなら、道化であり怪物であり人間でしかなかったシスターをそう描いてきた筆は、間違いではなかったと思う。一人のキャラクターの、見事な終焉だった。
散るものがあれば、残るものもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
シスターの喪に服す余裕もなく、ママは本格的に動き出す。
”ラスボス”の凄みを出すためには、”中ボス”がおっ死んだ今がベストタイミング。機を逃さず畳み掛ける眼の良さが、Bパートはガンガンに唸る。
んーむ、ジェットコースター!
”ママ”と共犯関係にあったレイは見捨てられ、暗闇に投げ捨てられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
それはかつてシスターがグランマと生み出した関係の再演であり、”母”は常に未来への道を塞ぎ、耳元で甘く裏切りをささやく。
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シスターが今際の際に投げかけたエールと同じように、祖母から母へ、残酷な飼育は継承されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
”鬼”に支配された世界では、そう生きるのが人間の当然としても、人は道を求め、光を探す。だから”母”達は、その体で道を塞ぎ、暗黒の子宮に子供を置き去りにするのだ。
カメラを遠目に引いて、絵画的レイアウトの切れ味で見せるのはこのアニメの得意技だが、レイが押し込められる”監獄”の描写はその真骨頂と言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
暗闇の中の出口。母子共犯の果て、牙にすり潰されていく子供。
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これを打破するのが、”姉”と”母”が持ち得なかった友情(なんとジャンプ的!)な所が面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
ドンのハードコアな叛逆で、閉ざされた扉は空いた。光はまだある。だがそれは、さらなる残酷に続く処刑路なのかもしれない。
光など見なければ、家畜でいられたのに。
先行偵察班に追いついた”ママ”は、やはり道を塞ぐ。子供たちが子宮の中で微睡み続け、残酷な世界に自由を掴まないように、産道を縫い止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
子供たちの可愛い抵抗…ハグに対し、”母”は直線的な破壊で自由を奪う。
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添え木と包帯で傷をケアする欺瞞が、単純な暴力よりもなおおぞましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
”母”(が代表し所属する”世界”)は、愛を麻酔に残酷を振り回す。『あなたのためなのよ?』と囁きながら、自分で作った傷を癒やすことで愛を示す。
転倒しつつも本質を穿つ、無惨なる狂気。
野を駆け回るシーンが自由と力の象徴として印象的な分、エマの”足”をもぐ仕打ちはショッキングだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
自分の足で立ち、世界の真実に立ち向かう。エマが見据えた綺麗事は、非常にフィジカルな形で(文字通り)へし折られる。
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お前は子供(=餌)でしかないと思い知らされるような、優しい包容。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
”姉”を心配する嬰児たちと、優しいママの狂った聖母子像は、太い幹でアンバランスに切断されている。
ママが流し込む嘘の愛が、優しい麻酔が、真実のはずはない。だがそれは強靭で、極めて凶悪だ。
ガキの叛逆計画を軒並み薙ぎ払う仕上げとして、ママはノーマンに指をかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
『まーそうなるよな~』と顔はヘラヘラしつつ、俺の拳は真っ白に握りしめられている。切れ者・ノーマンボーイがいなくなっちまったら、脱出計画はマジヤベェぜ! あとこの純情正義少年が死ぬのマジねーから。マジ。マジ。
シスターの退場を丁寧に追いつつ、本格起動したママの恐ろしさ、おぞましさを印象づけるエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
ここでガッツリ凹ませて、マジモンの絶望感を植え込んでこそ、逆転のカタルシスは最強に強まる。解って入るが、やっぱスゲーハラハラすんな。サスペンスがやっぱ巧いな、このアニメ…。
”出荷”を告げられたノーマンがどのように動揺し、揺るがぬ覚悟を見せるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月12日
迫り来る破滅を前に、子供たちは逆転の秘策を思いつくのか。
”ママ”の邪悪な牙城をどう切り崩し、シスターの遺言を果たすか。
最終局面に向け、情け容赦なく追い込んでくるエピソードでした。次回が楽しみ。有難うシスター