ブギーポップは笑わない を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
経済界の魔王と、心の隙間から這い出した歪みの主。迷える人々を飲み込んだバベルの塔に、探偵たちが挑む。それぞれの、脆さと歪みを抱えつつ。
そして歪曲王が生み出した昏沈の魔空を、吠え声が揺らす。不在なる父、そは暴龍。ゾーラギVSブギーポップ、怪獣大決戦。
というわけでスーパーヒロイッククリーチャーアクション、ブギーポップオーバードライブである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
コンテ演出に中園真登、作画監督に半田修平と、TRIGGER系スタッフが顔を揃えた今回。ちょっとオールドスクールなケレンが随所に生きて、今までとは少し違う味わいになった。
”リトルウィッチアカデミア”TVシリーズのキャラデザでもある半田修平の筆を借りて、新刻委員長がむっちゃ可愛い。ちょっと古めの萌キャラムーブが随所に詰め込まれて、新たな魅力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
©2018 上遠野浩平/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会 pic.twitter.com/9VhpvxRglb
委員長は不気味な泡が差し出したおにぎりを食べる。それは竹田くんへの失恋を飲み込むことでもあり、宮下藤花への嫉妬を認めることでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
不気味な泡とちびっ子委員長は、竹田くんへの友情と慕情で、日常と非日常の狭間を埋めていく。ブギー、竹田くん好き過ぎ(知ってた)
宮下藤花の乖離人格とも取れる、不気味な泡。彼と触れ合うことで、委員長は異常な状況を自分ごとと飲み込み、歪曲王の謎に迫っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
リアルな側面から謎を解析しようと頑張るハバケン、不気味な泡の鼓動を感じて魔王の塔に走る竹田くん。今回は探偵役が多い。
そして、それぞれ真相からズレる。
ハバケンの科学主義は、夢想が現実に影響を及ぼす不可思議に驚いた時、隙間を魅せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
『幻覚性のガス』で明瞭に片がつくなら、人間はぺったんこになって呻かない。彼の解決策をはみ出す、不可思議な異能。それは実存し…『だからどうした』とは切り捨てられない。彼は”炎の魔女”とは違う。
結果漬け込まれて、再び”カスタード・パイ”を聞くことになる。冷たい現実のロジックだけでは、歪曲王事件は解決しきれないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
歪曲王は心の延長。自分の反射。委員長は自己を鑑み、そこからさらにはみ出した推論を伸ばす。塔に閉じ込められた歪曲は呼応し、それぞれの空想と現実を侵食している。
ディストーションの強い”カスタード・パイ”に乗って、ムーンテンプルの外側に、透明な破壊が及ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
群衆が逃げ惑う中、竹田くんは歪みの中心へと飛び込んでいく。主人公のように。
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音、映像。そしていかにも主役めいた竹田くんが、末真博士のように伝奇なる深層にたどり着けないストーリーの歪さも含めて、ディストーションのよく効いた良い映像だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
全ては歪曲王の歪みの中にある。彼は何故、”実験”を続けるのか。その真意は既に公開されている。
歪曲王のワイダニットは、彼に出会ったことで一番大きな実りを手に入れつつある、傷ついた少女との夕景に刻まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
死者への謝罪。還らないこだま(エコーズ)をどう発し、どう受け止めるか
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夕日を背負い、顔を無くした歪曲王。彼は思い出の中の誰にでもなれ、誰でもない。探偵たちがたどり着いた『お前は私の記憶の反射だ』という指摘は、別に彼の正体を暴かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
重要なのは、名付けられた自分の反射をどこで受け止めるか、だ。顔が見たければ、特等席は至近距離、”私”の隣となる。
私を歪める”誰か”として歪曲を見ている間は、その顔は見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
微笑んでいるのか、怒っているのか。許してくれるのか、断罪するのか。
その顔色すらも、自分の心理の反射なのだとしたら。既に失われた痛みとは、徹頭徹尾自分が向き合うしかない。
不思議空間でツンツン力がすーっかり薄れた咲子ちゃんは、大事だった友達を怪事件の中で思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
歪曲に捻じれた忘却は、傷つきやすい自分を守るため。でもその鎧を剥がして、後悔と愛情を思い出す…で終わらず、徹底的に錆を落として黄金にすることで、少女の世界は変わりうるのか。
歪曲王の”実験”は情け容赦がなく、とても優しい。結局人は一人で、世界は己の認識の照射でしかない事実を、一緒に考えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
ぼんやりと錆びていく日常の中では埋もれるだけの記憶を、異常の中で再生させる。歪みと向き合い、ディストーションを外した音は、一体どんな響きになるのか。
それは探偵たちが、深層を超えて尚突きつけられる多重な真実を乗り越えた、その先にある。後一話。決着は楽しみだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
完全に”巻き込まれた一般人”だからこそ、自分の心の他人からすればどーでもよく、だからこそ彼女も封じてしまった記憶にズブズブ浸れる咲子ちゃんはラッキーだったと思う。
一般生活をおくるための鎧を剥がせば、彼女は死別の後悔と無力感に沈み込んでいて、魂の可能性を涙の中に埋めてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
歪曲王の異能カウンセリングが、彼女のトラウマに別の視座を与えるのなら、秘められていた彼女の可能性は、ありきたりの日常に解き放たれ、小さな人生の物語を大きく変えていく。
そういう変化こそが、実は一番大きな”戦い”だというのは、歪みの中心に雄々しく向かった竹田くんの物語を見ても、よく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
異能を描きつつも、ひどくありきたりな人間を積み重ねる。能力の有無ではなく、心魂の在り方に”強さ”を問う。上遠野浩平らしい話だと思う。
新刻委員長も、自分の中の可能性が暴走した結果として、歪曲王を受け止める。それはブギーポップという、宮下藤花の可能性と対話した結果、受け止めた事実なのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
しかしその”先”を、歪曲王は求める。
僕を生み出した赤錆は、一体どこにあるんですか? あなたは何を後悔してるんですか?
あるいは、一体何を畏れているんですか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
そういう凄く当たり前で、根源的な問に向き合うことを、歪曲王は要求してくる。
それは時に怪物となり、世界を壊していくから…ブギーポップの出番もある
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”SSSS.BOOGIEPOP”と言わんばかりの、もう一つのTRIGGERの遺伝子。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
サイズ感とスピード感を活かしたスーパーアクションは、原作からずっと『ここ』の映像化を待っていたファン(つうか俺)を大満足させて有り余るヒロイズムだった。
すげぇぜ…まるで怪獣映画だ! まーじVSゾーラギだけ空気違う。
ブギーはヒーローのように少年の前に現れ、颯爽と危機を乗り越え、子供を守る。マントを活かした”保護”のアクション、優しく地面に横たえる仕草。カッコいい…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
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しかしそのヒロイズムは、現実に影響を及ぼし始めたゾーラギの暴走を収めるための、自動的な反応だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
彼は全てが自動的な反射だとうそぶく。物想う特権はあくまで君たちのもので、僕をヒーローだと思うならそれは、あくまで君自身の歪みの投影でしかない、と。
猛烈なゾーラギ殺しは結局、”宿主=父”であり”出口=母”である真少年を納得させ、不在の父という幻像を殺すためのヒーローショーでしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
生まれ出た怪物は息を吹き返し、別の形で雄々しく立つ
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四足歩行に変化したゾーラギくんのその後は”チャリオット・チューグル”を読んでもらうとして、ゾーラギくんの親離れ(真少年がこの『歪みとの対峙』を経て、父不在の不安を少し軽減するのであれば、ここでは二つの”父殺し”が展開していることになる)を見守るブギーは、妙に優しく見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
それは己を定め得ない自動的な怪物として、ゾーラギに奇っ怪なシンパシーを投射しているから…というのは、弱い人間の身勝手な妄想である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
しかし彼は、竹田くんが己を『友達』と言ってくれたことを、黄金として抱え続けている。ブギーポップは笑わない。そのはずなのに、そこに僕らは笑顔を見つける
同じく自動的な反射でしかないはずの歪曲王に、甲斐性とタフな優しさを見て取ってしまうのも、勝手な感傷である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
だが次回明らかになる真実を先に知っているものとしては、そこにはあまりに人間的な哀しさと後悔があり、それに溺れず、世界を巻き込まず前進していく尊さが確かにあると、思いたくなる
かつて文庫本を初読した時、稲妻のように心に刺さったあの感慨。あの真相。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
それをアニメがどう描いて、どう膨らませてくれるか。
それぞれが心の中から生み出し、向き合った歪曲王が、弱く情けない人間たちにどんな黄金を与えてくれたのか。
結局、それが見たいのだ。
このアニメ新シリーズは、とても良かったと思う。僕がブギーポップに、上遠野浩平に抱く気持ちを優しくアニメートして、もう一度向き合うことを許してくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
作品のナイーブな部分も、ヒロイックな部分も、大事に絵に、動きに、音に変換し、新しく組み直してくれた、良いアニメ化だったと思う。
その鮮烈で穏やかなトーンは、最終話一個でいきなり崩れるものではないと思う。だから次回も、多分楽しい最終回になる。とても楽しみだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月19日
しかしVSゾーラギにTRIGGERメンツを引っ張ってきて、ケレンたっぷりにやってくれたのは素晴らしかったなぁ…スタッフのテイストを、適切に活かす。マジ大事。