ブギーポップは笑わない を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
歪曲王が生み出した黄金の夢、寺月恭一郎が作り上げた密室の塔。並走する二つの事件を、自動的な存在が切り裂いていく。
次第に顕になる真実は、しかし結末までは、まだたどり着かない。加速する状況の先に、何が待つか。
そして、影絵達が踊りだす。
そんな感じの最終話一個前である。先週↓みたいな感じで、情感たっぷりに終わるムード出してましたけども、はいスイマセン終わりませんでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
でもこの感謝の気持ちは今回見ても全然薄れない。つうか強くなった。ありがとう、ありがとう。https://t.co/8wCwhUIiyj
前回は女の子もアクションもTRIGGER風味が強かったが、今回は歪曲王の不思議空間には一度も立ち入らず、”現実”のなかで状況が推移していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
思い出や夢の中にい続けることが出来ない哀れな生存者たちが、後悔を抱えたまま活きる錆塗れのバビロン。明暗の強い心理劇が、ムーンテンプルの中で展開する。
現実を自発的に生きているはずの人間と、流されるばかりの自動的な存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
主役と端役、主体と反射の関係性は、寺月恭一郎と歪曲王が用意した舞台の上ではズレる。探偵役は間違え、主役は核心を掴みそこね、少女は掴んだ黄金の価値を勘違いする。
真実に向き合う特権は、まずちびっ子委員長からだ。
パズルのピースがハマる(あるいは曖昧にハマらないことが判明する)カタルシスは、(今度こその)最終回たる次回に持ち越しなので、新刻委員長が見つけたものはカットされ、公開されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
歪曲王が反射した後悔、優しさ、あるいは英明さ。その意味に巻き込まれた探偵たちがたどり着くのは、少し先だ
今回は”現実”を舞台に、徹底的に空回りが続く回だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
前回まるで主人公のように駆け出した竹田くんは、面白くもなんともないリアルに歩みを阻まれ、異能事件に首を突っ込むどころではない。
宮下藤花の顔をした異常に手を引かれることで、竹田くんはようやく話の中核に踏み込んでいく。
黒く染まった魔王の塔を前に、足踏みをする竹田くん。歪曲王は非日常が潜む塔の内側、暗い陰りに彼を誘う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
『私を捕まえて』
その言葉と共に、明暗は反転する。
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『綺麗は汚い、汚いは綺麗』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
マザーグースの一節のように、都市の中に現れた歪なディストーションの中では、日常は非日常に、非日常こそが日常に変化していく。
過去の後悔を具現化した、黄金の草原。そこを永遠にしたいと願って、咲子ちゃんは探偵たちを闇に落とす。
そうやって日常への帰還路、一見出口に見えるようなアプローチを閉ざされることで、ハバケンと志郎は”正解”へ…センターコントロールルームへと導かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
しかしそこでも、歪曲王の真実は現れない。そこで教えられるのは、期待してなかった統和機構の真実と、羽原健太郎の探偵不適格だ。
ハバケンは徹頭徹尾クールに、寺月恭一郎の事件と歪曲王の事件を同一視していた。異能の存在、現在を維持する秘密結社の存在を極力排除し、シリアスにリアルに”事件”を制圧する視座。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
それは”炎の魔女”の偉業を支える助手としては優秀な資質だが、闇こそ大勢であるような転倒した世界には力不足だ。
ハバケンは時分を後押ししてきた真実へのヴィジョン、賢さへの信頼を、赤い影絵の中で見失う。自分が異常事態の中心に踏み込む資質がない、哀れな道化だと思い知る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
末真和子や竹田啓司のように、闇に惹かれて身を投げても、光の側にはみ出してしまう。
そういう状況で、あやふやな状況に目鼻を付けていくのは主体的な人間ではなく、自動的な怪人である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
永遠を求めて死を乞い願う咲子は、最初優しさを閉じ込め、薄暗い闇にいる。
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歪曲王に出会ってなお、過去の後悔を現在の活力に帰るのではなく、後ろ向きのモーティベーションに取り違えてしまうような、危うい歪さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
それを抱えていればこそ、このタワーの人たちはみな歪曲王に出会い、歪みを反射され昏倒する。目が醒めてもなお、”炎の魔女”へのコンプレックスで真実を間違える
ブギーポップは危うく彼女を殺しかけた天上を(先週に引き続き)ヒロイックに切断し、咲子に対峙する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
ソクラテスのように問いかけ、ショーペンハウエルのように自殺/殺人について語る。
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最初は隔てられていた怪人と少女の距離は、歪曲王と出会った意味、自分が錆びつかせていた優しさの大切さを静かに問う(あるいは反射する)うちに、隣り合った間合いへと変化する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
このとき咲子の顔は、闇に覆われてはいない。
死の欲望、過去への切望を黄金に変え、光の方へ。
己を自動的とうそぶくブギーポップ(と歪曲王)は、人間がそういう方向に進めるよう、厳しい問いと新しいし座を与えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
それもまた、人の賢さと愚かさの反射だというのだろうけど、彼らが好きな自分としてはそこにキャラクターと主観的な尊さを、やはり幻視してしまう。
それが嘘だというなら、この世に輝くものなどなにもないような黄金。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
それを歪め隠していた咲子が尊いというのなら、それを見つける手助けをした怪人たちもまた、とても偉いと僕は思う。
彼らは『自動的なんだよ』と言うだろうけども。流されるまま普通に生き続けているなら、そこには手が届かないのだ
咲子の歪みに方向性を与え、黄金を取り戻そうと…歪曲王の実験を成功裏に終わらせようとしたブギーの手は、光を掴むように伸びる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
BGMが切断され、世界は暗転する。歪曲王の領域、ズレた現実。
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ここを抜けてブギーが物語の中心にたどり着くのも、また来週のお話となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
強すぎる逆光の中でシルエットになった実体と、闇の中でこそ鮮明な身体。この対比は探偵たちがたどり着いた真実(あるいは、一つの事実)でも、バロックに強調されていく。
寺月恭一郎のビデオレター(これもまた、一つの自動的な存在だろう)は、明暗が非常に鮮明だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
顔のない影法師が、ピンとこない世界の真実を語っていく。それが圧倒的に事実だと理解できるのは、分節化された物語を神の視点から追った読者だけだ。ハバケンにはさっぱりである。
黒と白が不気味に、鮮明に塗り分けられた影絵の世界。実像と虚像が不可思議に反射する塔。寺月恭一郎の遺言は、戯画化された現実でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
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隠微に、その存在すら知覚されないまま人間社会を方向づけ、たくさんの犠牲者を(敵にも味方にも)出し続けている巨大なシステム。人類の”突破”を拒みつつ、その内部に大量の可能性を抱え込んだ旧世代の遺物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
ブギーポップ世界を統和機構が、確かに制御し管理している事実を、僕らは知っている。
だが合成人間ならぬ塔の中の犠牲者は、その事実を知らない。知らないからこそ、統和機構の敵(水乃星透子が求め、霧間誠一が後押しした”突破”の可能性)に為りうる存在を、引き寄せ警告すること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
不可思議に蠢く巨大なシステムに、波紋を残すこと。
それが、寺月恭一郎のワイダニットである。直接的な答えには、当然ならない。歪曲王事件とムーンテンプル事件は偶然重なっただけで、犯人も目的も別の事件だからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
だが、システムが到るところに張り巡らされた世界でそれでも生き延びるなら、この出会いは決定的に重要だ。
この”真実”に出会ってしまった羽原健太郎が、いかにもう一度”主役”を貼るかというのは”ブギーポップ・ダウトフル 不可抗力のラビット・ラン”を見てもらうとして、だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
ハバケンは予断(あるいは英明)によって事件の真実を見損ない、探偵に為り損なった。
彼が脇を務める”炎の魔女”がメサイアコンプレックスなら、彼はサイドキック・コンプレックスというか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
どうやっても主役になりきれず、クールな自分を崩せないからこそ、事件の真相に踏み込めない。”突破”出来ない。…ちょっと仁兄さんに似てるな…。
彼がムーンテンプル事件解決に奔走したのは、やっぱり霧間凪への感情複合があると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
自分は惚れた女に、器が追いついていないんじゃないか。ここで主役にならないと、置いていかれるんじゃないか、という焦り。
それが彼を、眼の前のシンプルな真実二つから遠ざけていく。
一つ、世界は統和機構に制御され、そこからはみ出す可能性に満ちていること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
二つ、歪曲王は不可思議な力をもって、常にそこにあること。
この2つがムーンテンプル内部で絡み合った結果が、今回の事件だ。だがそのからくりに気づいていないから、ハバケンは強く当惑する。
寺月の斬首をもって、世界は赤く染まる。赤裸々な真実を前に、虚像は目鼻を手に入れ、現実が虚構にコンバーションされていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
そして、影絵が動き出すのだ。
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ともすればレールを外れようとする探偵を、事件の中心に押し出していったのは誰か。様々な隠し通路を見つけ、突破口を生み出していったのは誰か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
ヒントはそこかしこに、それこそ”笑わない”からある。
赤い世界に、黒い影法師。ここまでの四話でただ一人、歪曲王に出会っていない人間。
マンティコアに致命の一撃を食らわせつつ、神木城直子の死体も確認できず、何故彼女が死ななければならなかったか、その背景も知りえないまま生き延びた、哀れな生存者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
田中志郎の歪みが、一体どこにあるのか。それが、最後の伏せ札だ。
ここが同じく”笑わない”を通過した新刻委員長の、超かっこいい生き様ブッパシーンと重なるよう構成されているのは、凄く良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
皆自動的な存在の助けを借りて、闇の中で真実と出会い、歩みを進めていく。後悔を黄金に変えるためには、結局主体を持った存在が自発的に、己の物語を前に進ませるしかない
その手助けを的確に、人それぞれの傷の形を見ながら差し出してくれるから、僕はこの物語の自動的な存在(たち)が好きなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
それに背中を押されて、凄くありふれて当たり前で、だからこそ特別な輝きの中に身を投げていく人々の姿も。
20年間ずっと、ブギーポップはそういう物語を書いてきた。
そんな歩みを語り直すアニメシリーズも、後一話で終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月23日
今回描かれた足踏みや間違いや曖昧さが、しかし決定的な変化に確かに繋がっていること…黄金になりうることを、ちゃんと示して教えてくれるだろう。
曖昧で、判ったようで判らず、でも大切な答えがちゃんと出るだろう。非常に楽しみである。