約束のネバーランド 第10話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
断崖の果てのかすかな希望。離別の果てにある絶望。荒波のように、思い出が子供たちの心に溢れかえり、未来が僕たちを窒息させていく。
母の囁きは子守唄。安らかな諦めの中で、苦痛なく死んでいく未来への一本道。
君よ、絶望を拒むのならば、運命を嗤え。
そんな感じの、希望と絶望の相転移、最終決戦のゴングが鳴る第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ノーマンの未来が”死”の予感で舗装される中、未来への反逆を試みる戦友と、それを押し留め死地に赴く当事者。身動ぎしないまま殺されることが、かすかな希望をつなぐのならば…
”母”はそれを押し殺す。シスターを殺しノーマンを喰らい、哀れな生存者を絶望に追い込む。ハウスというシステムそれ自体として、子供たちに甘く、恐ろしく迫り寄るママ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
その鎧の隙間を、丁寧に追う話でもある。希望と絶望のバランス感覚が抜群に上手いな、相変わらず。
ノーマンが見た崖は、絶望の象徴のように見えて希望への道でもある。出荷直前ですら恐れを飲み込み、高い壁の向こうに自分たちが置かれた状況を分析する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
最後の最後まで背筋を伸ばし、友のため、明日のために冷静に。
そんなに立派じゃなくても良いんだよ、ノーマンボーイ…。
六角形の牢獄、最も警戒厳重な”本部”を超えた先に、未来はある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
その事実はしかし、残される子供たちを奮い立たせはしない。友の死を前提に冷たく生き残るよりも、熱く危険な賭けに出たい。
そんな子供たちの熱量を、ノーマンは静かに抱きしめ、せき止める。
たしかにここでノーマンを活かせば、計画は危うく頓挫し、夢は潰えるだろう。そんなことは、激情主義のエマだけではなく、冷たい現実主義者なはずのレイにだって解っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
解っていても、心は止まらない。それは穏やかな絶望に抱かれて安楽に死ぬことを拒絶するのと、同じ感情のうねりだ。
眉間にシワを寄せ、二人を抱擁するノーマン。ここまで涙を見せなかったレイは感情のしずくを零し、激情を顕にしてきたエマは堪える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
この逆転が、ノーマンの離脱が二人にとって、どれだけ大きいのかを物語る。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/hft0PDdbnz
あくまでクールに、クレバーに。脱出を計画したときからそうであったように、天才児は仮面をかぶり直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
思いがあればこそ、生死の境界をはっきり引き、カルネアデスの舟板を友に握らせる。そのためには、自分の死すら駒にする。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/my8QCCHAJi
子供たちの間に明瞭に引かれていく、残酷な一線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
レイは絶望の中でそれを飲み込み、自室に籠もる。エマは諦めきれず、傷んだ足を引きずって最後の賭けに出る。
それを不発に終わらせることが、糸電話で繋がった双子の命を守る、最後の一手だから。
ノーマンはその手を振りほどく。純ッ…愛…(死)
しかし、ノーマンは本当に死んだのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
漫画原作の方では答えが出ているし、申し訳ないながらアニメ放送にも周回遅れな僕のトンチキな推理であるが、作中の描写はかすかな希望をつないでいるように思う。
まぁ推しに死んでほしくねぇっつー、エゴむき出しの気持ちもモリモリですが。
先週色濃く絶望の断崖で引いて、実はその死地こそが脱出口であると見せる冒頭。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
回想の中で顔を出す、断崖と病床(ママの言いなりになるしかない、弱い幼年期)を乗り越える糸電話…微かだが、確かに繋がるライン。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/eQmsb715k5
かつてノーマンが伏しエマが見舞っていた病床が、足を折られた現在エマを縛り付けているところとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
現在編では多用されるバロックなアングルが、無邪気で幸福な幼年期では的確に抑えられ、揺るぎのない安定感を出しているところとか。
今回はこのアニメの”巧さ”が、ギュッと詰まった仕上がりだった。
その思い出があればこそ、微笑みの仮面を崩さずに死んでいける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ノーマンは糸電話を鞄に収め、思い出に蓋をする。全ては、兄弟を生き延びさせるために。
そのものわかりの良さを、エマはどうしても受け入れられない。ママが押し付けた松葉杖を投げ捨て、無謀な脱出へと身を投げる。
松葉杖の取っ手がフレームとなり、共犯者と敵対者を同時に切り取るレイアウトとかマジ巧すぎだと思うが、エマの暴発をノーマンは抑え込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
理性、知性。どれだけ犠牲を叩きつけられても、人間の証明を手放さないこと
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/coyojIGXWD
自分を支える杖を手放さず、使えるものは何でも使うこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ママが身を置く色の濃い闇(ちゃんとギルダよりライティングが悪い)に、飲み込まれないこと。
永訣を幸福に置き換える道化芝居の中で、ノーマンは遺言のように、細い糸を手繰って思いを伝えていく。
なんの事情も知らない幼子達、希望をまだ抱えた共犯者達、そして全てを喰らう”黒い母(カーリー・マー)”
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
エマの激発を見守る三様のライティングが、非常に面白い。今回のママはラスボスに相応しく、とにかくIn the Darknessだ。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/lrnqENBjMV
キスでもするかのように手を伸ばし、エマを抱きしめようとした瞬間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ママは聞き分けのない子供の首根っこを押さえて、外出用の帽子をかぶらせる。
生殺与奪も、恋をする権利も、全ては私が管理する。言うままに生き、言うままに死ね
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/E9uKjTIz5O
『物分りの良いママ』を演じつつ、狂暴な殺意を叩きつける瞬間の色濃い陰り。甲斐田裕子の好演にも支えられ、ママは黒い絶望と指切りした『大人の強さ』を、存分に振り回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
お前の足を折り、自由を奪い、恋に繋がるかもしれない”男”を奪うのは、他でもないこの私だと。
しかし、その鎧にはかすかに穴が空いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
色濃い絶望、超えられない断崖、避けられない死。細い細い糸電話で繋がるように、”ママ”と彼女が背負う世界をひっくり返す、微かな裂け目もまた、支配の中に顔を見せる。
それを見つけ、掴められるか。キャラクターと同時に、視聴者も試されてる気がする。
まぁそういうモノを安易には掴ませない、現実の苦さもたっぷり描ききって中毒させるのが、この作品の味であり毒なんだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ここで子供のように泣いてしまったら、あまりに惨めすぎるから。エマの涙は、涙腺ではなく蛇口からこぼれる
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/k0erK7rUli
幾重にも折り重なる階段が、牢獄のように子供たちを閉じ込める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
もう、泣くことすら出来ない絶望の闇。だがそこに、ノーマンの言葉が光を照らす。
それを魂の双子達が、たとえ見ていないとしても。糸電話で繋がっているから。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/NnpZ9FJmLT
諦めと絶望の中で生存し、安寧と無知の中で死ぬ。鬼の世界の”当たり前”を解くママに、ノーマンの『それで幸せなの?』という問いが届いた瞬間、ママの闇は一瞬だけ晴れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
その表情は、全てを食い殺す鬼子母神のそれではない。あやふやな感情の上で揺れる、当たり前の人間の顔。
こここそが、ジークフリードの背中の一葉、アキレスの踵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
どれだけ過去を諦め、少女であり人間であること(エマの歪んだ鏡であること)を否定しても、”ママ”は鬼ではない。光を完全には否定しきれない。
道化であり怪物であったシスターが、その実人間でしかなかったと、かつて思い知らされたように。
希望への脱出が加速する中で、ママと”ラスボス”として対決する中で、そういうゴリアテの弱点が暴かれるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ならば、極悪な”母”に勝利する瞬間は、愛すべき人間に死を与え、もう一人の姉妹と決定的に分かれていく、苦い瞬間になるのではないか。
そんな予測も立つ。シスターもそうだったし。
(こうして書いてると、思いの外シスター好きだったんだなぁということを思い知らされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
重たい画面をポップに弾ませる道化芝居、中盤を引っ張るサスペンス供給源、中ボスに勝てた安心感が今まさに、”ママ”に踏みにじられる有効活用。
そういう”仕事”だけでなく、多分人として好きなんだあの人)
そんな未来が来るかどうかは、まだわからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ノーマンが開けた扉の先に確かに光があって、それが闇に閉ざされ結末が明記されないように。
これは…死んでない演出(だと思いたい)。今回の演出ラインだと光は明白に”生”だよなぁ…
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/8jmAtD12Tq
結末定かならぬ闇に放り出されたノーマンを思い、無気力に空を見上げるエマ。視線の先には、群れで飛ぶ自由な鳥と、一見飛んでいるようで地面に引きずり落とされるペットボトルロケット。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
どちらが、自分たちの未来なのか。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/ugPRfLG01c
涙のように、傷のように。エマの顔を切断する枝がバロックでいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
レイもすっかり心を砕かれ、反逆のための武器庫…図書館で、闇に耽溺する。
エマが灯火を差し出しても、顔も上げられない。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/SNcPcNbHXc
ここら辺のジャンキーな絶望加減は、彼が強気でタフな現実主義者だったからこそよく刺さる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
エマは無力な己を、かつてのノーマンのように床に押し付け、子供のように泣きじゃくる。
ほら、鬼が来るよ。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/qBY3j4ruae
ここのママの超濃厚ダークネスっぷりは最高だが、ママは自分に言い聞かせるように、諦めと生存を囁いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
かつて脱出を試み、グランマの掌の上で踊った経験があればこそ、ママは”ママ”になった。
お前も諦めろ。私と同じ”母”に堕ちろ。
その囁きに、エマは反逆する。
エマへの囁きが、希望を与え悪徳に導く邪悪から生まれるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
己が感受する邪悪な幸福を、少しでも分け与えようという優しさから芽生えるのか。
はたまた、ネバーランドを夢見る不屈の子供で居続けられなかった自分への、屈折した復習なのか。
それは(まだ)解らないが、ママの鎧は(シスターが死地に向かう中、巧妙に引っ剥がされたように)ヒビを入れられつつあるように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
情がなければ、後悔がなければ、こういうアプローチはしない。
生き延びるためには、諦めが当たり前なんだ。
ずっとそう言い聞かせてるから、エマに絶望を吹き込む
その歪な情こそが、かすかな光となりうるのではないか。絶望に全てを焼き尽くされたかのようなシーンの後に、濃い闇と、微かだが確かな光が宿る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
ママが抱いている赤子がちょっとエマに似ているのが、邪悪で狂暴でいい。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/4NK8Gf6hEd
カレンダーは儚く飛び過ぎ、レイの出荷が迫る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
色濃い闇の中、最後の歌を歌う二人はしかし、かすかな月光の中で嗤う。
まだ、終わっちゃいない。
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会 pic.twitter.com/usqRxtsI29
月光を背負っているレイの方、友情の方、生存の方、希望の方へ、闇が濃い場所から一歩一歩エマが這い出してくる様子が、ゾンビのようで恐ろしく、勇者のように美しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
天真爛漫な子供の顔を剥ぎ取った、冷酷とも言える凄みのペルソナ。それが見据える逆転の秘策は…
というところで、次回に続く、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
相変わらず右に左に、光に闇に、希望に絶望に、キャラクターと視聴者をブンブン振り回す豪腕アニメである。
ホント絵の作り込み、そのクオリティをどう活かして心を揺さぶるかを、よく考えたアニメだ…おかげで消化するまで時間がかかる…はいスイマセンマジ…。
巨大な闇を背負い、残酷な世界の代表として、全てを喰らい尽くす”母”としての凄みを見せたママ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
しかしそこに微かに入ったヒビが、人間の脆さと優しさを確かに感じさせる。”それ”が”そこ”にあるのなら、諦める必要はない。友が手渡してくれた希望を握り、砂を掴んで立ち上がれ。
そんな気持ちを掻き立てられつつ、『でもマージ闇深ぇんだけど! 絶望デカいんだけど! どーすんの!!』という感想も抱く、いいクライマックス前夜でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月28日
マージ今回の映像を”読む”と、ノーマンも子供も活きるんだけども、どうそこに繋げんだろう…次回、非常に楽しみです。