約束のネバーランド 第11話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
十二時の鐘が鳴る。素敵な素敵なお家が燃える。血まみれのサンドリヨンが、マッチが見せる悪夢に踊る。
ママの思惑、レイの自己犠牲を乗り越え、エマの想いが走る。冷たい境界線を超え、断崖の先を目指して奔る。
愛しきものよ、さらば。
そんな感じの脱出開始、積み上げた予断をボーボー燃やしてのクライマックスである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
エマの絶望、レイの希死、ノーマンの犠牲。暗色に塗られた物語が、炎の洗礼で新たに生まれ直す。最後の一歩に相応しい、派手で破壊的な変化が楽しいエピソードであった。
ここまでお話は、年齢的にも身体的にも精神的にもスペシャルな三人と、ママ(が代表する世界)との戦いとして進んできた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
無邪気な子供たちの中で、唯一真実を知ってしまったエリート。その孤独が、ノーマンが出荷され、レイが死を願い、エマが絶望してしまった状況を真っ暗に見せる。
しかしレイもエマも絶望はしておらず、自分の命を薪に脱出口を開いたり、二ヶ月牙を研ぎ続けたりしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
エマの甘っちょろい理想主義が掴んだ、『みんなで逃げる』という脱出プラン。真実の重さを、あえて仲間を信じて背負ってもらう道のり。
それは現実主義な少年には、なかなか思い至らないだろう
サブタイトルをカレンダー表記にしてきたのも、主役意外が脱出の足場を作るこのクライマックスを、最大限爆発させるためかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
世界すべてが敵、子供たちは食肉。極悪な世界に叛逆し、特大の”ざまぁみろ”を叩きつけるためには、それなりに準備がいる。世界をひっくり返すためのロジックがいる
停滞していたように見えるこの二ヶ月間が実はみっしりと準備期間であり、呑気な観客だと思ってた子供たちが実は戦士だったと、話をひっくり返す仕掛け。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
それが二ヶ月分ぶっ飛ぶサブタイトルに、いい具合に仕込まれていたのではないか。そういう気がした。
重たく歪んだ世界を”絵”で見せてきたからこそ、そこをぶっ飛ばすカタルシスは多分大きい。最終話はとても面白く見れるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
だがカタルシスは絶望との落差で生まれるもので、強い絶望とそれを跳ね飛ばす強い物語的仕掛けが大事になる。思い込みを上手く視聴者に埋め込み、死角から殴りつけることが
囁いた絶望に食われ、世はすべてこともなしというママの思い込みを殴りつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
自分の死を前提に組み上げてきた、レイのプランの上を行く。
『主役は三人だけ』という、視聴者側の謬見をぶっ壊す。
今回展開している暴露は、脱出という結末、クソみたいな世界を跳ね返す説得力として十分力強い。
そこら辺のエンジンがブン回る圧力を、セリフではなく構図と色彩で積んでいくのが、このアニメの方法論なわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
遠景の象徴性と、クローズアップの濃厚な感情表現が同居し、独特の遠近法を生んでいるのは凄く力強い。社会と個人が対立する話なんで、表現もそれに従う感じかなぁ。
暗闇の中で、レイとエマは語り合う。レイは死を覚悟し、エマは絶望に染まりきっていない。二人の間には強い切断面がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
炎が炸裂するその瞬間まで、レイとエマの間には必ず”何か”が挟まる。生と死の際、絶望と希望の断絶。
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ノーマンの死をエマは否定し得なかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
そこで無力な過去に囚われ食われるか、過去を足場に前に進むか。エマは正しく前に進んでいて、しかしその前進はかなり捻った形で展開する。
女王を囮に、騎士と歩兵で状況を詰める。チェスの手練めいた、二ヶ月の煙幕が状況を作り上げた。
エマは”活きる”ために自分の絶望をコマにし、ママの目をそらした。対してレイは、自分の死を前提に計画を組み上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
その冷たく重い切断面は、ハウスを燃やし尽くす油で描かれる。スティクスを生者たるエマは、まだ乗り越えられない
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頭に油を塗られ、水をくぐる。赤子がこの世に生まれ祝福される洗礼の、バロックなパロディ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
それがレイがたどり着いた結論であり、兄弟の犠牲の上に罪深い生を謳歌してきた自分への罰でもある。
ママの巨大な胎内たる”ハウス”を焼き、その中で死ぬことで、自分は死者として生まれ直す。
生きれば無為に終わり、死なば無数の実りとなる一粒の麦。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
そのように己の命を使うヒロイズムが、レイの瞳に危険な日を宿す。それは”ママ”への炎の反逆。子供であり食肉でしかないと自分を追い込む、世界への叛逆。
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その美しい自己犠牲主義を、生存者の苦悩に満ちた結末を、エマは握りつぶす。境界線を踏み越え、生存者(あるいは死者)の世界に思い切り踏み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
犠牲になったものの思いと知恵を借りて、前に進む。可能なものを掴み取る。その真っ直ぐ過ぎる貪欲こそが、彼女を主役足らしめている。
エマは炎で手を焼き、耳を切って自分の血を流す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
遠い隔たりの奥で語られていた自己犠牲、あるいは赤ん坊を置き去りにする現実主義を、エマは自分のものとして取り込んだ…のだろう。
怪物的な、あるいは人間的な顔を見せる”ママ”
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彼女が被っていた仮面が、彼女の足を縛る。幼い子供を置き去りにした理由は、最終回で明らかになるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
油まみれのスティクスを乗り越え、レイを生の岸に引っ張り上げる。それだけでなく、レイ(とノーマン)が持っていた冷酷な資質を、自分のものとして引き受ける。
ハウスがボーボー燃えてまさにクライマックス! という状況が、外側のイベントでとどまらず、主役たちの内面に熱量を及ぼし、大きく変化させているのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
エマは明るすぎるキャラだったんで、ここでレイが担当してた現実の陰りを半分背負うのは、公平でいい流れだと思う。
境界を超えたのはレイとエマだけではなく、他の子供達…脱出の当事者もそうだ。エマの絶望に分け入り、折れた足の代理を果たすドンとギルダ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
絶望に寄り添う後ろ向きなケアに見せて、叛逆の牙を研ぐ前向きなギャングたち。
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これまでの重たく暗い描写が、主役に大きく偏っていた当事者性が、ぐるりと意味を変える描写である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
正直狭く尖りすぎた運びだとも感じていたので、ここで横幅広く、『みんなの戦い』になるのは超気持ちがいい。オメーら…結構やるじゃねぇか!
燔祭には供犠が必要で、ノーマンは既に捧げられた。(いやぜってぇ生きてるけども)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
その贄を無駄にせず、むしろ未来への布石を既に埋め込んで、貪欲に明日を掴みに行く姿勢。アンナの髪の毛は、犠牲を装い明日を開くために供される。
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これまで三人+二人で進行してきた事件を、『みんなの戦い』に広げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月3日
その決断が狭く、覆い隠されたシーツの奥で展開しているのが良い。そこは閉ざされた場所なのだが、同時に風に揺れる開放的なクローゼットでもあり。そういう入り混じった境界から、子供たちの叛逆は芽を出していくのだ。
ママ、ハウス、崖に包まれた牢獄。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月4日
無数の子宮に閉じ込められた幼年期から、子供たちはみんなで叛逆していく。
死ぬにしても、無為には消えない。繋げた思いで未来を見据え、時に厳しい決断を果たして、何が何でもたどり着く。
そういうサバイブ意識が炎となって、家=檻を焼くエピソードでした。
どんなときでも生存を諦めない、綺麗には死なないエマの獰猛さが、レイの計画をぶっ壊し、ママの思惑を上回って炎と踊る。その薪となったのは、ノーマンの意志であり、ママをつなぎとめている幼子達。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月4日
それぞれの意念が”どこか”へたどり着くであろう最終回、非常に楽しみです。
しかしやっぱ閉鎖空間モノは、最後にド派手にぶっ壊してこそのカタルシスだよな…いびつで重たく、エッジな感覚がウリなんだけども、ジャンルのお約束、気持ちの良い定番をしっかり踏まえてくれる安心感が、この作品の強さ(の一つ)だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月4日